想定読者:米国企業やIFRS適用企業を含むCompsを作るIBD・FAS・PE・エクイティリサーチの担当者、海外同業と比較する経営企画・財務の担当者
前提知識:EBITDA、EV、純有利子負債、リース会計の基本

米国の専門店チェーンと欧州の同業を並べて類似会社比較​(Comps)を作るとしよう。店舗を借りている2社の貸借対照表には、どちらもリース負債が載っている。ところがEBITDAの中身は同じではない。IFRSの会社のEBITDAは店舗賃料を差し引く前の数字に近く、米国基準の会社の営業リースの賃料は差し引かれたままだ1。

2019年に適用が始まった米国基準とIFRSの変更は、リースを貸借対照表に載せるという大きな目標では両基準をそろえた。では比較は実際に楽になったのか。残った差はどの指標に現れるのか。日本企業が同じ問題に直面する前に、米国基準とIFRSの経験から確かめておく意味がある。

この記事が主に参照する研究

Altamuro, J., L. H. Chen and Y. Li(2025)「Are U.S. GAAP-based and IFRS-based accounting amounts more comparable after the revised lease standards? Evidence from ASC 842 and IFRS 16」Review of Accounting Studies 30(3)

  • 公表:2025年2月にオンライン公開、2025年9月号掲載。それ以前の公表について確認できたのは2点である。謝辞に旧題での流通と、2022年と2023年の学会の参加者への謝意の記載がある。SSRNのプレプリントのDOIは、Crossrefの記録で投稿が2023年(月日の記載なし)、記録の作成が2024年12月である。最初の公開日と旧題の版の公開先は未確認2。参照した版:掲載誌版(オープンアクセス)。査読:済
  • データ:米国基準企業とIFRS企業を同業・同規模帯で組み合わせた2,208組(2016〜2021年、回帰は10,934組年)。IFRS側は28法域で、日本は含まれない
  • 方法:適用前にリースを多く使っていた組と少ない組の変化を比べる。著者らは厳密な差の差ではないと注記している
  • 位置づけ:既存の比較可能性の尺度を、基準変更の検証に当てはめた研究

貸借対照表は​近づき、​費用と​キャッシュフローは​分かれた

国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)は2006年に共同でリース会計の見直しを始め、10年後にIFRS 16とASC 842を公表した3。12か月を超えるリースを貸借対照表に載せる点は同じだが、ASC 842は営業リースとファイナンス・リースの2区分を残し、IFRS 16はすべてを金融の提供とみなす単一のモデルにした4。この分岐を一覧にしたのが表1である。

表1 借手の処理は貸借対照表で近づき、費用とキャッシュフローで分かれる

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項目IFRS 16ASC 842
(営業リース)
企業会計基準
第34号
貸借対照表使用権資産とリース負債を計上同左同左
損益の費用減価償却費と利息定額の単一費用減価償却費と利息。償却方法は定額法等から選択
EBITDAリース料を含まないリース料を引いた後リース料を含まない(EBITDAの定義は会社ごと)
キャッシュフロー元本は財務。利息は支払利息の区分に従う全額が営業元本は財務。利息は支払利息の区分に従う
計上しない例外短期・少額短期。少額の例外なし短期・少額
適用2019年1月1日以後開始の年度2018年12月15日後開始の年度2027年4月1日以後開始の年度。2025年4月1日以後開始の年度から早期適用可
出所:R1 p.2、​p.5〜6、​R2 p.3〜4、​p.50、​p.66〜68、​R4 第38項・​第58項・​BC39、​R5 第20項・​第22項、​R6 第34項、​R8 の​記述を​基に​大手町​プレップ​作成。​ASC 842 の​適用日は R1 脚注3 の​表現で、​上場企業以外の​適用日は​含まない。​ASC 842 の​ファイナンス・​リースは IFRS 16 に​近い​処理で、​この​表の​対象外。

リース負債の金額そのものは、両基準でほぼ同じになるとIASBは見込んでいた5。違いは負債の外にある。論文が「比較可能性」と呼ぶものも、この点を切り分けられるよう設計されている。

