この記事で分かること
- 米国の家計調査(SCF)で非上場企業のリターンを測り直した研究では、1989〜2022年の多くの期間で上場企業のリターンが上回り、非上場が上回ったのは主に2000年代だったこと
- 非上場の「利回り」は、利益に混ざる経営者本人の労働の対価をどう除くかで数倍変わり、それがリターン比較の結論を左右すること
- 日本のオーナー企業の評価・事業承継・PEの価格交渉で、役員報酬を市場水準に置き直してから利回りを比べる手順(学習用の設例。研究の検証結果ではない)
想定読者:事業承継やM&A仲介でオーナー企業の株価を扱うFAS・仲介・PEの担当者、オーナー経営者の資産を扱うプライベートバンカー、非上場株式の評価に関わる税理士・会計士
前提知識:株式価値と企業価値の違い、PER(株価収益率)の考え方。リターンの分け方は本文で説明する
事業承継の初回面談で、オーナーが「うちは毎年1億円の利益が出ている。10億円なら利回り10%で、上場株より良い投資だ」と言うことがある。この計算には二つの前提が隠れている。1億円の利益にオーナー本人の働きの対価がどれだけ含まれているか、そして10億円という価値がどこから来たのかである。
非上場企業は売りたいときに売れず、オーナーの資産は1社に集中している。理屈の上では、その分だけ上場株より高いリターンで報われるはずだ。では実際にはどうだったのか。米国の家計の非上場事業を30年分集計し直した研究を手がかりに、この問いと、日本の実務で利回りを測り直す方法を考える。
この記事が主に参照する研究
Jesse Bricker、Kevin B. Moore、Alice H. Volz(2025)「非上場企業と上場企業の収益率(Rates of return on private and public businesses)」Finance and Economics Discussion Series 2025-107
- 公表:初版は2021年2月の前身稿(別題、ECINEQのワーキングペーパー)。参照した版:FRBのワーキングペーパー(2025年12月掲載、本文の日付は2025年11月25日)。査読:未査読(WP)
- データ:米国の家計調査SCF(3年ごと、1989〜2022年の12回)で所有者が答えた非上場事業の利益・売上・評価額と、上場企業のCRSP/Compustat
- 方法:調査データを税務統計の集計や評価倍率と照合したうえで、利益利回りと評価益を分けてリターンを計算する記述的な比較(因果の識別ではない)
- 位置づけ:2002年に提起された論点を、新しい計算方法と2010年以降のデータで検証し直したもの1
「非 上場は報われるはず」という理論と、20年来の謎
非上場企業の株式は、流動性が低く、持ち主の資産に占める割合が大きく分散が効かず、経営には技能と労力が要る。論文は、こうした理由から非上場企業には上場企業を上回るリターンの上乗せがあるはずだと書く。考え方は流動性プレミアムと同じである2。
ところが、Moskowitz and Vissing-Jorgensen(2002)は1989〜1998年のSCFなどを使い、非上場株式の平均リターンは上場株式の市場全体を上回らないと報告した。非上場株式の約75%は、それが純資産の半分以上を占める家計が持っており、集中投資のリスクに見合う上乗せが見当たらない。これが「private equity premium puzzle」と呼ばれる謎である。ここでの private equity は家計が持つ非上場企業の株式全体を指し、PEファンドの投資ではない。同論文によれば、VCは非上場株式市場全体の1%に満たない3。
リターンは二つに分けて考える。一つは利益を評価額で割った利益利回りで、上場株でいえば益利回りに当たる。もう一つは評価額の増減によるキャピタルゲイン利回り(評価益)である。参照研究は、3年ごとの調査の間の評価額の変化を年率にし、利益利回りに足してリターンとする。SCFは同じ家計を追跡するパネル調査ではなく横断面の調査なので、同じ企業を追いかけた値ではなく、調査年ごとの集計どうしの比較になる4。
第一の結果:利益利回りは「経 営者の給料」の扱いで数倍変わる
非上場企業の利益には、経営者本人の労働の対価が混ざる。米国の非上場企業はほぼすべてがパス・スルー課税の事業体で、所有者は税率の差から、給与よりも事業の利益として受け取る誘因がある。上場企業の利益は、経営者の給与を払った後の資本の取り分である。そのまま比べると、非上場の利回りを大きく見積もることになる5。
論文は外部の推計を借りて労働分を除いた。Smith et al.(2019)はパス・スルー事業の所得のうち資本所得を25%とみる。Saez and Zucman(2020)は小企業で25%、大企業で75%を資本所得とみて、全体で約50%を労働に分類する6。
図1のとおり、2022年の調査では、労働分を除かない非上場の利益利回りは12.6%だが、Saez-Zucman方式で除くと2.6%、MVJ方式でも5.4%になる。除く前は除いた後の約2.3〜4.8倍で、上場企業(Compustat)の6.9%との上下まで入れ替わる(倍率は編集部の計算)7。労働分を除いた後の水準も方式と調査年で異なり、表1ではSaez-Zucman方式が2.6〜7.5%、Smith et al.方式が2.6〜5.9%、MVJ方式が5.4〜17.2%の範囲にある(範囲は編集部が表から読み取った)。論文は、労働分を除いた非上場と上場の差は概して小さいが、多くの年で上場の方が大きいと書く。表の値で数えると、Saez-Zucman方式の非上場を上場が上回ったのは12回の調査のうち9回だった(編集部の集計)8。著者らは、労働分を全く除かない推計は非上場のリターンの上限とみるべきだとしている9。
評価益だけで比べても、上場が多くの期間で上回った
利益は測り方の選択に左右され、税務上の過少申告の問題もある。論文は、リターン全体の水準と形は評価益だけからほぼ読み取れるとして、評価額だけの比較が最もきれいな比較かもしれないと述べる10。
図2は、3年ごとの評価益の年率を並べたものだ。1995〜1998年は非上場10.5%に対し上場28.8%、2019〜2022年も13.0%対21.1%と、上場が大きく上回った。逆に2001〜2004年(6.5%対−4.8%)や2007〜2010年(−6.2%対−8.6%)は非上場が上だった。11期間のうち上場が上回ったのは7期間で、各期間の年率の単純平均は非上場6.9%、上場9.9%となる。ただし件数と平均は編集部の計算で、論文は差の統計的な検定を示していない11。
利益利回りと評価益を足した合計リターンでも、論文は多くの調査年で上場が上回ったとし、2002年の謎を支持する結果とみる。期間で分けると、2001年以前は上場が、2001〜2010年は非上場が上回った。2013〜2022年は上場が上回る傾向だが差はごく小さく、通常の統計的な意味で差がない可能性があると著者ら自身が書いている。元のMoskowitz and Vissing-Jorgensenの計算方法で再現すると、金融危機後は上場と非上場が交互に上回った12。
著者らは、30年余りを通してみると、目立つのは上場の異常な低リターンが続いた2001〜2010年の方だと解釈する。金融危機後の低金利が上場企業のリターンを押し上げた可能性にも触れている。結論は「金融危機前の数年を除き、過去30年は上場の全体リターンが概ね非上場を上回った」である13。
自己申告のデータは信頼できるか:検証と反対の研究
この研究の大半は、データの信頼性の検証に充てられている。SCFで所有者が答えた売上の集計は、米国の税務統計(IRSの事業統計)の集計と水準・推移が近く、税務統計の値は常にSCFの95%信頼区間に入った。利益も、事業の利益に配当・利子・譲渡益などを加えた広い定義の税務集計とよく合った14。評価額は、業態別の売上倍率と利益倍率で予測した値と集計で近かった。上場企業の倍率で予測すると多くの年で自己申告より大きく、景気に敏感に動いた15。
反対の立場もある。Bhandari et al.(2020)は、調査データの事業所得・売上・所有者数に行政データとの大きな不一致があるとし、調査に基づく推計は慎重に扱うべきだと結論した。参照研究は、狭い利益の定義と比べたことが食い違いの原因だと反論している16。Kartashova(2011)は、1990年代の上場の高リターン期を越えると謎は頑健でなく、1999〜2007年と1989〜2007年全体では非上場の平均リターンが上場を上回ると報告した17。参照研究の結果は、どの期間と計算方法を選ぶかで答えが変わるという、この論争の性質をそのまま示している。
適用範囲も押さえておきたい。対象は米国の家計が持つ非上場事業の集計値で、個社のリターンの分布やファンド経由の投資は扱っていない。SCFは小標本で、業態別に分けると推計がぶれやすく、入れ子になった複雑な所有構造を捉える設計でもない。最富裕層(Forbes 400)は標本に入らない18。
大手町プレップの考察:差は何で生じているのか
ここからは編集部の見方である。参照研究は差の原因を因果的に特定していないが、結果を読むと、差を生む要素は三つに分けられると考えられる。
