この記事で分かること
- パッシブ運用の拡大が議決権行使と対話に与える影響を、関与の誘因(報酬率×持株比率)から整理した2022年の展望論文の要点と、研究の結論がなぜ割れているのか
- パッシブはアクティブより経営者寄りに投票するという米国の結果と、それを「怠慢」と読み切れない理由(大手と小規模の違い、投票前の和解)
- パッシブ比率の高い日本の上場会社とアセットオーナー・運用会社が、株主ごとの関与の誘因を見積もり、対話と総会の準備に生かす手順(学習用の設例つき)
想定読者:上場会社のIR・総務・経営企画、運用会社とアセットオーナーのスチュワードシップ担当、アクティビスト対応や総会を支援するFA・弁護士
前提知識:株主総会の議決権行使の流れ、現在価値と株主資本コストの基本
株主名簿の上位に信託銀行の信託口が並ぶ会社は珍しくない。名義の背後には指数に連動して株を持ち続けるパッシブ運用も、銘柄を選ぶアクティブ運用もありうるが、名簿だけでは区別できない。パッシブの比重が高いとみられる会社では、売らない株主の存在は総務やIRにとって安定材料に見える一方、別の疑問も生む。指数に合わせて持つだけの株主は、総会の議案をどこまで調べて賛否を決めているのか。対話に来る担当者は、会社を変える力と動機をどの程度持っているのか。
この問いについて、米国では「パッシブは手数料が低く、指数に勝つ必要もないので監視をしない」という見方と、「最大株主として市場全体の水準を引き上げている」という見方が並び、実証研究の結論も割れている。本稿では、この論争を関与の誘因という一つの物差しで整理した展望論文を手がかりに、研究が何を示し、何がまだ分からないのかを読み、日本の株主構成に当てはめる1。運用会社の対話がPBRなどを動かしたかという効果の検証は、GPIFの対話記録を使った研究を扱ったパッシブ運用の対話はPBRと政策保有株を動かしたかに譲り、ここでは「なぜ、どの程度関与するのか」に絞る。
この記事が主に参照する研究
Alon Brav, Andrey Malenko, Nadya Malenko(2022)「インデックス運用の拡大がコーポレート・ガバナンスにもたらすもの(Corporate Governance Implications of the Growth in Indexing)」NBER Working Paper No. 30718
- 公表:初版 2022年9月(SSRN)、同年10月に ECGI、12月に NBER の WP。2023年8月に改訂し Oxford Research Encyclopedia of Economics and Finance に収録。参照した版:NBER WP 版(2022年12月)。改訂版では、本稿で使う数値例・引用数値と結論部分が同じことを語句検索で確認(改訂版全体の照合はしていない)。査読:WP は未査読(百科事典への収録の査読形態は未確認)
- データ:なし。米国を中心とする理論・実証研究の整理(展望論文)
- 方法:運用会社が投資先に関与する便益と費用の枠組みを示し、既存の実証をその枠組みで読み直す
- 位置づけ:新しい分析ではなく研究の整理。著者自身の理論・実証研究も整理の対象に含まれる
パッシブの関与を決める「報 酬率×持株比率」
運用会社が投資先に働きかけて企業価値を1%高めたとき、運用会社自身は何を得るか。著者らは、得られるのは値上がり益そのものではなく、運用資産が増えた分の報酬だと整理する。利得は、運用報酬率×運用資産×その銘柄の組入比率×1%(直接の誘因)と、超過リターンが呼び込む資金流入による報酬(流入の誘因)の和で表される。運用資産×組入比率は、企業の時価総額×運用会社の持株比率に置き換えられる2。
この式から二重のただ乗りが読み取れる。第一に、持株比率が100%未満なら改善の果実の大半は他の株主に渡る。第二に、運用会社は関与の費用を自分の報酬から払うのに、受け取るのは改善分のうち報酬率に当たる部分だけで、残りはファンドの投資家のものになる。手数料の低いパッシブ運用ほど、第二の層が重くなる3。
著者らの数値例では、時価総額100億ドル、株主資本コスト10%、成長率5%の企業の価値を1%高めると、報酬0.5%で4%を持ち続ける投資信託の追加報酬の現在価値は40万ドル、運用報酬1.5%と成功報酬20%のヘッジファンドなら176万ドルになる。同じ割引率と成長率の下では、報酬0.15%の指数ファンドの便益は、持株の0.03倍を直接持つ株主と同じ計算になる4。ただし誘因は報酬率と持株比率の積で決まるので、手数料が低くても持株の大きい大手のインデックス運用会社は、少額しか持たないアクティブ運用より大きな誘因を持ちうる。小規模なパッシブは両方が小さく、誘因は非常に小さいと著者らはみる5。
