この記事で分かること
- 米国の公的年金150本とPEファンド1,303本を組み合わせた研究で、年金自身のポートフォリオを基準に割り引くと年3.1%あった超過収益(α)が、各年金のリスク回避度に合わせて測り直すと年−2.7%になったこと
- 年金が選んだファンドの好成績は主に運用会社へのアクセスによると解釈され、選別の腕を示す証拠は得られなかったこと、積立不足の年金ほど高いIRRをリスクの上乗せで得ていたという結果と、その限界
- 日本の年金・機関投資家が、PEの実績報告でIRRを「リスクの対価」と「α」に分けて確かめる手順と質問(学習用の設例つき)
想定読者:年金基金・保険会社・金融法人でPEファンドへの投資を担当・監督する人、運用委員、ゲートキーパー、GPのIR担当
前提知識:IRRとTVPI、PMEの考え方、ベータとCAPMの基礎
運用委員会の資料に、PEファンドの実績が並ぶ。投資開始以来のIRRは2桁で、同じ期間の株価指数で測ったPMEも1倍を上回っている。ここで委員が確かめたいのは、自分たちの選び方が良かったのか、それとも株式より大きなリスクを取った対価が出ているだけなのか、である。
答えは、ファンドのキャッシュフローを「何で割り引くか」に左右される。PME(Public Market Equivalent)は株価指数で割り引く。しかし年金は、負債とリスク許容度に合わせて債券や不動産も組み合わせた資産配分を持つ。南カリフォルニア大学とUCLAの研究者らの論文は、この「投資家ごとに違うものさし」でPEを測り直し、米国の公的年金に当てはめた。
この記事が主に参照する研究
Arthur Korteweg, Stavros Panageas, Anand Systla(2024)「年金のためのPE? 投資家の視点からPEの成績を評価する(Private Equity for Pension Plans? Evaluating Private Equity Performance from an Investor’s Perspective)」NBER Working Paper No. 33194
- 公表:初出 2021年10月(EDHECのセミナー。旧題 “Evaluating Private Equity from an Investor’s Perspective”)、論文の初版 2022年12月(SSRN)。参照した版:NBER WP 2024年11月版。査読:Journal of Financial Economics 184巻(2026年)に掲載(掲載版とSSRN上の改訂版は未確認。数値はWP版)
- データ:米国の州・地方の確定給付型公的年金150本の年次リターン(1995〜2018年)と、Preqinの北米PEファンド1,303本(1995〜2013年設定、手数料控除後のキャッシュフロー)。年金×ファンドの全組合せ170,355件
- 方法:各年金自身のポートフォリオのリターンで割引率を作る評価(確率的割引因子による方法)と、成績の差を年金の属性で説明する回帰。後者は相関の分析で、因果の識別ではない
- 位置づけ:新しい理論ではなく、PMEとその一般化(GPME)を「投資家ごと」に拡張した測定手法の提案と、その実証
PMEは「株 式だけを持つ投資家」のものさしである
PMEは、ファンドへの払込みと分配を同じ日に株価指数で売買したと仮定し、指数の上昇分を機会費用として差し引く。第一著者は以前の論文で、Kaplan and SchoarのPMEが対数効用の投資家の割引因子に当たり、株式の期待上乗せが市場リターンの分散に等しいという制約を暗に置いていると示し、その制約を外したGPMEを提案した1。本論文はさらに一歩進め、割り引きに使うのは「市場」ではなく「その投資家自身のポートフォリオ」であるべきだと論じる。株式以外の資産も持つ投資家にとっては、PEが公正な価格で取引されていても、株価指数で測ったPMEは1から偏りうるからである2。
著者らの第一の指標IPE(Investor Portfolio Equivalent)は、PMEの株価指数を年金自身の累積リターンに置き換えたものだ。対数効用を仮定すると、IPEが正なら、その年金はPEに1ドルを追加すると資産の成長率が上がる。ただしIPEはリスク回避度を1に固定している。債券を多く持つ慎重な年金ほど自分のリターンが低く、リスクの高いPEを甘く評価しやすい3。
