この​記事で​分かる​こと

  • ROE・ROA・ROICは、分子(利益)と分母(資本)の対応関係がそれぞれ異なる指標であり、対応しない利益と資本を組み合わせると数字の意味が崩れること
  • ROEを「純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ」へ分けるデュポン3分解と、そこからさらに税負担率・利息負担率・営業利益率へ分けるデュポン5分解の計算手順
  • 同じROE15%でも、レバレッジに依存した企業と本業の収益力で稼ぐ企業とでは中身がまったく異なり、ROAを併せて見ないと見分けられないこと
  • 東証がプライム・スタンダード市場の上場会社に求める「資本コストや株価を意識した経営」の要請と、収益性指標の関係

結論:ROEは​「率×率×倍率」に​分解して​初めて​中身が​読める​指標です

自己資本利益率(ROE)は「当期純利益÷自己資本」という一つの割り算で表される指標ですが、この数字だけを見て企業の収益力を判断するのは危険です。ROEは、売上高に対してどれだけ利益を残せたか(純利益率)、保有する資産をどれだけ効率的に売上へ変換できたか(総資産回転率)、そして自己資本に対してどれだけ他人資本(負債)でレバレッジを効かせているか(財務レバレッジ)という、性質の異なる3つの要素の掛け算に分解できます。この分解手法がデュポン分解​(デュポン分析)です。さらに純利益率の内側を、税負担率・利息負担率・売上高に対する営業利益の比率(EBITマージン)へと分けたものがデュポン5分解にあたります。同じROE15%という結果であっても、本業の利益率と資産効率で稼いでいる企業と、借入を大きく積み増して財務レバレッジで数字を押し上げている企業とでは、収益構造もリスクの所在もまったく異なります。ROE単体ではこの違いを見分けられないため、総資産利益率(ROA)や投下資本利益率(ROIC)といった、自己資本の多寡(財務レバレッジ)に左右されにくい指標を併読する必要があります。以下では、各指標の分母分子の対応関係を整理したうえで、デュポン3分解・5分解の計算手順を仮設の数値例で検算しながら解説します。

ROE・​ROA・​ROICの​定義と​分母分子の​整合性

収益性分析でまず押さえるべきは、自己資本利益率​(ROE)・総資産利益率​(ROA)・投下資本利益率​(ROIC)の3指標が、それぞれ「誰に帰属する利益」を「誰が提供した資本」で割っているのかという対応関係が異なる点です。

式:ROE・ROA・ROICの基本形
ROE=当期純利益(親会社株主に帰属)÷自己資本
ROA=当期純利益÷総資産(もしくは事業利益÷総資産)
ROIC=NOPAT(税引後営業利益)÷投下資本(有利子負債+自己資本)

ROEの分子である当期純利益は、株主にのみ帰属する利益(債権者への支払利息を差し引いた後の利益)です。したがって分母にも株主が提供した資本、すなわち自己資本だけを使うのが整合的です。ここに総資産(負債を含む全資本)を分母として使ってしまうと、株主の取り分ではない部分(債権者への支払利息)を控除した利益を、株主以外の資本まで含めた分母で割ることになり、対応関係が崩れます。逆にROAは総資産(株主資本と負債の合計)に対する収益力を測る指標なので、理論的には分子側も全資本提供者に帰属する利益、つまり支払利息を差し引く前の利益(事業利益やEBITに近い概念)を使う定義もあります。ただし実務では、簡便に当期純利益をそのまま分子に使うROAもよく用いられており、どちらの定義を使っているかを確認しないと、企業間・期間間の比較を誤ります。ROICは有利子負債と自己資本を合わせた投下資本に対して、税引後営業利益(NOPAT)という事業そのものが生み出す利益で応答するため、自己資本と負債の構成比(財務レバレッジ)を変えても数値が動きにくいという特徴を持ちます。ROICの詳細な算定手順とWACCとの比較による価値創造の判定は、ROICと​価値創造|​「稼ぐ力」を​資本の​物差しで​測るで扱っているため、本記事ではROEの内訳を分解する手法に絞って解説します。