この枠組みの基になった Lewellen らの推計では、2017年に大手インデックス運用会社5社は、典型的な保有銘柄の価値が1%上がると年間報酬が13.3万ドル増え(推定報酬率0.11%)、平均的な機関投資家の12.9万ドルを上回っていた。資金流入による部分はわずかで、2015〜17年の誘因は報酬率が0.50%なら約3.4倍になったという。誘因が弱いのは主に報酬率の低さのためだと Lewellen らは述べている6。
費用の側にも違いがある。著者らによれば、パッシブは個社の事業の改善に必要な情報では不利だが、多数の銘柄に同じ基準を当てはめる取締役会の構成や株主の権利のような論点では規模の経済が働く。持株が大きければ争点のある投票で結果を左右する立場にあり、票集めの費用をかけずに交渉力を持てる。パッシブが個社へのアクティビスト的な手法を使わず、市場全体の基準づくりで影響力を持つという分業は、既存の実証とも整合的だと整理されている7。
研究が示した結果:投票は経営者寄り、ただし読み方に幅がある
表1は、サーベイが取り上げた研究のうち、本稿で本文を確認できたものの結果を論点別に並べたものだ。数字の向きだけを拾うと矛盾して見えるが、何を比べたかを見ると整理がつく。
表1 パッシブ運用の拡大について研究が示したこと(米国)
表は横にスクロールできます →
| 論点 | 研究(対象) | 示されたこと | 読み方の注意 |
|---|---|---|---|
| 関与の誘因 | R2:米国の13F提出機関(1980〜2017年) | 大手インデックス5社は、保有銘柄の価値が1%上がると年間報酬が13.3万ドル増える(2017年、報酬率0.11%)。平均的な機関投資家は12.9万ドル | 関与の費用を含まない上限。報酬率が0.15%でなく0.50%なら誘因は約3.4倍(2015〜17年) |
| 議決権行使 | R3:米国の投信・ETFの投票(2004〜18年) | 経営者とISSが一致する議案では投票は同じ。対立する議案ではパッシブが10.1%ポイント経営者寄り | 経営者寄りであることが、怠慢か独立した判断かは区別できない(R1) |
| 議決権行使 | R4:米国の委任状争奪戦(2007〜17年。投票207件・和解324件・撤回128件) | 差は9.5%ポイント。大手3社を除くと4.4%ポイント、直前に和解した争奪戦では2.4%ポイント(有意でない) | 勝てそうな争奪戦は投票前に和解するという選別を含む |
| 統治の変化 | R5:Russell 1000/2000 の境界付近(1998〜2006年) | パッシブの持株が増えると、独立取締役が増え、買収防衛策の撤廃と議決権の平等化が進む | パッシブが主に個人株主を置き換えた局面と整理される(R1) |
| 統治の変化 | R3:Russell の入れ替え(2007年以降) | Russell 2000 への移行で同指数に連動する指数ファンドの持株が平均1.72%ポイント増えた企業で、取締役会の独立性が下がった | この標本では指数ファンドがアクティブを置き換えていた |
出所:R2
議決権については、パッシブの方が経営者寄りという方向で研究がそろう。米国の投信・ETFの投票記録を使った Heath らの研究では、経営者と議決権行使助言会社ISSの推奨が一致する議案では両者の投票は変わらないが、両者が対立する議案ではパッシブの方が10.1%ポイント経営者側に投票しやすく、報酬議案では差が11.3%ポイントに広がった8。
ところが委任状争奪戦での投信の投票を分析した Brav らの研究を見ると、この差の中身が変わる。投票に至った争奪戦(207件)では、パッシブは反対派への支持がアクティブより9.5%ポイント低かったが、大手3社(BlackRock・Vanguard・State Street)のファンドを除くと差は4.4%ポイントに縮む。投票の直前に和解・撤回された争奪戦では、すでに投じられていた票の差は和解(324件)で2.4%ポイント、撤回(128件)で1.6%ポイントで、いずれも統計的に有意でなかった。パッシブも業績の悪い会社では反対派を支持し、業績への反応の強さはアクティブと同程度で、一部の候補にだけ賛成しないという穏やかな形で不満を示していたという9。図1は、二つの研究の差を並べたものである。