そこで第二の指標GIPE(Generalized IPE)では、各年金のリスク回避度を、その年金のリターンが株式市場の超過リターンを正しく価格付けするように推定する。推定値の分布は約5を中心とし、すべての年金で1を上回った4。これは、値動きの小さい自己ポートフォリオを、リスク回避度に応じて「てこ入れ」したもので割り引くことに当たる。論文の仮定(投資機会が一定など)の下で、ポートフォリオ選択に制約がなければ、株式と債券を(借入れも含めて)組み合わせて複製できる投資のGIPEはゼロになり、株式と債券の比率が違う年金でも同じ投資には同じGIPEが付く。同じ条件の下で、GIPEがゼロであることは、年金自身のポートフォリオに対するベータで調整したジェンセンのアルファがゼロであることとほぼ同じだと示されている5。論文は、この指標をゼロにする年率の上乗せをα、IRRとαの差を「リスクの対価」として扱う。
同じデータで、αは年3.1%から−2.7%に変わった
年金とファンドのすべての組合せで平均すると、IPEはコミットメント1ドルあたり0.132ドル、αは年3.1%で、いずれも1%水準で有意だった。ところがリスク回避度を推定したGIPEは−0.029ドルで有意でなく、αは年−2.7%(5%水準で有意)になった。IRRとαの差、つまりリスクの対価は、IPEでは7.6ポイント、GIPEでは13.4ポイントである6。著者らはここから、代表的な年金はPEへの配分を増やしても得をしなかったと読み、リスク回避度を仮定せずに推定することが結論を左右すると述べている7。
戦略によって姿は違う。バイアウトだけがGIPEで正(0.109ドル、1%水準で有意)だったが、αは年0.45%で有意でない。ベンチャーキャピタルはGIPEが−0.131ドル、αが年−5.9%と、ともに有意に負だった8。上場株で同じ資金の出入りをまねる「模倣ファンド」と比べると、市場全体をまねたものに対してはバイアウトだけが有意に上回った(差0.149ドル)。バリュー株をまねたものとの差は0.040ドルで有意でなく、著者らはバイアウトの好成績をバリュー株への傾きと投資先の選択の両方によると解釈する。ベンチャーキャピタルの不振は、上場の小型グロース株の不振でほぼ説明できた9。GIPEは、株価指数を基準にしたGPMEより推定のばらつきが小さく(標準誤差は約4分の1)、ビンテージごとの分布も安定していた10。
選んだファンドの好成績は主にアクセスによると解釈され、選別の腕を示す証拠は得られなかった
年金が実際に投資したファンドは、同じ年に組成された他のファンドより、IRRで年2.2ポイント、αで年2.5ポイント高かった11。これが選別の腕かどうかを見るため、著者らは「以前に投資した運用会社の後続ファンド」に注目する。既存の投資家には通常、次のファンドへの再出資の機会があるので、ここではアクセスの差が成績に混ざらない。その範囲では、投資したことと好成績の結びつきが消えた(追加の差はIRRで−2.7ポイント、αで−2.7ポイント)。著者らは、投資したファンドの好成績は主にアクセスによるものと解釈している12。誰でも出資しやすい初回ファンド209本でも選別の腕を示す結果は見られず、PEへの参入・撤退のタイミングの腕を示す結果もなかった13。
積立不足の年金ほどリスクを取り、αは高くなかった
実際の投資4,741件で年金の属性との関係を見ると、積立比率(数理上の資産÷負債)が1標準偏差高い年金は、IRRが0.55ポイント低くαが0.94ポイント高かった。どちらも単独では有意でないが、その差であるリスクの対価への係数は−7.8で、1%水準で有意だった14。表1の4行目は、この係数を1標準偏差分に換算した値だ。地元州の運用会社のファンドは、IRRが2.1ポイント、αが1.6ポイント低く、リスクの対価には有意な差がなかった(不動産は例外)15。理事会に州の職務上の理事や任命された一般人が多い年金はリスクの高いファンドを選びαが低い傾向があったが、推定のばらつきは大きい16。著者らは、これらを積立不足の年金による「起死回生の賭け」や政治的な影響といったエージェンシー問題と広く整合的だと解釈している17。
表1 ファンドの好成績は腕か、アクセスか、リスクか(研究の推定)
表は横にスクロールできます →
| 要因 | IRR | α | IRR−α(リスク補償) |
|---|---|---|---|
| 投資したファンド(同年組成の非投資ファンドとの差) | +2.2*** | +2.5*** | — |
| うち既存関係の運用会社の後続ファンド(追加の差) | −2.7* | −2.7* | — |
| 地元州の運用会社のファンド | −2.1** | −1.6* | −0.5(有意でない) |