尺度の考え方はこうだ。米国基準の企業群とIFRSの企業群それぞれで、株価を1株純資産と1株利益に回帰する。ある企業の数字に、自社の基準の係数を当てた理論株価と、相手の基準の係数を当てた理論株価を比べ、その差が小さいほど比較可能と判定する6。利益を株式リターンに対応させる尺度と、利益を翌期の営業キャッシュフローに対応させる尺度も別に作る。同じ会計数値が市場や現金にどう結びつくかが両基準で似てきたかを見ている、と考えればよい。

株価との​対応は​改善し、​営業​キャッシュフローとの​対応は​悪化した

2019年の適用を挟んで、リースを多く使う組の総合指標は、少ない組に比べて0.5465上がった(t値6.01、1%水準で有意)7。適用前の高リース組は比較可能性が0.5654低かったので、その差をほぼ埋める大きさになる8。標準偏差の約0.13倍で、著者らはこれを「13%」の上昇と表現している9。統計的には明確だが、経済的な大きさは控えめに読むのがよい。

図1 比較可能性の変化図1 どの対応で比較可能性が動いたか高リース組の変化(低リース組との差)各尺度の標準偏差に対する倍数総合:株価と純資産・利益+0.13倍t値 6.01(有意)総合:資産と負債に分解+0.18倍t値 5.43(有意)利益と株式リターン+0.01倍t値 0.67(有意でない)利益と翌期の営業CF−0.11倍t値 −3.52(有意)
出所:R1(Review of Accounting Studies 掲載版)​表4パネルB​(p.16)、​表5列3(p.21)、​表6列3(p.22〜23)の​数値を​基に​大手町​プレップ作成​(原図は使っていない)。​標準偏差比は​交差項の​係数を​各尺度の​標準偏差で​割った​編集部の​計算で、​総合指標の​値は​論文の​脚注18の​計算と​同じ。​プラスは​比較​可能性の​上昇。​対象は​米国基準企業と​IFRS​企業の組​(2016〜2021年、​10,915〜10,934組年)。​4つの​尺度は​単位が​違う​ため係数を​そのまま​比べられない。

図1が示すとおり、改善は一様ではない。利益と株式リターンの対応では統計的に有意な変化は確認されなかった(係数0.0021、t値0.67)10。利益と翌期の営業キャッシュフローの対応は、逆に有意に下がった(係数−0.0016、t値−3.52)11。総資産と総負債に分けた総合指標は0.8403上がっている(t値5.43)12。

著者らはこの組み合わせを、改善は貸借対照表の変化に関連し、キャッシュフローの悪化は2区分と単一のモデルの違いに整合すると解釈している13。ただし資産と負債のどちらの効果かは、この設計では見分けられないとも述べている14。

IFRS側の企業が属する国の会計執行の強さで分けると、総合指標の係数は執行の強い国で0.6556、弱い国で0.3817だった15。著者らも「ある程度の証拠」と控えめに述べている。アナリストの行動にも変化の兆しがある。適用後、リースの多い企業では普段は他方の基準の企業を追うアナリストによる1株純資産予想が増える傾向が一部で見られたが、4つの検定のうち有意なのは2つで、結果はそろっていない16。

この​研究から​言える​こと、​言えない​こと

第一に、論文はEV/EBITDAもレバレッジも検証していない。対象は株価・リターン・翌期キャッシュフローへの対応である17。第二に、標本はIFRS側の組年の14.27%が台湾、10.99%が英国、9.14%が豪州、8.40%がインドで、金融と公益を除き、日本は含まれない18。第三に、適用後の観察は3年で、その大半がCOVID-19の時期と重なる。2020〜21年を除いても結果は保たれたというが、著者らは影響を排除できないと書いている19。

頑健性の検証は厚い。ランダムに組分けした場合や、架空の適用日を置いた場合には有意な差は出ず、主要国を除いても符号は変わらない20。一方、マッチングの方法を変えると総合指標の係数は0.2497から0.9590まで動く21。効果の方向は安定していても、大きさには幅があると読むべきだろう。また利益とリターンの尺度には適用前から高リース組と低リース組で傾向の差があり、「変化が無かった」と強くは言えない22。適用時期のずれを使った追加分析では、米国側が先に適用した組で改善が見られたが、著者らは標本が小さく適用後が1年しかないと留保している23。