和解の結果が示唆するのは選別の効果だ。結果は、パッシブの支持を得られそうな争奪戦では会社側が敗北を避けて投票前に和解する、という選別の説明と整合的で、投票まで進んだ案件だけを見ると差が大きく出うる。著者らはこれを一般化し、大株主が反対しそうな会社提案はそもそも付議されにくく、反対票の多さを監視の強さの物差しにするには注意が要ると述べる10。大手3社は他のパッシブより議案の調査を多く行い、助言会社の推奨から独立して投票する傾向があるとの研究も紹介されており、経営者寄りの投票が独立した判断の表れである可能性も残る11。
統治の変化については結論が割れる。Russell 1000 と 2000 の指数の境界を使った Appel らの研究では、パッシブの持株が増えた企業で独立取締役が増え、買収防衛策の撤廃や議決権の平等化が進んだ。一方、同じ指数の入れ替えを別の方法で分析した Heath らは、Russell 2000 への移行で同指数に連動する指数ファンドの持株が平均1.72%ポイント増えた企業で、取締役会の独立性が下がったと報告した12。サーベイは、違いの一因を「パッシブが誰を置き換えたか」に求める。Appel らの標本ではアクティブの持株が減っておらず、パッシブは監視の誘因が乏しい個人株主を置き換えたとみられる。Heath らの標本ではアクティブの持株が大きく減っていた。手数料の高いアクティブを置き換えれば、関与の総量は減りうる13。
この整理の範囲と限界
第一に、これは新しいデータの分析ではなく、研究の地図である。取り上げた実証の多くは米国の Russell の指数の入れ替えに依拠し、方法論の論争(どの比較が偏りのない推定か)には立ち入っていない。著者らは、指数の入れ替えは手数料などを一定にした比較であり、数十年にわたるパッシブの拡大の是非(手数料も同時に下がる)に結果を当てはめるには注意が要るとしている14。2023年の改訂版でも、有益か有害かに明確な答えはまだなく、政策当局は既存研究の使い方に注意すべきだと要旨に書かれている15。
第二に、誘因の推計は便益の上限で、関与の費用はほとんど測られていない。パッシブの非公開の対話と、その効果のデータも乏しいと著者らは認めている16。第三に、整理されている研究の一部は著者自身のものである。Brav らの争奪戦の数値は、本稿では同じ著者らの2021年の改訂稿で確認した。同じ著者らは2023年(オンライン)に委任状争奪戦の投票を扱う論文を題名を変えて学術誌に発表しており、その数値は確かめていない。初出は2022年9月で、本稿の公開時点で約4年前の整理である。
大手町プレップの考察:株主名簿の「信 託口」は同質ではない
以下は編集部の読みであり、論文が日本について検証したものではない。サーベイの整理を日本に当てはめると、パッシブを一つの株主類型として扱う発想そのものが見直しを迫られる。誘因は報酬率×持株比率で決まり、同じ信託口の背後でも、大手の運用会社と小規模な運用会社とでは関与の誘因も費用も桁が違いうる。
日本で特徴的なのは、年金などのアセットオーナーが運用を委託し、パッシブの報酬率が委託契約で決まる点だ。報酬率が極めて低い委託では、二重のただ乗りの第二の層が米国より重くなる可能性がある(仮説。日本の委託報酬の水準は本稿では一次資料で確認していない)。GPIFが2018年に始めたエンゲージメント強化型パッシブは、採用にあたり運用プロセス、組織体制、報酬水準を一体としたビジネスモデルを評価するとしている17。サーベイの枠組みで読めば、報酬率という誘因の一方の項をアセットオーナーが設計し直す試みに当たる。
サーベイが挙げる間接費用、すなわち取引関係を気にして経営者寄りになるという懸念も、金融グループに属する運用会社が年金の委託先に含まれる日本でも論点になる。GPIFの2025年の検証では、日系の運用受託機関について、利害関係の有無による議決権行使の違いに一貫した傾向は統計的に見られなかったとされる18。懸念が否定されたというより、測り方と管理の範囲が各社で違うことを前提に、継続して確かめるべき論点と読むのが妥当だろう。
日本の実務への応用:コードの要請と対話の現状
2025年6月のスチュワードシップ・コード第三次改訂版は、パッシブ運用は売却の選択肢が限られ中長期の企業価値の向上を促す必要性が高いとして、より積極的な対話と議決権行使を求め(指針4-4)、他の機関投資家との協働エンゲージメントを重要な選択肢と位置づけた(指針4-6)19。協働は、他の株主へのただ乗りという第一の層を和らげる仕組みとして読める。
GPIFによれば、株式運用の約9割がパッシブで、2025年1〜12月に国内株式の委託先が対話した企業は1,039社(保有社数の57.7%、時価総額の96.5%)にのぼる。TOPIX100の構成企業は全社、Mid400は96.0%が対話を受け、対話件数の62.6%をパッシブの委託先が占めた。同じ報告書は、比較的小規模な海外の委託先が増え、活動の水準にばらつきが見られるとも述べている20。大手と小規模で誘因が違うというサーベイの整理と矛盾しない記述だが、海外の新規委託先を含む活動水準のばらつきを述べたもので、パッシブの規模別の誘因の違いを確かめた結果ではない。
上場会社の側では、パッシブの投票を「安定票」とみなす前提を見直すことになる。大手の運用会社は、個社の事業戦略よりも、取締役会の独立性や株主の権利のように全保有銘柄へ同じ基準を当てる論点で態度を明確にしやすい。GPIFの報告書によれば、運用受託機関の中には翌年の総会で使う議決権行使基準の改定を12月に公表するところもある21。改定内容を年内に確かめ、基準に抵触する議案を事前に洗い出すことが、総会での賛成率を読む出発点になる。アクティビストとの対話では、大手のパッシブが提案側を支持しそうかどうかが、和解か投票かの判断を左右しうる。助言会社の推奨の使われ方は議決権行使助言会社の推奨は投資家ごとに違うで扱った。
学習用の設例:株主ごとの関与の誘因を見積もる
学習用の設例(架空)
- 甲社:時価総額5,000億円。株主資本コスト8%、成長率3%(r−g=5%)。企業価値の1%は50億円
- A:大手パッシブ運用会社(複数の受託の合計で持株6%、運用報酬率0.02%)
- B:小規模なパッシブ運用会社(持株0.5%、報酬率0.02%)
- C:アクティブ運用会社(持株2%、報酬率0.40%)
- D:直接保有の事業法人(持株3%)
サーベイの式に当てはめ、報酬の増分が持株の価値とともに永続的に成長すると仮定すると、甲社の価値が1%上がったときの報酬の増分の現在価値は、報酬率×持株比率×50億円÷5%となる。Aは120万円、Bは10万円、Cは800万円で、持株が3分の1のCの方がAの約6.7倍の誘因を持つ(図2)。Aの報酬率が0.15%なら900万円となり、Cを上回る。直接保有のDは持分の値上がり1.5億円を一度に受け取るので、1社に限れば最も強い動機を持つ。直接保有に換算すると、Aの誘因は持株0.024%、Cは0.16%の株主に相当する。
この値は、価値を1%高めるために運用会社が負担してよい費用の上限と読める。Aにとって甲社1社に割ける上限は120万円にすぎない。一方、Aが市場共通の基準づくり(例えば独立社外取締役の比率の目安)で日本株の受託残高50兆円全体の価値を0.1%押し上げられるなら、同じ式で現在価値は2.0億円になる。大手のパッシブが個社の事業論よりも横断的な基準に力を入れやすい理由を、数字で確かめられる。表2は、報酬率と持株比率の組合せごとの値である。
表2 報酬率と持株比率で変わる関与の誘因(学習用の設例・架空)
表は横にスクロールできます →
| 持株比率\報酬率 | 0.02% | 0.05% | 0.15% | 0.40% |
|---|---|---|---|---|
| 0.5% | 10 | 25 | 75 | 200 |
| 2.0% | 40 | 100 | 300 | 800 |
| 6.0% | 120 | 300 | 900 | 2,400 |
| 10.0% | 200 | 500 | 1,500 | 4,000 |
出所:学習用の仮定に基づき大手町プレップ作成
設例には限界がある。費用を含めていないうえ、運用会社の報酬率や持株は会社の外からは正確に分からない。それでも、大量保有報告書や実質株主の判明調査で分かる持株比率に、運用会社の種類から推した報酬率の幅を掛けるだけで、株主ごとの関与の動機に大まかな序列をつけられる。
明日から使える確認項目
- 信託口を運用会社ごとに分解する:実質株主の判明調査で、パッシブ・アクティブと運用会社グループの別に持株比率を並べ、上位の大手パッシブと小規模なパッシブを区別する。
- 株主ごとの誘因を概算する:持株比率×想定報酬率×企業価値の1%÷(株主資本コスト−成長率)で並べ、対話の優先順位と資料の深さを決める目安にする(費用は含まない上限であることを明記する)。
- 大手パッシブの議決権行使基準と自社の議案を照合する:取締役会の独立性、買収防衛策、政策保有などの基準に抵触する議案がないか、総会の半年前に確かめる。