| 積立比率が1標準偏差(0.19)高い | −0.55(有意でない) | +0.94(有意でない) | −1.5*** |
どこまで持ち出せるか:標本、仮定、版の違い
結果は、米国の州・地方の公的年金と北米のPEファンド(1995〜2013年設定、キャッシュフローは2018年6月まで)から得られた過去の実現値である。報告NAVの古さや操作の問題を避けるためキャッシュフローを中心に評価し、未清算のファンドは最終NAVを分配とみなしている18。積立比率は数理上の値で、負債を資産の期待リターンで割り引くため実態より高い。著者らは、国債利回りで割り引けば平均でほぼ半分になるが、年金間の順位はほとんど変わらないと説明する19。同じファンドでも投資家ごとに手数料が違う点は、データの制約で分析できていない20。
版による数値の違いにも注意がいる。2024年6月の会議版では年金138本・平均IPE 0.128だったが、NBER版では150本・0.132に更新された21。本記事は掲載版もSSRN上の改訂版も読んでおらず、数値はさらに変わっている可能性がある。2023年の学会では、討論者がIPEは上場資産で複製できる投資でも正になりうると指摘しており、これがGIPEを主指標に置く理由の一つになっている22。
アクセスの結論は先行研究とも整合する。Sensoy, Wang and Weisbachは、1991〜98年に大学基金が好成績を上げたのは主にトップのベンチャーキャピタルへのアクセスによるもので、1999〜2006年には投資家の種類による差が消え、初回ファンドの選別にも優位がなかったと報告している23。一方、年金の属性と成績の関係は回帰による相関であり、積立不足がリスクを取らせたという因果を示したものではない。
大手町プレップの考察:ものさしは「自 分のリスク許容度の宣言」である
以下は編集部の推論である。この研究の実務上の含意は、PEの評価指標の選択が、投資家自身の姿を前提として置く行為だという点にある。株価指数で測るPMEは「この投資家は株式市場そのものを持っている」と仮定する。年金自身のリターンで測るIPEは「この年金の資産配分は正しい」と仮定する。GIPEは、その資産配分から読み取れるリスク許容度までを使う。どれを使うかで、同じキャッシュフローが良くも悪くも見える。
問いにある「負債との対比」について、論文は負債を直接のものさしにはしていない。付録の理論モデルでは、年金が加入者の効用に沿った資産配分を取れば、均衡では資産の動きが負債の動きと一致するとしている24。編集部の見方では、これは「負債に合わせた配分が先にあり、PEはその配分を基準に測る」という順序を示している。積立不足や予定利率との差を、PEの高いIRRで埋めようとする発想は、研究が見つけた「積立不足の年金ほどリスクの対価が大きい」という関係と同じ方向を向いている。
もう一つは、アクセスの価値をどう扱うかである。好成績の運用会社と関係があること自体は資産であり、再出資の判断と、新しい運用会社を選ぶ判断とでは、問われる能力が違う。両者を一つの「選定実績」にまとめて報告すると、選別の腕を過大に見積もりやすい(仮説)。
日本の実務への応用:円建てIRRと「伝 統的資産対比」のあいだ
GPIFは第5期中期計画(2025〜29年度)で、オルタナティブ投資を資産全体の5%を上限とし、超過収益の安定的確保の観点から検証を続けるとしている25。オルタナティブは独立した資産区分にせず、リスク・リターンの特性に応じて国内外の債券・株式の4資産の中で管理する26。2025年3月末のPEは時価8,657億円、投資開始以来のIRRは円建てで15.24%だった。ただし海外の米ドル建て資産では、ドル建て8.48%に対し円換算は15.64%で、差は7.2ポイント27。GPIFは、国内PEで公正価値評価が進めば上場株式対比の超過収益の測定に役立つとし、伝統的資産対比の超過収益をオルタナティブに求めると述べている28。2026年7月21日の日本成長戦略と同日公表の金融戦略は、GPIFに、投資件数・金額・割合・収益率等に基づく毎年度の多角的な自己評価と、投資確約額が5%上限に近づくまでに4資産の内枠管理の是非や新たな上限水準を検討することを求めている29。
