この記事で分かること
- 米国の都市圏で2000〜2020年に所得が伸びたとき、住宅価格の伸び方は地形や規制で測った「供給制約」の強弱で有意に変わらず、戸数で規制指数だけに出た差も所得の伸びが小さい都市を除くと消えたという研究の結果と、その数値の大きさ
- 制約の強い都市で価格の伸びの水準が高いことと、需要の伸びに対する価格の反応が大きいことは別の話であり、著者らは前者を「品質」への需要などで説明していること。反論の研究と限界
- 日本の不動産投資・開発用地の評価で、賃料・販売価格の伸びの前提を「供給制約」ではなく需要の中身から組み立てる手順(残余法の設例つき)
想定読者:不動産ファンド・REIT・デベロッパーで取得や開発の採算を検討する担当者、不動産向けの与信・ストラクチャードファイナンスの担当者、米国の住宅関連事業の評価に関わるFAS・事業会社の担当者
前提知識:賃料・販売価格の成長率をキャッシュフローの前提に置く考え方、回帰分析の係数と標準誤差の基本
都心の賃貸レジデンスの取得を審議する投資委員会で、担当者が賃料の伸びを年1%と置いた理由を説明する。「このエリアは容積に余裕がなく、新しい供給が出にくい。だから需要が増えれば賃料はほかより上がりやすい」。開発用地の入札でも、同じ論理で販売単価の上昇を見込み、土地の入札価格を引き上げることがある。
供給が絞られた市場ほど価格が上がる、という説明は教科書どおりで、米国では政策議論の前提にもなってきた。では実際に、供給制約の強い都市ほど需要の伸びが価格の上昇に変わりやすかったのか。この問いを米国の都市圏の20年間のデータで確かめ、「そうではなかった」と報告した研究がある。以下では結果と反論を確かめ、賃料や販売価格の前提の置き方に引き直す。
この記事が主に参照する研究
Schuyler Louie、John Mondragon、Johannes Wieland(2025)「供給制約は米国の都市間の住宅価格と戸数の伸びを説明しない(Supply Constraints do not Explain House Price and Quantity Growth Across U.S. Cities)」NBER Working Paper No. 33576/FRBSF Working Paper 2025-06
- 公表:初版 2025年3月(NBER WP。サンフランシスコ連銀の WP も同月)。参照した版:サンフランシスコ連銀 WP の2026年2月改訂版。査読:未査読(WP)
- データ:米国の都市圏(制約別推計は267〜310、記述統計は321〜323)。2000〜2020年を基本に1980年まで延長。住宅価格指数・国勢調査の住宅戸数・商務省経済分析局(BEA)の個人所得などの公開データ
- 方法:価格と戸数の伸びを所得の伸びに回帰し、供給制約の指標で分けた2つの群の傾きを比べる相関の分析が中心。操作変数による推計と、在宅勤務の普及を需要ショックとした分析を加える
- 位置づけ:「供給の弾力性の差が都市間の価格差を生む」という既存理論を、既存の4つの制約指標で検証した研究
「建 てにくい都市ほど値上がりする」をどう確かめたか
標準的な見方では、供給が非弾力的な都市、つまり地形や規制のせいで価格が上がっても住宅を増やしにくい都市では、需要が増えたときに戸数より価格が伸びる。米国の2024年の大統領経済報告は、供給の制約を手頃な住宅の主な障害とする章を設けている1。日本でいえば用途地域や容積率の制限、埋立地や斜面地の多さが「制約」に当たる。
著者らは、この分野で広く使われてきた4つの指標を借りる。地形と規制から推計した Saiz(2010)の供給弾力性、国勢調査区の単位から積み上げた Baum-Snow and Han(2024)の弾力性、都市圏ごとの土地利用規制の厳しさを指数にした Wharton 規制指数(WRLURI)、住宅の価値に占める土地の割合(Davis et al. 2021。1から引いて建物の割合にする)である。指標ごとに都市圏を中央値で「制約が強い群」と「制約が弱い群」に分ける2。
