この記事で分かること
- 製造指図書(案件番号)ごとに直接材料費・直接労務費・外注加工費を集計し、製造間接費を予定配賦率で配賦して、案件別原価票を作る手順
- 受注時の見積原価と実際原価を費目別に並べ、赤字案件の差を「顧客の仕様変更による分」と「それ以外」に分けて、原因を特定する方法
- 特定した原因を、次回の見積(材料単価・作業時間・外注費・予備費)と受注可否の判断へ戻す考え方
想定読者:受注生産や受託開発の経営企画・FP&A(財務計画・分析)・原価計算の担当者、営業・工場管理の方
前提知識:直接費と間接費の区別。仕訳の知識は使いません。
結論:案件ごとの原価票と、見積との費目別の比較表で、赤字の原因を絞り込めます
受注生産や受託開発では、月次の損益計算書は案件の損益を合算した結果しか示しません。後述するV社は、当月の売上総利益率が見積時の15.0%から6.2%に下がりましたが、全案件が少しずつ悪かったのか、特定の案件が崩れたのかは、月次の数字からは分かりません。見積のどの前提が外れたのかも記録に残らず、次の見積に生かせません。
本記事は、個別原価計算で案件別原価票を作り、受注時の見積原価と並べた採算表で赤字の原因を特定する手順を、一つの設例で示します。結論は3点です。第一に、直接材料費・直接労務費・外注加工費は案件に直接ひもづけ(賦課)、製造間接費だけを予定配賦率で配賦すれば、案件別原価の合計を当月の製造費用(製造間接費は予定配賦額)に照合できます。第二に、見積と実際を費目別に比べ、差を顧客の仕様変更に起因する分とそれ以外に分けると、打ち手が変わります。V社の案件Bは370千円の赤字で、見積原価との差1,720千円のうち1,260千円が仕様変更、460千円がそれ以外でした。第三に、原因を次回の見積前提へ戻して、はじめて採算表が受注判断に使えます。
予定配賦率の作り方は製造間接費の予定配賦と基準操業度、費目ごとの消費額の月次確定は材料費・労務費・経費の月次集計、配賦差異の期末処理は原価差異を期末にどう処理するかで扱い、本記事ではこれらを与えられたものとして使います。
個別原価計算のしくみ:集計の単位は製造指図書
原価計算(製品やサービス1単位の原価を、材料費・労務費・経費に分けて集計する手続)のうち、個別原価計算は、種類の異なる製品を個別に生産する形態に使う方法です。特定の製造指図書ごとに直接費と間接費を集計し、製品原価はその指図書の製品の生産が完了した時に算定します1。製造指図書は、原価を集める単位となる番号付きの書類で、本記事では案件番号と同義です。同種の製品を反復連続して作る形態は総合原価計算の対象です(総合原価計算で完成品原価を求める)。Corporate Finance Institute(CFI)も、個別原価計算(job order costing)を、顧客ごとに固有の注文品に使う方式と説明しています2。
案件への載せ方は2通りです。直接費は、材料出庫票・作業時間報告・外注請求書の記録から案件に直接ひもづけます(賦課)。原価計算基準は、直接材料費を実際消費量 × 消費価格、直接労務費を実際の作業時間 × 賃率(予定平均賃率でもよい)、直接経費を原則として実際発生額で計算するとし、直接経費の例に外注加工賃を挙げています3。製造間接費は案件にひもづけられないため、予定配賦率に案件の実際の配賦基準量(本記事では直接作業時間)を掛けて配賦(共通の費用を一定の基準で案件に割り振ること)します4。
見積原価は受注前に積算した原価で、原価計算基準にこの語はなく、将来の予定消費量と予定価格で計算する「予定原価」に近い考え方です。実際原価は、基準では消費量を実績で計算した原価で、価格に予定価格を使っても実際原価の計算とされます5。本記事の実際原価は、材料・作業時間・外注費が実績で、賃率と配賦率が予定です。
図表1は、この流れです。4つの記録から各指図書の原価票に原価が集まり、完成・引渡し済みの案件は売上原価へ、製造中の案件は期末仕掛品(未完成品の原価として貸借対照表に残る額)へ分かれます。
設例:V社の3案件を案件別原価票にまとめる
