この記事で分かること

  • 日本のPEファンドで経歴を確認できた1,043名のうち、FAS経験の記載は99名(9.5%)——約10人に1人の確立されたルート
  • 系譜別では事業会社系20.5%・金融機関系11.6%と国内系で高く、外資系・グローバルでは1.9%とほぼ確認できない
  • FAS記載率が高いファンドの上位(雄渾キャピタル・パートナーズ33.3%など)と、その顔ぶれの傾向
  • FAS経験者99名のうち36名は監査法人経験の記載もあり、「監査法人→FAS→PE」という会計士ルートが見えること
データ基準日: 2026年8月30日 | 対象: 大手町プレップPEファンドDBの日本カテゴリ133社の公式サイトに現職として掲載された1,456名(実人数1,438名) | 執筆: 大手町プレップ編集部

結論:FAS出身者はPEに転職「できている」——判明1,043名の9.5%にFAS記載

財務デューデリジェンスやバリュエーションを担うFAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)からPEファンドへの転職は可能なのか。大手町プレップがPEファンドDBの日本カテゴリ収録ファンドの公式サイト掲載者のうち、経歴を確認できた1,043名を集計した結果、FASでの業務経験の記載を確認できたのは99名(9.5%、95%信頼区間7.9〜11.4%)でした。

約10人に1人という水準は、メジャーな入り口の一つと呼ぶに足る規模です。「FASはPEに行けない」という悲観論は、少なくとも国内系PEについては公開データと整合しません。ただし系譜・ファンドによる濃淡は非常に大きく、外資系・グローバルではFAS記載をほとんど確認できないなど、志望先によって現実性が大きく変わります。以下で系譜別・ファンド別に検証します。

99名
FAS経験の記載
判明者1043名中
9.5%
判明者に占める比率
95%CI 7.9–11.4%
944名
記載を確認できず
公式経歴に記載なし
395名
情報不足で判定不能
経歴情報が不足

検証する仮説と分析対象

検証する仮説は「FAS出身者はPEファンドに転職できない(FAS経験はPEの人材市場で通用しない)」という悲観側の通説です。仮説が正しければ、公式プロフィール上のFAS経験の記載はごく僅かにとどまるはずです。

分析対象は、2026年8月30日時点で大手町プレップPEファンドDBの日本カテゴリに収録されたPEファンドの公式サイト掲載者のうち、職歴を判定できた1,043名です。各人物は「FAS業務経験の記載を確認」「公式プロフィールに記載を確認できず」「情報不足で判定不能」の三値で分類し、判定不能の395名は分母から除いています。「記載を確認できず」はFAS経験がないことの確認ではありません。なお、FASの中核業務である買収監査については用語集の確認的デューデリジェンスもあわせて参照してください。

系譜別:事業会社系20.5%・外資系1.9%——国内系と外資系で別世界

所属ファンドの系譜別に、FAS経験の記載率を見たのが次の表です。

FAS経験者の比率が高いPEファンド(属性判明者10名以上)
#ファンド系譜該当者判明者数比率
1雄渾キャピタル・パートナーズ独立系41233.3%
2RBGパートナーズ独立系31030.0%
2日本みらいキャピタル独立系31030.0%
4アント・ソリューション・パートナーズその他52025.0%
5東京電力タイムレスキャピタル事業会社系41723.5%
6ひろしまイノベーション推進機構金融機関系31323.1%
7キャス・キャピタル独立系31520.0%
8アント・キャピタル・パートナーズ金融機関系84119.5%
9REVA独立系32015.0%
9ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ金融機関系32015.0%
11アイ・シグマ・キャピタル事業会社系42814.3%
12アスパラントグループ独立系21513.3%
13インテグラル独立系118413.1%
14WMパートナーズ独立系32412.5%
15ポラリス・キャピタル・グループ独立系32512.0%

最も高いのは事業会社系の20.5%(判明73名中15名)で、金融機関系11.6%(判明173名中20名)、独立系9.5%(判明547名中52名)、その他8.0%、地域金融機関系5.0%(判明20名中1名)と続きます。対照的に、外資系・グローバルでは判明107名中2名(1.9%)にとどまり、Search Fund・Long-holdでは記載を確認できませんでした(判明10名中0名)。国内系——とりわけ事業承継や再生案件で財務精査の比重が大きい中堅ファンド——ではFAS経験が広く見られる一方、外資系の公開経歴ではほぼ登場しない。「FASからPEへ」という問いの答えは、志望先が国内系か外資系かでほぼ別の問いになると言えます。投資銀行経験についての同様の検証はIB経験必須説の検証記事で行っています。

