この記事で分かること

  • スチュワードシップ・コードの定義と、コーポレートガバナンス・コードとの関係
  • コンプライ・オア・エクスプレイン(受入れ・説明)の考え方
  • 議決権行使結果の個別開示を例にした整数設例
  • 議決権行使助言会社との関係と改訂の経緯(2026年8月時点)

30秒で分かる定義

スチュワードシップ・コード(Stewardship Code)とは、機関投資家が投資先企業との建設的な対話(エンゲージメント)を通じて、投資先の持続的な成長を促し、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図るという「責任ある機関投資家」の行動原則をまとめた規範です。 日本では2014年に金融庁が策定・公表し、その後複数回の改訂を経ています。法的な強制力を持たない任意の行動規範で、受け入れる機関投資家は各原則を実施するか、実施しない場合はその理由を説明する「コンプライ・オア・エクスプレイン」の考え方に基づき運用されます。

なぜ実務で重要なのか

資産運用会社・年金基金(アセットオーナー)は、スチュワードシップ・コードの受入れを表明した機関投資家として、議決権行使方針の策定・公表、行使結果の開示などの取組みを求められます。発行体のIR・経営企画は、機関投資家がコードに基づきどのような対話・エンゲージメントを求めてくるかを踏まえ、対話の窓口体制を整備します。ガバナンス・コンサルティングは、コーポレートガバナンス・コード(企業側の規範)とスチュワードシップ・コード(投資家側の規範)を「車の両輪」として整理し、両者の相互作用を発行体に助言します。

仕組み(原則の主なテーマ)

テーマ内容の概要
基本方針の策定・公表スチュワードシップ責任を果たすための方針を策定し、公表する
議決権行使結果の開示議案ごと・投資先ごとの賛否の状況を開示する
実効性の自己評価自らの取組みの実効性について定期的に自己評価を行う
利益相反の管理取引関係等による利益相反を適切に管理する体制を整備する
サービス提供者への対応議決権行使助言会社等、機関投資家向けサービスを提供する者にも一定の体制整備を求める

コードの各原則は詳細なルールというより「原則」であり、受入れ機関投資家は自らの状況に応じて、原則を実施するか、実施しない場合はその理由を説明する形で対応します。この柔軟性が、法令による一律規制とは異なるコードの特徴です。

整数設例で確認する

設例(架空数値)。ある運用会社が保有する300社について、年次株主総会で合計1,500議案(1社平均5議案)に議決権を行使したとします。このうち経営陣提案(取締役選任議案等)が1,200議案でした。

方針に基づき反対票を投じたのは、経営陣提案1,200議案のうち120議案でした。
反対率=120議案÷1,200議案=10%

さらに、自社の議決権行使方針(例:過去数期のROEが一定水準を下回る企業の経営トップ再任議案には反対)に該当したのが300社中40社で、そのうち32社の経営トップ再任議案に実際に反対したとします。
該当社に対する反対率=32社÷40社=80%

検算:全体の反対率10%(120議案/1,200議案)に対し、特定の方針に明確に該当する対象では反対率が80%(32社/40社)と大幅に高くなっており、画一的な反対ではなく、方針に沿った選別的な議決権行使が行われていることが数字の上でも確認できます。こうした個別開示は、コード原則に基づく透明性の取組みの典型例です。

開示・規制上の位置付け

スチュワードシップ・コードは法令ではなく、金融庁が策定した任意の行動規範であるため、法的な強制力や罰則はありません。しかし、多くの機関投資家がコードの受入れを表明し、受入れ機関投資家のリストが金融庁のウェブサイトで公表されているため、受け入れていないこと自体が顧客・受益者や市場からの評価に影響し得ます。この「ソフトロー」としての実効性が、コードの設計思想の中心にあります。

実務での調べ方・確認手順

  • コードを受け入れた機関投資家は、自社のウェブサイトで議決権行使方針・行使結果を公表しており、投資先企業や個人投資家はこれを確認できる
  • 議決権行使助言会社(議決権行使助言会社)も、コード上「機関投資家向けサービス提供者」として体制整備の対象に位置づけられており、その利益相反管理の状況も確認対象になる
  • 発行体側は、自社のコーポレートガバナンス・コードへの対応状況と合わせて、機関投資家がどのような対話を重視しているかをコードの原則から逆算して準備する

この用語を実務で「使える」状態にする

コードの各原則がどのように議決権行使の実務・開示に落とし込まれるかを、数字を交えて説明できるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「スチュワードシップ・コードは法律で強制されるもの」→ 正しくは、任意の行動規範であり、受入れ表明も原則の実施も法的義務ではありません。ただし、受入れを表明した以上、実施しない原則については理由の説明が求められます。

誤解2:「コードはコーポレートガバナンス・コードと同じもの」→ 正しくは、対象が異なります。スチュワードシップ・コードは機関投資家(資金の出し手側)に向けた規範、コーポレートガバナンス・コードは上場会社(資金の受け手側)に向けた規範で、双方の対話を通じた企業価値向上を狙う「車の両輪」と位置づけられます。

確認ポイント:機関投資家が「実施しない理由」として説明している内容が、形式的な説明にとどまっていないか(実質を伴っているか)は、コードの実効性を評価する上での視点です。

日本実務での扱い(2026年8月時点)

日本のスチュワードシップ・コードは2014年に金融庁が策定・公表し、その後複数回の改訂を経て、機関投資家の対話責任、議決権行使結果の個別開示、実効性の自己評価に加え、議決権行使助言会社等のサービス提供者への体制整備の要請までを含む枠組みに発展しています(2026年8月時点)。上場会社向けのコーポレートガバナンス・コードや、投資先企業のESG開示(ESG・サステナビリティ開示の基礎参照)と合わせて、日本の株式市場における「対話を通じた企業価値向上」という政策の中心的な柱の一つとなっています。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードの関係を説明してください。
「両者は『車の両輪』と位置づけられる関係にあります。コーポレートガバナンス・コードは上場会社に向けた規範で、実効的な経営の監督や資本効率の向上を求めます。スチュワードシップ・コードは機関投資家に向けた規範で、投資先企業との建設的な対話を通じてその実現を後押しする役割を担います。企業側の規律付けと、投資家側からの働きかけの両方がそろって初めて、対話を通じた企業価値向上が機能するという考え方です。」

深掘りでは「コンプライ・オア・エクスプレインの実効性をどう評価するか」「議決権行使助言会社への体制整備要請の意義」が定番です。

よくある質問(FAQ)

Q. コードを受け入れていない機関投資家は問題があるのですか?
A. 受入れは任意であるため、受け入れていないこと自体が直ちに問題というわけではありません。ただし、顧客・受益者に対する説明責任の観点から、受入れの有無や理由を問われる場面は増えており、多くの主要な機関投資家が受入れを表明しています。

Q. 個人投資家はスチュワードシップ・コードとどう関わりますか?
A. 個人投資家が直接コードの対象になることはありませんが、自身の資産を運用する投資信託の運用会社がコードをどう実践しているか(議決権行使方針・行使結果の開示内容)を確認することで、間接的に運用会社の姿勢を評価する材料にできます。

出典・参考(2026-08確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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