以下は学習用の架空事例です。工場向けの省力化装置を受注生産するV社の20X3年4月に、製造指図書3件(案件A・B・C)が動きました。A・Bは当月に完成して引き渡し、Cは月末に製造中です。V社は売上を引渡し時に計上する前提で、Cの売上は計上しません。月初の仕掛品はありません。予定賃率(直接工の作業1時間当たりの賃金を、事前に定めた率)は3,000円/時間、予定配賦率は3,500円/時間(直接作業時間基準)です。配賦率は年間の製造間接費予算126,000千円を年間の基準操業度36,000時間で割った値です。
図表2が月末の集計です。直接労務費は時間 × 3,000円、配賦額は時間 × 3,500円で求めます。案件Aなら、810時間 × 3,000円 = 2,430千円、810時間 × 3,500円 = 2,835千円なので、合計は 4,260 + 2,430 + 800 + 2,835 = 10,325千円です。
| 項目 | 案件A | 案件B | 案件C | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 状況(月末時点) | 完成・引渡し | 完成・引渡し | 製造中 | ― |
| 直接材料費(材料出庫票) | 4,260 | 3,150 | 3,800 | 11,210 |
| 直接作業時間(時間。作業時間報告) | 810 | 780 | 400 | 1,990 |
| 直接労務費 = 直接作業時間 × 3,000円 | 2,430 | 2,340 | 1,200 | 5,970 |
| 直接経費(外注加工費。外注請求書) | 800 | 1,150 | 600 | 2,550 |
| 製造間接費配賦額 = 直接作業時間 × 3,500円 | 2,835 | 2,730 | 1,400 | 6,965 |
| 案件別原価の合計 | 10,325 | 9,370 | 7,000 | 26,695 |
| 原価の行き先 | 売上原価 | 売上原価 | 期末仕掛品 | ― |
図表2のとおり、3案件の原価合計は26,695千円です。これは、費目別の月次集計(直接材料費11,210千円・直接労務費5,970千円・外注加工費2,550千円の計19,730千円)に、予定配賦率 × 当月の直接作業時間合計(3,500円 × 1,990時間 = 6,965千円)を足した額と一致します。
完成・引渡し済みのAとBの合計19,695千円は売上原価に、製造中のCの7,000千円は期末仕掛品に振り替わります。完成前のCは製品原価が確定せず、仕掛品としてたな卸資産に計上されます6。案件別原価の製造間接費は予定配賦額で、当月の実際発生額との差(配賦差異)は案件別原価票に入れず、別に把握して期末に処理します。
案件別採算表:見積と実際を費目別に並べ、差の原因を分ける
受注価格と受注時の見積原価を、図表2の実際原価と並べたものが図表3です。差は「実際 − 見積」で、原価の差はプラスが不利(見積より多くかかった)、利益の差はマイナスが不利です。
| 項目 | A 見積 | A 実際 | A 差 | B 見積 | B 実際 | B 差 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 受注価格 | 12,000 | 12,000 | ― | 9,000 | 9,000 | ― |
| 直接材料費 | 4,200 | 4,260 | +60 | 3,050 | 3,150 | +100 |
| 直接作業時間(時間) | 800 | 810 | +10 | 600 | 780 | +180 |
| 直接労務費(時間 × 3,000円) | 2,400 | 2,430 | +30 | 1,800 | 2,340 | +540 |
| 外注加工費 | 800 | 800 | 0 | 700 | 1,150 | +450 |
| 製造間接費配賦額(時間 × 3,500円) | 2,800 | 2,835 | +35 | 2,100 | 2,730 | +630 |
| 原価合計 | 10,200 | 10,325 | +125(不利) | 7,650 | 9,370 | +1,720(不利) |
| 利益 = 受注価格 − 原価合計 | 1,800 | 1,675 | −125(不利) | 1,350 | −370 | −1,720(不利) |
| 利益率 = 利益 ÷ 受注価格 | 15.0% | 14.0% | −1.0ポイント | 15.0% | −4.1% | −19.1ポイント |
