この記事で分かること
- GPIFの国内株式の運用委託先による約2.7万回の対話記録を使った研究で、取締役会・気候変動をテーマにした対話の後、対話先のPBRが似た企業より0.1倍前後高くなっていたこと
- 政策保有株の比率は純資産の約1%ポイント(編集部の換算)下がり、独立社外取締役は人数が増えたものの比率には統計的に有意な差が確認されなかったこと。有意な改善は小型企業で多かった(研究の範囲と限界つき)
- 経営企画・IRと運用会社が、対話の成果を自社と同業の比較で確かめる手順(学習用の設例つき)
想定読者:上場会社の経営企画・IR・総務、運用会社・アセットオーナーのスチュワードシップ担当、株主対応を助言するFA・コンサルタント
前提知識:PBR・ROEの意味と、スチュワードシップ・コードの大枠
決算説明会が終わったあと、信託銀行系の運用会社から面談の申し込みが来る。保有はTOPIXに連動するパッシブ運用のファンドで、議題は取締役会の構成と政策保有株の縮減方針だという。売買で意思を示すことのない株主が、毎年同じような論点を持ってくる。経営企画の担当者が抱くのは、この面談は会社の数字を何か動かしているのか、という素朴な疑問だろう。
運用会社の側にも同じ疑問がある。パッシブ運用は低い手数料で競うため、対話に費用をかける誘因が小さい。対話の成果は他の株主にも等しく及ぶので、ただ乗りも起こりうる。研究者らはこうした構造を指摘したうえで、それでも対話の効果を測れるかを問うている1。本稿では、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が集めた非公開の対話記録を使った研究を手がかりに、パッシブ運用機関の対話がPBR・取締役会・政策保有株にどこまで及んだのかを読む。
この記事が主に参照する研究
Masahiro Shibata(柴田真宏)・Kazunori Suzuki(鈴木一功)「ユニバーサル・オーナーとそのエンゲージメント・プログラムの効果(Universal Owner and Impact of Its Engagement Program: An Analysis of Engagement Records of Japan’s GPIF)」ECGI Finance Working Paper No. 1130/2026
- 公表:同じデータと手法による GPIF の報告書が2024年5月に先行して公表。論文は2026年3月に ECGI の WP として掲載され、同月 International Review of Finance にオンライン掲載。参照した版:ECGI WP 版(2026年3月)。査読:学術誌掲載済み(掲載版との差は未確認)
- データ:GPIFの国内株式の委託先21ファンド(パッシブ7・アクティブ14)の対話記録26,792回・48,077テーマ(2017年4月〜2022年12月)。効果の分析は TOPIX 時価総額上位1000社
- 方法:傾向スコアで選んだ似た企業を対照にした段階的な差の差分析(因果の識別を目指す準実験的な手法。無作為の割当てではない)
- 位置づけ:対話の効果という既存の問いを、日本で過去にない規模の非公開データで検証した研究
対話の効果はなぜ測りにくく、研究はどう測ったか
対話(エンゲージメント)は非公開の場で行われ、何を求めて会社がどう応じたかは当事者しか知らない。GPIFは2017年度から、国内株式の委託先に対話の記録を提出させ、内容を38のテーマに分類してきた2。件数は2017年度の3,128回から2021年度の6,274回へ倍増している。
ただし、対話先は無作為に選ばれていない。著者らの分析では、時価総額や総資産が大きく、支配株主の持株比率が低く、統合報告書を出している企業ほど対話を受けやすかった。資本効率と政策保有のテーマでは、政策保有株比率が高く、利益率と資産回転率が低い企業が選ばれやすい。著者らは本文でこの2テーマについて支配株主の持株比率が高い企業が選ばれやすいとも述べているが、同じ分析の表ではこの2テーマでも係数は負で、記述と表が一致しない3。対話先と非対話先を単純に比べると、こうした元々の違いを対話の効果と取り違える。
そこで研究は、規模・収益性・財務構成・過去の株価リターン・業種などで「対話を受ける確率」が近い企業を対照に選び、最初の対話の前後で指標の変化を比べた。企業ごとに対話の始まる年が違うため、時期のずれに対応した推定量(Sun と Abraham の方法)を使い、対話の前から両群の動きが食い違っていた推定は結果から外している4。読み手が押さえておくべきなのは、推定値が「対話先の変化」そのものではなく「似た企業と比べた差」だという点である。
