JAPAN PE MARKET DATA

Sponsor-to-Sponsor:PEからPEへ、オーナーが変わり続ける企業

データ集計日: 2026年9月8日 | 対象: 大手町プレップPEファンドDB収録の日本PE案件 2,370件(127ファンド) | 執筆: 大手町プレップ編集部

PEファンドが投資先を別のPEファンドに売却するSponsor-to-Sponsor(セカンダリーバイアウト)。欧米では全Exitの4割前後を占める主要な出口ですが、日本ではまだ少数派です。しかし共通データベースで確認できた77件を年次で並べると、2024年以降の明確な増加が見えてきます。誰が売り、誰が買い、どんな企業がPEからPEへ渡っているのか──案件リストつきで分析します。

S2Sの件数推移:2024年以降に加速

047111412015120162201722018620191202082021520229202314202410202592026
図: Sponsor-to-SponsorのExit件数推移(Exit年が判明する案件)(2026年は8月中旬までの公表分)

2015〜2019年には年1〜6件だったS2Sは、2024年に14件と過去最多を記録し、2026年も8月中旬までに9件が公表されています。日本のPE市場が「1巡目の投資→回収」の段階から、「ファンド間で企業が引き継がれる」2巡目の段階へ入りつつあることを示す変化です。

実際の案件リスト:誰が売り、誰が買ったか

企業売り手ファンド買い手投資Exit保有業種
オイシーズ株式会社アドバンテッジパートナーズD Capital株式会社2017-012026-089.6年外食・食品サービス
ファイントゥデイ(旧・資生堂パーソナル…CVCキャピタル・パートナーズベインキャピタル2021-022026-065.3年消費財・小売
昭和電工株式会社 アルミ缶・アルミ圧延事…アポロ・グローバル・マネジメントMBKパートナーズ2021-012026-065.4年製造業
三菱マテリアル株式会社 アルミ圧延・押出…アポロ・グローバル・マネジメントMBKパートナーズ2021-112026-064.6年製造業
日建産業株式会社商工中金キャピタル株式会社セレンディップ・ホールディングス株式会社2025-012026-061.4年製造業
八十島プロシード株式会社アイ・シグマ・キャピタル株式会社インテグラル株式会社2021-112026-034.3年製造業
株式会社壮関株式会社日本産業推進機構D Capital株式会社2021-032026-035年消費財・小売
日精ホールディングスMCPキャピタル株式会社株式会社ジェイ・ウィル・パートナーズ運…20192026-01—製造業
ソフトブレーン株式会社アント・キャピタル・パートナーズポラリス・キャピタル・グループ株式会社2021-012026-015年IT・ソフトウェア
株式会社キットアドバンテッジパートナーズアスパラントグループ株式会社2020-122025-125年B2Bサービス
日本サイン株式会社日本プライベートエクイティ株式会社京都キャピタルパートナーズ株式会社2020-032025-115.7年—
株式会社ビーツ丸の内キャピタル株式会社MCPキャピタル株式会社2018-112025-106.9年B2Bサービス
株式会社外装四国アライアンスキャピタル株式会社しぎんキャピタルパートナーズ株式会社2021-062025-104.3年不動産・建設
NJT銅管株式会社アスパラントグループ株式会社株式会社SMBCキャピタル・パートナーズ2019-092025-096年製造業
MAFTECグループ株式会社(旧・三菱ケミカ…アポロ・グローバル・マネジメントアドバンテッジパートナーズ系ファンド(9…2021-092025-094年製造業
株式会社SASAYAホールディングス雄渾キャピタル・パートナーズ株式会社MCPキャピタル株式会社2020-032025-095.5年外食・食品サービス
株式会社アクトワンヤマイチティーキャピタルパートナーズ株式会社アドバンテッジパートナーズ2019-122025-085.7年不動産・建設
スペースバリューホールディングス株式会社ポラリス・キャピタル・グループ株式会社アドバンテッジパートナーズ2022-012025-073.5年製造業
FICT株式会社アドバンテッジパートナーズMBKパートナーズ株式会社がサービスを提供…2020-012025-025.1年製造業
東里工業株式会社LBPI株式会社商工中金キャピタル株式会社2021-102024-123.2年製造業
興人フィルム&ケミカルズ株式会社アスパラントグループ株式会社ジャパン-チャイナ・キャピタル・パート…2021-082024-123.3年製造業
米沢精密株式会社日本プライベートエクイティ株式会社七十七パートナーズ株式会社2019-062024-125.5年—
テイ・アイ・シイベーシック・キャピタル・マネジメント株式会社株式会社日本企業成長投資2019-082024-105.2年製造業
株式会社キノシタSynClover Capital Management株式会社(シンクローバーキャピタルマネージメント)アント・ソリューション・パートナーズ2020-092024-094年消費財・小売
株式会社イワヰREVIC復興キャピタル株式会社セレンディップ・ホールディングス株式会社2021-092024-093年製造業
株式会社プリアンファクレアシオン・キャピタル株式会社アント・キャピタル・パートナーズ2021-022024-063.3年消費者サービス
旭ハウス工業株式会社ティーキャピタルパートナーズ株式会社東京電力タイムレスキャピタル株式会社2018-112024-065.6年B2Bサービス
株式会社ペイロールクレアシオン・キャピタル株式会社TA Associates2017-062024-036.8年B2Bサービス
共和薬品工業ユニゾン・キャピタル株式会社ジェイ・ウィル・パートナーズ2019-122024-034.2年ヘルスケア
株式会社フードプラス・ホールディングスキャス・キャピタル株式会社ニューホライズン キャピタル2018-122024-025.2年外食・食品サービス

