この記事で分かること
- リースのオンバランス化の仕組み——使用権資産とリース負債(設例:約44.5)
- PLの変化:賃借料が「減価償却+利息」に化け、EBITDAが増えて見えるカラクリ
- 分析への影響——EV/EBITDA比較・ネットデット・コベナンツで何に注意するか
なぜ「借りているだけ」をBSに載せるのか
店舗を10年借りる契約は、経済的には「10年分の支払義務を負って資産の使用権を買った」のと同じです。これをオフバランスのままにすると、同じ経済実態の会社(買った会社と借りた会社)のBSが全く違って見える——この歪みを正すため、国際的な基準では借り手のリースを原則オンバランス化する考え方が主流になっています(適用範囲・簡便法・日本基準の動向は改正が続く領域のため、実案件では必ず一次確認してください)。
仕組みの設例
| 項目 | 値 |
|---|---|
| リース負債(開始時)=10×年金現価係数4.452 | 約44.5 |
| 使用権資産(開始時・同額が典型) | 約44.5 |
| 初年度PL:減価償却(44.5÷5年) | 約8.9 |
| 初年度PL:支払利息(44.5×4%) | 約1.8 |
| (参考)オフバランス時代のPL:賃借料 | 10.0 |
- BSには使用権資産とリース負債(実質的なデット)が両建てで載ります。
- PLでは営業費用だった賃借料10が消え、減価償却8.9+利息1.8に分解されます(初年度は合計10.7と前倒し気味、後年は利息が減って軽くなる)。
分析への影響:EBITDAが「増える」
- 賃借料はEBITDAの上(営業費用)、減価償却と利息はEBITDAの下——だからオンバランス化で事業は何も変わらないのにEBITDAが10増えて見えます。
- したがってEV/EBITDA比較(分母の平仄)では、①分母EBITDAのリース費用の扱いと、②分子EVにリース負債を含めるかを全社で揃えることが絶対条件です。片方だけ調整した比較は壊れています。
- ネットデット(EVブリッジ)・レバレッジ・コベナンツ(定義交渉)でも「リース負債を含むか」で数値が大きく動きます。契約上の定義確認が実務の第一歩です。
- M&AのDD(財務DD)では、リース料の将来コミットメントが実質的な固定費・デットライクとして評価されます。
モデルでの扱い
- 丁寧に組むなら、リース負債のロールフォワード(期首+利息−支払=期末)と使用権資産の償却スケジュールを1ブロック追加します(型はデットスケジュールと償却レイヤーの合成)。
- 簡便には「リース費用を営業費用のまま扱う」旧型の見え方で統一する方法もあります。どちらでも良いが、比較対象と評価指標の定義に一貫させることが本質です。
Q. 面接で「リースのオンバランス化の影響は?」と聞かれたら?
A.「BSに使用権資産とリース負債が両建てされ、PLでは賃借料が減価償却と利息に分解されます。結果としてEBITDAが増えて見えるため、マルチプル比較では分母の定義とEVへのリース負債算入を全社で揃える必要があります」。
Q. リース負債は「借金」として扱うべきですか?
A. 経済実態は固定的な支払義務であり、デットに準じて扱うのが分析の主流です。ただし契約の解約可能性・変動リース料の扱いなどグレーがあるため、機械的に全額デット扱いせず、契約内容を確認して判断します。
まとめ
- リースは「使用権の購入+分割払い」。設例:年10×5年@4%→負債・資産とも約44.5。
- PLは賃借料→償却+利息へ。EBITDAは実態不変でも増えて見える。
- 比較・ネットデット・コベナンツは定義の統一がすべて。基準の細部は一次確認。
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本記事について
本文中の数値例はすべて理解のための設例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。制度・実務慣行に触れる箇所は一般的傾向の整理です。個別案件への適用時は必ずその時点の一次情報・専門家にご確認ください。