金額の感覚は、別の資料が補ってくれる。Santana and Serafim(2024)は米国の466社の2019年の注記から、もしIFRS 16を当てはめていたらという試算を行った。平均でEBITは5.5%増、純利益は6.0%減、営業キャッシュフローは16.6%増となった24。中央値はそれぞれ1.3%増、1.5%減、6.6%増で、影響は一部の企業に偏る。小売のEBITは平均18.3%増、中央値7.5%増、宿泊・飲食は平均25.3%増、中央値11.6%増だった25。IASBが2016年に示した推計でも、IAS 17からIFRS 16への変更によるEBITDAの増加は全体の9.7%に対し、小売で28.6%、航空で43.1%と業種差が大きい26。

大手町​プレップの​考察:ストックと​フローの​割り算で​崩れる

ここからは編集部の推論であり、論文が検証したことではない。研究の結果を実務の指標に置き換えると、ストックは近づき、フローは近づいていない、と要約できる(仮説)。EV/EBITDAも純有利子負債/EBITDAも分子がストックで分母がフローなので、この割れ目の真上にある。負債が両基準で見えるようになったために、むしろ負債込みのEVを米国基準のEBITDAで割る混在が起きやすくなった面もあるだろう。IASB自身、負債にリース負債を含めた負債/EBITDAはIFRS 16のほうが低く出ると見込み、ROCEもIFRS 16のほうが高く出ると見ていた27。

そろえ方は2通りある。米国企業のEBITDAにオペレーティング・リース費用を足し戻してIFRS側へ寄せるか、IFRS企業からリース料相当を引いて米国基準側へ寄せるかである。前者では分子をEVにリース負債を足した値にする。どちらでもよいが、片方だけ動かすと壊れる。倍率が動く方向は次の簡単な式で見当がつく。リース料÷EBITDARをs、リース負債÷年間リース料をk(リース負債倍数)、調整前の倍率をmとすると、IFRS基準へ直したときの倍率の変化はs×(k−m)になる。

図2 倍率の感応度図2 倍率はどちらへ動くか(設例)IFRS基準へ直したときのEV/EBITDAの変化(倍)調整前の倍率 8.75倍の場合。架空の計算−1.5−1.0−0.50.0+0.5+1.0k=5k=7k=9k=125%20%40%EBITDARに占めるリース料の比率(s)
出所:学習用の​仮定に​基づき大手町​プレップ​作成。​研究の​結果ではない。​変化=s×(k−m)で​計算。​sは​リース​料÷EBITDAR、​kは​リース​負債÷年間​リース​料、​mは​米国基準の​ままの​倍率​(ここでは8.75倍)。​実線・破線の​違いは​kの​違い​(k=5、7、9、12)。

図2の読み方は単純だ。kがmより小さければ、IFRS基準の倍率は下がる。kがmより大きければ、上がる。長期の賃借を低い割引率で抱える会社はkが大きく、倍率が高い成長企業はmが大きい。レバレッジにも同じ式が使え、調整前の倍率Lに対して変化はs×(k−L)となる。kがLを上回る場面では、レバレッジは上がる。

日本の​実務への​応用:移行期は​3つの​定義が​並ぶ

日本の企業会計基準第34号は、IFRS 16と同様の単一モデルを採り、2027年4月1日以後開始の年度から適用する。2025年4月1日以後開始の年度からは早期適用もできる28。3月決算の会社なら2028年3月期が強制適用の最初の年度にあたる(編集部の計算)。ASBJは単一モデルの理由に、IFRSとの整合や、利用者が費用を償却と利息に分ける調整が不要になる点を挙げている。一方で、経済実態との整合という観点では2区分との優劣はつけられないとも記している29。この選択は、米国基準との差が日本企業にも持ち込まれることを意味する。

日本の標本がない以上、研究の結果を日本に当てはめるのは推論になる。それでも、案件の現場で次の3つが並ぶのは制度から分かる。未適用の日本基準の会社はオペレーティング・リースの負債を載せず、リース料を費用に残す30。適用後の日本基準の会社と、IFRSを​任意適用する日本企業は単一モデルになる。米国基準の会社は負債を載せつつ費用を残す。この第3の型は、既存のLBO​モデルでの​リースの​扱いで整理した「リース調整前」とも「オンバランス」とも一致しない。