PBRに表れたのは取締役会・気候変動・多様性のテーマだった
指標とテーマの組合せで376の推定を行い、事前の動きの違いで42を除いた334のうち、56で有意な改善が出た。悪化は1件だけで、改善は時価総額501〜1000位の企業に24件と集中し、上位100社は12件、101〜500位は5件だった5。
図1は、テーマ別にPBRの推定効果を並べたものだ。気候変動(E1)の対話の後、対話先のPBRは対照企業より+0.11倍(1%水準で有意)、トービンのQは+0.07高くなり、温室効果ガスの削減目標を持つ確率も上がった。売上高当たりのスコープ2排出量(購入電力などによる間接排出)は減ったが、自社の直接排出であるスコープ1は有意に変わっていない6。取締役会の構成・評価(G1)の対話でもPBRは+0.11倍(5%水準)の差が出て、時価総額は約6%、TSR(配当込みの株主総利回り、年次)は+3.80%ポイントの差がついた。著者らは、2017年度にこのテーマで対話を受けた256社の時価総額が約304兆円とTOPIXの47%を占めたことを挙げ、6%は小さく見えても総額では大きいという趣旨を述べている7。
一方、PBRの改善を直接の狙いにしていそうな財務戦略(B2)や資本効率(G3)の対話では、全体のPBRに有意な差は出なかった。資本効率の対話で動いたのはTSRで、全体で+3.68%ポイント、501〜1000位では+8.28%ポイントだった8。
取締役会と政策保有株の結果は表1にまとめた。取締役会の対話の後、独立社外取締役の人数は対照企業より+0.15人多くなったが、取締役に占める比率には統計的に有意な差が出ていない。政策保有株の対話の後は、特定投資株式を純資産で割った比率(研究上の政策保有株比率)が−0.01だけ下がった(5%水準)。報告書のデータ定義では単位が「%」とされる一方、記述統計の平均は0.09で、小数の比率と読むのが自然である。そう解釈すれば、−0.01は純資産の約1%ポイントに当たる(編集部の解釈で、原典の記載だけでは尺度を確定できない)9。
表は横にスクロールできます →
| テーマ → 指標 | 全委託先(論文) | パッシブのみ(報告書) | 規模別で目立つ結果(論文) |
|---|---|---|---|
| G1 取締役会 → 独立社外取締役の人数(人) | +0.15** | +0.16*** | 小型 +0.19** |
| G1 取締役会 → 独立社外取締役の比率 | 0.00 | +0.01 | 規模別も有意でない |
| G4-1 政策保有 → 政策保有株比率 | −0.01** | −0.01 | 中型 −0.01***(パッシブ −0.01**) |
| G4-1 政策保有 → PBR(倍) | −0.01 | +0.09*** | — |
| G1 取締役会 → TSR(%) | +3.80** | +3.79** | — |
| G3 資本効率 → TSR(%) | +3.68** | +3.95** | 小型 +8.28*** |
| G3 資本効率 → PBR(倍) | +0.02 | +0.06 | 小型 +0.14* |
パッシブ運用の委託先に絞った推定
論文は委託先全体をまとめて推定しており、パッシブとアクティブの違いは今後の課題としている10。パッシブに絞った推定は、前身の GPIF の報告書に載っている。そこでは、取締役会の対話の後のPBRが+0.15倍、独立社外取締役の人数が+0.16人と、全体と同じ向きの差が出た。政策保有の対話では、政策保有株比率の全体の差は有意でなく(101〜500位だけ−0.01)、代わりにPBRが+0.09倍高かった11。アクティブ運用の委託先では、政策保有の対話で比率が動いたのは101〜500位の10%水準の差だけである12。
この区分には留保がある。パッシブかアクティブかは GPIF が委託したファンドの形態で決めており、両方を受託する運用会社の記録は分けられていない場合がある。表の数値をパッシブ運用だけの効果と読み切るのは難しい。
結果を読むときの四つの限界
第一に、上位100社はほぼ全社が対話を受けているため、対照企業はより小さい企業から選ばれる。著者ら自身、大型株の結果は慎重に見るべきだとしている13。有意な改善が小型企業で多かったという結果も、この比較のしやすさの差を含んでいる可能性がある。
第二に、基点は2017年度以降で最初の対話の年だけで、それ以前の対話や二度目以降の対話、複数の運用会社が同じ論点で対話した影響は分けていない。アクティブ運用が対話後に株を売った場合も、効果を測り続けている14。第三に、ある会社への対話が他社の行動にも波及すれば、対照群も改善して差は小さく出る。報告書は、有意でない結果が多いことの理由の一つにこれを挙げている15。