確かめ方の要点は、価格の伸びの「水準」ではなく、需要の伸びに対する「反応」を比べることにある。需要の代わりに使うのは都市圏の総所得(1人当たり所得×人口)の伸びで、価格と戸数の伸びをそれぞれ所得の伸びに回帰し、2つの群で傾きが違うかを見る。理論どおりなら、制約が弱い群では同じ所得の伸びに対して価格の伸びが小さく、戸数の伸びが大きいはずだ3。成長率はすべて年率で、価格と所得は消費者物価で実質化している。2000〜2020年の平均は、実質住宅価格が年1.23%、実質総所得が年2.06%、住宅戸数が年1.01%、人口が年0.81%だった4。
研究が示した結果:所得の伸びへの反応に、制約の強弱で有意差は出なかった
出発点は単純な相関だ。Saiz の弾力性で最も非弾力的な都市から最も弾力的な都市へ移ると、実質住宅価格の伸びは年2%超から0.5%未満に下がり、20年の累計では約50%と約10%の差になる。ところが戸数の伸びは弾力的な都市で高くはなく、建物割合を除く指標では弱い負の相関さえあった5。価格だけなら標準の見方に合うが、戸数はそれに見合って動いていない。
所得の伸びで条件づけると、違いはさらに見えなくなる。表1に回帰の要点を整理した。
表1 所得の伸びに対する価格と戸数の反応(制約の強弱で比べる)
表は横にスクロールできます →
| 供給制約の指標 | 価格:所得の係数 | 価格:交差項 | 価格:制約が弱いダミー | 戸数:所得の係数 | 戸数:交差項 | 都市圏数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Saiz(2010)の弾力性 | 0.553*** | −0.004(0.120) | −0.868*** | 0.642*** | 0.027(0.046) | 268/269 |
| Baum-Snow and Han(2024)の弾力性 | 0.589*** | 0.052(0.111) | −0.438* | 0.635*** | −0.015(0.048) | 308/310 |
| Wharton 規制指数(WRLURI) | 0.607*** | −0.097(0.119) | −0.504* | 0.597*** | 0.110**(0.049) | 268/269 |
| 建物の価値割合(Davis et al. 2021) | 0.619*** | −0.053(0.113) | −0.496** | 0.630*** | −0.012(0.050) | 306/308 |
制約が強い群では、総所得の伸びが1%ポイント高い都市圏ほど住宅価格の伸びが50〜60bp程度高い(係数0.553〜0.619)。制約が弱い群の傾きはこれに「制約が弱い×所得の伸び」の交差項を足したもので、その交差項は−0.097〜0.052で、標準誤差0.111〜0.120に対して小さく、4つの指標のどれでも統計的に有意な差は確認されなかった6。所得の伸びを1人当たり所得と人口に分けても同じで、係数はそれぞれ0.984〜1.284、0.460〜0.498、交差項はやはり有意でなかった7。
戸数の側も同様である。所得の伸びに対する戸数の係数は0.597〜0.642で、交差項は Wharton 規制指数だけが0.110(5%水準で有意)、ほかは−0.015〜0.027だった。規制指数の効果も、所得がほとんど伸びていない都市を除くと消えると著者らは報告している8。
価格と戸数を一緒に使うと、供給の弾力性そのものを推計できる。所得の伸びで価格の伸びを操作した推計を図1に示す。
両群とも弾力性は1前後(0.965〜1.383)で、2群が等しいという仮説の検定の p値は0.84、0.60、0.14、0.76だった9。規制指数だけは標準理論の向き(制約が弱い群が弾力的)に差が出ているが、区間は大きく重なる。
所得以外の需要の指標でも結論は同じだった。雇用の産業構成から作る需要ショックと気候(7月の湿度・1月の気温)を操作変数にすると、弾力性は0.31〜0.81と低めに出るが、表の掲載値では8つの推計のうち5つで、むしろ制約が強い群のほうが弾力的だった(本文は6つと記し、原典内で数が合わない)10。2019〜2023年に在宅勤務の普及で住宅需要が増えた局面を使った分析でも、在宅勤務の比率が高かった都市ほど価格は上がったが、制約が弱い都市で価格の伸びが小さかったという証拠はなく、唯一有意だった規制指数の交差項(0.633)は予想と逆の符号だった11。