ここに研究の視点を重ねると、確かめるべき点が具体的になる(編集部の推論)。第一に、為替の扱いである。上の7.2ポイントは同じ資産の米ドル建てと円換算のIRRの差で、資料は要因を分解しておらず、本記事も為替の寄与の推計値としては扱わない。年金自身のポートフォリオも外国資産を通じて為替の影響を受けるので、PEと基準を同じ通貨で評価し、自己ポートフォリオと比べた後に為替の影響がどの程度残るかを確かめる。第二に、4資産の内枠で管理するなら、PEの比較対象は「どの資産の代わりに持っているか」で決まる。外国株式の代わりなら外国株式の指数、債券の代わりなら債券という比べ方は、IPEの考え方とは違い、年金全体のリスク許容度を使っていない。第三に、企業年金や金融法人のLPでは、積立状況や収益目標がPEの選び方に影響していないかを、IRRとリスクの対価に分けて点検する価値がある(LP側の配分とファンド選定の流れはLP
学習用の設例:同じファンドをものさしを替えて測る
学習用の設例(架空)
- ファンドF:コミットメント100に対し、0〜2年目に40・35・25を払い込み、3〜6年目に12・34・44・54を受け取る(最終年は残余NAVを含む)。TVPI 1.44倍、IRR 9.3%
- 株価指数(配当込み)の年リターン:14%、−6%、16%、11%、7%、9%(6年間の年率8.3%)
- 年金Aのポートフォリオの年リターン:9%、−1%、10%、8%、5%、6%(年率6.1%)。無リスク金利は年1.5%
- てこ入れ版:年金Aの各年の超過リターンを1.8倍にしたもの(年率9.7%)。論文のGIPEの推定法ではなく、考え方を1本の経路で見せる簡略化
表2は、同じキャッシュフローを三つのものさしで割り引いた結果である。株価指数で割り引くと正味現在価値は3.6、年率αは0.9%で、わずかに株式を上回った。年金Aのポートフォリオで割り引くと11.9(α 2.9%)と見栄えが良くなる。年金Aのリターンが株式より低いからである。しかし値動きの小さい自己ポートフォリオを1.8倍にてこ入れして割り引くと−1.9(α −0.5%)となり、評価は逆転した。研究のIPEとGIPEの差は、この向きの差である。
表2 設例:同じファンドを3つのものさしで割り引く
表は横にスクロールできます →
| ものさし | 期間の年率 | 正味現在価値 | 年率α |
|---|---|---|---|
| 株価指数(PMEに相当) | 8.3% | 3.6 | 0.9% |
| 年金A自身のポートフォリオ(IPEに相当) | 6.1% | 11.9 | 2.9% |
| 年金Aのポートフォリオを1.8倍にてこ入れ(GIPEの考え方の簡略版) | 9.7% | −1.9 | −0.5% |
次に、IRRの高さを二つの部分に分ける。必要リターンを「無リスク金利+年金自身のポートフォリオに対するβ×その期待超過リターン(4.0%)」とし、残りをαとみなす。積立比率の高い年金AはIRR 11.0%のファンドをβ1.6で持ち、αは3.1%。積立不足の年金BはIRR 13.5%と2.5ポイント高いが、βが2.6と大きいため、αは1.6%にとどまる(図2)。年金BのIRRを据え置いたままβが3.00を超えると、αは負になる。
明日から使える確認項目
- 実績報告に、IRR・TVPIとPMEに加えて「自分たちのポートフォリオのリターンで割り引いた値」を並べさせる。株価指数を基準にしたPMEとの差が大きいときは、どちらの前提が自分たちの資産配分に近いかを運用委員会で確認する。
- まずIPE型の評価を作る。ファンドの四半期または年次の資金の出入りと自己ポートフォリオのリターンを同じ日付で並べ、表2の要領で割り引く。割り引いた後の系列の内部収益率は、NPV・IRR・XIRR関数のXIRRで求められる。ただし、これで得られるのはIPE型の評価である。βで説明できる部分とαへの分解や、論文のGIPEと同様のリスク調整には、リスク回避度と割引因子の推定が別に要る。
- 海外PEは、ファンドの通貨建てと円建ての両方のIRRを確認し、比較の基準(自己ポートフォリオ・指数)と同じ通貨で評価しているかを確かめる。
- 「選定実績」を、既存の運用会社への再出資と、新規の運用会社への出資に分けて記録する。新規の側でも同年組成の他ファンドを上回っているかが、選別の腕の目安になる。
- 積立状況や予定利率との差が、PEの選び方に影響していないかを問う。運用委員会での質問の例は「この候補ファンドのIRRの上乗せのうち、βの大きさで説明できるのは何ポイントか」である。
よくある質問
PMEはもう使わないほうがよいのですか。
そうではありません。PMEは計算が簡単で、他の投資家と比べやすい指標です。研究が示したのは、PMEが
日本の年金でもバイアウトは有利と言えますか。
言えません。研究は米国の公的年金と北米のファンド
まとめ