日本の新基準は細部でIFRSとも完全には同じではない。所有権が移転しないリースの使用権資産の償却方法は定額法等から企業の実態に応じて選べ、短期リースと少額リースには資産・負債を計上しない取扱いがある31。キャッシュフロー計算書では、元本は財務活動、利息は採用する支払利息の区分に従い、負債に含めない短期・少額・変動のリース料は営業活動に記載する32。米国基準の少額資産の例外は無いが、重要性に基づく資産計上の方針は認められる33。日本基準の適用後は、リース負債の利息費用を損益計算書の区分表示か、科目と金額の注記で確かめられる34。

移行の年には別の落とし穴もある。適用初年度は遡及適用が原則だが、累積的影響を期首の利益剰余金に反映する方法を選ぶと比較情報は組み替えられない35。この場合、前年比のEBITDA成長率は会計の変更分だけ跳ねる。実際の導入作業は新リース​基準の​導入準備に譲る。なお、IASBは2026年7月に適用後レビューの結論として、IFRS 16は全体として意図どおり機能していると判断した。リースの現金流出の内訳の開示は別のプロジェクトで検討するという36。分析者の悩みが消えたわけではなく、開示の改善が議論されている段階である。

設例:同じ​店舗網を​3通りに​読む

学習用の設例(架空)

  • A社は国内外に店舗を持つ小売。リース料を差し引く前の利益(EBITDAR)は1,000百万円
  • 年間リース料200百万円、残存8年、年末払い、割引率4.0%。リース負債は1,346.5百万円(k=6.73)
  • 使用権資産は定額で年168.3百万円を償却、1年目の利息は53.9百万円。自社資産の減価償却費は100百万円
  • 株式時価総額6,000百万円、金融の純有利子負債1,000百万円。リース負債を含まない
  • すべてのリースが米国基準の営業リースに分類されると仮定する。税は考えない

表2 同じ会社を3通りに読む(学習用の設例・架空)

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指標米国基準のままIFRS基準へ直す分子と分母が混在
EBITDA(百万円)8001,000—
EV(百万円)7,0008,346.5—
EV/EBITDA8.75倍8.35倍10.43倍/7.00倍
純有利子負債/EBITDA1.25倍2.35倍2.93倍
営業利益(EBIT、百万円)700.0731.7—
EV/EBIT10.00倍11.41倍—
リース関連の費用後の税引前利益(百万円)700.0677.8—
営業CF(税・金融負債の利息の前、百万円)800946.1〜1,000—
リース料を全額引いたCF(百万円)800800—
出所:学習用の​仮定に​基づき大手町​プレップ作成​(架空)。​研究の​結果ではない。​混在の​欄の​EV/EBITDAは、​左が​負債込みEV÷米国基準の​EBITDA、​右が​負債抜きEV÷IFRS​基準の​EBITDA。​純有利子負債/EBITDAの​混在は、​リース負債を​含む​負債÷米国基準の​EBITDA。​IFRS​基準の​利益は​単一契約の​1年目で、​契約の​後半には​差が​反転する。​営業CFの​幅は​利息を​営業・財務の​どちらに​区分するかの​違い。

表2の左と中央は同じ会社で、倍率の差−0.40倍は定義の差にすぎない。s=20%、k=6.73、m=8.75倍を式に入れると同じ値になる。レバレッジは1.25倍から2.35倍へ1.10倍上がる。リース料を全額引いた後のキャッシュフローは、どの基準でも800百万円で変わらない。現金が同じであることは、IASBの説明とも整合する37。

値決めの誤りはこの差から生まれる。米国基準のまま8.75倍をIFRS基準のEBITDA 1,000百万円に当て、リース負債を控除すると、株式価値は6,403.5百万円で+6.7%ずれる。リース負債の控除も忘れれば7,750.0百万円で+29.2%である。逆にIFRS基準の8.35倍(計算には丸め前の倍率を使う)を米国基準のEBITDAに当てると、5,677.2百万円で−5.4%になる。方向が逆になる点に注意したい。EV/EBITを使えば安全というわけでもなく、この設例では10.00倍と11.41倍で差が開く。