結果の大きさも示されている。制約の指標を連続変数で入れると Saiz の弾力性の交差項は有意になったが、サンフランシスコの弾力性をヒューストン並みにしても、平均的な所得の伸びのもとで価格は約4%低くなるだけで、20年間の戸数の増加は合計で約40bpにとどまる、と著者らは換算している12。1980年までの延長、家賃(中央値)、通勤時間、都市規模別でも結論は同じだった13。
ただし、「有意でない」は「差がない」と同じではない。編集部が表の標準誤差から95%区間を計算すると、価格の交差項で最も負に出た規制指数(−0.097)の区間は−0.33〜0.14で、下限は所得の係数の約54%に当たる14。中程度の差まで排除できるほど精密な推計ではない。それでも、4つの指標・複数の期間・複数の需要の測り方で、点推定が理論の予想する向きと大きさを一貫して示さなかったことが、この研究の主張の土台になっている。
価格の伸びの差は何から生じたか:著者らの「品 質」と「戸 数」の説明
表1にはもう一つの事実がある。「制約が弱い」ダミーの係数は価格の回帰で負(Saiz で−0.868、他の指標で−0.438以下)で、制約の弱い都市は所得の伸びが同じでも価格の伸びの水準が低い。一方、戸数の回帰ではこの差が見られない。著者らは、これを弾力性の差で説明するには、弾力的な都市で年1%ポイント供給を増やし、非弾力的な都市で年1%ポイント減らすような都合のよい供給ショックが必要になると指摘し、制約の指標と相関するアメニティ(気候など住みやすさ)の伸びや、価格指数が品質の変化を調整しきれていないことによる可能性が高いと解釈する15。
著者らが示す代わりの説明は、住宅には「戸数」と「品質」(広さ・仕様・立地・眺望など)の2つの次元がある、というものだ。人口が増えれば戸数への需要が増えるが、1人当たり所得が上がると主に品質への需要が増え、戸数はあまり増えずに価格が上がる。図2は著者らが例に挙げた2都市である。
サンフランシスコは価格が年2.4%、戸数が年0.6%伸び、1人当たり所得は年2.2%伸びた。ヒューストンは価格が年1.0%、戸数が年2.2%、1人当たり所得が年0.8%である16。全都市圏で、1人当たり所得の伸びを操作変数にすると戸数の供給弾力性は0.215、人口の伸びを使うと1.506と大きく違った。著者らは、品質への需要が強い都市では、本当の弾力性が同じでも戸数の供給が「非弾力的に見える」と解釈している17。これは著者らの解釈で、2つの次元を直接測った検証ではない。
研究の対象・方法・限界と、反対の結果
まず対象の範囲である。比べているのは米国の都市圏どうしの20年の長期の伸びで、地区や物件の単位の話ではない。著者らは、外生的に供給が増えれば価格が下がるという前提を置いており、「供給は重要でない」とは述べていない。国勢調査区のような細かい単位では地形や規制が供給に効きうるとも注記している18。
次に方法である。推計の多くは相関の分析だと著者らは明記する。結論が崩れるのは、非弾力的な都市ほど所得の伸びと供給を増やす要因(建設の生産性の改善など)が強く結びついている場合で、著者らは、1人当たり所得と人口で結果が変わらないことから、非弾力的な都市で供給ショックがより重要だという説明を退け、残る説明(供給ショックが労働需要とより強く相関する)も特殊な状況を要し考えにくいと論じている19。価格指数や家賃の中央値は品質の変化を十分に調整できず、Saiz(2010)と違って建設費の上昇も差し引いていない20。
反対の結果も出ている。ダラス連銀の Murphy と Shaheen(2026年)は、都市圏を人口で加重し制約の指標を連続変数で使うと、長期差分の誘導形で6つの指標の交差項がすべて正(10%水準で有意)になり、2000〜2024年の年次の建築許可件数を都市圏と年の固定効果つきで分析すると6つのうち5つが有意になったと報告し、供給制約は価格と供給を説明すると結論づけた。ただし、長期差分の構造形での結果の違いは、加重や連続変数の使用では説明できないと自ら記している21。大都市を重く見るか、都市圏を同じ重みで見るかで答えが変わりうる点は、実務でも覚えておきたい。なお Louie らは後続の論文で、品質ごとに多数の供給関数があり、弾力性の推計値は構造的な定数ではなく、どの需要で測ったかに依存する平均だと論じている22。
大手町プレップの考察:「制 約があるから上がる」と「人 と所得が増えるから上がる」を分ける(仮 説)
以下は編集部の推論で、論文が検証したものではない。
実務で使える区別は、価格の伸びの「水準」と「反応」である。研究の標本では、制約の強い都市は平均的に価格の伸びが高かったが、需要が増えたときの上がり方は制約の弱い都市と変わらなかった。「供給制約がある」ことを賃料成長の上乗せ理由に挙げるとき、言いたいのが前者(値上がりしてきた場所だ)か後者(需要が増えたら他より上がる)かで、必要な根拠が違う。前者なら過去の価格の推移と需要の要因を、後者なら需要の伸びの見通しを示す必要がある。
二重計上にも注意したい。「立地が良い」と「供給が絞られている」を別々の理由として賃料の伸びに積み上げると、研究の解釈どおりなら同じ要因を2回数えている可能性がある。また、高い賃料の伸びと活発な新規供給を同じエリアで同時に前提にするなら、それを支える需要の伸び(転入・世帯の増加や所得の伸び)を数字で示さないと、前提どうしが整合しない。
品質と戸数の区別は物件選びにもつながる。所得の伸びが主な需要の源なら上がりやすいのは品質の高い物件で、戸数を増やす開発の追い風にはなりにくい。人口の流入が主な源なら、標準的な賃貸住宅の戸数の需要が伸びる。
日本の実務への応用:需要の中身を一次統計で確かめる
日本の統計で需要の中身を見る材料は手元にある。令和8年地価公示(2026年1月1日時点)の住宅地の変動率は、全国+2.1%、東京圏+4.5%、大阪圏+2.5%、名古屋圏+1.9%、地方圏+0.9%(うち地方四市+3.5%、その他+0.6%)だった23。人の動きでは、2025年の住民基本台帳人口移動報告で東京圏が123,534人の転入超過(前年より12,309人縮小)、大阪圏が8,742人の転入超過、名古屋圏が12,695人の転出超過だった24。名古屋圏では国内移動の転出超過と住宅地の地価上昇が同じ年に並んでいる。ただし転出超過は戸数の需要の減少を直接示すものではなく、この2つの統計だけでは需要の内訳も地価上昇の要因も判断できない。
制度の面では、用途地域の種類(13の地域)は都市計画法で全国共通に定められている25。ただし、日本の都市間で規制の厳しさがどれほど違うか、米国とどう違うかは、この資料からは判断できない。研究の結論を日本の都市にそのまま当てはめることはできないが、「制約の指標が価格の反応を説明するとは限らない」という結果は、供給の側の説明だけに頼らず需要の側を測る理由になると編集部は考える。
実務では、賃貸レジの取得なら世帯数と転入の見通しを、高価格帯の分譲なら所得の見通しを、伸びの前提の根拠として分けて書く。賃料・空室率データの調べ方で集めた市場データも、需要の何が伸びているかの説明に使うと前提を検証しやすい。
設例:販売価格の伸びの前提1%が、開発用地の価格をどれだけ動かすか
学習用の設例(架空)
- 分譲マンション用地。現在の価格で見た販売総額100億円、土地を除く建築費などの総事業費60億円
- 開発業者の利益は販売総額の15%、割引率は年6%
- 取得から3年後に販売と支払いが一括で起きると単純化(販売期間・支払時期・税・金利・販売経費は考えない)
- 建築費は年2%上昇を基準とする
残余法では、土地の価格を「完成後の販売総額−開発業者の利益−総事業費」の現在価値として逆算する。販売価格が横ばいなら、3年後の販売総額から利益を除いた85.0億円から総事業費63.7億円を引き、割り引いて土地価格は17.9億円になる。ここに「供給が絞られたエリアだから」と販売価格の上昇を年1%足すと20.1億円(+12%)、年2%なら22.3億円(+24%)になる。
土地価格は販売総額と総事業費の差額から生まれるため、販売価格の前提が少し動くだけで大きく変わる。建築費が年4%上がると、販売価格を年2%伸ばしても土地価格は19.1億円にとどまる。上乗せ分が「制約があるから」という理由だけに支えられているなら、研究の結果に照らすと根拠が弱い。残すなら、その1%を説明する需要の数字(転入・世帯・所得)を資料に書いておく。開発の採算を月次で組む手順は開発案件の投資分析でも扱っている。
明日から使える確認項目
- 賃料・販売価格の伸びの前提ごとに、根拠を「需要の伸び(人口・世帯・所得)」と「供給の制約」に分けて書く。後者しか書けない前提は、上乗せ幅を感応度で示す。
- 投資委員会で次を質問する。「このエリアで需要が増えたとき、ほかのエリアより価格が上がると考える根拠は、過去の価格の水準の高さですか、それとも需要の伸びに対する反応の大きさを示すデータですか」。
- 同じエリアで高い賃料の伸びと大量の新規供給を同時に置いていないか確認する。置くなら、両方を吸収できる転入・世帯の増加を一次統計(住民基本台帳人口移動報告など)で示す。
- 物件が「戸数」の需要(人口流入)と「品質」の需要(所得の上昇)のどちらにさらされているかを分類し、伸びの前提の根拠となる統計を使い分ける。
- 開発用地の残余法では、販売価格の上昇率を0%・1%・2%で回し、土地価格のうち価格上昇の前提に依存する部分の金額を入札資料に明記する(図3の要領)。
- 「供給制約」を示す指標(容積の残り・開発可能地の少なさ)を使う場合は、それが過去に価格の反応を変えたかを近いエリアとの比較で確かめ、確かめられなければ上乗せをゼロにした場合も併記する(編集部の仮の目安)。
よくある質問
この研究は「住 宅を増やしても価格は下がらない」と言っているのですか。
いいえ。著者らは、外生的に供給が増えれば価格は下がるという前提に立っています。示したのは、計測された供給制約の指標が、米国の都市圏の間の価格と戸数の伸びの差を説明しなかった、ということです。地区単位の効果については対象外としています。
反対の研究もあるなら、実務ではどちらを信じればよいのですか。
論争は続いており、どちらかに決めて前提を置くのは早いと考えられます。どちらの立場でも、需要の伸びを数字で示せば前提の説得力は高まります。
まとめ
米国の都市圏の20年のデータでは、供給制約の指標で分けても、所得の伸びに対する住宅価格の反応に統計的に有意な差は確認されず、戸数では規制指数だけに差が出たが、所得の伸びが小さい都市を除くと消えた。制約の強い都市は価格の伸びの水準が高かったが、著者らはそれをアメニティや品質への需要で説明する。研究は未査読で、人口で加重すると逆の結果になるという反論もある。実務では、賃料や販売価格の伸びの前提を「制約があるから」で終わらせず、人口・世帯・所得のどの需要が伸びるのかを一次統計で示し、上乗せ分の感応度を資料に残しておくことが確かな手順になる。
脚注
- R1(FRBSF WP 2025-06、2026年2月改訂版)p.3(1節)。ページは PDF の物理ページ(印刷ページ+2。以下同じ)。大統領経済報告は Council of Economic Advisers(2024)第4章として R1 が紹介しているもの。↩
- R1 p.6(1節)、p.17〜18(3節)。WRLURI は値が大きいほど規制が緩くなるよう符号を反転し、土地の価値割合は1から引いて「建物の価値割合」とする。中央値で分けるのは表II〜IVの注(p.49〜51)。↩
- R1 p.12〜14(2節、式6〜7)、p.22(4.2節、式8)。総所得は1人当たり所得と人口の積(p.9)。総所得の伸びは需要を完全に測るものではなく、需要と相関していればよいと著者らは注記する(p.4 注8)。↩
- R1 p.19(3節)、p.48(表I パネルA)。都市圏の数は321〜323。成長率は年率、価格と所得は消費者物価指数で実質化。価格は CoreLogic の戸建て反復売買指数、戸数は国勢調査の住宅戸数(p.18)。↩
- R1 p.20〜21(4.1節、図II・図III)。「年2%超」「0.5%未満」「累計50%と10%」は著者らの本文の表現。↩
- R1 p.24(4.2節)、p.49(表II パネルA)。「50〜60bp程度」は著者らの本文の表現(係数0.553〜0.619)。この係数は制約が強い群(ダミー=0)の傾きで、制約が弱い群の傾きは交差項を足した値になる。交差項の点推定と標準誤差は表1を参照。↩
- R1 p.25(4.2節)、p.49(表II パネルB・C)。1人当たり所得・人口の係数はいずれも1%水準で有意。↩
- R1 p.25(4.2節)、p.50(表III パネルA)。人口の伸びを被説明変数にした場合も規制指数の交差項だけが0.091(10%水準)。低成長の都市(総所得の伸びの下位4分の1)を除いた推計は付録 A3(p.73、表A20)。↩
- R1 p.26(4.2節)、p.51(表IV パネルA)。所得の伸び×群のダミーを操作変数にした推計で、第1段階の F 値は31.63〜66.03。住宅価値の中央値を使ったパネルBも同様(p値0.10〜0.84)。↩
