この記事で分かること

  • メザニンファンドが、シニアレンダー(銀行等の貸し手)ともバイアウトを行うPEファンド本体とも違う、どのような主体なのか
  • 劣後ローン・優先株式・ワラント(エクイティキッカー)という3つの商品を、発行体(企業)側の税務・議決権の観点からどう使い分けるか
  • ディールがどこから持ち込まれ、何を審査し、目標リターンからワラント比率をどう逆算して組成するかという実務の流れ
  • 日本政策投資銀行(DBJ)やティール・メザニン株式会社(旧MCPメザニン)など、公表情報から確認できる日本のプレーヤーの姿とキャリアの入り方

結論:メザニンファンドは「貸し手なのに株式アップサイドも取りにいく」専門ファンド

メザニンファンドは、シニアデット(銀行融資等の優先度の高い借入)に劣後し、普通株式に優先する劣後ローン・優先株式・ワラント(エクイティキッカー)を組み合わせて投資する専門ファンドです。PE投資戦略の全体地図で扱ったとおり、メザニンファイナンス自体の定義とPIK金利を含む基本的な回収構造はすでに整理済みのため、本記事ではそこから一歩進み、メザニンファンドという事業体そのものの実務――商品設計の使い分け、ディールの組成プロセス、目標リターンからの逆算、日本のプレーヤー、キャリアの入り方――に絞って解説します。バイアウトを行うPEファンドが企業の経営権を握って価値創造に賭けるのに対し、メザニンファンドは原則として経営に関与せず、あらかじめ設計した金利・配当と株式アップサイドの一部を取りにいく点が最大の違いです。

メザニンファンドとは何か:シニアレンダー・PEファンドとの違い

資本構成の中でメザニンがどこに位置するかを図1に示します。シニアデットは最優先で返済を受ける代わりに約定金利しか得られず、普通株式(コモンエクイティ)は最も劣後する代わりに企業価値上昇のすべてを取りにいきます。メザニンはその中間に位置し、シニアデットより高い金利・配当を得る代わりに、劣後ローンや優先株式にワラントを付すことで株式アップサイドの一部も取得します。

図1:資本構成におけるメザニンの位置づけ(設例) シニアデット 60% メザニン 25% 劣後ローン 優先株式 普通株式 15% 議決権:シニア・メザニンは原則なし/普通株式のみあり 期待リターン:シニア < メザニン < 普通株式(一般的な傾向のイメージ)
図:説明用の設例です。比率・順序は案件により異なり、メザニン内部も劣後ローン・優先株式・ハイブリッド証券など複数の商品で構成されます。

もう一つの違いは、資金の出し手としての立ち位置です。バイアウトを行うPEファンドは自ら過半数を取得し、経営に深く関与して価値創造に取り組みます。これに対しメザニンファンドは、メザニンファイナンスを通じて資金を供給する立場にとどまり、対象企業の日々の経営判断には原則として関与しません。日本のLBOローン実務で扱うシニアレンダーとも異なり、メザニンファンドは審査の視点として「返済できるか」だけでなく「株式価値がどれだけ上振れしそうか」も見ます。この二重性が、メザニンファンドの与信審査をシニアレンダーの与信審査より一段複雑にしています。

商品設計:劣後ローン・優先株式・ワラントをどう使い分けるか

メザニンファンドが実際に組成する商品は、劣後ローン単体ではありません。発行体(資金調達を行う企業)の議決権構成・税務・バランスシートの見え方によって、劣後ローン・優先株式・ワラントを組み合わせます。表1に主な違いを整理します。

手段法的性質議決権発行体側の会計・税務上の扱い典型的な使われ方
劣後ローン金銭消費貸借(負債)原則なし支払利息は原則として損金算入LBO調達のギャップ埋め、事務手続きが比較的簡易
優先株式株式(資本)種類株の設計次第(無議決権が一般的)配当は利益処分で損金不算入、会計上は資本として計上議決権の希薄化回避、自己資本比率・格付対応
ワラント(エクイティキッカー)新株予約権行使前はなし、行使後は普通株式として発生劣後ローン・優先株式に付随して発行、税務上の扱いは個別に確認が必要金利・配当だけでは届かない目標リターンを株式上昇益で補う
表1:メザニンファンドが用いる主な商品の比較(一般的な傾向の整理)。個別契約の設計はこの限りではありません。

