この記事で分かること

  • NOI(純営業収益)の定義と、含める収入・費用/含めない費用の線引き
  • 賃料収入120百万円からNOI80百万円を積み上げる整数設例
  • 物件価格=NOI÷キャップレートという評価の基本式
  • NOIとNCF、会計上の利益との違いと日本の鑑定評価での扱い

30秒で分かる定義

NOI(Net Operating Income、読み方:えぬおーあい)とは、不動産の賃料等の収入から、運営に必要な費用(管理費・修繕費・固定資産税・保険料など)を差し引いた純収益のことです。日本語では純営業収益・純収益と呼ばれます。ポイントは、減価償却費・支払利息・法人税を差し引く前の数字であることです。借入の仕方や保有主体の税制に左右されない「物件そのものが稼ぐ力」を示すため、物件価格の算定(NOI÷キャップレート)や融資審査の共通言語として使われます。

なぜ実務で重要なのか

不動産ファンド・REITの投資担当者は、物件取得の検討をNOIの査定から始めます。売主提示の想定NOIを精査し、キャップレートで割り戻した価格が投資判断の土台になるからです。レンダー(銀行・ノンリコースローンの貸し手)は、NOIが元利返済をどれだけカバーするか(DSCR)で融資額を決めます。物件を1棟丸ごと数字にする手順は不動産のプロフォーマ入門で扱っています。

計算式

NOI = 実効総収入(満室想定賃料 − 空室・貸倒損失 + その他収入) − 運営費用
物件価格 = NOI ÷ キャップレート
NCF = NOI − 資本的支出(更新投資)

運営費用(OPEX)に含めるのは、管理委託費、水道光熱費(共用部)、日常修繕費、固定資産税・都市計画税、損害保険料などの経常的な支出です。一方、減価償却費(現金支出でない)、支払利息(資本構成に依存)、大規模修繕などの資本的支出、法人税等は含めません。資本的支出まで差し引いた数字はNCF(純収益からさらに一歩キャッシュフローに近づけた指標)として区別します。

整数設例で確認する

設例(架空数値):オフィスビル1棟の年間収支を積み上げます。

項目金額(百万円)
満室想定賃料収入(GPI)120
−空室・貸倒損失−10
+その他収入(駐車場・看板等)+10
実効総収入(EGI)120
−運営費用(管理費・修繕費・公租公課・保険等)−40
NOI80
−資本的支出(更新投資の年平均)−10
NCF70

検算すると、120−10+10−40=80百万円がNOIです。この物件をキャップレート4%で評価すると、物件価格=80÷0.04=2,000百万円となります。逆に、この物件を2,000百万円で取得すればNOI利回りは80÷2,000=4%です。

PL・BS・CFへの影響(会計上の利益との違い)

NOIは物件単位の管理指標であり、会計上の利益とは段階が異なります。保有主体のPLでは、賃貸収入から運営費用に加えて減価償却費を差し引いた金額が営業利益となり、さらに支払利息・法人税等が引かれて当期純利益になります。上の設例で減価償却費が30百万円なら、物件の会計上の営業利益は80−30=50百万円です。REIT分析で会計利益に減価償却費を足し戻したFFOが使われるのは、このNOI的な発想を財務諸表側から再現するためです(REITの評価入門)。

財務モデル・Excelでの使い方

不動産モデル(プロフォーマ)では、NOIは次の構造で組みます。

  • 入力行:レントロール(テナント別賃料・面積・契約期間)、空室率、費用項目別の単価
  • 計算行:GPI→空室損控除→EGI→OPEX控除→NOI→Capex控除→NCFの順に段階を明示
  • 評価・返済への接続:NOI(またはNCF)÷キャップレートで資産価値、NOI÷元利返済額でDSCRを計算し、感応度テーブルで空室率・賃料の下振れ耐性を確認

段階を飛ばして「賃料−費用」を1行で書かず、行を分けて積み上げるのが鉄則です。

この用語をExcelで「組める」状態にする

レントロールからNOI・NCFを積み上げ、物件価格とDSCRまでつながる不動産プロフォーマを組む。

不動産ファイナンス教材を見る →

実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「NOIは不動産版の営業利益」→ 減価償却費を引かない点が決定的に違います。会計上の営業利益と混同すると、物件価格を数割単位で見誤ります。

誤解2:「売主提示のNOIをそのまま使ってよい」→ 想定NOIには満室前提の賃料や過小な修繕費が置かれがちです。実績の賃料・稼働率、修繕履歴、公租公課の実額で作り直す(アンダーライティングする)のが買い手側の基本動作です。

誤解3:「NOIとNCFはどちらでも同じ」→ 築年数が進んだ物件ほど資本的支出が重く、NOIとNCFの差が開きます。日本の鑑定実務ではNCFベースで還元するのが標準であり、どちらのベースのキャップレートかを常に揃える必要があります。

日本実務での扱い(鑑定評価・REIT開示)

日本では、国土交通省の不動産鑑定評価基準が収益還元法を定めており、直接還元法では純収益(実務上はNCFベースが一般的)を還元利回りで割り戻して収益価格を求めます(2026年7月時点)。J-REITの開示では、物件ごとのNOI・NOI利回り・鑑定評価額が有価証券報告書や決算説明資料に記載され、投資家はこれをもとにポートフォリオの収益性を比較します。また、日本不動産研究所「不動産投資家調査」などで公表されるエリア・用途別の期待利回りが、NOIから価格を割り戻す際の市場参照値として広く使われています。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:NOIに減価償却費を含めないのはなぜですか?
「NOIは物件そのものの稼ぐ力を、資本構成や会計方針に依存しない形で測る指標だからです。減価償却費は現金支出を伴わず、取得価格や償却方法で変わるため除外します。同様に支払利息は借入条件に依存するため除外し、資金調達前のキャッシュフローとして物件間の比較や価格算定に使います」

深掘りでは「NOIとNCFの違い」「NOI利回り4%の物件に金利2%で借入するとエクイティ利回りがどうなるか(正のレバレッジ)」まで問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. NOI利回りと表面利回りはどう違いますか?
A. 表面利回りは満室想定賃料÷物件価格で、費用を無視した粗い指標です。上の設例では表面利回り120÷2,000=6%に対しNOI利回りは4%で、費用と空室を織り込むと2ポイント下がります。広告等の表面利回りだけで比較するのは危険です。

Q. NOIはどうすれば改善できますか?
A. 賃料増額・空室率の低下・その他収入の追加(収入側)と、管理コストの見直し・エネルギー効率化(費用側)に分解できます。指標の一覧は不動産投資指標の早見辞典を参照してください。

出典・参考(2026-07-20確認)

  • 国土交通省「不動産鑑定評価基準」(https://www.mlit.go.jp/)
  • 一般財団法人日本不動産研究所「不動産投資家調査」(https://www.reinet.or.jp/)
  • 一般社団法人不動産証券化協会(ARES)(https://www.ares.or.jp/)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

共有: