この記事で分かること

  • 類似業種比準方式の定義と計算式(配当・利益・純資産の3要素比準)
  • 斟酌率が会社規模でなぜ変わるのか
  • 整数設例による類似業種比準価額の検算
  • 類似会社比較法(トレーディングコンプス)との違い

30秒で分かる定義

類似業種比準方式(Comparable Industry Method、読み方:るいじぎょうしゅひじゅんほうしき)とは、国税庁が業種別に公表する株価・配当・利益・純資産の平均値と、評価対象会社の同じ3指標を比準(比較)させることで、非上場株式の相続税評価額を算定する方式です。財産評価基本通達に基づき、主に会社規模区分で「大会社」に該当する場合に原則として適用されます。

なぜ実務で重要なのか

事業承継・相続対策では、大会社に区分されるオーナー企業の自社株評価で必ず登場する計算方式です。税理士法人・FASでは、取引相場のない株式の評価の中でも計算が最も複雑とされ、業種目の選定や1株当たり資本金等の額の調整など、実務上の判断ポイントが多い方式として重視されます。

計算式

類似業種比準価額 = A ×[(b/B + c/C + d/D)÷ 3]× 斟酌率

Aは国税庁が月次で公表する類似業種の株価、b・c・dは評価会社の1株当たり配当金額・利益金額・純資産価額(帳簿価額)、B・C・Dは類似業種の1株当たり配当・利益・純資産です(いずれも1株当たり資本金等の額を50円とした場合の株式数に引き直して計算します)。斟酌率は会社規模により大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5と定められており、規模が小さいほど類似業種比準価額を割り引く方向に働きます。

整数設例で確認する

設例(架空数値)。評価会社は大会社(斟酌率0.7)、1株当たり資本金等の額はすでに50円ベースとします。

指標評価会社類似業種平均比準割合
1株当たり配当金額8円10円0.80
1株当たり利益金額40円50円0.80
1株当たり純資産価額(簿価)300円400円0.75

比準割合の平均 =(0.80+0.80+0.75)÷ 3 = 0.783。類似業種の株価Aを500円とすると、類似業種比準価額 = 500円 × 0.783 × 0.7(大会社の斟酌率)= 274円/株と求まります。配当・利益より純資産の比準割合がやや低いこの会社は、純資産の蓄積に対して配当・利益水準が相対的に高いことを示しています。

契約条項への影響(他方式との組み合わせ)

類似業種比準価額は単独で使われるほか、会社規模区分が中会社の場合は純資産価額方式との併用方式(Lの割合による加重)で使われます(詳細は取引相場のない株式の評価)。また大会社であっても、類似業種比準価額と純資産価額のいずれか低い方を選択できるため、必ずしもこの方式の結果がそのまま採用されるわけではありません。

財務モデル・Excelでの使い方

類似業種比準方式の計算シートでは、国税庁公表の業種目別データ(株価・配当・利益・純資産)を月次で参照できるよう入力欄を作ります。

  • 評価会社の1株当たり配当・利益・純資産は、直前期末以前2年間(配当は2年平均、利益は原則直前期または2年平均の低い方)の実績を使う
  • 1株当たり資本金等の額が50円でない場合は、50円換算の株式数に引き直して計算し、最後に実際の株式数に戻す調整行を作る
  • 斟酌率は会社規模区分の判定結果とリンクさせ、区分が変わればセルが自動で切り替わるようにする

この用語をExcelで「組める」状態にする

配当・利益・純資産の3要素比準割合から類似業種比準価額を計算するシートを組めるようになる。

バリュエーション教材で非上場企業評価の考え方を見る →

実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「類似業種比準方式は類似会社比較法(トレーディングコンプス)と同じ」→ 正しくは、計算の目的も方法も別物です。トレーディングコンプスは市場が付けるマルチプル(EV/EBITDA等)を使う取引目的の評価手法、類似業種比準方式は国税庁公表データを使う通達ベースの課税目的の評価手法です。

誤解2:「業種目は自由に選べる」→ 正しくは、国税庁が公表する業種目分類表に沿って、評価会社の事業内容に最も近い業種目を選定する必要があります。複数事業を営む会社は、売上構成比などから主たる業種目を判定します。

日本実務での扱い

(2026年7月時点)類似業種の株価・配当・利益・純資産のデータは国税庁が毎月公表しており、評価の基準となる月(課税時期の属する月、前月、前々月、前年平均のうち最も低いもの)を選択できる仕組みになっています。米国の遺産税評価にはこうした画一的な業種比準テーブルは存在せず、鑑定人が個別に類似上場企業を選定してマルチプル評価を行うのが一般的です。日本の類似業種比準方式は再現性が高い一方、業種目の選定次第で評価額が変わりうるため、事業内容が複数業種にまたがる会社では税理士の判断が重要になります。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:類似業種比準方式で使う「配当・利益・純資産」の3要素は、それぞれどの財務指標に対応しますか。
「配当は1株当たりの直前期末以前2年間の平均配当金額、利益は1株当たりの法人税の課税所得を基にした利益金額(原則直前期、または直前期と直前々期の平均のいずれか低い方)、純資産は帳簿価額ベースの1株当たり純資産です。この3つの比準割合を平均し、類似業種の株価と斟酌率を掛けて評価額を求めます。」

深掘りでは「なぜ純資産は帳簿価額を使うのか(純資産価額方式との違い)」が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. 業種目が複数該当する会社はどうしますか?
A. 売上構成比率が最も高い事業に対応する業種目を主たる業種目として選定するのが原則です。該当する具体的な業種目がない場合は、より上位の分類(大分類)を使います。

Q. 斟酌率はなぜ会社規模で異なりますか?
A. 会社規模が小さいほど上場企業(類似業種の構成企業)との事業内容・信用力の差が大きいと考えられるため、より高い割引(低い斟酌率)を適用する設計になっています。

出典・参考(2026-07-25確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。