ファンド別:FAS記載率上位は独立系・事業会社系の中堅ファンド

次に、FAS経験の記載率が高いファンドの上位を見ます(掲載人数が一定以上のファンドが対象です)。

FAS経験者の比率が高いPEファンド(参考値: 判明者5〜9名)
ファンド系譜該当者判明者数比率
LBPI事業会社系6785.7%
Felicity Capital金融機関系2728.6%
ネクスト・キャピタル・パートナーズ独立系2922.2%
PINECONE Holdingsその他1520.0%
ベーシック・キャピタル・マネジメント金融機関系1520.0%
野村キャピタル・パートナーズその他1520.0%
いわかぜキャピタル独立系1616.7%
日本投資ファンド金融機関系1714.3%

最上位は雄渾キャピタル・パートナーズの33.3%(判明12名中4名)で、RBGパートナーズ30.0%、日本みらいキャピタル30.0%、アント・ソリューション・パートナーズ25.0%、東京電力タイムレスキャピタル23.5%、ひろしまイノベーション推進機構23.1%と続きます。顔ぶれは独立系・事業会社系・金融機関系の国内ファンドが中心で、3〜4人に1人がFAS経験者という組織も存在します。FAS出身者にとっては、業界平均の9.5%だけを見るより、こうした「FAS人材の多いファンド」を個別に研究する方が実践的です。各社の詳細は表内のリンクからPEファンドDBの個別ページで確認できます。

「監査法人→FAS→PE」ルート:FAS記載99名のうち36名に監査法人記載

FAS経験と監査法人経験のクロス集計も行いました。判定可能な1,043名のうち、両方の記載を確認できたのは36名、監査法人のみは84名、FASのみは63名、どちらの記載も確認できなかったのは860名です。つまりFAS記載99名のうち36名は監査法人経験の記載も持ち、「監査法人で会計監査→FASで財務デューデリジェンス→PEで投資実務」という段階的なキャリアの存在がデータからも読み取れます。一方、FAS記載者の6割超にあたる63名には監査法人の記載がなく、監査法人を経ないFAS直行組からのPE転職も同程度に存在します。会計士資格そのものの検証は公認会計士はPE転職に有利なのか、監査法人起点のルートの詳細は公認会計士のキャリアパス検証で扱っています。

結果から言えること・言えないこと

言えること。(1)経歴判明1,043名の9.5%にFAS経験の記載があり、FASからPEへの転職ルートは実在し、確立しています。(2)ただし濃淡は大きく、事業会社系(20.5%)・金融機関系(11.6%)など国内系で高い一方、外資系・グローバルでは1.9%とほとんど確認できません。(3)FAS経験者の中には監査法人経由(36名)と非経由(63名)の両方がおり、会計士ルートに限定されないことも分かります。

言えないこと。(1)本データは公式サイト掲載者の集計であり、記載を確認できないことはFAS経験がないことの確認ではありません。実際の比率は9.5%より高い可能性があります。(2)在籍者の分布から「FAS経験が選考で有利か」という因果は検証できません。FAS出身者が多いファンドが、今後もFAS出身者を採用するとは限りません。(3)ファンド別ランキングは掲載人数の少ないファンドほど比率が振れやすく、上位の数値(33.3%等)を確定的な組織方針と解釈することはできません。

DDで培った分析力を、投資側のモデルへ

FASの財務デューデリジェンスで鍛えた実態把握の力は、PEでは「投資してよいか」を判断するLBOモデルに接続されます。買い手側の視点でリターンを組み立てる経験は、FASの現場では得にくい部分であり、転職準備として学習で補える領域です。大手町プレップの講座では、ExcelでLBOモデルをゼロから構築し、DDの数値が投資判断にどう繋がるかを体系的に学べます。

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データの定義と限界

母集団の定義・三値分類・ファンドランキングの基準は以下のとおりです。本シリーズ共通の方法論を使用しています。

集計方法・データ定義(大手町プレップPE人物データベース独自集計)

