想定読者:不動産ファンド、REIT、金融機関の不動産融資、事業会社の不動産担当の方
前提知識:NOIとキャップレートの基本(本文で確認します)

投資委員会に2件の賃貸住宅が並んだとする。地方都市の築古アパートは表面利回りが8.0%、都心の築浅マンションは4.8%である。築古の担当者は利回りの高さを説明し、委員は「手間と滞納と修繕で消えるのではないか」と返す。どちらの言い分にも覚えがあるが、数字で決着がつくことは少ない。

この問いを、3か国の大規模データで測った研究がある。家賃の安い物件ほど投資収益が高いという結果そのものより、実務に役立つのは、費用やリスクを順に差し引いても差がどこまで残るかを追った手順のほうだろう。結果と限界を確かめたうえで、日本の物件比較に移す。

この記事が主に参照する研究

Damen, Korevaar, Van Nieuwerburgh(2025)「An Alpha in Affordable Housing?」NBER Working Paper No. 33470

  • 公表:初版 2025年2月(NBER WP)。参照した版:同版。査読:未査読(WP)1
  • データ:米国の多世帯賃貸ローン約10.6万件(80,608物件、2001〜2024年)、ベルギーの登録賃貸借契約198,351件(2007〜2021年)、オランダの行政データ(2018〜2022年)2
  • 方法:家賃水準の十分位ごとに利回りと値上がりを測る相関の分析。リスクによる説明を順に検討する消去法で、因果の識別やアルファの推計ではない3
  • 位置づけ:新しいデータによる事実の提示と、市場の分断という解釈

利回りは​三段に​分けて​読む

議論を揃えるため、指標を三段に分ける。一段目の表面利回りは、年間賃料を物件価値で割ったものだ。二段目の純利回りは、そこから修繕費・税・管理費・空室や滞納の損失を引いたNOI(純営業収益)を物件価値で割る。キャップレートと同じ形の比率である。三段目の総リターンは、純利回りに値上がり​利回りを足す。

研究が問うアルファは、総リターンの差のうち、リスクの対価として説明できずに残る部分を指す。総リターンが高いだけではアルファとはいえない。

十分位は物件を10等分した区分だが、並べる基準は国で異なる。米国は融資時に査定された1戸当たりNOI、ベルギーとオランダは面積、築年、所在地区などの物件特性から予測した家賃で並べる。実際の家賃の順に並べた区分ではない。利回りと総リターンは、区分ごとに観測された家賃や価格などから測る。著者らは、米国でNOIの順に並べると差は小さめに出ると書く4。本稿では、この基準が最も低い10%をD1、最も高い10%をD10と呼び、便宜上「最も安い10%」「低家賃帯」とも書く。

費用を​引いても​差は​残り、​値上がりの​差が​上乗せされた

総リターンのD1−D10の差は、ベルギーで1.74、オランダで3.60、米国で3.86(年率の%ポイント)であった5。D1の総リターンはそれぞれ7.58%、12.35%、11.23%、D10は5.84%、8.73%、7.37%となる6。規模の感覚として、ベルギーのD1は平均家賃が月616ユーロ、物件価値が約13.5万ユーロ、D10は月1,430ユーロ、約43.9万ユーロである7。

図1は、差を純利回りと値上がりに分けたものだ。ベルギーは両者が半々に近く、オランダと米国は値上がりが大半を占める。後で触れるように、値上がりは推計に頼る部分が大きく、期間の影響も受けやすい。差の中心がどちらにあるかで、結果の持ち運びやすさは変わる。

図1 総リターン差の内訳図1 総リターン差の内訳(D1−D10)純利回りの差値上がりの差単位:年率の%ポイント(左が純利回り、右が値上がり)米国 合計 3.86(値上がり分 84%)0.613.25オランダ 合計 3.60(値上がり分 70%)1.102.51ベルギー 合計 1.74(値上がり分 48%)0.890.84
出所:R1(p.21 表2)の​掲載値を​基に​大手町​プレップ​作成。​値上がり分の​比率は​編集部の​計算​(値上がりの差÷総リターンの差)。​D1は​分類の​基準​(米国は​1戸当たり​査定​NOI、​ベルギー・​オランダは​予測家賃)が​最も​低い​10%、​D10は​最も​高い​10%。​国ごとに​期間・物件の​単位・​測り​方が​異なり、​3か国の​大小を​そのまま​比べる​ことは​できない。​掲載値の​ため、​ベルギーと​オランダは​内訳の​和と​合計が​0.01異なる。