案件Aは、見積との差が+125千円にとどまり、利益は1,800千円(利益率15.0%)から1,675千円(14.0%)へ、1.0ポイント下がっただけです。案件Bは差が+1,720千円に達し、利益は1,350千円(15.0%)から−370千円(−4.1%)の赤字です。労務費+540と配賦額+630は、作業時間が180時間超過した影響で、1時間の超過が6,500円(3,000円 + 3,500円)の原価超過になります。月の合計では、見積ベースの利益3,150千円(売上21,000千円の15.0%)が実際は売上総利益1,305千円(6.2%)で、差の1,845千円は、Aの125千円とBの1,720千円の合計です。
差の原因は、案件に直接関係する記録で切り分けます。V社は、顧客から書面で受けた仕様変更の指示(変更指示書)の番号を、材料出庫票・作業時間報告・外注発注書に記入しており、この記録でBの差を分けたものが図表4です。
| 項目 | 差の合計 | 顧客起因 | 社内起因 |
|---|---|---|---|
| 直接材料費 | +100 | +100 | 0 |
| 直接作業時間(時間) | +180 | +120 | +60 |
| 直接労務費(時間 × 3,000円) | +540 | +360 | +180 |
| 外注加工費 | +450 | +380 | +70 |
| 製造間接費配賦額(時間 × 3,500円) | +630 | +420 | +210 |
| 差の合計(時間の行を除く) | +1,720 | +1,260 | +460 |
図表4のとおり、差の73.3%(1,260千円)は、変更指示書に基づく追加部品・追加作業・追加外注です。この分は、契約の価格調整の定めや、変更指示書で合意した範囲を確認したうえで、追加の対価を請求する検討材料になります(請求できるかは契約次第で、本記事では判断しません)。仮に1,260千円を受け取れたなら、Bの利益は 9,000 + 1,260 − 9,370 = 890千円で、見積利益1,350千円から社内起因の460千円を引いた額に一致します。仕様変更分の配賦額420千円は予定配賦率による割り振りで、支出が増えたとは限らないため、請求額に含めるかは契約や社内のルールで決めます。
残る460千円(26.7%)は、変更指示書のない作業時間60時間(調整工程のやり直し)と、外注先の見積に表面処理費が含まれておらず、見積時に確認していなかった70千円です(いずれも設例上の設定)。「社内起因」は顧客の指示によらないという意味で、担当者の責任を決める区分ではありません。見積前提、工程設計、外注先との確認手順のどこを直すかを調べる出発点です。
次回の見積と受注可否の判断へ戻す
原価計算基準は、原価計算の主たる目的の一つに価格計算に必要な原価資料の提供を挙げています7。V社の例では次のように戻します。
- 材料単価:Bの材料差+100千円は全額が仕様変更の追加部品で、見積単価のずれではないため、単価は据え置きます。単価の更新は、出庫票の単価と最新の購入価格の比較で行います。
- 作業時間:Aは見積800時間に対して810時間でほぼ見積どおりです。Bの変更指示書のない60時間は、見積時間の過小か一度きりの手戻りかを作業時間報告で確認し、前者なら見積時間を直し、後者なら予備費で扱います。
- 外注費:表面処理費70千円は、外注先への見積依頼書の確認項目に加えます。
- 予備費:率は少数の案件の差から決めません。Aの差は見積原価の1.2%、Bの社内起因は6.0%と開きがあるため、案件の種類別に差を蓄積して分布を見ます。
価格への反映も確かめます。Bと同じ案件を仕様変更なしで再び見積もるとき、社内起因の460千円がすべて再発する前提で見積原価に入れると、7,650 + 460 = 8,110千円です。
利益率を決めて価格を逆算する式
価格 = 見積原価 ÷ (1 − 利益率) 利益率 = 利益 ÷ 受注価格
利益率15.0%を保つ価格は、8,110 ÷ (1 − 0.15) ≒ 9,541千円(千円未満を四捨五入)で、今回の9,000千円より541千円(約6.0%)高くなります(検算:9,541 − 8,110 = 1,431千円で、価格の15.0%)。コストプラス価格設定(原価に一定率を上乗せして価格を決める方法)で「原価に15%上乗せ」とすると、8,110 × 1.15 = 9,326.5千円、利益は1,216.5千円で、価格に対する利益率は約13.0%にとどまります。上乗せ率と利益率は分母が違うため、社内の見積ルールでそろえます。