第四に、多くの推定を同時に行っているため、10%水準の有意を含む一部は偶然でも出うる(論文の本文と表には多重比較の補正の記載が見当たらない。編集部の指摘)。また、データは GPIF の職員と元職員が提供しており、規制と利益相反への配慮から共著者を外れたと論文に明記されている16。分析期間は2023年3月の東証の要請より前が中心で、要請後の資本政策の変化は含まない。
関連する研究として、Becht・Franks・Miyajima・Suzuki(2023年)は、GPIF が対話に別枠の報酬を払ったパッシブ運用会社1社の記録を使い、対話先の FTSE の ESG スコアが上がったことを差の差分析で示した。ただし MSCI のスコアでは有意な改善が確認されず、効果は対話から2〜3年後に強まるとしている17。何で成果を測るかで結論が変わりうることを示す例である。
大手町プレップの考察:効果は「小 さく、広く、遅れて」表れる
以下は編集部の読みであり、研究が検証したものではない。PBR +0.11倍は、同じ1000社の2017年度以降のPBR中央値1.19倍の約9%に当たる18。独立社外取締役 +0.15人は平均3.25人の約5%、政策保有株比率は純資産の約1%ポイントで、比率の平均0.09と比べても一部にとどまる。1社ごとに見れば、対話の後に会社が様変わりしたという大きさではない。
人数は増えたのに比率に差が出ないという組合せの理由は、この分析からは特定できない。社外取締役を加えると同時に取締役の総数も増えれば比率は動きにくい、という読み方はありうるが、企業ごとの行動は研究のデータでは確かめられない(仮説)。政策保有株では、パッシブの対話の後にPBRは差がついたのに比率の差は有意でなかった。縮減方針の開示や説明の変化が先に評価され、売却の実行が遅れている可能性もあるが、研究のデータからは区別できない。
運用会社の側から見れば、パッシブの対話は一社の大きな変化ではなく、多数の会社にわたる小さな相対差の積み上げとして成果を説明するのが、この研究と整合的な見せ方だろう。
日本の実務への応用:コードの要請と GPIF の運用の現状
2025年6月に改訂されたスチュワードシップ・コード(第三次改訂版)は、パッシブ運用は売却の選択肢が限られ、中長期的な企業価値の向上を促す必要性が高いとして、より積極的な対話と議決権行使を求めている(指針4-4)19。同じ改訂で、他の機関投資家と協働した対話は「重要な選択肢」と位置づけられ、投資先の求めに応じて保有株数を説明することも指針に加わった20。
GPIF によると、株式運用の約9割がパッシブで、2024年1〜12月に委託先が対話した企業は1,011社(保有社数の45%、時価総額では96%)、対話の76%をパッシブの委託先が占めた21。時価総額で見ればほとんどの大企業がすでに対話の対象であり、研究が示した「対話の有無」による差は、今後は測りにくくなる。企業側にとって問われるのは、対話を受けたかどうかではなく、どのテーマで何が変わったかを自社で説明できるかである。
政策保有株の論点では、研究の指標(特定投資株式÷純資産)は有価証券報告書の開示から自社でも計算できる。政策保有株式の開示で示す縮減方針と、この比率の推移を並べて説明すると、対話の論点と数字が対応する。
学習用の設例:自社のPBRで「差 の差」を計算する
学習用の設例(架空)
- 甲社:純資産2,000億円。2年前に初めて運用会社から取締役会の構成をテーマに対話を受けた
- 甲社のPBR:対話の2年前0.80倍、対話の年0.82倍、2年後0.97倍
- 規模と業種の近い同業10社のPBRの中央値:0.83倍、0.85倍、0.93倍
- 甲社の政策保有株(特定投資株式)は300億円で、純資産の15%
まず対話前の2年を見る。甲社も同業も+0.02倍で、傾きがそろっている。これが崩れていれば、対話後の差を対話と結びつけられない(研究が推定を外した「事前トレンド」に当たる)。対話後の2年は甲社が+0.15倍、同業が+0.08倍で、差の差は+0.07倍となる(図2)。純資産を一定とすれば、時価総額で約140億円の差に相当する。
研究の推定値と同じ大きさの差を純資産に掛けると、表2のようになる。甲社の規模なら、PBRが0.11倍違えば時価総額は220億円違う。政策保有株比率の1%ポイントは、純資産が一定なら甲社では特定投資株式の残高20億円分に相当する計算上の差である。比率の低下には売却だけでなく保有株の値下がりも含まれるため、売却額とは限らない。
表は横にスクロールできます →