一つ目は測り方である。経営者の労働の対価をどこまで除くか、利益にどの所得を含めるかで、利回りは数倍変わった。研究上の論争の多くはこの点をめぐるもので、実務の評価でも同じことが起きる。二つ目は期間である。1990年代後半の上場株の上昇と2000年代の低迷のどちらを含めるかで、勝ち負けが入れ替わった。三つ目は、測られていない便益である。Moskowitz and Vissing-Jorgensen(2002)は、経営者でいることの非金銭的な便益、大成功の可能性を好む選好(歪度の選好)、生き残る確率の過大評価が、低いリターンでも非上場に投資する説明になりうると簡単に論じた。これは検証された結論ではない19。
実務への示唆として、編集部は次のように整理する(仮説)。非上場株式の割引率にサイズプレミアムや流動性の上乗せを足すのは「投資家が要求するリターン」を表す操作であり、オーナーが実際に上場株より高いリターンを得てきた証拠にはならない。要求と実現を同じものとして説明しないことが、評価書や交渉の場での説明の誠実さにつながる。
日本の非上場株式の評価・事業承継・PEへの当てはめ
日本に持ち込むときは、経営者の報酬の扱いが米国と逆向きになりうる点に注意が要る。米国の研究が対象としたのは、利益の中に労働の対価が残りやすいパス・スルー型の事業体だった。日本の株式会社では、オーナー社長の報酬は役員給与として支払われ、定期同額給与などは法人税の損金に算入される(不相当に高額な部分は損金にならない)20。このため決算の利益は、報酬を多く取れば小さく、少なく取れば大きくなる。参照研究では、非上場の法人と非法人のリターンは概ね同程度だったが、これは米国の結果である21。
相続・贈与の評価では、類似業種比準方式が上場の標本会社の株価と、1株当たりの配当・利益・純資産を比べて価額を出し、大会社0.7・中会社0.6・小会社0.5の斟酌率を掛ける。利益は法人税の課税所得を基にするので、損金に算入された役員報酬の額は、課税所得を通じて比準の利益要素に影響する(不相当に高額な部分は損金にならない)22。税務上の評価は目的の決まった約束事であり、オーナーが得てきたリターンの水準を示すものではない。参照研究もこの方式を検証していない。
PEによる事業承継バイアウトの価格交渉でも、売り手の希望価格と買い手の算定の差の一因が、報酬の扱いの違いにある場合があると編集部は考える(研究で検証された事実ではない)。参照研究が示したのは、所有者の自己申告の評価額が集計では倍率による予測と整合したことであり、個々のオーナーの評価が正確だということではない。
学習用の設例:オーナー企業X社の利回りを測り直す
学習用の設例(架空)
- X社は製造業のオーナー企業。オーナー社長の役員報酬は年20百万円、報酬を払った後の税引前利益は80百万円
- 同じ職務を外部から招いた経営者に任せる場合の報酬(市場水準)を35百万円と仮定する
- オーナーは株式価値を1,000百万円と考えている。利回りはこの株式価値に対して計算する(有利子負債は考えない)
- 比較のため、上場の類似会社の税引前利益÷時価総額を7.0%と仮定する。税・社会保険料の影響は無視する
決算の利益で計算すると、X社の利回りは80÷1,000で8.0%となり、類似会社の7.0%を上回る。しかし報酬は市場水準より15百万円低い。市場水準の報酬を払ったとすると税引前利益は65百万円、利回りは6.5%に下がり、類似会社を下回る。類似会社と同じ7.0%の利回りで逆算した株式価値は約929百万円で、オーナーの考える価値との差は約71百万円になる。
図3のBは逆のケースで、同じ会社でも報酬を60百万円取っていれば決算の利益は40百万円、利回りは4.0%と低く見える。Cは報酬を払わず利益に労働の対価が残る、米国のパス・スルー型に近い見え方で、利回りは10.0%になる。三つのケースは、正常化すればどれも6.5%にそろう。研究で労働分の除き方によって利回りが数倍変わったのと同じ構造が、1社の決算でも起きる。
表1 設例:役員報酬のずれが「利回り」に与える影響
表は横にスクロールできます →
| 報酬−市場水準 | 株式価値800 | 株式価値1,000 | 株式価値1,200 |
|---|---|---|---|
| −20百万円 | 10.6% | 8.5% | 7.1% |
| −10百万円 | 9.4% | 7.5% | 6.3% |
| 0(市場水準) | 8.1% | 6.5% | 5.4% |
| +10百万円 | 6.9% | 5.5% | 4.6% |
| +20百万円 | 5.6% | 4.5% | 3.8% |
| +30百万円 | 4.4% | 3.5% | 2.9% |
| 正常化後(全行共通) | 8.1% | 6.5% | 5.4% |