この使い分けの背景には、発行体側から見た実質コストの違いがあります(以下は説明用の仮設例です)。表面利率・配当利回りをともに年8%、実効税率を30%と仮定します。

式1:劣後ローンの税引後実質コスト
税引後実質コスト = 表面金利 ×(1 − 実効税率)= 8% ×(1 − 30%)= 5.6%

式2:優先株式配当の税引前利益換算コスト
税引前利益換算コスト = 配当利回り ÷(1 − 実効税率)= 8% ÷(1 − 30%)= 約11.4%

式1・式2が示すとおり、同じ年8%という表面利率・配当利回りでも、支払利息は損金算入できるため発行体の税引後実質コストは5.6%にとどまるのに対し、優先株式の配当は利益処分のため損金不算入となり、同じ8%を株主に払うには税引前ベースで約11.4%相当の利益を稼ぐ必要があります(実効税率30%という前提を置いた設例であり、実際の税率・会計処理は個社の状況により異なります)。それでも発行体が優先株式を選ぶのは、償還請求権の設計次第で負債よりバランスシート上「資本」に近く見せられる、既存の借入コベナンツに抵触しにくい、といった税務以外の理由があるためです。デットの種類で扱う優先順位の理解と合わせて押さえておくと、なぜ同じメザニンでも案件ごとに商品構成が変わるのかが見えてきます。

組成の実務:どこから話が来て、何を審査するか

メザニンファンドへのディールの持ち込まれ方は、大きく3つの経路に分かれます。第一に、バイアウトを行うPEファンドがLBOの資金調達でシニアローンだけでは買収価格に届かない部分を埋めるために声をかけるケースです。第二に、事業承継バイアウトのオーナー経営者が、後継者の議決権希薄化を避けながら資金を調達したいというニーズから直接持ち込むケースです。第三に、メインバンクがシニアローンだけでは対応しきれない案件について、自行または提携先のメザニンファンドを紹介するケースです。プライベートクレジット入門で扱うダイレクトレンディングと近い経路をたどりますが、メザニンは株式アップサイドまで見る点で審査の視点が異なります。

審査(デューデリジェンス)で重視される着眼点は、シニアレンダーと共通する部分と、メザニン特有の部分に分かれます。共通する部分は、キャッシュフローの安定性・既存借入の返済余力・担保余力の確認です。メザニン特有の部分は、劣後する分だけ返済順位が低いため、ダウンサイドシナリオでも元本と現金金利部分が回収できるかという保守的な検証と、ワラントを行使した場合にどれだけの株式価値が見込めるかという上振れ側の検証の両方を行う点です。シニアデットとメザニンが同じ資本構成の中に併存する場合、両者の間には返済順位・エンフォースメント(担保実行)の制限・買取権などを定める契約が結ばれます。この契約構造そのものの詳細はインタークレジター契約と優先劣後で扱うため、本記事では「メザニンはシニアとの契約上、単独では強制執行に動けない立場に置かれるのが一般的」という理解にとどめます。

目標リターンからワラント比率を逆算する

実務では「このワラント比率だと結果としてどれくらいのリターンになるか」だけでなく、逆に「ファンドの目標リターンに届かせるには、ワラントをどれだけ確保する必要があるか」という向きでも計算します。以下は説明用の仮設例です(PE投資戦略の全体地図の設例とは異なる前提・数値を用いています)。

ある企業に劣後ローン300百万円を、現金金利年7%+PIK金利年3%(合計10%)、期間4年の条件で提供したとします。現金金利は毎年300×7%=21百万円ずつ、4年間で合計84百万円を受け取ります。PIK金利3%は元本に組み入れられるため、300百万円は複利で1年目309.0百万円、2年目318.3百万円、3年目327.8百万円、4年目(満期)337.7百万円まで増加し、満期にこの元本が一括返済されます。