| 純資産 | PBR +0.05倍 | PBR +0.11倍 | PBR +0.15倍 |
|---|---|---|---|
| 純資産 500億円 | 25億円 | 55億円 | 75億円 |
| 純資産 2,000億円 | 100億円 | 220億円 | 300億円 |
| 純資産 5,000億円 | 250億円 | 550億円 | 750億円 |
ここで得た差の差は、対話の効果の証拠ではない。同じ時期に中期経営計画や自社株買いを公表していれば、その影響と区別できない。研究のように多数の対照企業と固定効果を使えない社内分析では、「対話の論点と同じ方向に、同業より動いたか」を確かめる目安にとどめるのがよい。
明日から使える確認項目
- 対話の記録をテーマ別に分ける:GPIF の分類(経営戦略、取締役会構成・評価、資本効率、政策保有など)に合わせ、運用会社ごとに初回の日付と論点を一覧にする。
- テーマごとに追う指標を決める:取締役会なら独立社外取締役の人数と比率の両方、政策保有なら特定投資株式÷純資産、資本効率ならTSRとROE。人数だけ、比率だけでは研究で見えた食い違いを見落とす。
- 同業の比較群を先に決める:規模・業種の近い10社程度を対話より前の時点で選び、対話前2〜3年の推移がそろっているかを確認する。そろっていなければ差の差を使わない。
- 運用会社に聞く質問を用意する:「当社をどのテーマで、どの指標の変化を見て評価しているか」「同業と比べた評価か」「パッシブとアクティブで担当と記録は分かれているか」。
- 他の出来事を並べる:対話後の期間に公表した資本政策・人事・指数入れ替えを時系列に並べ、差の差に混ざる要因を書き出す。
よくある質問
この研究で、パッシブ運用の対話がPBRを上げたと言い切れますか。
言い切れません。似た企業と比べた差の推定で、因果を目指した手法ですが、対話先の選び方の偏りや大型株の比較の難しさが残ります。また論文の推定は委託先全体で、パッシブだけの推定は GPIF の報告書にあり、運用会社の区分にも留保があります。
政策保有株の縮減は進んだのですか。
政策保有をテーマにした対話の後、特定投資株式÷純資産は対照企業より約0.01下がりました。小数の比率と解釈すれば純資産の約1%ポイントですが、報告書のデータ定義の単位欄は
まとめ
GPIF の委託先による約2.7万回の対話記録を使った研究では、取締役会や気候変動をテーマにした対話の後、対話先のPBRは似た企業より0.1倍前後高く、独立社外取締役の人数は増え、政策保有株比率はわずかに下がった。有意な改善は小型企業で多く、比率で見た取締役会の構成には統計的に有意な差が確認されていない。大型株の比較の難しさや運用会社の区分などの留保があり、パッシブ運用だけの効果と断定はできない。それでも、テーマと指標を対応させ、同業との差で成果を測るという研究の型は、企業と運用会社の双方が明日から使える。
脚注
- R1(ECGI WP 版, 2026年3月)2.2節(p.11〜12)。パッシブ運用の評価はトラッキングエラーと低コストが中心で、対話の誘因が小さく、ただ乗りが起こりうるという著者らの説明。本記事の R1 のページは PDF の物理ページ(印刷ページ=物理ページ−3。以下同じ)。↩
- R1 3.1.1節(p.14〜15)・表3(p.31)。件数は表2(p.30)。2022年度は12月までの9か月分。前身の R2(GPIF報告書, 2024年5月)p.3・p.9 も同じ対象(21ファンド・26,792回・48,077テーマ)を記載。↩
- R1 4節(p.21〜22)・表6(p.36)。Probit 分析(ある年にあるテーマで対話を受けたか)の結果で、相関の関係。表6では G3・G4-1 の政策保有株比率の係数が +0.53・+1.90(いずれも1%)、売上高経常利益率が −0.01(5%)・−0.02(1%)、総資産回転率が −0.17・−0.22(いずれも1%)。支配株主持株比率の係数は全テーマで −0.01(1%)で、p.22 の本文の記述(G3・G4-1 は支配株主持株比率が高い企業)と符号が一致しない。本記事は表の値に従った。統合報告書の発行は企業価値レポーティング・ラボのリストによる(p.16)。↩
- R1 3.2節(p.18)・5節(p.23〜24)。マッチングの変数は時価総額・総資産・売上高利益率・現預金比率・負債比率・財務レバレッジ・3年平均株式リターン・支配株主持株比率・TOPIX 規模区分・業種。推定は企業と年度の固定効果つき。事前の動きの違いが残る推定は表7で「-」として報告していない(p.38)。↩