対象データ
大手町プレップPEファンドDBの地域カテゴリに「日本」を含むPEファンド133社(外資系・グローバルファンドの日本拠点を含む)について、各社公式サイトのチーム・メンバーページに現職として掲載された人物1,456名(2026年8月30日時点)。関連会社間の重複を除いた実人数は1,438名。
集計単位
人物属性(学歴・MBA・職歴など)の集計は実人数(ユニーク人物)単位、ファンド別の集計は人物・所属レコード単位で行っています。
三値分類
各属性は「記載を確認」「公式プロフィールに記載を確認できず」「経歴情報が不足し判定不能」の3つに分けています。比率は原則として記載有無を判定できた人数(判明者)を分母とし、本文・図表に分母を明記しています。「記載を確認できない」ことは「経歴・資格がない」ことを意味しません。
ランキングの基準
比率のファンド別ランキングは属性判明者10名以上のファンドを対象とし、5〜9名は参考値、4名以下は対象外としています。
データソース
各PEファンドの公式サイト(チームページ・人物プロフィール・会社概要等)の公開情報。役職名・経歴は公式表記を機械的な基準で正規化・分類しています。
FASの判定
FAS専業会社(KPMG FAS・デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー・PwCアドバイザリー等)の在籍、またはBig4系での財務デューデリジェンス・バリュエーション・事業再生・PMI等の業務記載を確認できた場合に「記載あり」としています。戦略コンサルティングとは区別しています。

本分析は公式サイトの公開情報のみを機械的に集計したものであり、各ファンドの実際の人員構成・採用基準を網羅・代表するものではありません。経歴の開示方針はファンドにより大きく異なるため、比率の差がそのまま実態の差を意味するとは限りません。出身大学・前職等は人物の能力・評価を示すものではなく、相関関係は因果関係を意味しません。

よくある質問(FAQ)

Q. FASからPEへの転職は現実的ですか。
A. 公開経歴の上では、経歴判明1,043名の9.5%にFAS経験の記載があり、確立されたルートの一つです。特に事業会社系・金融機関系・独立系の国内ファンドで比率が高く、こうしたファンドを中心に研究するのが現実的です。ただし本データから個別の転職可否は判断できません。

Q. 外資系PEにFASから行くのは難しいのでしょうか。
A. 外資系・グローバル系譜の公開経歴でFAS記載を確認できたのは判明107名中2名(1.9%)でした。少なくとも公開データ上、外資系PEの在籍者にFAS出身者はほとんど見られません。ただし記載がないことは経験がないことの確認ではなく、また将来の採用を予測するものでもありません。

Q. 公認会計士の資格がないFAS出身者でもPEに行けますか。
A. 本記事のクロス集計では、FAS記載99名のうち63名には監査法人経験の記載がなく、監査法人(会計士の典型的な出発点)を経由しないFAS出身者も相当数在籍しています。資格の観点は公認会計士はPE転職に有利なのかで検証しています。

Q. FAS出身者が多いファンドはどこで確認できますか。
A. 本文のファンド別ランキング表と、各ファンドの個別ページ(PEファンドDB)で確認できます。数値は2026年8月30日時点の公式サイト掲載情報に基づき、データベースの更新に合わせて再集計されます。

まとめ

「FAS出身者はPEファンドに転職できるのか」への答えは、データ上は明確に「できている」です。経歴判明1,043名の9.5%・99名にFAS記載があり、事業会社系では20.5%に達します。一方で外資系・グローバルでは1.9%と、志望先の系譜によって景色は一変します。FAS出身者のキャリア戦略としては、FAS人材の多い国内ファンドの個別研究と、DD経験を投資判断に接続するモデリング学習の組み合わせが現実的です。より大きな文脈はBig4 FASからの転職実態直前職ランキングでご確認ください。

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出典・データについて

  • 大手町プレップPE人物データベース(133社の公式サイト掲載情報を独自集計・2026年8月30日時点)
  • 大手町プレップPEファンドDB https://otemachiprep.com/pe-funds/

※本記事は公開情報に基づく教育目的のデータ分析であり、特定のファンド・個人の評価や、転職成否の保証・投資助言ではありません。出身大学・経歴は人物の能力を示すものではありません。

データ基準日: 2026年8月30日(人物データベースの更新に合わせて本記事の数値・表・グラフは再集計されます)