- 運用会社に聞く質問を用意する:「議決権行使の判断はスチュワードシップ部門とファンドのどちらで行うか」「同じグループのアクティブ部門と賛否はそろうか」「助言会社の推奨と異なる判断をした例はあるか」。
- 反対票の少なさを過信しない:前年に賛成多数だった議案でも、投票前に修正・撤回した議案や付議を見送った議案がないかを振り返り、賛成率を株主の評価の物差しとして使う限界を社内で共有する。
よくある質問
パッシブ運用の拡大は、日本企業のガバナンスを良くしているのですか。
この展望論文の整理では、米国についても明確な答えは出ていません。誰を置き換えたか、手数料がどう変わったかで効果の向きが変わりうるとされます。日本についてこの問いを直接検証した研究は本稿の範囲では扱っていません。
パッシブ運用の会社が経営者寄りに投票するのは、議案を調べていないからですか。
そうとは限りません。大手3社は調査を多く行い助言会社から独立して投票するという研究があり、勝てそうな争奪戦が投票前に和解する選別も差を大きく見せます。一方で小規模なパッシブは誘因が小さく、助言会社の推奨に頼りやすいとする研究もサーベイで紹介されています。
まとめ
Brav らの展望論文は、パッシブ運用の関与の誘因を報酬率と持株比率の積で捉え、手数料が低くても持株の大きい大手は動機を持ちうる一方、小規模なパッシブの動機は小さいと整理した。米国の研究では、パッシブはアクティブより経営者寄りに投票する。委任状争奪戦の研究では、その差は大手3社を除くと縮まり、投票直前に和解・撤回された争奪戦の票では有意でなかった。統治の変化をめぐる結論の対立は、パッシブが個人とアクティブのどちらを置き換えたかで説明できる可能性がある。パッシブ比率の高い日本では、信託口の背後の運用会社を分け、誘因と基準を株主ごとに見積もることが、対話と総会準備の精度を上げる。
脚注
- R1(NBER WP 版, 2022年12月)要旨・1節(p.2〜4)。本記事の R1 のページは PDF の物理ページ(印刷ページ+2)。研究の整理(サーベイ)であり、新しい実証分析を含まない。賛否の両論が並び結論が出ていないことは p.3 と 4.1節(p.22)。2023年8月の改訂版(ECGI WP 849/2022 Revised August 2023)では、本記事で使う数値例(40万ドル・176万ドル・0.03×α・2万5,500ドル)と引用数値(9.5・11.3・13.3万ドル等)が同じであることを語句検索で、要旨と結論の趣旨を通読で確認した。改訂版全体の逐語的な照合はしていない。↩
- R1 2.1節(p.5〜6)・式(1)(2)。枠組みは R2 に基づくと著者らが明記(p.4〜5)。↩
- R1 2.1.1〜2.1.3節(p.6〜7, p.9)。↩
- R1 2.1.2節(p.7〜8)・式(3)(4)、脚注5(p.12)。いずれも著者らが置いた仮定による数値例で、実データではない。成功報酬は1回限り(80万ドル)、運用報酬の増加は永続(96万ドル)として計算されている。↩
- R1 2.1.3節(p.9〜10)、4.2節の要約(p.28)、5節(p.28)。↩
- R2(著者原稿, 2021年2月)p.2(要旨)・p.6(1節。大手5社=Schwab・Dimensional・State Street・BlackRock・Vanguard)・p.18〜19(3節。2015〜17年の誘因11.4万ドル、報酬率0.50%なら38.41万ドル)。米国の13F提出機関が対象。R1 p.10・p.13 も同じ数値を引用。学術誌掲載版の数値との一致は未確認。↩
- R1 2.2節(p.15〜17)、2.2.1節(p.17〜18)。分業と整合的とされる個別の実証(ESG の集団的な働きかけ等)は本記事では原典を確認していないため、紹介を省いた。↩
- R3(ECGI WP 版, 2021年3月)p.8〜9(1節)。データは2004〜2018年の米国の投信・ETFの議決権行使記録(p.17)。R1 4.2節(p.25)も引用。↩
- R4(ECGI WP 版, 2021年6月)p.7〜9(1節)・p.13〜14(3.1.1節)。対象は2007〜2017年の米国の委任状争奪戦。EDGAR の DEFC 14A から当初特定したのは410件(p.13)で、補完と除外の後の最終標本は投票207件・和解324件・撤回128件(p.14)。差の単位は支持率の差(%ポイント)で、原典では和解・撤回の差を「2.4%(1.6%)」と表記し「有意でない(insignificant)」としている。R1 3.1節・4.2節(p.19〜20, p.25〜26)は同じ数値を Brav et al.(2022)として引用している。↩