費用の分解はベルギーとオランダでできる。表1のように、費用は低家賃帯で重い。ベルギーのD1は2.77%(賃料の44%)、D10は1.53%(36%)で、オランダは2.52%(36%)と0.96%(23%)だった8。この費用差が、表面利回りの差の約58%を消している9。この標本に限れば、「手間で消える」という指摘は半分以上当たっていたことになる。

表1 表面利回りから純利回りへ(物件価値に対する年率%)

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項目ベルギー D1D10差オランダ D1D10差
表面利回り6.324.192.136.934.262.67
修繕費1.590.810.781.450.421.03
固定資産税等0.490.320.170.160.090.07
退去時の損失0.060.020.040.340.260.08
滞納の損失0.090.020.070.140.010.13
管理費0.540.360.180.430.180.25
費用の合計2.771.531.242.520.961.56
純利回り3.562.660.894.413.311.10
出所:R1(p.21 表2、p.22)の​数値から​主要な​行を​選び、​大手町​プレップ​作成。​差は​論文の​掲載値​(%ポイント)。​ベルギーの​純利回りは​水準の​差が​0.90、​掲載値が​0.89で、​0.01の​違いは​丸めで​生じうる​範囲である。​費用の​大半は​実額の​観測ではなく​推計である​(固定資産税等は行政データ)。

費用差の中心は修繕費で、ベルギーで費用差の約63%、オランダで約66%を占める10。滞納の差はベルギー0.07、オランダ0.13(%ポイント)にとどまり、印象ほど大きくない。ただし、これは前提を置いた推計である。著者らは、費用を賃料または物件価値の一定割合と置く慣行は、どちらも不適切だと書く11。物件価値に対する費用率は家賃帯で大きく変わるからだ。

関係がきれいに単調というわけでもない。米国の純利回りはD2がD1より高く、ベルギーはD10がD9より高く、オランダはD8が最も低い12。オランダの値上がりの差も、D9からD10への低下に集中している。D2−D9の差は81bpで、著者らはアムステルダムがD10に多いこと、標本期間が住宅価格の上昇期だったことを挙げる13。D1とD10の両端だけを見ると、差を大きく読みすぎるおそれがある。

高い​収益は​リスクの​対価なのか——著者らの​検討

総リターンが高い資産は、普通はリスクも高いと考える。著者らは三つの説明を順に検討した。

第一は景気との連動(ベータ)である。米国の実績キャッシュフローを見ると、低家賃物件の純キャッシュフロー(NCF)は景気後退で落ちにくく、2008年の危機やコロナ禍ではD1が増えていた。著者らは、景気が悪いと低所得層の所得が大きく減り、安い住まいの需要がむしろ強まると解釈し、低家賃住宅を景気後退のヘッジと呼ぶ14。ヘッジならば、平均リターンは低いはずで、高い理由にならない。

第二は規制リスクである。米国の州法を生成AIで15項目に採点した借家人保護の指数、州ごとの政策不確実性、州政府の政治勢力で州を分けたところ、規制リスクが高そうな州で家賃と収益の傾きが急になる傾向は見られず、むしろ緩やかだった15。オランダでも、家賃上限の拘束が弱い地域ほど傾きが急で、予想と逆だった。2024年7月に上限規制は拘束力を持ち民間賃貸の約9割に広がったが、著者らの概算では賃料収入の減少はD10(−22.5%)がD1(−13.5%)より大きい16。

第三は物件ごとの個別リスクである。低家賃物件の入居者は若く低所得で、入れ替わりもやや多い。一方、所得が25%以上減る人の比率はD1が7.1%で、D7の9.9%より低い17。米国の多世帯ローンの60日延滞は3年で約0.5%、5年で約1%と低く、家賃との関係は不規則だった18。NCF成長率のばらつきはD1のほうが大きいが、差は3〜4年で1.5%ポイントにとどまり、著者らは3%ポイントの収益差を説明するにはリスク回避度267が必要だと試算する19。