Exit時期の新しい順に30件を掲載(全77件)。ファンド名のリンク先で各社の投資先一覧を確認できます。

2026年だけでも、資生堂パーソナルケア事業を前身とするファイントゥデイ(CVC→ベインキャピタル)、アポロ傘下のアルミ事業のMBKパートナーズへの売却など、数千億円規模とみられる大型S2Sが並びます。一方で地方の中堅企業が地域ファンドから全国系ファンドへ引き継がれる小型のS2Sも増えており、大小両方の層で「2巡目市場」が動き始めています。

3代のオーナーを経る企業たち

S2Sが繰り返されると、1つの企業が複数のPEファンドを渡り歩くことになります。収録データからは、介護・ハウスケアのHITOWAホールディングス(CVCキャピタル→ポラリス→MBKパートナーズ)、栃木の食品メーカー壮関(アント・キャピタル→日本産業推進機構→D Capital)のように、3代のPEオーナーを経る企業が確認できます。各ファンドがそれぞれの得意分野(全国展開・管理体制・ブランド強化など)で価値を積み上げ、次のファンドへ引き継ぐリレー構造であり、「PEに売却された企業のその後」を追跡できるのは投資先データを継続収録しているからこそ見える光景です。

業種と保有期間の特徴

業種は消費財・製造業・ヘルスケア・外食など内需の安定業種が中心です。S2S案件の保有期間は平均4.6年・中央値4.3年と、事業会社への売却(中央値3.8年)よりやや長め。1巡目のファンドが価値向上を出し切ってから売却する傾向を反映していると考えられます。

なぜ日本でS2Sが増えるのか(編集部分析)

以下はデータに基づく編集部の分析・示唆です。

第一に、日本のPE市場の年齢です。2000年代後半〜2010年代に投資した1巡目案件が回収期を迎え、売り物としてのPE保有企業のストックが積み上がりました。第二に、ファンドサイズの階段が整ったことです。地域・小型ファンドで承継された企業が成長し、中型→大型ファンドが順に引き継ぐ受け皿が揃いました。第三に、買い手にとってのS2Sの合理性です。PE傘下でデューデリジェンスに耐える管理体制が整った企業は、オーナー企業より取得リスクが低く、2巡目でも打ち手(海外展開・ロールアップ・DX)が残っていれば十分にリターンが狙えます。欧米並みのS2S比率(Exitの3〜4割)に向かうなら、この領域は日本のPE市場で最も成長余地の大きいセグメントです。継続ファンド(Continuation Fund)という第三の選択肢も含め、セカンダリーと継続ファンドの解説で仕組みを整理しています。

よくある質問(FAQ)

Q. Sponsor-to-Sponsor(S2S)とは何ですか?

PEファンドが保有する投資先を、別のPEファンドへ売却する取引です。セカンダリーバイアウト(SBO)とも呼ばれます。売り手ファンドにとってはExit、買い手ファンドにとっては新規投資となり、企業のオーナーはPEからPEへ交代します。

Q. 日本でSponsor-to-Sponsorは増えていますか?

増えています。当サイト収録データでは2015〜2019年が年1〜6件だったのに対し、2024年は14件、2025年は10件、2026年も8月中旬までに9件が公表されています。