もう一点、分母の取り方にも注意が必要です。当期純利益は1年間のフローの数値である一方、自己資本や総資産は決算時点のストックの数値です。仮に期中に大きな増資や自己株式の取得、多額の配当があった場合、期末時点の自己資本だけを分母に使うと、1年をかけて稼いだ利益と、期末という一時点の資本規模が対応しなくなります。そこで実務では、期首と期末の自己資本(または総資産)の平均値、いわゆる期中平均を分母に使う方法が広く採られています。有価証券報告書の「主要な経営指標等」の欄でも、自己資本の期中平均を用いてROEを算定する開示例が一般的です。決算期の途中で大型の増資や自社株買いがあった企業のROEを他社と比較する際は、期末値ベースか期中平均ベースかを確認しておくと、数字の読み違いを避けられます。なお、ここまで扱ってきたROE・ROA・ROICは企業全体を対象とした対外的な収益性指標であり、事業別・製品別・顧客別に社内の収益性を切り分ける分析とは目的が異なります。社内管理会計としての収益性分析は事業別・​製品別・​顧客別収益性分析|貢献利益・​共通費配賦・​撤退判断の​実務で扱っています。

デュポン3分解:純利益率×総資産回転率×財務​レバレッジ

ROEを構成要素に分解する最も基本的な形がデュポン3分解です。分子・分母に同じ項目(売上高と総資産)を挿入して約分すると、次の恒等式が成り立ちます。

式:デュポン3分解
ROE=当期純利益÷自己資本
 =(当期純利益÷売上高)×(売上高÷総資産)×(総資産÷自己資本)
 =純利益率×総資産回転率×財務​レバレッジ

純利益率は売上高に対してどれだけ利益を残せたかという収益性、総資産回転率は保有資産をどれだけ効率的に売上へ変換できたかという資産効率性、財務レバレッジは自己資本に対して総資産(自己資本+負債)をどれだけ積み増しているかという資本構成の3要素です。以下は説明用の仮設例です。小売業を営むA社と、不動産賃貸業を営むB社(いずれも仮称)を比較します。両社とも単年度のROEは同じ15.00%ですが、内訳はまったく異なります。

図:ROEのデュポン分解構造(3分解と5分解) ROE 純利益率 当期純利益 ÷ 売上高 総資産回転率 売上高 ÷ 総資産 財務レバレッジ 総資産 ÷ 自己資本 5分解ではここをさらに分ける 税負担率 純利益 ÷ 税引前利益 利息負担率 税引前利益 ÷ EBIT 営業利益率 (EBITマージン) EBIT ÷ 売上高 3分解=純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ/5分解=税負担率×利息負担率×営業利益率×総資産回転率×財務レバレッジ
図:ROEの​デュポン​分解構造。​3分解の​「純利益率」ボックスを、​5分解では​さらに​税負担率・​利息負担率・​営業利益率の​3要素へ​分解する。
項目(仮設例)A社(小売業)B社(不動産賃貸業)
売上高10,000百万円4,000百万円
当期純利益300百万円480百万円
総資産5,000百万円16,000百万円
自己資本2,000百万円3,200百万円
純利益率(純利益÷売上高)3.00%12.00%
総資産回転率(売上高÷総資産)2.00倍0.25倍
財務レバレッジ(総資産÷自己資本)2.50倍5.00倍
ROE(3項目の積)15.00%15.00%
参考:ROA(純利益÷総資産)6.00%3.00%
表1:デュポン3分解の​仮設2社比較。​A社=3.00%×2.00×2.50=15.00%、​B社=12.00%×0.25×5.00=15.00%​(自己検算済み)。​ROEは​同一だが、​ROA​(総資産に対する収益力)は​A社6.00%に​対しB​社3.00%と​2倍の​差が​ある。

デュポン5分解:税負担率×利息負担率×営業利益率×総資産回転率×財務​レバレッジ

デュポン3分解の「純利益率」は、税金・支払利息・本業の利益率という3つの異なる要因が混ざり合った結果の数字です。この純利益率をさらに分解すると、税負担・借入コスト・本業の稼ぐ力を切り分けて見ることができます。ここで使うEBIT(利払前・税引前利益)は、税引前利益に支払利息を足し戻した金額として算定します。日本基準の損益計算書における「営業利益」の科目は、受取利息や為替差損益などの営業外項目の扱いが会社によって異なるため、EBITと厳密には一致しない場合がある点に留意してください。PLの利益段階(売上総利益・営業利益・経常利益・税引前利益・当期純利益)の関係そのものはPLの​利益段階と​読み​方|5つの​利益は​それぞれ何を​語るのかで扱っているため、あわせて参照してください。

式:デュポン5分解
ROE=(当期純利益÷税引前利益)×(税引前利益÷EBIT)×(EBIT÷売上高)×(売上高÷総資産)×(総資産÷自己資本)
 =税負担率×利息負担率×営業利益率(EBITマージン)×総資産回転率×財務レバレッジ

税負担率(当期純利益÷税引前利益)は、税引前利益のうちどれだけが税引後に残るかを示し、実効税率を1から差し引いた値にほぼ一致します。利息負担率(税引前利益÷EBIT)は、EBITのうちどれだけが支払利息に取られずに税引前利益として残るかを示す比率で、有利子負債が多く支払利息の負担が重い企業ほどこの値は小さくなります。営業利益率(EBITマージン、EBIT÷売上高)は、本業がどれだけの利益率で稼いでいるかを示す、5分解の中でもっとも事業の実力を反映する要素です。表1のA社・B社について、実効税率を仮に30%とし、5分解まで展開すると次のとおりです。

項目(仮設例、実効税率30%)A社(小売業)B社(不動産賃貸業)
EBIT500.00百万円1,200.00百万円
支払利息71.43百万円514.29百万円
税引前利益(EBIT-支払利息)428.57百万円685.71百万円
当期純利益(税引前利益×70%)300.00百万円480.00百万円
税負担率(純利益÷税引前利益)70.00%70.00%
利息負担率(税引前利益÷EBIT)85.71%57.14%
営業利益率(EBIT÷売上高)5.00%30.00%
総資産回転率(表1より)2.00倍0.25倍
財務レバレッジ(表1より)2.50倍5.00倍
ROE(5項目の積)15.00%15.00%
表2:デュポン5分解の​仮設2社比較​(実効税率30%と仮定)。​A社=70.00%×85.71%×5.00%×2.00×2.50=15.00%、​B社=70.00%×57.14%×30.00%×0.25×5.00=15.00%​(Pythonで​積を​検算済み。​表示上の​四捨五入に​より​小数点第3位以下で​わずかな​誤差が​生じる​場合が​ある)。​営業利益率は​A社5.00%に​対しB​社30.00%と​6倍の​差が​あるが、​総資産回転率と​財務​レバレッジの​違いが​これを​打ち消し、​最終的な​ROEは​一致する。

「ROEが高い=良い」とは​限らない​ケース:レバレッジ​依存の​見分け方

表1・表2のA社とB社は、ROEという最終結果だけを見れば同じ15.00%で優劣がつきません。しかし内訳を見ると評価はまったく変わります。A社は営業利益率5.00%・総資産回転率2.00倍という、本業の商品を効率よく回転させて薄い利益率を積み上げる小売業らしい構造でROEを組み立てています。一方のB社は営業利益率30.00%と高い水準にあるものの、総資産回転率はわずか0.25倍にとどまり、その低さを財務レバレッジ5.00倍という高い借入依存度で補ってROE15.00%に到達しています。同じROEでも、ROA(総資産利益率)で見るとA社6.00%に対してB社3.00%と、資産全体としての稼ぐ力には2倍の差があることが表1で確認できます。B社のROEの高さは、事業そのものの効率というより、自己資本を薄くして負債を厚くするという資本構成の選択によって生み出されている部分が大きいということです。

財務レバレッジを高めてROEを引き上げること自体は、負債コストが事業の収益率を下回っている限り、株主にとって合理的な資本政策になり得ます。問題は、財務レバレッジへの依存度が高い企業ほど、業績が悪化した局面で利払い負担が重くのしかかり、財務的な余力が小さくなる点です。B社のような高レバレッジの企業のROEを評価する際は、ROEの水準だけでなく、D/Eレシオや自己資本比率といった安全性指標を必ず併読し、レバレッジがどこまで積み上がっているのかを確認する必要があります。安全性指標の体系的な読み方は安全性分析の指標体系|D/Eレシオ・自己資本比率・流動比率——「潰れにくさ」を数字で測るで扱っています。また、財務レバレッジの影響を受けにくいROICで両社を比較すれば、資本構成の違いを取り除いたうえで事業そのものの稼ぐ力を判定できます。ROEが高いというだけで投資判断や取引先の与信判断を下すのではなく、その高さがどの要素によって生み出されているのかを分解して初めて、収益性の実態に近づけます。