以上から著者らは、プラスのアルファがあるとの解釈が最も妥当だと論じる。ただし、これは消去法の結論である。結論部の表現も「リスクだけでギャップ全体を説明するのは難しい」という慎重なものだ20。

なぜ資金が​入らないのか——三つの​摩擦

超過収益があるなら、裁定の資金が入って消えるはずだ。著者らは、入らない理由を資金の出し手ごとに説明する。

借り手は買えない。オランダのD1の入居者は所得が最も低く、頭金に足る流動資産を持たず、持家への移行も少ない。集合住宅では共同で買い取る調整も難しい21。

大手は入らない。ベルギーとオランダでは低家賃帯の保有は3〜50戸の中規模の家主が中心で、1,000戸超の超大手は上位の家賃帯に集まり、オランダでは純利回りが最も低い22。著者らは、年金資金などを預かる大手が評判の悪化を恐れている可能性を挙げるが、決定的な証拠はないと認めている23。規模の不経済も候補で、オランダの住宅協会では1,000戸未満の協会の1戸当たり運営費が、1万〜2.5万戸の協会より14〜20%低かった。ただし対象は非営利の協会で、民間の低家賃帯そのものの検証ではない24。

中規模の家主は増やせない。個人の家主は外部の株式資本を使えず、次の物件の頭金は手元の利益に頼る25。しかも地元に偏る。オランダの40地域で測った地域集中度(HHI)は、超大手の0.15に対し、平均的な家主は0.90だった。家賃と利回りの傾きは40地域中39地域で負で、低家賃物件が多い地域、地域の偏りが強い地域で大きい26。著者らはここから、機関資金の誘導や中規模家主への資本供給といった政策を論じている27。

結果を​読む​ときの​留保

まず、この論文は未査読のWPである。費用はベルギーとオランダでは大半が観測値ではなく推計で(固定資産税等は行政データ)、米国のNOIは融資時の査定値、値上がりの多くは5年先の価格モデルによる推計だ28。論文の結果の表には差の標準誤差がなく、統計的な確かさは本稿では評価できない。総リターンには借入、売買費用、所得課税の扱いが見当たらない29。投資家の分断を示す証拠もベルギーとオランダのもので、米国データに投資家の属性はない30。

似た事実は他の研究にもある。Demers and Eisfeldtは米国30都市の戸建賃貸で、都市内では低価格帯の地区ほど総リターンが高いと報告する31。ただし同じ論文は、低価格帯の値上がりは都市全体の動きへの感応度が高く、高いリターンはリスクの対価かもしれないとも書く32。Halket, Loewenstein and Willenは米国21都市圏で、信用力の低い地域ほど利回りが高いことを示し、標本内ではリスクも高いと認めたうえで、分断された市場の証拠と解釈している33。現象の報告は重なるが、リスクの扱いは研究によって温度差がある。

大手町​プレップの​考察

ここからは編集部の検算と推論である。論文が検証したものではない。

一つ目は、リスク回避度267という数字だ。論文の脚注18の式は分散の差を使うが、示されているのは267という値までで、ばらつきの水準は書かれていない。編集部の検算では、267が出るのは基準のばらつきをゼロと置いた場合に当たる34。そこで水準を仮定して計算し直したのが表2である。各行は仮定に基づく編集部の計算で、1行目が論文の267と一致するほかは論文の結果ではない。論文の図5を画像化して目視で読むと、3年のD10は約7%だった。これを仮の水準に置くと、必要なリスク回避度は約26、リスク回避度5で説明できる差は約58bpとなる35。それでも3%ポイントの約19%にとどまるので結論の向きは変わらないが、267という数字の印象ほど極端な差でもない。

表2 ばらつきの水準を仮定して計算し直す(編集部の計算)

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D10のばらつきの水準(仮定)必要なリスク回避度リスク回避度5で説明できる差(bp)
0%(論文の267に一致)2675.6
3%5328.1
5%3543.1
7%(論文の図5の目視の読み取り)2658.1
10%1980.6
出所:R1(p.30 脚注18)の​式に、​3%ポイントの​収益差と​1.5%ポイントの​ばら​つき差、​各行の​仮定の​水準を​入れて​大手町​プレップが​計算。​論文の​結果ではない。​必要な​リスク​回避度=2×0.03÷​(σ2²−σ1²)、​σ2=σ1+0.015。​論文が​示す267は​1行目の​値に​一致する。​7%は​論文の​図を​目視で​読み取った​概算で、​論文の​掲載値ではない。