表1は、報酬のずれと株式価値の想定を動かしたときの、決算の利益による利回りである。株式価値1,000百万円の列では、報酬が市場水準より20百万円低いだけで、利回りは正常化後より2.0%ポイント高く見える。比べるべきは最下行の正常化後の利回りで、ずれの行をいくら読んでも会社の稼ぐ力は変わらない。
明日から使える確認項目と手順
- オーナー企業の「利回り」や倍率を話す前に、役員報酬・親族への給与・役員社宅などを、同じ職務を外部の人に任せた場合の水準に置き直す。正常収益力の調整の一部として、市場水準の根拠(同業の役員報酬の調査、採用時の提示額など)を評価メモに残す。
- 売り手に「その利益から、社長の代わりを雇う費用を引くといくらになりますか」と質問する。答えの数字と根拠が、価格交渉の出発点になる。
- 利回りを上場の類似会社と比べるときは、分子(税引前利益か純利益か)と分母(株式価値か企業価値か)の定義をそろえる。参照研究も上場側を税引前利益で計算している。
- 非上場株式の割引率に流動性やサイズの上乗せを置くとき、あるいは非流動性ディスカウントを差し引くときは、それが要求リターンや価格の仮定であることを明記する。「非上場は上場より高いリターンを生んできた」とは書かない。米国の研究では多くの期間で逆だった。
- 過去の価値の伸びを説明に使うときは、期間を明示し、1期間の結果で一般化しない。研究では期間の取り方で上場と非上場の勝ち負けが入れ替わった。
よくある質問
この研究は、PEファンドのリターンが上場株に劣ることを示していますか。
示していません。対象は米国の家計が直接持つ非上場事業の株式全体で、PEファンドやVCを通じた投資ではありません。ファンドのリターンの評価には、別の研究とデータが必要です。
日本のオーナー企業も上場株よりリターンが低いと言えますか。
言えません。研究は米国のデータで、日本の非上場企業については検証していません。日本では報酬の受け取り方や税制が異なるため、まず個社の利益を正常化して比べる必要があります。
まとめ
Bricker, Moore and Volzは、米国の家計調査の自己申告データを税務統計や評価倍率と照合したうえで、1989〜2022年の多くの期間で上場企業のリターンが非上場を上回り、非上場が上回ったのは主に2000年代だったと報告した。非上場の利益利回りは、経営者の労働の対価をどう除くかで数倍変わり、それが論争の大きな部分を占めている。2013年以降の差は小さく、統計的に差がない可能性もある。日本の実務に持ち帰れるのは、オーナー企業の利回りを役員報酬の正常化の後で測り、要求リターンと実現リターンを区別して説明するという手順である。
脚注
- R1(FEDS 2025-107。FRB の掲載は2025年12月、PDF 本文の日付は2025年11月25日、42ページ)。ページは PDF の物理ページで、p.1 は FEDS の表紙、p.2 が論文の表紙と要旨(以下同じ)。初出は同じ3名・同じ SCF データによる前身稿 R5(”Private business wealth and rates of return in the U.S.”、ECINEQ LSE Working Paper 218、表紙の日付2021年2月)。2022年6月の NBER 会議用の草稿もあるが、引用不可の表示があるため数値は使っていない。学術誌への掲載は確認できなかった(Crossref、2026年10月)。SCF が3年ごとの横断面調査で富裕層を過剰抽出する設計であることは R1 p.6、調査年(1989〜2022年の12回)は R1 付録の表1(p.37)。↩
- R1 p.3(1節)。流動性の相対的な低さ、家計のポートフォリオでの分散の欠如、経営に必要な技能と注意を理由に、非上場企業にはリターンの上乗せがあるはずだとし、先行研究は逆に上場を下回る謎を示し、その後の証拠は割れていると整理している。↩
- R2(Moskowitz and Vissing-Jorgensen, NBER WP 8876, 2002年4月)p.2(要旨)・p.3(序論・脚注1)。1989〜1998年の SCF などで、非上場株式の平均リターンは上場株式の市場全体と同程度で上回らない。非上場株式の約75%は、それが純資産の少なくとも半分を占める家計が保有。VC は非上場株式市場全体の1%未満(同論文が引く Fenn et al. の数値と著者の推計による)。掲載誌版は American Economic Review 92(4): 745–778(2002年。本文は WP 版で確認)。↩