受注可否は、全部原価である見積原価と価格の比較だけでは決めません。空き能力があり配賦額の大半が固定費なら、その受注で増える支出は見積原価より小さいため、価格から変動費を引いた限界利益や、受ける場合と受けない場合で変わる原価だけを比べる差額原価の考え方(損益分岐点分析(CVP分析)の実務)で、固定費の回収にいくら回るかを見ます。能力が足りず他の案件を断るなら、断る案件の利益も比較に入れます。
制度会計との境界と、この設例の限界
制度会計との境界
案件別採算表は管理会計の表で、売上の計上時点や損失の会計処理は制度会計の論点です(以下、基準は2026年10月時点)。本設例はA・Bの売上を引渡し時に計上する前提ですが、収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号)は、一定の要件のいずれかを満たす場合は収益を一定の期間にわたり、いずれも満たさない場合は支配が顧客に移転する一時点で認識するとしています8。受注生産の案件がどちらに当たるかは契約条件によるため、本記事では判断せず、期間にわたる認識と進捗度の見積り(原価比例法など)は工事契約・長期請負契約の収益認識実務で扱います。
赤字が見込まれる案件には、別の会計処理もあります。企業会計基準適用指針第30号は、工事契約について、工事原価総額等が工事収益総額を超過する可能性が高く、かつその金額を合理的に見積れる場合に、超過額のうち既に計上された損益を除いた残額を工事損失引当金として計上すると定め、受注制作のソフトウェアにも準用します。工事契約の定義には、基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行う、一定の機械装置の製造等の請負契約も含まれます9。工事損失引当金(赤字が見込まれる工事の将来損失を前倒しで計上する処理)の計算はリンク先に委ね、V社の受注生産が対象か、案件Cに引当が必要かは契約内容によるため判断しません。
よくある間違い
記録がないまま差をすべて見積担当の誤りとすること、配賦額を含む差をそのまま追加請求額にすること、完成後にしか見積と比べず製造中の赤字に気づくのが遅れることが、代表的な間違いです。
成立条件と限界
この設例は、次の条件で成り立ちます。賃率と配賦率は予定で、配賦基準は直接作業時間だけであること(機械中心の工程や、案件ごとに間接費の発生が大きく違う場合は歪みます)。製造部門を単一とみなし、補助部門費は配賦済みであること。案件は当月に着手し、月初仕掛品がないこと。変更指示書の番号が記録されていること(なければ顧客起因と社内起因は分けられません)。手戻りは元の案件の作業時間に集計しています。仕損の補修として扱う場合、基準は補修指図書の有無に応じた仕損費の計算と、当該指図書への賦課などの処理を定めています10(仕損コストの見える化と歩留まり改善)。受託ソフトウェア開発など工数が中心の案件も、作業時間 × 賃率で集計する構造は同じですが、受注制作ソフトウェアの会計処理はソフトウェア開発費の会計処理で扱います。
実務チェックリスト
- 案件番号を、材料出庫票・作業時間報告・外注発注書・外注請求書のすべてに記入する運用にし、記入漏れを月次で確認している。
- 案件別原価の合計を、費目別の月次集計(直接費)と、予定配賦率 × 直接作業時間の合計に照合している。
- 採算表に受注価格・見積原価・実際原価・差を費目別に載せ、差の符号(プラス=原価超過)を統一し、賃率と配賦率が予定であること、配賦差異を含まないことを注記している。
- 変更指示書の番号を記録し、差を顧客起因と社内起因に分けて報告している。差の分類と担当者の責任の判断は切り離す。
- 顧客起因の原価は、契約と変更指示書に照らして追加請求の可否を確認し、配賦額を請求額に含めるかを決めている。
- 分かった原因を見積前提(材料単価・作業時間・外注費・予備費)へ戻した記録が残り、売上の計上時点や赤字案件の会計処理は制度会計の基準で別に確認している。
よくある質問(FAQ)
案件別採算表の利益を合計すると、月次の売上総利益と一致しますか。
売上原価に予定配賦額を使っている限り、一致します。V社なら、Aの利益1,675千円とBの−370千円の合計1,305千円が、売上21,000千円から売上原価19,695千円を引いた額に一致します。配賦差異を月次で売上原価に加減する場合は、その額だけずれます。
仕様変更の指示が口頭だった場合は、仕様変更分を分けられませんか。
事後に切り分ける記録がなければ、顧客起因と断定はできません。指示を受けた日・内容・指示者を作業時間報告の備考欄に残す、口頭の指示は当日中にメールで確認する、といった記録の運用が必要です(編集部の提案)。分けられなかった差は「原因未確定」として別枠に置き、調べる対象にします。
まとめ
直接費は案件に賦課し、製造間接費は予定配賦率で配賦すると、案件別原価の合計を、直接費の月次集計と予定配賦額の合計に照合できます。見積原価と並べた採算表で、V社の案件Bの赤字は、仕様変更による分とそれ以外に分かれました。分けた原因は、追加請求の検討と、次回の見積前提・受注判断へ戻して、はじめて使えます。
脚注
- 原価計算基準 第2章第4節31「個別原価計算は、種類を異にする製品を個別的に生産する生産形態に適用する。」「個別原価計算にあつては、特定製造指図書について個別的に直接費および間接費を集計し、製品原価は、これを当該指図書に含まれる製品の生産完了時に算定する。」。同21は単純総合原価計算を「同種製品を反復連続的に生産する生産形態に適用する」と定める(参考文献 R1。2026年10月時点で財務会計基準機構のサイトに掲載されている文言)。↩
- Corporate Finance Institute「Job Order Costing Guide」の「What is Job Order Costing?」「Normal Costing」の各節。顧客ごとに固有の注文品(unique or custom job)を納める場面で使われること、直接材料費と直接労務費の実際額は材料出庫票(materials requisition forms)と作業時間票(labor time sheets)から把握しやすい一方、製造間接費は多くの企業が予定(predetermined, or budgeted)の配賦率で見積もることが書かれている一般的な説明で、日本の制度の根拠ではない(訳・要約は編集部。参考文献 R2)。↩
- 原価計算基準 第2章第4節32「個別原価計算における直接費は、発生のつど又は定期に整理分類して、これを当該指図書に賦課する。」。(一)直接材料費は「当該指図書に関する実際消費量に、その消費価格を乗じて計算する」、(二)直接労務費は「当該指図書に関する実際の作業時間又は作業量に、その賃率を乗じて計算する」、(三)直接経費は「原則として当該指図書に関する実際発生額をもつて計算する」。第2節10は直接経費の例に外注加工賃を挙げ、同12(一)は平均賃率を、必要ある場合には「予定平均賃率をもつて計算することができる」とする(参考文献 R1)。↩
- 原価計算基準 第2章第4節33(二)「間接費は、原則として予定配賦率をもつて各指図書に配賦する。」。(三)は部門間接費の予定配賦率を、間接費予定額を同期間の予定配賦基準で除して算定するものとし、(六)1は各指図書への配賦額を「間接費予定配賦率に、各指図書に関する実際の配賦基準を乗じて計算する」とする(参考文献 R1)。↩
- 原価計算基準 第1章4(一)1「実際原価とは、財貨の実際消費量をもつて計算した原価をいう。」「原価を予定価格等をもつて計算しても、消費量を実際によつて計算する限り、それは実際原価の計算である。」、同2「予定原価とは、将来における財貨の予定消費量と予定価格とをもつて計算した原価をいう。」。「見積原価」という語は同基準に出てこない(全文を検索して確認)。見積原価が予定原価に近い考え方であるのは編集部の整理(参考文献 R1)。↩
- 原価計算基準 第1章6(一)1(1)。原価計算は、原則としてすべての製造原価要素を製品に集計し、「貸借対照表上仕掛品、半製品、製品等の製造原価をたな卸資産として計上することを可能にさせ」るものとされる(参考文献 R1)。↩
- 原価計算基準 第1章1(二)。原価計算の主たる目的の一つとして「価格計算に必要な原価資料を提供すること」が挙げられている(参考文献 R1)。↩