二つ目は、ヘッジの範囲である。論文の図2(Fannie Maeの標本で、融資時の実質査定NCF/戸により十分位に分類。本稿の総リターンの分類とは基準が異なる)を画像化して目視で読むと、この分類の最下位のNCF成長率の中央値は2009年と2020年にプラスだった一方、2018年と2022年には全十分位で最も低い36。理由は論文に書かれていないが、景気後退には強くても、別の局面では弱い可能性がある。低家賃物件は費用の比率が高いので、修繕費や人件費の上昇に弱いのではないかというのが編集部の仮説である。

三つ目は、アルファと運営の対価の区別だ。論文の管理費は外部委託の料率で置かれている37。しかし低家賃帯の中心である中規模の個人家主は、入居者対応や小修繕を自ら担っているかもしれない。その労力の市場価値が料率より大きければ、差の一部は超過収益ではなく、運営の手間への報酬と考えられる。大手に規模の不経済があるなら、資金を持つ投資家がそのまま同じ収益を得られるとも限らない。編集部の見方では、「安く買える資産」より「運営できる者にだけ開く収益」と考えるほうが安全である。

日本で​何が​違うか

この研究の対象に日本は含まれない。以下の当てはめはすべて編集部の推論である。

市場の大きさは、民営借家が1568万4千戸で住宅全体の28.2%を占める。家賃の平均は月額で木造54,409円、非木造68,548円である38。日本で特に確かめたいのは空室の環境である。空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%と過去最高で、このうち賃貸用は443万6千戸である39。欧米の標本で低家賃帯の値上がりが大きかったことを、人口が減る地域の築古物件にそのまま当てはめるのは危うい。図1で値上がりの比率が高かった点を思い出すと、日本では差の残り方が違う可能性がある。

制度も違う。貸主の解約申入れには正当の事由が要り、賃料は増減額請求の枠組みの中で決まる40。在室中の賃料の動きが鈍い点は賃貸​レジデンスの​分析実務でも扱った論点で、費用が上がる局面で低家賃物件の利幅が圧迫される経路は、確かめる価値がある。

低所得や高齢の入居者をめぐっては、2025年10月に改正住宅セーフティネット法が施行された。単身高齢者などへの大家の拒否感の背景に、孤独死や残置物、滞納への不安があるとされ、居住サポート住宅や認定家賃債務保証業者の制度が作られた41。滞納や残置物のリスクを移転できる範囲が変わるなら、費用の前提に影響する。一方で、評判の問題は日本の機関投資家にも当てはまりうる。投資方針に照らして、低家賃帯をどう扱うかは運用会社ごとの判断になる。

設例:2物件を​三段で​比べる

学習用の設例(架空)

  • 物件A(地方都市・築古・低家賃):価格6,000万円、満室賃料 年480万円(表面8.0%)
  • 物件B(都心・築浅・高家賃):価格20,000万円、満室賃料 年960万円(表面4.8%)
  • 費用(賃料に対する比率):Aは空室・退去8%、滞納2%、管理6%、修繕17%、税7%。Bは5%、0.5%、4%、7.5%、8%
  • 年間の価格変化:A −0.5%、B +0.5%(土地と建物を合わせた想定)。所得課税・借入・売買費用は含めない

費用はAが年192万円(賃料の40%、価格の3.2%)、Bが240万円(25%、1.2%)となる。NOIは288万円と720万円で、純利回りは4.8%と3.6%である。表面で3.2%ポイントあった差は1.2%ポイントに縮み、値上がりの差−1.0%ポイントを足すと、総リターンは4.3%と4.1%で、差は0.2%ポイントしか残らない。

図2は、Aの費用率と値上がりの差を動かしたものだ。値上がりの差が−1.0のままなら、Aの費用率が42.5%を超えるとBが逆転する。費用率が5%ポイント違うと総リターンの差は0.4%ポイント動き、設例ではこの幅が結論を左右する。