式3:ワラントなしの場合のキャッシュフロー
1〜3年目:現金金利21百万円/年 4年目:現金金利21百万円+PIK含み元本337.7百万円 = 358.7百万円

このキャッシュフローからMOICを計算すると、総回収額=84+337.7=421.7百万円、MOIC=421.7÷300=約1.41倍です。年ごとのキャッシュフローの時間差を考慮したIRR(試行錯誤法で正味現在価値がほぼゼロになる割引率)は年率約9.7%になります。ここで、このファンドが本件に対して設定していた目標ブレンドIRRが年13.0%だったとします。現金金利とPIKだけでは目標に届かないため、満期時点でどれだけのワラント時価を追加で確保する必要があるかを逆算します。

式4:目標IRRから逆算した必要ワラント時価
各年キャッシュフローを目標IRR 13.0%で割り引いた現在価値の合計が投資元本300百万円に一致するように、4年目の追加受取額(ワラント時価)を求めると = 約49.6百万円

式4の計算により、満期時点で約49.6百万円のワラント時価を確保できれば、目標ブレンドIRR 13.0%(MOIC約1.57倍)に到達する計算になります。仮に4年後の対象企業の株式価値を1,200百万円と仮定すると、必要なワラント比率は49.6÷1,200=約4.1%です。図2は、ワラントの有無による回収構成の違いを示しています。

図2:目標リターンからワラント比率を逆算する(設例) IRR 約9.7%/MOIC 約1.41倍 キッカーなし 現金金利7%+PIK金利3%のみ IRR 目標13.0%/MOIC 約1.57倍 キッカーあり +ワラント時価49.6百万円 元本300 現金金利累計84 PIK増価37.7 ワラント時価49.6
図:説明用の仮設例(単位:百万円)。実際の金利水準・ワラント比率は案件の信用力・交渉力により大きく異なります。

日本のプレーヤー:公表情報から確認できる範囲

日本でメザニンファイナンスを主たる業務とするファンドや事業会社は、バイアウトファンドと比べるとまだ多くありません。ここでは公表情報から確認できる代表的なプレーヤーを紹介します。

プレーヤー主体の性格主な投資形態特徴(公表情報)
株式会社日本政策投資銀行(DBJ)政策金融機関劣後ローン・優先株・ハイブリッドファイナンス財務基盤強化・事業買収・事業承継向けにメザニンを提供。三菱UFJ銀行と共同で「メザニン・ソリューション5号投資事業有限責任組合」に出資(2025年7月公表)。同シリーズは2008年12月の1号組成以来継続
ティール・メザニン株式会社(旧MCPメザニン株式会社)独立系メザニン専業コーポレートメザニン(事業会社の資本政策向け)/バイアウトメザニン(PEファンドの買収資金向け)2005年に銀行系メザニンファンドとして創業し、2025年にMCPパートナーズグループから独立して現社名に変更。2026年5月末時点で累計投資額1,746億円・累計75件の実績を公表
表2:各社公式サイト・ニュースリリースで確認できる情報のみを記載(2026年8月確認)。ファンド規模・個別案件の投資条件は非公表のものが大半です。

この2社は、政策金融機関系(DBJ)と独立系専業(ティール・メザニン)という異なる成り立ちを示しています。DBJは大手行・地域金融機関と共同でファンドを組成する形が多く、ティール・メザニンはコーポレートメザニンとバイアウトメザニンの2軸で自社単独のファンドを継続的に組成しています。このほか、業界紙の報道では地域銀行・信用金庫が小口特化型のメザニンファンドへ出資する動きも伝えられていますが、本記事執筆時点で一次情報による裏付けは取れていないため、詳細な言及は控えます。個別ファンドの実際の投資実績や保有先については、本サイトの/pe-funds/データベースで戦略タグから絞り込んで確認できます。

メザニンファンドのキャリア:バイアウトファンドとの違い

メザニンファンドで求められるスキルセットは、バイアウトを行うPEファンドともシニアレンダーとも一部重なりつつ、独自の要素があります。共通するのは、財務諸表の分析力とキャッシュフロー予測力です。異なるのは、投資判断の視点が「経営に入り込んで価値を作れるか」ではなく「劣後した立場でも元本と金利を守れるか、かつ株式アップサイドをどこまで確保できるか」という二重の視点になる点です。クレジットメモ(融資稟議書)のような与信分析の型に、優先株式やワラントの設計といったエクイティ寄りの発想を重ねられる人材が評価されやすい領域です。