明日から​使える​確認項目

  1. Compsの各社に「適用基準」と「リースの扱い」の2列を足す。米国基準、IFRS、日本基準(適用前・適用後)を区別する
  2. データベースの純有利子負債にオペレーティング・リース負債が入っているかを、1社は決算書まで戻って確かめる
  3. 米国企業の注記からオペレーティング・リース費用、負債、残存期間、割引率を取り、kとsを計算する38
  4. 各社についてs×(k−m)を計算する。編集部の仮の目安(研究で検証されていない)として、変化の絶対値が0.3倍を超える会社は調整後の倍率を別欄に示す
  5. EV/EBITDAだけでなく、リース料を全額引いたキャッシュフローで横に比べる。営業キャッシュフローは基準の違いで動く
  6. 日本の案件では、対象会社と比較会社の適用時期、比較情報の組み替えの有無、レバレッジのコベナンツの定義を確認する

担当者に尋ねる質問としては、「このEBITDAはリース料の前か後か」「EVにリース負債は入っているか」「比較会社の倍率は同じ定義か」の3つで足りる。答えが1つでも曖昧なら、その倍率はまだ比較に使える状態ではない。

よく​ある​質問

研究の​結果から、​米国企業と​IFRS​企業の​EV/EBITDAは​そのまま​比べて​よいと​言えますか。

言えません。​研究の​改善は​株価と​純資産・​利益の​対応で​測った​もので、​EV/EBITDAの​検証ではありません。​営業リースの​費用は​EBITDAの​計算に​残る​ため、​定義を​そろえる​必要が​あります。

調整は​IFRS​基準に​寄せるのと​米国基準に​寄せるのと、​どちらが​よいですか。

比較対象の​多数派に​寄せるのが​手間の​少ない​方法です。​IFRSと​適用後の​日本基準が​中心なら​IFRS​基準、​未適用の​日本基準が​中心なら​リース​料を​費用に​残す側が​よいでしょう。​これは​編集部の​考え方で、​研究で​検証された​ものではありません。

EBITDARを​使えば​差は​消えますか。

リース​費用の​差は​かなり​小さく​できますが、​短期・少額・​変動​リース​料の​扱いや、​固定資産を​持つ会社との​比較の​問題は​残ります。​EBITDARの​定義と​計算は​用語集に​まとめています。

まとめ

米国基準とIFRSの2,208組を比べた研究では、リースを多く使う組の比較可能性は株価との対応で改善し、著者らはこれを主に貸借対照表の変化と結びつけている。利益と翌期の営業キャッシュフローの対応は悪化した。研究はEV/EBITDAを検証していないが、ストックとフローを割る指標に基準の差が残ることは会計処理から分かる。日本では2027年4月以後開始の年度から単一モデルが始まり、移行期には定義の異なる会社が並ぶ。倍率を比べる前に、分子と分母が同じ側にあるかを確かめる作業が欠かせない。