図2 総リターン差の感応度図2 総リターン差の感応度(架空)セルは物件A−物件Bの総リターン差単位:年率の%ポイント/▲はBが上回る値上がり率の差(A−B)−2.0−1.00.0+1.0Aの費用率35%▲0.40.61.62.640%▲0.80.21.22.245%▲1.2▲0.20.81.850%▲1.6▲0.60.41.455%▲2.0▲1.00.01.0
出所:学習用の​仮定に​基づき大手町​プレップ​作成。​研究の​数値ではない。​太枠が​基準ケース。​Bの​費用率と​表面利回りは​固定。​単純化の​ため、​所得課税・​借入・​売買費用は​含めない。

明日から​使える​確認手順

  1. 三段で並べる:候補物件を表面利回り、純利回り、総リターンの順に一行で比較する。表面利回りだけの資料は差し戻す。
  2. 費用を項目別に物件価値で割る:賃料の一律○%で置かず、修繕、税、管理、退去、滞納を別々に積む。資本的支出も将来分を年額に直す。
  3. 家賃帯の位置を確かめる:同じ市区町村の募集賃料を十分位に分け、対象がどの帯にあるかを書く。端の帯だけで判断しない。
  4. 値上がりを土地と建物に分ける:総リターンのうち値上がりの比率を計算し、比率が高ければ、建物の​減価と地価の前提を別々に説明させる。
  5. 局面を分けて試す:売上が落ちる局面(空室増)と、費用が上がる局面(修繕費・人件費増)の2通りでNOIを計算する。
  6. 運営の手間を値付けする:自主管理の案件では、担当者の労力をPM委託の見積額に置き換え、それでも純利回りの差が残るかを問う。
  7. 地域の偏りを測る:保有物件の地域別シェアからHHIを計算する。編集部の仮の目安として0.5を超えたら地域の下落シナリオを別に作る(研究で検証された閾値ではない)。

委員会で使える質問を一つ挙げるなら、「この利回りの差のうち、費用を実額で積んでも残るのは何%ポイントで、誰の労力の対価か」である。

よく​ある​質問

低家賃の​物件を​買えば、​日本でも​高い​リターンが​得られますか。

この​研究からは​いえません。​対象は​米国・​ベルギー・​オランダで、​日本は​含まれていません。​人口や​空室の​環境も​異なる​ため、​物件ごとに​費用と​値上がりの​前提を​確かめる​必要が​あります。

​「アルファ」は​論文で​数値が​示されていますか。

示されていません。​論文が​示す数値は​総リターンの​差で、​リスクの​説明を​順に​検討したうえで、​残る​部分を​アルファと​解釈しています。

まとめ

ベルギーとオランダでは費用差が表面利回りの差の約58%を消したが、3か国とも純利回りと値上がりの差は残った。著者らはこれをリスクの対価では説明しきれないと見るが、未査読の消去法の結論であり、差の多くは推計に頼る値上がりにある。編集部の検算でも、リスクの試算には留保が要る。日本で使えるのは結論より手順で、利回りを三段に分け、費用を項目別に積み、運営の手間まで値付けしてから比べることである。