- 企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」第38項・第39項。第38項は、(1)顧客が履行するにつれて便益を享受する、(2)履行によって資産が生じる又は資産の価値が増加し、それにつれて顧客がその資産を支配する、(3)別の用途に転用できない資産が生じ、かつ、履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有する、のいずれかを満たす場合に、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識するとし、第39項は、いずれも満たさない場合には、資産に対する支配を顧客に移転する一時点で収益を認識するとする(要約は編集部。2026年10月時点でASBJのサイトに掲載されている文言。参考文献 R3)。↩
- 企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」第90項「工事契約について、工事原価総額等(工事原価総額のほか、販売直接経費がある場合にはその見積額を含めた額)が工事収益総額を超過する可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、その超過すると見込まれる額(以下「工事損失」という。)のうち、当該工事契約に関して既に計上された損益の額を控除した残額を、工事損失が見込まれた期の損失として処理し、工事損失引当金を計上する」。第91項「受注制作のソフトウェアについても、工事契約に準じて前項の定めを適用する」(2026年10月時点でASBJのサイトに掲載されている文言。参考文献 R4)。工事契約の定義は企業会計基準第29号第13項「仕事の完成に対して対価が支払われる請負契約のうち、土木、建築、造船や一定の機械装置の製造等、基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行うもの」(参考文献 R3)。↩
- 原価計算基準 第2章第4節35。個別原価計算で、仕損が補修によって回復でき、補修指図書を発行する場合は「補修指図書に集計された製造原価を仕損費とする」((一))、「仕損の補修又は代品の製作のために別個の指図書を発行しない場合には、仕損の補修等に要する製造原価を見積つてこれを仕損費とする」((三))。仕損費の処理は「仕損費の実際発生額又は見積額を、当該指図書に賦課する」方法と、間接費として仕損の発生部門に賦課する方法のいずれかによる(参考文献 R1)。↩
参考文献(2026年10月確認)
- R1 企業会計審議会「原価計算基準」(昭和37年11月8日。公益財団法人財務会計基準機構「会計基準検索システム ASSET-ASBJ」掲載) asb-j.jp (参照箇所:第1章1・4・6、第2章第2節10・12、第2章第4節20・21・31〜33・35。脚注1・3・4・5・6・7・10の根拠。閲覧日:2026年10月2日)
- R2 Corporate Finance Institute「Job Order Costing Guide」 corporatefinanceinstitute.com (個別原価計算の一般的な概念の参考。日本の制度の根拠ではない。脚注2の根拠。閲覧日:2026年10月2日)
- R3 企業会計基準委員会(ASBJ)企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(ASSET-ASBJ 掲載) asb-j.jp (参照箇所:第13項・第38項・第39項。掲載ページの最終更新表示 2026年7月17日。脚注8・9の根拠。閲覧日:2026年10月2日)
- R4 企業会計基準委員会(ASBJ)企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(ASSET-ASBJ 掲載) asb-j.jp (参照箇所:第90項・第91項。掲載ページの最終更新表示 2026年7月17日。脚注9の根拠。閲覧日:2026年10月2日)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための学習用の架空事例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。