東証の​資本​コスト・​株価を​意識した​経営との​接続

東京証券取引所(東証)は2023年3月31日、プライム市場・スタンダード市場に上場する全会社を対象に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請しました。要請の趣旨は、上場会社がまず自社の資本コストや資本収益性を的確に把握し、取締役会でその現状を分析・評価したうえで改善に向けた計画を策定・開示し、その後も投資者との対話の中で取組みをアップデートし続けるという一連の対応を継続的に実施することにあります。2026年4月28日には、これまでの要請を「経営資源の適切な配分」を中心に整理し直したアップデートも公表されています。この要請文書自体は「資本収益性」という語を用いており、ROEという特定の指標名に限定した文言ではありませんが、実務上はROEが資本収益性を測る代表的な指標の一つとして広く使われており、資本コスト(株主が要求するリターン)を上回るROEを継続的に達成できているかどうかが、企業と投資家の対話の起点になっています。

ROEを資本コストと比較する文脈でしばしば参照される歴史的な出発点が、経済産業省が2014年に公表したいわゆる「伊藤レポート」です。同レポートは、日本企業が中長期的に持続的な価値創造を実現するための一つの目安として、ROE8%という水準を提示したことで知られています。ただしこの8%という数字は業種を問わない一律の目標値ではなく、資本効率に関する議論の出発点として参照されてきた経緯がある点には注意が必要です。ROEと株価水準(PBR)の関係、東証の要請とPBR1倍割れ問題の制度的な背景についてはPBR1倍割れはなぜ問題か|東証の資本コスト経営要請とROE・エクイティスプレッドで扱っているため、本記事ではROEそのものを分解する手法に絞って解説します。

業種に​よる​ROE構造の​違い

デュポン3分解の3要素(純利益率・総資産回転率・財務レバレッジ)の組み合わせ方は、業種のビジネスモデルによって傾向が大きく異なります。以下は一般的な傾向を整理したものであり、個別企業の実績を示すものではありません。

業種の傾向純利益率総資産回転率財務レバレッジ
小売・卸売業低い(薄利)高い(高回転)中程度
情報通信・ソフトウェア業高い(高マージン)中〜低程度低い(無借金傾向)
不動産・金融・インフラ業高い傾向低い(資産重厚)高い(借入依存)
素材・重厚長大製造業中程度低い(設備集約)中程度
表3:業種の​ビジネスモデルと​デュポン3要素の​一般的な​傾向​(個社の​実績値ではなく、​ビジネスモデル​上の​一般的な​傾向を​定性的に​整理した​もの)。

この傾向を踏まえると、業種の異なる企業同士をROEの水準だけで比較することの危うさが分かります。情報通信・ソフトウェア業の企業と不動産業の企業が同じROEであっても、前者は高い利益率、後者は高いレバレッジによって同水準に到達している可能性があり、両者を同じ物差しで評価するのは適切ではありません。同業種内で比較する場合や、同一企業の時系列推移を追う場合には、ROEの水準変化がデュポン3要素のどれによって生じているのかを分解して確認することで、収益性が本当に改善しているのか、それとも借入の積み増しによって見かけ上ROEが上がっているだけなのかを判別できます。

通しの​数値例:仮設2社比較の​まとめ

ここまでのA社・B社の数値を、3分解と5分解を通して1枚の図にまとめると、同じROE15.00%に至る経路の違いが視覚的に確認できます。

図:仮設2社比較——同じROE15.00%でも中身が違う A社(小売業・仮設) 純利益率 3.00% 総資産回転率 2.00倍 財務レバレッジ 2.50倍 ROE 15.00% 参考:ROA 6.00% =本業の効率で稼ぐ低レバレッジ型 B社(不動産賃貸業・仮設) 純利益率 12.00% 総資産回転率 0.25倍 財務レバレッジ 5.00倍 ROE 15.00% 参考:ROA 3.00% =借入依存度が高い高レバレッジ型
図:表1・​表2の​仮設数値を​もとに​作成。​同一の​ROE15.00%でも、​ROA​(総資産利益率)と​財務​レバレッジの​水準を​見ると、​両社の​収益構造の​違いが​明確に​なる。