- R1 p.27(4.3節)、p.52(表V パネルA・B)。本文 p.27 は「8つのうち6つ」と記すが、表Vの掲載値で制約が強い群の推計値が大きいのはパネルAの3列(Saiz・Baum-Snow and Han・建物割合)とパネルBの2列(Baum-Snow and Han・建物割合)の計5列で、本記事は表の値に従った。Baum-Snow and Han の指標のパネルAでは、制約が強い群のほうが弾力的という差が5%水準で有意(p値0.04)で、標準理論と逆の向き。規制指数は標準の向きだが、低成長都市を除くと消えると著者らは記す。↩
- R1 p.27〜28(4.3節)、p.53(表VI)。在宅勤務の比率は2015〜2019年の雇用に占める割合で、Mondragon and Wieland(2025)の測り方による。価格への係数は Saiz の列で0.344(1%水準)。建築許可の伸びへの効果は価格の2〜3倍で、交差項は正だが標準誤差が大きく、外れ値に強い分位点回帰では大半が消える(表A4)。↩
- R1 p.72〜73(付録 A3、表A15・A17)。指標を標準化して連続変数で入れた推計。著者らは、1標準偏差がサンフランシスコとヒューストンの Saiz の弾力性の差にほぼ等しいとしている。上下5%で外れ値を丸めると Saiz の効果は消える(表A16)。↩
- R1 p.28〜29(4.4節)、p.71〜75(付録 A3)。家賃と所得の相関は住宅価値の中央値の約3分の2の大きさだが、制約の指標で変わらない(p.74、表A21)。↩
- 編集部の計算。R1 p.49(表II パネルA 列3)の交差項−0.097と標準誤差0.119から、±1.96×標準誤差で95%区間を求め、下限を同じ列の所得の係数0.607と比べた。論文は区間を示していない。↩
- R1 p.23〜24(4.1節)、p.49(表II パネルA)。Saiz の列は1%水準、他の列は5〜10%水準で有意。供給ショックの必要な大きさ(年1%ポイント)は Saiz の弾力性をそのまま使った場合の著者らの計算で、詳細は付録 A2。著者らは住宅戸数が平均で年約1%ポイント伸びることと比べている。↩
- R1 p.29(5節)。対象期間は引用箇所(p.29)にも図IX(p.46)にも明記されていない。人口の伸びは本文に数値がない。↩
- R1 p.29〜30(5節)、p.56(表IX)。全321都市圏、第1段階の F 値は92.28と75.00。著者らは付録 A4 で、この差を供給ショックで説明するには供給ショックが1人当たり所得のショックの何倍も重要である必要があると論じる。↩
- R1 p.6(1節・注7)。外生的な供給の拡大は数量を増やし価格を下げるという前提(供給曲線は右上がり、需要曲線は右下がり)を置いていると著者らは明記する。↩
- R1 p.4〜5(1節)、p.14〜16(2節)。1人当たり所得と人口で結果が変わらないことから、非弾力的な都市で供給ショックが相対的に重要だという説明を退け、供給ショックが労働需要とより強く相関するという残る説明は、弾力性の差をちょうど打ち消す特殊な場合(knife-edge case)でなければ成り立たず、それを唱える研究も知らないと論じる(p.5、p.16)。↩
- R1 p.18(3節・注20)、p.24(4.1節)、p.30(注27)。家賃は ACS の中央値で、品質調整のある家賃指数は期間・地域の網羅が足りないと著者らは記す(p.18、p.74 注37)。↩
- R2(Dallas Fed WP 2635)p.2(要旨)、p.3〜4(1節)、p.16〜20(6〜7節)。年次の分析は1人当たり所得を使い、Driscoll-Kraay の標準誤差。長期差分の構造形については「答えは不可解ながら否(puzzling no)」と記す(p.18)。査読:未査読(WP)。↩
- R3(FRBSF WP 2026-18)p.2(要旨)。同じ著者らに Najjar を加えた後続の理論の論文で、弾力性の推計は局所平均処置効果(LATE)だとする。R3 は要旨と序論のみ確認。↩
- R4(国土交通省「令和8年地価公示の概要」2026年3月)p.2(全国の地価動向の表、住宅地の変動率)。地方四市は札幌市・仙台市・広島市・福岡市。↩