- R1 4.2節(p.26)。R4 p.9 も同じ解釈を示す。↩
- R1 4.2節(p.27〜28)の整理。紹介されている個別研究(Bubb and Catan 2022、Bolton ほか)の原典は本記事では未確認で、サーベイの要約として扱った。↩
- R5(著者原稿, 2016年2月、JFE 掲載予定版)要旨(p.1)・1節(p.5〜6)・2節(p.11〜12。1998〜2006年、指数の境界付近の銘柄)。R3 p.25(Russell 2000 連動の指数ファンドの持株が時価総額比で平均1.72%増)・p.40〜41(表IX。取締役会の独立性の低下。買収防衛策などには有意な変化なし)。↩
- R1 4.1節(p.22〜23)。R3 p.25 は自らの標本で指数ファンドがアクティブを置き換えていたと記載。置き換えの相手で統治への効果が変わるという理論は R6 の要旨(p.1)で確認。↩
- R1 4.1節(p.22〜24)。↩
- R1 の2023年8月改訂版(ECGI WP 849/2022, Revised August 2023)Summary(p.3)。↩
- R1 2.1.3節(p.11)・2.2.1節(p.18)・5節(p.30)。↩
- R8 p.26(2.(2)①)。2018年にアセットマネジメントOne・フィデリティ投信、2021年度に三井住友トラスト・アセットマネジメント・りそなアセットマネジメントを追加し、2025年度は4社。↩
- R8 p.18(1.(1) と (2))。検証は「運用受託機関の議決権行使に関する検証〜利害関係先とそれ以外の議決権行使の違いの検証〜」(2025年8月公表)。検証報告書そのものは本記事では未読。↩
- R7 指針4-4(p.11)・指針4-6(p.12)。2025年6月26日公表。↩
- R8 p.13(株式運用の約9割がパッシブ)、p.20(委託先の水準のばらつき)、p.23(2025年1〜12月の対話社数。分母は2025年3月末の保有社数・時価総額)、p.24(パッシブの比率)。↩
- R8 p.24。↩
参考文献(2 026年10月確認)
- R1 Brav, A., A. Malenko and N. Malenko (2022), “Corporate Governance Implications of the Growth in Indexing,” NBER Working Paper No. 30718. DOI: 10.3386/w30718. ECGI Finance Working Paper N° 849/2022(Revised August 2023); Oxford Research Encyclopedia of Economics and Finance(2023年8月), DOI: 10.1093/acrefore/9780190625979.013.913. 参照した版:NBER WP 版(2022年12月)を全文、ECGI 改訂版(2023年8月)で数値と要旨を確認。初出:SSRN 4222402(2022年9月)。査読:WP は未査読(百科事典版の査読形態は未確認)。 nber.org (参照箇所:NBER 版の全節(PDF p.2〜31)、ECGI 改訂版の Summary(p.3)。脚注1〜5・7・9〜11・13〜16の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R2 Lewellen, J. and K. Lewellen (2022), “Institutional Investors and Corporate Governance: The Incentive to Be Engaged,” Journal of Finance 77(1), 213-264. DOI: 10.1111/jofi.13085. 参照した版:著者原稿(This version: February 2021。Tuck の掲載 PDF は現在閲覧できないため Internet Archive の保存版)。査読:済(掲載版との差は未確認)。 web.archive.org (参照箇所:要旨(p.2)、1節(p.4〜6)、3節(p.18〜19)。