PEの超過収益は、何で割り引くかによって正にも負にもなる。米国の公的年金を対象にした研究では、年金自身のポートフォリオを基準にしたIPEのαは年3.1%だったが、リスク回避度を推定したGIPEでは年−2.7%で、代表的な年金は配分を増やしても得をしなかった。選んだファンドの好成績は主にアクセスによると解釈され、選別の腕を示す証拠は得られなかった。積立不足の年金ほど高いIRRをリスクの上乗せで得ていた。日本の年金・機関投資家にとっての出発点は、IRRを「リスクの対価」と「α」に分け、自分たちの資産配分と同じ通貨・同じ前提で比べることである。
脚注
- R2(NBER WP 版, 2013年8月)PDF p.4(第1節)。Kaplan and Schoar(2005)の PME は対数効用の確率的割引因子による評価の特殊例で、株式の期待上乗せが市場リターンの分散に等しいと暗に仮定する、という整理。R1 PDF p.6 も本論文の指標を PME と GPME の延長に位置づける。↩
- R1(NBER WP 版, 2024年11月)PDF p.11〜12(第1.2節・脚注7)。株式市場以外にも正の供給の資産(PE を含む)がある場合、すべての資産が公正に価格付けされていても PME は1から偏る、という著者らの主張(Gârleanu and Panageas の未公刊論文に依拠)。↩
- R1 PDF p.3〜4(序論)、p.10〜11(第1.2節・式6・命題1)。IPE は PE の正味キャッシュフローを投資家自身のポートフォリオの累積リターンの逆数で割り引いた合計。 リスク回避度1の前提と、債券を多く持つリスク回避的な投資家ほど同じPEのIPEが高くなる点は PDF p.12。↩
- R1 PDF p.28〜29(式14・図4)。各年金のリスク回避度γは、その年金の年次リターンで CRSP 時価加重市場の超過リターンを価格付けするよう推定。1本(約35)を除き10未満で、外れ値を除いても結果は大きく変わらない(p.28 脚注18)。↩
- R1 PDF p.4(序論)、p.13〜14(第1.3節・命題2・命題3・式10)。リスク補償=β×(投資家のポートフォリオの期待超過リターン)がリスク回避度に依存しないため、株式・債券の比率が違う投資家も同じ GIPE を付ける(命題2の仮定〔投資機会が一定、無リスク債券の保有が内点解〕に加え、ポートフォリオ選択に制約がない場合。p.13)。↩
- R1 PDF p.24〜26(第3.1〜3.2節)・p.26 表3(パネルA・B、全ファンドの列)。標準誤差は年金とビンテージで二重クラスタ。IRR が計算できない0.5%未満の組合せは−100%とした(除いても結論は同じ。付録 C.2、PDF p.54〜55)。↩
- R1 PDF p.5(序論)、p.28(第3.2節)、p.41(結論)。著者らの解釈。↩
- R1 PDF p.26 表3パネルB(バイアウト・VC・不動産の列)、p.28。不動産の GIPE は−0.102で有意でなく、αは年−2.853%。本文 p.28 は「10%水準でわずかに有意」と記載するが、表3(p.26)では標準誤差1.796で星印がなく、原典内の表示が一致しない(図1では†で示した)。↩
- R1 PDF p.29〜31(第3.2節)・表3パネルB。市場模倣ファンド自体の GIPE は−0.043(5%水準)。バイアウトのバリュー模倣ファンドの GIPE は0.069(有意でない)。小型グロース模倣の GIPE は全戦略で−0.213〜−0.259(1%水準)、VC の対小型グロース模倣は0.128(5%水準)。バリュー・小型グロースは Kenneth French のデータの五分位(p.31 脚注21)。↩
- R1 PDF p.29(第3.2節)・図5(p.30)。GIPE−GPME は全体で0.093(有意でない)。↩
- R1 PDF p.33 表4パネルA 列1・2、p.34。年金固定効果を入れると IRR 2.306・α 2.098(同表パネルB)。↩
- R1 PDF p.33 表4(Relationship×Commit の係数、10%水準)、p.34(“driven by access, not skill” は “This suggests” を伴う著者らの解釈)。再出資の機会があるためアクセスが成績に混ざらないという識別の考え方は Lerner, Schoar and Wongsunwai(2007)に依拠(p.34)。↩
- R1 PDF p.55(付録 C.3)・p.61 表C.6(初回ファンド209本。投資の係数は約半数が負で、有意は10%水準の1つ)、p.34(年金固定効果を入れると Active の係数がほぼゼロで、著者らはタイミングの腕がないことを示唆すると記述)。↩