- R5(総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 2025年(令和7年)結果」2026年2月3日)p.3(3大都市圏)。日本人と外国人を合わせた移動者の数。日本人移動者に限ると東京圏は11万2738人の転入超過(p.4)。↩
- R6(都市計画法第8条第1項第1号)。13種類の地域を「用途地域」と総称する。↩
参考文献(2 026年10月確認)
- R1 Louie, S., J. Mondragon and J. Wieland (2025), “Supply Constraints do not Explain House Price and Quantity Growth Across U.S. Cities,” NBER Working Paper No. 33576(DOI: 10.3386/w33576)/Federal Reserve Bank of San Francisco Working Paper 2025-06(DOI: 10.24148/wp2025-06). 参照した版:FRBSF WP 版(2026年2月改訂)。初版:NBER WP(2025年3月)。NBER WP の2025年8月改訂版で、本記事が使う表II〜VIの数値が同じことを確認(表IX の弾力性0.215・1.506 と5節のサンフランシスコ・ヒューストンの数値は FRBSF 改訂版で確認)。査読:未査読(WP)。 frbsf.org (参照箇所:PDF の物理ページ p.2〜32(要旨・本文)、p.48〜56(表I〜VI・IX)、p.71〜75(付録 A3)。脚注1〜20の根拠。表1・図1・図2は表II〜IVと5節の数値を選んで整理した独自の図表で、原図表の転載ではない。閲覧日:2026年10月)
- R2 Murphy, A. and M. Shaheen (2026), “Supply Constraints Do Explain House Price and Quantity Growth Across U.S. Cities,” Federal Reserve Bank of Dallas Working Paper 2635. DOI: 10.24149/wp2635. 参照した版:2026年10月公表版(本文の日付は2026年9月)。査読:未査読(WP)。 dallasfed.org (参照箇所:p.2(要旨)、p.3〜4(1節)、p.16〜20(6〜7節)。脚注21の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R3 Louie, S., J. Mondragon, R. Najjar and J. Wieland (2026), “Quality, Inequality and Understanding Housing Markets,” Federal Reserve Bank of San Francisco Working Paper 2026-18. DOI: 10.24148/wp2026-18. 参照した版:2026年8月版。査読:未査読(WP)。 frbsf.org (参照箇所:p.2(要旨)、p.3(序論)。脚注22の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R4 国土交通省 土地政策審議官部門(2026)「令和8年地価公示の概要」(令和8年3月) mlit.go.jp (参照箇所:p.2(全国の地価動向の表)。脚注23の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R5 総務省統計局(2026)「住民基本台帳人口移動報告 2025年(令和7年)結果」(令和8年2月3日) stat.go.jp (参照箇所:p.3(3大都市圏の転入超過)、p.4(日本人移動者)。脚注24の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R6 都市計画法
(昭 和43年法律第100号)第8条(e -Gov 法令検索) laws.e-gov.go.jp (参照箇所:第8条第1項第1号(用途地域)。脚注25の根拠。閲覧日:2026年10月)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。