- R1 5節(p.24)。94指標の全体推定と、上位100社・101〜500位・501〜1000位の規模別推定(282)の合計。唯一の悪化は株主総会関連(B3)の上位100社での FTSE の ESG スコア。↩
- R1 表7(p.39)。E1 の全体推定:トービンのQ +0.07(1%)、削減目標の有無 +0.08(1%)、スコープ2の炭素強度 −5.29(1%、売上100万米ドル当たり CO2 換算トン)、スコープ1 +6.04(有意でない)。スコープ2だけが下がった理由は未解明で、著者らは購入電力の切替えの方が早く進められるという仮説を示している(p.24 注4)。単位は R2 p.86〜87 のデータ定義による。↩
- R1 表7(p.39)・5節(p.25)。G1 の全体推定:PBR +0.11(5%)、対数時価総額 +0.06(5%)、TSR +3.80(5%)。対数時価総額の係数は変化率として読む(R2 p.47)。TSR は年次の配当込収益率(%、R2 p.86)。↩
- R1 表7(p.38〜40)。B2(財務戦略)の PBR −0.06、G3(資本効率)の PBR +0.02 はいずれも有意でない。G3 の TSR は全体 +3.68(5%)、501〜1000位 +8.28(1%)。G3 の 501〜1000位では PBR +0.14(10%)。↩
- R1 表7(p.39〜40)。独立社外取締役人数 +0.15(5%)、同比率 0.00(有意でない)、政策保有株比率 −0.01(5%)、101〜500位 −0.01(1%)。政策保有株比率は特定投資株式(当該会社+子会社)÷純資産(R2 p.86)。データ定義(R2 p.86)の単位欄は「%」だが、記述統計は平均0.09・中央値0.05・最大2.04で(R2 p.84)、同じく単位欄が「%」の独立社外取締役比率の最大値が1であることから、小数の比率と解釈した。この解釈と −0.01 を「純資産の約1%ポイント」とする換算は編集部によるもので、原典の記載だけでは尺度を確定できない。また、表の値が小数第2位に丸められているため実際の差は約0.5〜1.5%ポイントの幅がありうる。↩
- R1 6節(p.26〜27)。各ファンドの保有状況を考慮しておらず、アクティブとパッシブの対話の性質の違いは今後の課題とされている。↩
- R2(GPIF報告書, 2024年5月)図表3.18(p.63)・図表3.20(p.65)。パッシブ委託先の G1:PBR +0.15(5%)、独立社外取締役人数 +0.16(1%)。G4-1:政策保有株比率 −0.01(全体は有意でない、101〜500位は5%)、PBR +0.09(1%)、対数時価総額 +0.07(5%)。↩
- R2 図表3.30(p.75)。アクティブ委託先の G4-1:政策保有株比率は101〜500位で −0.01(10%)のみ。区分は GPIF が委託したファンドの形態によるもので、両方を受託する運用会社の記録は明確に区別されていない場合がある(R2 p.9 注2・p.82)。↩
- R1 5節(p.23〜24)・付録図A-1(p.43)。E1・G1・SG1 で上位100社がより小さい対照企業と組み合わされていることを著者らが図示している。↩
- R1 6節(p.26〜27)、R2 3-3(p.46)・4-2(p.82)。2017年度より前に受けた対話と、複数回の対話の効果は考慮していない。↩
- R2 4-1(p.81)。報告書は、有意でない結果が多い理由として、適切な KPI の不足、大企業での介入群と対照群の違いの残存、他社への波及の可能性を挙げている。↩
- R1 p.2・p.4(謝辞と注記)。データは GPIF の職員と元職員が提供し、両氏は規制上の要件と利益相反への配慮から共著者に名を連ねていないと明記されている。多重比較の補正の記載が見当たらないという指摘は、確認した R1 の本文・表7の範囲に基づく。↩
- R3(RIETI DP, 2023年11月)要旨・序論(p.2〜5)・結論(p.30)。対象は GPIF がエンゲージメント強化型の報酬を払った最大のパッシブ運用会社1社(2018年開始)で、FTSE と MSCI のスコアで結論が分かれたと著者ら自身が述べている。↩
- R2 付録1 記述統計(p.84)。2017年度以降の TOPIX 上位1000社の企業・年度のデータ(PBR 5,910件、平均2.17倍・中央値1.19倍、独立社外取締役人数 平均3.25人、政策保有株比率 平均0.09・中央値0.05)。推定値をこれらで割った割合は、効果の大きさの目安として編集部が計算したもので、研究の結果ではない。↩
- R4(金融庁, 2025年6月26日)指針4-4(PDF p.11)。2020年の再改訂版では指針4-3に当たる。↩