- R1 PDF p.36(第4.2節。1標準偏差で IRR −0.55ポイント・α +0.94ポイント)、p.37 表5 列1・2(係数 −2.908・4.937)、p.39〜40 表6 列2(IRR−α への係数 −7.844、1%水準。理事会の変数を含まない列1は −6.190、1%水準)。表1の IRR−α の1標準偏差分は、係数×0.19(全標本の標準偏差、表2)として大手町プレップが計算。↩
- R1 PDF p.35〜36、p.37 表5 列1・2(地元州 IRR −2.089 は5%水準、α −1.607 は10%水準)、p.40 表6 列2(−0.483、有意でない)。不動産は地元のほうがリスクが低い(p.36・p.39)。↩
- R1 PDF p.36〜39、表5・表6。点推定は経済的に意味のある大きさだが、統計的に有意なのは一部の戦略に限られる(著者ら自身が “noisy” と記述、p.39)。株式比率が高い年金は IRR(−17.032、5%水準)も α(−25.161、1%水準)も低い(表5)。↩
- R1 PDF p.6(序論)、p.41(結論)。著者らの解釈で、エージェンシー問題を直接識別したものではない。↩
- R1 PDF p.8(第1節。NAV の古さと操作)、p.18〜23(第2節。年金の CAFR データ、Preqin の北米ファンド、コミットメント500万ドル以上、1995〜2013年設定、キャッシュフローは2018年6月まで)。↩
- R1 PDF p.36 脚注23。Novy-Marx and Rauh(2009)の州別推計に基づき、国債利回りで割り引いた積立比率と数理上の積立比率の回帰の R² は92.8%。↩
- R1 PDF p.35 脚注22。投資家間の手数料の違い(Begenau and Siriwardane 2024)は、全投資家のキャッシュフローがそろわないため GIPE では分析できない。↩
- R1 の会議版(NBER–PeRCent Pension Finance 会議、2024年6月11日)PDF p.16(年金の最終標本138本。同 p.17 の表2は139本と記載し、会議版内で不一致)・p.22(平均 IPE 0.128)。会議日は NBER の会議ページで2024年6月11日(コペンハーゲン)と、NBER 版 PDF p.18・p.24(150本、0.132)。学術誌(Journal of Financial Economics 184巻、2026年)の掲載版は未読。↩
- R4(Citrus Finance Conference 2023 の討論スライド)p.6。↩
- R3(NBER WP 版, 2013年2月)PDF p.2(要旨)、p.4〜6(序論)。14,380件・1,852LP・1,250ファンド(1991〜2006年設定)の分析。↩
- R1 PDF p.12(第1.3節)・p.52〜53(付録B)。重複世代モデルで、年金が加入者の効用に沿った資産配分を取り、拠出率と年金額を適切に定めれば、均衡で資産の動きが負債の動きと一致するという理論上の結果(労働分配率一定などの仮定つき)。↩
- R5 p.2(年金積立金管理運用独立行政法人「オルタナティブ投資の取組推進状況」2026年4月2日、内閣官房の会議の資料3)。↩
- R6(GPIF「基本ポートフォリオの考え方」。第5期中期目標期間の基本ポートフォリオは2025年4月1日から適用)。↩
- R5 p.5(2025年3月末時点)。PE のコミットメント額は1兆5,764億円。海外資産の円換算 IRR は米ドル建て資産を円換算して算出(同資料の注記)。資料は米ドル建てと円換算の差(15.64%−8.48%)を要因分解しておらず、本記事はこの差を為替の寄与の推計値として扱わない。↩
- R5 p.11(日本企業に投資するPEファンドへの期待)。↩
- R7 p.1〜2(厚生労働省 社会保障審議会資金運用部会 参考資料9、2026年7月27日。日本成長戦略(2026年7月21日閣議決定)と、内閣官房「成長投資を促進するための金融戦略」(同日公表)の抜粋)。↩
参考文献(2 026年10月確認)