- R1 p.19〜20(4節・式2・式3)。利益利回りは利益を評価額で割った値、評価益は調査年の間の評価額の変化を3年の幾何平均で年率にした値で、両者を足す方法は Bhandari et al.(2020b)の提案による。図4の注(p.21)によれば、1989〜1992年の評価益は1992年として表示される。SCF が横断面の調査であることは p.6。↩
- R1 p.8(2.1.1節。非上場企業はほぼすべてがパス・スルー事業体)、p.20(4節)、p.22(脚注22)、p.32(付録 A.1)。非上場企業の純利益は所有者の労働所得と資本所得の混合で、上場企業の純利益は所有者の労働所得を含まない。パートナーシップや S 法人の所有者は、社会保障税を避けるため給与より利益で、さらに低い税率のため利益より譲渡益で受け取る誘因があるとする(Krupkin and Looney 2017 を引用)。↩
- R1 p.20(4節・脚注20)、p.41(付録 A.5)。Smith et al.(2019)はパス・スルー事業の所得のうち資本所得を25%とし、Saez and Zucman(2020)は小企業ではその推計を正しいとしつつ大企業では約75%を資本所得とする。Saez-Zucman 方式では全体で約50%が労働所得に分類される。MVJ 方式は、給与の報告がない所有者には予測賃金を、報告がある所有者には実際の給与を、事業利益から差し引く(R1 p.20 脚注20)。↩
- R1 付録の表1(p.37)列1〜5。2022年の利益利回りは、労働分を除かない SCF 12.6%、MVJ 方式5.4%、Smith et al. 方式2.6%、Saez-Zucman 方式2.6%、Compustat(税引前利益)6.9%。1989年はそれぞれ22.6%、8.2%、4.1%、5.2%、12.3%。表1は FRB 内部版の SCF に基づく(表1の注)。倍率(12.6÷5.4、12.6÷2.6)は大手町プレップの計算。↩
- R1 p.20(4節・図4a)。労働分を除いた非上場と上場の利益利回りの差は概して小さいが、多くの年で上場が大きいとする。12回中9回は、表1(p.37)の列4(Saez-Zucman 方式)と列5(Compustat)を大手町プレップが比べて数えたもので、R1 の記述ではない。労働調整後の範囲(最小〜最大)も表1の列2〜4を大手町プレップが読み取ったもの。R1 p.20 は図4aの利回りを常に正で概ね5〜9%とするが、図4aには上場も含まれ、表1の労働調整後の非上場の値には5%未満の年が多いため、本稿では表1の値で範囲を示した。↩
- R1 p.23(4.1節)。労働分を含めた推計は上限とみなしうるとし、Bhandari et al.(2020b)は労働分を除かないため利益利回りと非上場のリターンを全般に大きく推計していると述べる。↩
- R1 p.22(4節)。合計リターンの形と水準は評価益(図4b)からほぼ読み取れ、利益は測り方の選択に左右され、税制との関係で下方バイアスを持ちやすいため、最もきれいな比較は評価額だけに注目するものかもしれないとする。事業所得の過少申告について、NIPA は IRS への事業所得を種類に応じて18〜50%過少申告と仮定している(R1 p.4)。↩
- R1 付録の表1(p.37)列6(SCF)・列7(Compustat)、図4の注(p.21)。本文の数値は表1の値。上場の評価益は2000年代半ば〜後半を除き概ね非上場を上回るとの記述は p.20〜22。11期間中7期間、各期間の年率の単純平均(非上場75.5÷11、上場109.3÷11。複利の通算ではない)は大手町プレップの計算。R1 は期間ごとの差の統計的な検定を示していない。↩
- R1 p.22〜23(4節・4.1節)、図5(p.24)、付録 A.2・図A.2a(p.33〜34)。合計リターンは多くの調査年で上場が上回り、元の謎を支持するとする。2001年以前は上場、2001〜2010年は非上場が上回る。2013〜2022年は上場が上回る傾向だが差はごく小さく、通常の統計的な意味で差がないかもしれない(Bhandari et al. 2022 の指摘として)。元の方法では2010〜2013年・2016〜2019年は上場、2013〜2016年・2019〜2022年は非上場が上回る。↩
- R1 p.4(1節)、p.23(4.1節)、p.2(要旨)・p.25(5節)。1989〜2022年全体では2001〜2010年が上場の異常な低リターン期として目立ち、金融危機後の低金利環境が上場企業の予想以上のリターンに寄与した可能性に触れる(Lian, Ma and Wang 2019 を引用)。結論の文は要旨と5節。↩