脚注

  1. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.1〜2。ページは PDF の物理ページ(印刷ページ=物理ページ−2)。参照した2025年2月版の表紙に未査読と明記。その後の掲載状況は、2026年10月31日に Crossref の書誌検索で確かめた範囲では学術誌版の記録が見当たらなかったが、網羅的な確認ではない。↩
  2. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.9、p.47〜48(米国・表B1)、p.10、p.68〜69(ベルギー・表D1)、p.10〜11、p.60(オランダ)。オランダの民間賃貸は家賃の45%が観測できず、著者は標本が全民間賃貸の代表ではないと書く。↩
  3. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.5、p.12〜14、p.16〜17、p.23、p.37。↩
  4. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.12〜13(米国)、p.13(ベルギー)、p.14(オランダ)。米国の分類指標は融資時に査定された1戸当たりNOI。ベルギーとオランダの予測家賃は、物件特性による家賃の回帰(ヘドニックモデル)の予測値。↩
  5. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.21・表2。D1−D10 の差は掲載値。↩
  6. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.21・表2。オランダの総リターン差の掲載値は3.60だが、D1とD10の水準の差は3.62である。0.02の違いの原因は確認できない(小数第2位への四捨五入だけでは説明しにくい)。本文は掲載値を使う。↩
  7. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.21・表2、p.44・表A2(家賃と物件価値、2023年価格)。↩
  8. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.22。賃料に対する比率は論文の掲載値。↩
  9. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.22。費用が表面利回り差に占める割合(約58%)は掲載値から編集部が計算。↩
  10. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.21・表2(修繕費の差)。修繕費の比率は編集部の計算。論文 p.20 も修繕費の差の大きさを指摘する。↩
  11. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.22。↩
  12. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.19、p.21・表2。↩
  13. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.19(脚注8を含む)。↩
  14. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.4、p.23、p.24・図2。NCF はFannie Mae の標本で観測した実際の純キャッシュフロー。↩
  15. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.24〜25・図3、p.73〜78(付録E)。↩
  16. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.26(脚注15を含む)。↩
  17. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.27〜28・表3。↩
  18. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.29・図4。Fannie Mae の標本。↩
  19. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.30(脚注18を含む)。↩
  20. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.21・表2に標準誤差の記載はない。アルファの推計表も全文に見当たらない。本文は p.23 で「CAPM アルファが高いようだ」、p.5 で「最も妥当な解釈」、p.37 で「ギャップ全体を説明するとは考えにくい」と書く。↩
  21. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.33〜34。↩
  22. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.31〜32・図6、図7。ベルギーで法人の保有は5%。↩
  23. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.34〜35(脚注21を含む)。↩
  24. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.35、p.45・表A3。約260の協会の分析。↩
  25. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.35。著者の説明で、直接の検定ではない。↩
  26. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.36・図8、p.37・図9。↩
  27. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.38。↩
  28. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.14〜16、p.57、p.67(修繕費・滞納・管理費の前提)、p.12、p.51(NOI と値上がりの推計)。5年のNOI成長モデルの決定係数は6.9%。修繕費の定義はオランダが99年の運営に必要な年額、ベルギーが周期25年以内(屋根の更新は含まない)で、国により異なる。↩
  29. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.4、p.52(総リターン=純利回り+値上がり)。借入、売買費用、所得課税の扱いの記述は、全文検索では見当たらなかった。↩
  30. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.8〜9・表1。米国データに投資家属性はない。↩
  31. R2(NBER WP 21804 の2021年5月改訂版)p.2、p.5〜7。↩
  32. R2(同)p.7。↩
  33. R3(2023年3月9日版)p.1、p.4、p.21、p.25。↩
  34. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.30・脚注18は、確実性等価を等しくする式で σ2=σ1+0.015 と置き、γ=266.67 を示す。論文が示すのはこの値までで、σ1の水準は書かれていない。この値が 2×0.03÷0.015² に等しく、σ1=0 のときに当たるというのは編集部の検算で、著者に確認したものではない。著者が別の前提を置いている可能性はあるが、脚注に説明はない。↩
  35. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.31・図5を画像化して編集部が目視で読み取った概算(3年で D10 約7%、D1 約8.5%)。論文の掲載値でも本文の記述でもない。ここでのばらつきはNCF成長率の断面の標準偏差で、投資収益のボラティリティそのものではない。↩
  36. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.24・図2を画像化して編集部が目視で読み取った概算(2018年は D1 約−3.5%、次に低い D10 約−1.7%。2022年は D1 約−6%、次に低い D2 約−4.6%。2009年の D1 は約+3.9%、2020年の D1 は約+4.7%)。論文の掲載値ではなく、論文の本文は2018年と2022年に触れていない。↩
  37. R1(NBER WP 版, 2025年2月)p.16、p.58(オランダ)、p.67(ベルギー)。↩
  38. R4 p.10(民営借家)、p.12(家賃)。↩
  39. R4 p.4〜5(確報集計。賃貸用の空き家は4,436千戸)。↩
  40. R6 第28条、第32条。↩
  41. R5 p.5〜7、p.21、p.24、p.44。保険の拡充は資料上「案」の表記。↩

参考文献​(2026年10月確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。