脚注

  1. R2(Effects Analysis, 2016年1月)p.4・p.68。IFRS 16 は利息と減価償却を EBITDA の下に置き、FASB のモデルは旧オフバランスのリースの費用を営業費用の単一費用として EBITDA の上に置く。なお本資料の「FASB モデル」は2015年12月31日時点の決定を指す。↩
  2. 確認できた事実:R1 p.49 の謝辞に旧題(“Earnings Attributes under New Lease Standards: Evidence from ASC 842 and IFRS 16”)と、2022 Haskayne and Fox Accounting Conference、2023 Temple Ph.D. Alumni Conference の参加者への謝意がある。前者は欧州会計学会の案内(2022年1月掲載)に2022年6月20〜22日開催予定とある。SSRN 4371344 の DOI(10.2139/ssrn.4371344)は Crossref の記録で posted が2023年(年のみ)、記録の作成が2024年12月18日。未確認の事項:SSRN のページ(掲載日)、旧題の版の公開先と日付、学会で報告された版、最初の公開日。謝辞は学会での報告の有無や版を述べていない。↩
  3. R1(掲載誌版, 2025年)p.5。ページは PDF のページで示す(誌面のページは PDF のページに 2672 を足した値)。↩
  4. R1 p.2・p.5〜6。日本の企業会計基準委員会(ASBJ)も両者の違いを同様に説明している(R4 BC39)。↩
  5. R2 p.66・注57。計上対象はほぼ同じで、負債の測定も指数連動の支払いの見直しを除けば同じとする。↩
  6. R1 p.17、付録B(p.44〜47)。Barth, Landsman, Lang and Williams(2012)の方法に従う。差の絶対値に −1 を掛けるので、数値が大きいほど比較可能性が高い。↩
  7. R1 表5列3(p.21)。HighOLLPair と適用後の交差項。リースの多寡は適用前の推計営業リース負債÷総負債の国内中央値で分ける(p.9)。↩
  8. R1 表5列3(p.21)の HighOLLPair の係数 −0.5654(t値−7.72)と交差項の比較は編集部による。↩
  9. R1 脚注18(p.19)。係数 0.5465 を標準偏差 4.225(表4パネルB, p.16)で割った値で、比較可能性そのものが13%上がったという意味ではない。総合指標の平均 −16.620 に対しては約3.3%(編集部の計算)。↩
  10. R1 表6パネルA列3(p.22)。↩
  11. R1 表6パネルB列3(p.22)。↩
  12. R1 表6パネルC列3(p.23)。↩
  13. R1 p.4・p.25。論文は IFRS が利息も財務区分に入れると書くが、IAS 7 では営業・投資・財務のいずれにも区分できる(R2 p.50 注48)。論文の記述は単純化と読むのがよい。↩
  14. R1 脚注21(p.26)。↩
  15. R1 表7列1・2(p.27)。両方とも1%水準で有意。差は −0.2739 で表には10%水準の印があるが、併記の χ²=2.42 は自由度1なら両側 p=約0.12にあたる(編集部の計算)。↩
  16. R1 表12(p.38〜39)、p.40。米国基準企業の増加確率 0.5032(t値2.32)と IFRS 企業の比率 0.0028(t値2.44)が有意、残る 2 つ(t値1.49、0.37)は統計的に有意でない。↩
  17. R1 p.17、付録B(p.44〜47)。↩
  18. R1 p.8〜9・p.12、表2(p.11)、表3(p.13〜14)。インドは IFRS を基にした Ind AS の企業で、除いても結果は同様という(脚注9, p.9)。↩
  19. R1 p.41、脚注30。除外の検定は表に掲載されていない。↩
  20. R1 表8パネルB・C(p.30〜31)、表9(p.32)。↩
  21. R1 表11(p.36)。いずれも1%水準で有意。↩
  22. R1 表8パネルA列2(p.30)、脚注24(p.29)。↩
  23. R1 p.26。表は掲載されていない。↩
  24. R3(Santana and Serafim, 2024)表7(PDF p.10)。残存期間・割引率・負債額を注記から手で集めた試算で(PDF p.5)、実際の適用結果ではない。↩
  25. R3 表7(PDF p.10)。↩
  26. R2 p.47 の金額から編集部が計算。EBITDA は全体 3,394,490→3,722,371、小売 270,403→347,716、航空 51,624→73,849(百万米ドル)。IASB の推計で、個社の影響は平均と異なると注記されている。↩
  27. R2 p.69。IASB は営業利益も IFRS 16 のほうが高くなると見込んでいた(p.68)。↩
  28. R4 第58項、BC39。↩
  29. R4 BC39。↩
  30. R4 BC10(3)(企業会計基準第13号の賃貸借処理に準じた会計処理では、重要なオペレーティング・リースの負債が本表に計上されないと指摘を受ける可能性があるとする)。費用の扱いは R6 第34項の改正前の記述(支払リース料は通常、営業損益計算の対象に含まれ、原則として営業活動に区分)。↩
  31. R4 第38項、R5 第4項(2)・第20項・第22項。↩
  32. R6 第34項。↩
  33. R8 5.7節(二次資料)。↩
  34. R4 第51項。↩
  35. R5 第118項・第136項。↩
  36. R7。2026年7月21日の IASB の決定。↩
  37. R2 p.68。基準の違いは総キャッシュフローの差を生まないとする。↩
  38. これらの項目を米国企業の注記から集められることは R3(PDF p.5)で確認した。↩

参考文献​(2026年10月確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。