- R1 p.12〜16(2.3節・図1・図2)。売上(図1a)では IRS の事業統計(IBD)の集計が常に SCF の95%信頼区間に入る。純利益(図2a)は、利益に加え配当・利子・譲渡益などを含む広い IBD の集計(過少申告の調整後)と合い、概ね SCF の95%信頼区間に入る。パートナーシップでは IBD の推計が小さめだが、SCF の信頼区間の下限付近にある(p.16)。↩
- R1 p.16〜19(3節・式1・図3)、p.41〜42(付録 A.5・図A.6)。Campbell and Robbins(2025)の業態別の価値/売上・価値/利益の倍率による予測値と自己申告の集計は総じて近く、売上倍率だけでも同様。Compustat の業種別倍率による予測は多くの年で自己申告より大きく、2007〜2010年の下落と2010〜2013年の上昇が自己申告より大きい。いずれも集計値の比較で、個社の評価の精度は示していない。↩
- R4(Bhandari, Birinci, McGrattan and See, Minneapolis Fed Staff Report 568, 2020年3月。掲載誌版は American Economic Review: Insights 2(4): 443–458, 2020年12月)。確認したのは掲載ページの要旨のみで、PDF 本文は取得できなかった(403)。R1 側の反論は p.5(1節)・p.16(2.3節)・付録 A.3(p.35〜36)。↩
- R3(Kartashova, Bank of Canada Working Paper 2011-6, 2011年2月)p.4(要旨)。MVJ の方法で1989〜1998年を再現したうえで2001・2004・2007年の SCF に延長し、謎は1990年代の上場の高リターン期を越えて頑健ではないとする。掲載誌版は American Economic Review 104(10): 3297–3334(2014年。本文は WP 版で確認)。↩
- R1 p.4(1節)、p.7(脚注3)、p.12〜13(2.3節・脚注11)。非上場企業は定期的な開示義務がなく取引も稀であること、SCF は小標本のため分解すると推計が変動しやすいこと、入れ子の所有構造を捉える設計ではないこと、Forbes 400 の家計は標本に入らないことを挙げる。↩
- R2 p.2(要旨)。大きな非金銭的便益、歪度の選好、生存確率の過大評価が、こうした結果にもかかわらず非上場に投資することを説明しうると「簡単に議論する」と書いている。R1 はこれらの説明を検証していない。↩
- R7(国税庁タックスアンサー No.5211「役員給与」、2026年10月閲覧)。法人が役員に支給する給与のうち、定期同額給与・事前確定届出給与・一定の業績連動給与のいずれにも該当しないものは損金不算入で、該当するものでも不相当に高額な部分は損金不算入。↩
- R1 付録 A.2・図A.2b(p.33〜34)。非上場の法人(C 法人と S 法人)と非法人(パートナーシップ、個人事業、LLC)の合計リターンは概ね同程度(元の MVJ 方式の労働調整による)。↩
- R6(国税庁「財産評価基本通達」180〜183、2026年10月閲覧)。180は類似業種の株価と1株当たりの配当金額・年利益金額・純資産価額(帳簿価額)を基に計算し、斟酌率は大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5。182は類似業種の株価を上場の標本会社の株価から求める旨、183(2)は評価会社の1株当たりの利益金額を直前期末以前1年間の法人税の課税所得金額(非経常的な利益を除く。2年平均も選択可)から計算する旨を定める。算式の比重は通達本文の図で示されており、本稿では扱っていない。役員報酬が損金算入を通じて課税所得に影響する点は、183(2)とタックスアンサーNo.5211(脚注20)を合わせた大手町プレップの整理であり、報酬と比準の利益要素が一対一で連動するという意味ではない。↩
参考文献(2 026年10月確認)