脚注6の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R3 Heath, D., D. Macciocchi, R. Michaely and M. C. Ringgenberg (2022), “Do Index Funds Monitor?” Review of Financial Studies 35(1), 91-131. 参照した版:ECGI Finance Working Paper N° 638/2019(Revised March 2021)。査読:済(掲載版との差は未確認)。 ecgi.global (参照箇所:要旨(p.3)、1節(p.8〜9)、データ(p.17)、4節(p.25)、表IX の説明(p.40〜41)。脚注8・12・13の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R4 Brav, A., W. Jiang, T. Li and J. Pinnington (2021), “Picking Friends Before Picking (Proxy) Fights: How Mutual Fund Voting Shapes Proxy Contests,” ECGI Finance Working Paper N° 601/2019(Revised June 2021). 参照した版:同(2021年6月)。査読:未査読(WP)。同じ著者らの “Shareholder Monitoring through Voting: New Evidence from Proxy Contests,” Review of Financial Studies 37(2), 591-638(2023年オンライン)は Crossref で書誌のみ確認(題名が異なる別稿で、本稿の数値の根拠ではない)。 ecgi.global (参照箇所:要旨(p.3)、1節(p.7〜9)、3節(p.13)、表8 の説明(p.30〜31)。脚注9・10の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R5 Appel, I. R., T. A. Gormley and D. B. Keim (2016), “Passive Investors, Not Passive Owners,” Journal of Financial Economics 121, 111-141. DOI: 10.1016/j.jfineco.2016.03.003. 参照した版:著者原稿(2016年2月6日、掲載予定版)。査読:済。 corpgov.law.harvard.edu (参照箇所:要旨(p.1)、1節(p.5〜6)、2節(p.11〜12)。脚注12の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R6 Corum, A. A., A. Malenko and N. Malenko (2021), “Corporate Governance in the Presence of Active and Passive Delegated Investment,” Working Paper(July 2021). 参照した版:2021年7月版。査読:未査読(WP)。 econ.ntu.edu.tw (参照箇所:要旨(p.1)のみ。脚注13の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R7 金融庁(2025)『「責任ある機関投資家」の諸原則《日本版スチュワードシップ・コード》〜投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために〜』第三次改訂版(2025年6月26日)。 fsa.go.jp (参照箇所:指針4-4(p.11)・指針4-6(p.12)。脚注19の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R8 年金積立金管理運用独立行政法人(2026)『2025/26年 スチュワードシップ活動報告』(2026年4月17日公表)。 gpif.go.jp (参照箇所:p.13・18・20・23・24・26。脚注17・18・20・21の根拠。閲覧日:2026年10月)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。