- R1 Korteweg, A., S. Panageas and A. Systla (2024), “Private Equity for Pension Plans? Evaluating Private Equity Performance from an Investor’s Perspective,” NBER Working Paper No. 33194. DOI: 10.3386/w33194. 学術誌版:Journal of Financial Economics 184 (2026), 104336. DOI: 10.1016/j.jfineco.2026.104336. 初出:EDHEC のセミナー発表(2021年10月14日、旧題 “Evaluating Private Equity from an Investor’s Perspective”)。論文の初版:SSRN 4300673(2022年12月)。参照した版:NBER WP 版(2024年11月)。会議版(2024年6月)を版の違いの確認に使用。査読:学術誌掲載済み(記事が根拠にしたのは査読前の WP 版。掲載版と SSRN 上の改訂版は未読)。 nber.org (参照箇所:NBER 版 PDF p.1〜42(本文)、p.46〜61(付録 A〜C)。脚注2〜21・24の根拠。会議版:https://conference.nber.org/conf_papers/f197688/f197688.pdf。閲覧日:2026年10月)
- R2 Korteweg, A. and S. Nagel (2016), “Risk-Adjusting the Returns to Venture Capital,” Journal of Finance 71(3), 1437–1470. NBER Working Paper No. 19347(DOI: 10.3386/w19347). 参照した版:NBER WP 版(2013年8月)。査読:済(学術誌版)。 nber.org (参照箇所:PDF p.2〜4(要旨・第1節)。脚注1の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R3 Sensoy, B. A., Y. Wang and M. S. Weisbach (2014), “Limited Partner Performance and the Maturing of the Private Equity Industry,” Journal of Financial Economics 112(3), 320–343. DOI: 10.1016/j.jfineco.2014.02.006. NBER Working Paper No. 18793. 参照した版:NBER WP 版(2013年2月)。査読:済(学術誌版)。 nber.org (参照箇所:PDF p.2(要旨)、p.4〜6(序論)。脚注23の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R4 Wang, X. (2023), Discussion of “Private Equity for Pension Plans? Evaluating PE Performance from an Investor’s Perspective,” Citrus Finance Conference 2023(UC Riverside)の討論スライド。 business.ucr.edu (参照箇所:p.5〜7。脚注22の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R5 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)「オルタナティブ投資の取組推進状況」(2026年4月2日、内閣官房「成長投資を促進するための金融戦略」に係る会議 第3回 資料3) cas.go.jp (参照箇所:p.2・p.5・p.11。脚注25・27・28の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R6 年金積立金管理運用独立行政法人
(G PIF)「基 本ポートフォリオの考え方」 gpif.go.jp (参照箇所:第5期中期目標期間の基本ポートフォリオとオルタナティブ資産の扱い。脚注26の根拠。閲覧日:2026年10月) - R7 厚生労働省 社会保障審議会資金運用部会(第31回、2026年7月27日)参考資料9「日本成長戦略・成長投資を促進するための金融戦略(抜粋)」 mhlw.go.jp (参照箇所:p.1〜2。脚注29の根拠。閲覧日:2026年10月)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。