- R4 指針4-6(PDF p.12。協働エンゲージメントを「重要な選択肢」とする)・指針4-2(PDF p.11。投資先の求めに応じた保有株数の説明)。R5(金融庁「スチュワードシップ・コードの第三次改訂に当たって」2025年6月26日)p.1〜2 によれば、今回の改訂は協働エンゲージメントの促進と実質株主の透明性向上が主な目的。↩
- R6(GPIF『2024/25年 スチュワードシップ活動報告』2025年3月)p.5・p.40。対話社数の比率は2024年3月末時点の国内株式の保有社数・時価総額が分母。パッシブ・アクティブの比率は、両方を受託する運用機関では委託額の多いマンデートで数えている。↩
参考文献(2 026年10月確認)
- R1 Shibata, M. and K. Suzuki (2026), “Universal Owner and Impact of Its Engagement Program: An Analysis of Engagement Records of Japan’s GPIF,” ECGI Finance Working Paper N° 1130/2026; International Review of Finance 26(2), e70068. DOI: 10.1111/irfi.70068. 参照した版:ECGI WP 版(2026年3月、ECGI 掲載 2026年3月19日)。査読:済(学術誌版は書誌のみ確認)。 ecgi.global (参照箇所:要旨、1〜6節、表1〜3・6・7、付録図A-1(PDF p.2〜31, p.36〜43)。脚注1〜10・13〜16の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R2 年金積立金管理運用独立行政法人(2024)『エンゲージメントの効果検証プロジェクト報告書』2024年5月(東京大学エコノミック・コンサルティング社との協働)。 gpif.go.jp (参照箇所:要旨(p.3〜4)、1-2(p.9)、3-3〜3-5(p.46〜75)、4-1・4-2(p.79〜82)、付録の記述統計・データ定義(p.84〜87)。脚注2・6・7・9・11・12・14・15・18の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R3 Becht, M., J. Franks, H. Miyajima and K. Suzuki (2023), “Does Paying Passive Managers to Engage Improve ESG Performance?” RIETI Discussion Paper Series 23-E-077. 参照した版:RIETI DP(2023年11月)。査読:未査読(DP)。 rieti.go.jp (参照箇所:要旨・序論(p.2〜5)、結論(p.30)。脚注17の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R4 金融庁(2025)「『責任ある機関投資家』の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫~投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために~(第三次改訂版)」2025年6月26日。 fsa.go.jp (参照箇所:指針4-2・4-4(p.11)、指針4-6(p.12)。改訂前との対照は同日公表の変更点の資料(https://www.fsa.go.jp/news/r6/singi/20250626/02.pdf)。脚注19・20の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R5 金融庁(2025)「スチュワードシップ・コードの第三次改訂に当たって」2025年6月26日。 fsa.go.jp (参照箇所:一・二(p.1〜2)。脚注20の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R6 年金積立金管理運用独立行政法人(2025)『2024/25年 スチュワードシップ活動報告』2025年3月。 gpif.go.jp (参照箇所:p.3(効果検証の公表時期)、p.5(パッシブ比率・エンゲージメント強化型パッシブ)、p.40(2024年の対話社数)。脚注21の根拠。閲覧日:2026年10月)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。