よく​ある​質問​(FAQ)

ROEと​ROAは​どちらを​重視すべきですか。

目的に​よって​異なります。​ROEは​株主の​投下資本に​対する​リターンを​示すため​株主目線の​指標と​して、​ROAは​総資産全体に​対する​収益力を​示すため事業​その​ものの​効率性を​測る​指標と​して​使い​分けます。​表1の​A社・​B社のように​同じ​ROEでも​ROAが​異なる​場合、​ROEの​高さが​財務​レバレッジに​よって​生み​出されている​可能性を​確認する​必要が​あります。

デュポン​分解は​なぜ3分解と​5分解の​2種類が​あるのですか。

3分解は​純利益率・​総資産回転率・​財務​レバレッジと​いう​大枠の​要因を​素早く​把握するのに​向いています。​5分解は​さらに​純利益率を​税負担率・​利息負担率・​営業利益率へ​分ける​ことで、​税制の​影響、​借入コストの​影響、​本業の​利益率と​いう​3つの​異なる​要因を​切り分けて​見る​ことができます。​分析の​目的に​応じて​使い​分けます。

ROEの​分母は​期末値と​期中平均の​どちらを​使うべきですか。

期中に​大きな​増資や​自己株式取得、​多額の​配当が​ない​企業であれば​期末値でも​大きな​差は​出ませんが、​資本構成が​期中に​大きく​変動した​企業では​期首・期末の​平均値​(期中平均)を​使う方が、​1年間の​利益と​資本規模の​対応関係が​実態に​近くなります。​他社比較の​際は​どちらの​定義を​使っているか​確認する​ことが​重要です。

ROEが​高ければ​投資対象と​して​優れていると​いえますか。

ROEの​水準だけでは​判断できません。​本記事の​B社のように、​財務​レバレッジへの​依存度が​高い​ことで​見かけ​上ROEが​高くなっている​場合、​業績悪化時の​財務的な​余力が​小さくなる​リスクが​あります。​ROEを​見る​際は​ROAや​自己資本比率などの​安全性指標を​必ず​併読する​必要が​あります。

ROICと​ROEは​どちらを​見るべきですか。

どちらか​一方に​絞る​必要は​なく、​補完的に​使います。​ROEは​自己資本と​いう​レンズを​通した​株主目線の​収益性を​示す​一方、​ROICは​資本構成の​影響を​受けに​くいため、​事業​その​ものの​価値創造力を​判定するのに​向いています。​財務​レバレッジの​高い​企業を​評価する​際は、​ROICで​事業の​実力を​確認したうえで​ROEを​見ると、​レバレッジの​寄与分を​切り​分けやすくなります。

まとめ

ROEは「当期純利益÷自己資本」という単一の割り算ですが、デュポン3分解(純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ)とデュポン5分解(税負担率×利息負担率×営業利益率×総資産回転率×財務レバレッジ)によって、その内訳を要因ごとに切り分けて読むことができます。本記事の仮設例では、同じROE15.00%でも、本業の効率で稼ぐA社とレバレッジに依存するB社とでは、ROAに2倍の差があることを確認しました。ROEの水準だけで企業の収益力を判断せず、ROAやROICを併読し、財務レバレッジがどこまで積み上がっているのかを常に確認することが、収益性分析の基本姿勢です。東証がプライム・スタンダード市場の上場会社に求める資本コストを意識した経営の要請も、こうした資本収益性の中身を経営者自身が把握し、投資家に説明できることを前提としています。ROEを分解して読む力は、財務分析だけでなく企業評価やM&Aの実務でも共通して求められる基礎です。

出典・参考​(2026年8月確認)

  • 日本取引所グループ(東京証券取引所)「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応(プライム・スタンダード市場)」(2026年8月14日更新版。2023年3月31日の要請および2026年4月28日のアップデートを含む。UA付きcurlでHTTP 200到達確認済み)(jpx.co.jp)
  • 経済産業省「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~プロジェクト(伊藤レポート)」最終報告書(2014年8月公表。meti.go.jpドメインはUA付きcurlでも直接到達確認ができなかった(HTTP 403)ため、出典名のみ記載)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための仮設例です。