Q. なぜPEからPEへ売却するのですか?

売り手にはファンド期限内の投資回収、買い手には「PE傘下で管理体制が整った企業を取得できる」という利点があります。企業規模が1巡目の保有で大きくなり、より大型のファンドが次の成長を担う「階段構造」が典型です。

集計方法・データ定義

対象ファンド
大手町プレップPEファンドDB(収録492社)のうち、日本企業への投資案件を1件以上収録している127ファンド。国内独立系・銀行系・政府系に加え、日本で投資実績のある外資系ファンドを含みます。
対象案件
投資先企業の所在国が日本の案件、および国内ファンドで所在国の記載がない案件(国内ファンドの公式サイトは国内投資先のみを掲載しているため日本案件として扱う)。合計2,419レコード。複数ファンドによる共同投資(クラブディール)は市場全体の件数では1案件として数え、ファンド別の集計では各ファンドの投資実績として数えます(ユニーク案件数2,370件)。
データソース
各ファンドの公式サイト(投資先一覧・案件ページ・ニュースリリース)を一次情報として収集。投資時期・Exit時期・売却先は公式に公表されている情報のみを収録し、公表がないものは「非開示」「公表情報なし」として集計から明示的に区別しています。
Investment Date / Exit Date
公式発表の投資実行(または公表)年月・Exit年月。月まで確認できない案件は年のみを保持し、保有期間の計算からは除外します。日付が不明な案件に推定日を割り当てることはしません。
業種分類
投資先の公表事業内容から大手町プレップが独自に16の大分類(製造業/IT・ソフトウェア/ヘルスケア/消費財・小売/外食・食品サービス/B2Bサービス/人材/消費者サービス/金融/不動産・建設/物流・運輸/教育/メディア・エンタメ/エネルギー・環境/ホテル・レジャー/その他)へ正規化。全記事で同一の分類を使用します。分類根拠が公表されていない案件は「未分類」とし、業種別集計から除外します。
投資型(Deal Type)
各ファンドの公表資料の記載に基づき、事業承継/カーブアウト/非公開化/セカンダリー(PE間取得)/事業再生/MBO/バイアウト(その他)/成長・マイノリティ投資/ベンチャー投資へ正規化。公表情報から判別できない案件は「公表情報なし」(530件)として扱い、推測で割り当てません。
Exit分類
「事業会社への売却(Strategic Sale)」は公表された売却先が事業会社である案件。「Sponsor-to-Sponsor」は売却先が他のPEファンド(当サイトDB収録ファンドとの照合、および次オーナーの投資記録との突合で判定)。売却先が公表されていないExitは「売却先非開示」として比率計算の分母から除きます。
保有期間(Holding Period)
投資年月からExit年月までの月数を年換算(完全Exit案件のうち両方の年月が判明する705件のみ)。一部売却・継続保有中の案件は含みません。
Sponsor-to-Sponsorの判定
(1)公表資料でExit種別がセカンダリー等と明示された案件、(2)公表された売却先が当サイトDB収録のPEファンドと一致する案件、(3)同一企業が別ファンドの投資先として直後(Exitから12か月以内)に収録されている案件、のいずれかを満たすもの。買い手が非収録の投資会社であるS2Sは捕捉できないため、実件数はこれより多い可能性があります。

本記事の集計・分類は公開情報を基に大手町プレップが独自に行ったものです。各社の公表方針の違いにより、実際の投資件数・Exit件数は収録件数より多い可能性があります。数値は「当サイトが一次情報で確認できた範囲」の集計であり、市場全体の統計(推計値)ではありません。誤りのご指摘はお問い合わせまでお寄せください。

この分析の次に見る

2巡目の値付けを理解する

S2Sでは、1巡目のファンドが既に価値向上を進めた企業に、2巡目のファンドがどんな投資仮説で値を付けるのかが核心です。セカンダリーと継続ファンドで市場の仕組みを、投資仮説の立て方で買い手の思考を理解した上で、LBOモデルの数値でリターンの成立条件を確認してみてください。

出典: 各PEファンド公式サイト・プレスリリース(2026年9月8日時点)。

データで市場を知る、から、モデルで案件を評価するへ。

日本PE市場のデータの次は、LBO・バリュエーション・財務モデリングを日本語で手を動かして学ぶ。実務Excel教材をそろえています。

教材を見る →
↑