採用の入り口は、銀行の法人融資・事業再生部門、独立系FASの財務アドバイザリー、クレジットファンドなどからの転職が中心で、新卒採用の主要ルートとして確立しているわけではありません。組織規模もバイアウトファンドより小さいケースが多く、1人が案件の組成からモニタリングまで幅広く担うことが一般的です。バイアウトファンドのキャリア全体像はPEファンド転職完全ガイドとPEファンドの職位別キャリアパスに譲りますが、メザニンファンドはこれらとは別のキャリアトラックとして捉える必要があります。プライベートクレジット領域の面接で問われる与信分析・コベナンツ・ダウンサイド保護の頻出論点はプライベートクレジット面接 想定問題集で扱っています。

よくある質問(FAQ)

メザニンファンドはPEファンドの一部門ですか、別会社ですか。

必ずしも同じではありません。DBJのように政策金融機関がメザニン専業の子ファンドを持つケース、ティール・メザニンのように独立系のメザニン専業会社として存在するケースなど、成り立ちは様々です。バイアウトファンド本体とは別の意思決定主体であることが一般的です。

メザニンローンに担保は付きますか。

案件により異なります。シニアデットに劣後する形で担保を共有する場合もあれば、無担保で金利・配当水準やワラントで見合いを取る場合もあります。担保の有無・優先順位はシニアレンダーとの契約交渉で決まります。

メザニンファンドが投資すると、対象企業の株主構成は変わりますか。

劣後ローンのみであれば株主構成は変わりません。優先株式やワラント行使を伴う場合は、行使後に新たな株主として登場することになりますが、議決権を持たない設計にすることが一般的です。

メザニンファンドで働くにはどんなバックグラウンドが有利ですか。

銀行の法人融資・事業再生部門での与信審査経験、独立系FASでの財務アドバイザリー経験、クレジットファンドでの投資経験などが評価されやすい傾向にあります。加えて、優先株式やワラントの設計を理解するために、エクイティ側の基本的な考え方も押さえておくと選考で強みになります。

まとめ

メザニンファンドは、シニアデットに劣後し普通株式に優先する劣後ローン・優先株式・ワラントを組み合わせ、原則として経営に関与しないまま金利・配当と株式アップサイドの一部を取りにいく専門ファンドです。商品の使い分けは発行体側の税務・議決権への影響で決まり、ディールの組成では目標リターンからワラント比率を逆算する発想が実務の核心になります。日本ではDBJのような政策金融機関系とティール・メザニンのような独立系専業が公表情報から確認できる代表的なプレーヤーであり、キャリアとしてはバイアウトファンドとは別のトラックとして捉える必要があります。基本的な定義やPIK金利の考え方はPE投資戦略の全体地図とPIK金利とはに譲りますので、あわせて参照してください。

出典・参考(2026年8月確認)

  • 株式会社日本政策投資銀行(DBJ)「メザニンファイナンス」サービスページ(劣後ローン・優先株・ハイブリッドファイナンスの説明)(DBJ)
  • 株式会社日本政策投資銀行(DBJ)ニュースリリース「株式会社三菱UFJ銀行とのメザニンファンド(5号)への出資について」(2025年7月11日)(DBJ)
  • ティール・メザニン株式会社 コーポレートサイト(投資実績・事業内容)(ティール・メザニン)
  • ティール・メザニン株式会社「会社概要」(ティール・メザニン)
  • ティール・メザニン株式会社「代表メッセージ」(沿革・MCPメザニン株式会社からの社名変更に関する記載)(ティール・メザニン)
  • ティール・メザニン株式会社(旧MCPメザニン株式会社)「『MCPメザニン6投資事業有限責任組合』の設立について」(2025年3月31日)(ティール・メザニン)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための仮設例です。プレーヤー・キャリアに関する情報は執筆時点(2026年8月)の公開情報に基づく参考値です。