- R1 Bricker, J., K. B. Moore and A. H. Volz (2025), “Rates of return on private and public businesses,” Finance and Economics Discussion Series 2025-107, Board of Governors of the Federal Reserve System. DOI: 10.17016/FEDS.2025.107. 参照した版:FEDS 版(2025年12月掲載、本文の日付2025年11月25日、42ページ)。初出:前身稿 R5(2021年2月)。査読:未査読(WP)。 federalreserve.gov (参照箇所:PDF p.1〜42(本文・図1〜5・付録の表1・図A.2・図A.6)。脚注1〜2・4〜15・18・21の根拠。図1・図2は付録の表1の数値を編集部が抜き出して描いたもので、原図・原表の転載ではない。閲覧日:2026年10月)
- R2 Moskowitz, T. J. and A. Vissing-Jorgensen (2002), “The Returns to Entrepreneurial Investment: A Private Equity Premium Puzzle?,” NBER Working Paper No. 8876. DOI: 10.3386/w8876. 参照した版:NBER WP 版(2002年4月)。査読:参照した版は未査読(WP)。掲載誌版:American Economic Review 92(4): 745–778(2002年、DOI: 10.1257/00028280260344452。本文は未確認)。 nber.org (参照箇所:p.2(要旨)・p.3(序論・脚注1)。脚注3・19の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R3 Kartashova, K. (2011), “The Private Equity Premium Puzzle Revisited,” Bank of Canada Working Paper 2011-6. 参照した版:WP 版(2011年2月)。査読:参照した版は未査読(WP)。掲載誌版:American Economic Review 104(10): 3297–3334(2014年、DOI: 10.1257/aer.104.10.3297。題名は “Private Equity Premium Puzzle Revisited”。本文は未確認)。 oar-rao.bank-banque-canada.ca (参照箇所:p.4(要旨)。脚注17の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R4 Bhandari, A., S. Birinci, E. R. McGrattan and K. See (2020), “What Do Survey Data Tell Us about US Businesses?,” Federal Reserve Bank of Minneapolis Staff Report No. 568(2020年3月)。掲載誌版:American Economic Review: Insights 2(4): 443–458(2020年12月)、DOI: 10.1257/aeri.20190304。確認したのは掲載ページの要旨のみ(本文は未確認)。 minneapolisfed.org (参照箇所:要旨。脚注16の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R5 Bricker, J., K. B. Moore and A. H. Volz (2021), “Private business wealth and rates of return in the U.S.,” ECINEQ LSE Working Paper 218. 参照した版:2021年2月版(R1 の前身稿)。査読:未査読(WP)。 ecineq.org (参照箇所:p.1(表紙・要旨)。脚注1(初出)の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R6 国税庁
「財 産評価基本通達」(類 似業種比準価額)180〜184。 nta.go.jp (参照箇所:180・182・183。脚注22の根拠。閲覧日:2026年10月) - R7 国税庁「No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」タックスアンサー。 nta.go.jp (参照箇所:概要(定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与、不相当に高額な部分)。脚注20の根拠。閲覧日:2026年10月)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。