この記事で分かること
- 日本銀行・公的年金などを含めた「統合政府」のバランスシートで見ると、日本の公的部門は短期・変動の資金で長期のリスク資産を持ち、2013〜2023年に資金コストを上回る年GDP比6.25%の純収益を得ていた、という研究の推計
- その収益の多くは量的緩和と為替を無ヘッジで持つことに依存し、金利が上がると財政の余地が速く削られるという著者の見方と、推計の前提・限界
- 金融機関・事業会社・投資家が、国債利回りと金利の前提を点検する手順(学習用の設例つき)
想定読者:銀行・保険のALM・市場部門、事業会社の財務・経営企画、債券・株式の運用担当、マクロの前提を置くアナリスト
前提知識:債券価格と金利の逆相関、%と%ポイントの違い(財政の専門知識は不要)
国の債務がGDPの2倍を超えると聞けば、金利上昇で利払いが膨らみ、どこかで行き詰まると考えるのが自然だ。日本銀行は2026年9月に政策金利を1.25%程度へ引き上げ、日本銀行当座預金(所要準備額相当部分を除く)への付利も1.25%にした1。「なぜこれまで持ちこたえたのか」と「これから何が変わるのか」は分けて考える必要がある。
前者の問いに対して、よく使われる説明は金利と成長率の差(r−g)である。この考え方は金利と成長率の差で債務残高対GDP比を試算する記事で扱った。本稿は別の角度、つまり政府の「資産」の側から同じ問いを考える。手掛かりにするのは、セントルイス連邦準備銀行・ペンシルベニア大学・スタンフォード大学に所属する研究者3名が、日本の公的部門のバランスシートを統合して分析した論文である。2023年8月に発表され、改訂を重ねてきた研究である。論文には、内容は著者個人の見解で連邦準備銀行の公式見解ではないとの注記がある。
この記事が主に参照する研究
Chien, Y., H. Cole and H. Lustig(2026)「What About Japan?」NBER Macroeconomics Annual 2026, vol. 41, ch. 2(WP版:NBER WP No. 31850、St. Louis Fed WP 2023-028)
- 公表:2023年8月の学会(SITE 2023、スタンフォード大学)で発表、St. Louis Fed WP・NBER WP 2023年11月(WPは2025年3月改訂)。参照した版:NBER Macroeconomics Annual 2026 の章(2026年5月28日付の草稿。NBERは暫定稿で正式な審査を経ていない可能性があると表示)。査読:確定版ではない(2026年4月のNBERの会議で討論された章の草稿)
- データ:日本の資金循環統計と国民経済計算(1997〜2023年)、国債インデックスの収益率、為替スワップ市場のデータ、全国家計構造調査(2019年)、2026年1月までの国債利回り(標本外の確認)
- 方法:日本銀行・公的金融機関・一般政府(中央・地方・公的年金)のバランスシートを統合し、資産と負債の収益率、デュレーション(金利感応度)を会計的に計算する。政策がなかった場合の数値は仮定を置いた試算で、因果を統計的に識別した分析ではない
- 位置づけ:既存の政府債務の評価の枠組み(政府債務の価値は将来の財政黒字の現在価値に等しいとする考え方)を、統合政府の資産を含めて日本に当てはめた測定
総債務・純債務・統合政府:何を「国 の借金」と呼ぶか
国の債務の大きさは、どこまでを「政府」に含め、資産を差し引くかどうかで大きく変わる。財務省の資料では、一般政府(中央政府・地方政府・社会保障基金)の債務残高は令和6年度末に1,409兆円で、一般政府の金融資産約872兆円を差し引いた純債務残高は537兆円である2。ただし財務省は、政府資産の多くは売却できないか、危機の際に価値が下がるおそれがあるとして、まず総債務残高対GDP比で財政を評価する立場をとる3。これに対し論文の著者らは、資産を差し引いた純負債のほうが財政状態をよく表す尺度だと主張する4。
この論文はさらに範囲を広げ、日本銀行と公的金融機関も政府の一部として合算する(統合政府)。日本銀行が国債を買い、代わりに金融機関の日本銀行当座預金が増えると、統合政府の中では「国債」という負債が「当座預金」という負債に置き換わる。国債の多くは固定金利で満期まで数年以上あるが、当座預金は付利が政策金利とともに動く、いわば満期ゼロの変動金利の負債である。この置き換えが負債のデュレーション(金利が1%ポイント動いたときに価値が何%動くかの目安)を短くする、というのが論文の出発点だ。
もう一つの鍵が、論文が「金融抑圧」と呼ぶものである。政府が規制や中央銀行の買入れを通じて、本来のリスクに見合う水準より低い金利で借りられる状態を指す。著者らはこれを統計で直接観察したのではなく、後述する収益率の計算から推し量っている。
研究が示したこと:赤字の累計ほど純負債は増えなかった
論文はまず、日本がr−gの議論でいう「安全な領域」にいなかったことを確認する。1997〜2023年の国債(短期証券を含む)の実質収益率は年1.30%、実質成長率は年0.03%で、金利が成長率を年1.27%ポイント上回った5。1998年以降の一般政府の基礎的財政赤字は平均でGDP比5.1%、26年の累計で133%に達する。それでも統合政府の純負債(負債−資産)は、1997年末のGDP比24.7%から2023年末の94.3%へ、69.6%ポイントしか増えていない6。著者らは純負債の増加を約70%ポイントに丸め、(133−70)÷26年=年GDP比約2.42%と簡易に検算し、これが資産側の運用で埋まった部分だと説明する。
図1は、2023年末の統合政府のバランスシートを編集部が項目ごとに並べ直したものである。
負債275.6%のうち、日銀当座預金91.1%と現金21.7%で約41%を占め、論文はこれらのデュレーションをゼロと置く。著者らは、量的緩和によって統合政府がGDP比約98%の「変動金利を払い、固定金利を受け取る」金利スワップを抱えたのと同じ状態になったと表現している7。資産の側では、国内株式と外国証券が合わせて95.3%あり、主に2012年以降、公的年金と外貨準備を通じて積み上がった。外貨建ての証券は為替リスクをヘッジせずに保有されており、論文はこれを無ヘッジのキャリートレードにたとえる8。その結果、資産のデュレーションは24.1年、負債は3.3年と推計される。
この構造からどれだけの収益が生まれたかを示したのが図2である。
2013〜2023年の資産の収益率は年5.04%、負債のコストは年0.38%で、差は4.66%ポイントで、資産の収益と負債のコストをそれぞれの残高で加重した純収益は年GDP比6.25%だった。1998〜2012年は逆に純収益が−0.63%の赤字で、収益は後半に集中している9。この収益がどこから来たかを見るため、著者らは2つの反実仮想を置いた。量的緩和とイールドカーブ・コントロールがなく2012年以降の国債の収益率が2%ポイント高かったとすると、2013〜2023年の純収益は2.75%に下がる。外貨資産を民間金融機関と同じように全額ヘッジしたとすると3.11%、両方を置くと−0.38%となり、収益はほぼ消える10。
著者らはさらに、統合政府が抱えるリスクに見合う借入金利と実際の資金コストを比べ、その差(評価のくさび)を少なくとも年1.97%と推計した。うち65bpを量的緩和、56bpを為替リスクの負担に帰し、両者で約61%を説明する11。民間金融機関が同じことをしにくい理由として、論文はドル円のクロスカレンシー・ベーシスを挙げる。為替ヘッジをすると市場金利差以上のコストがかかり、そのずれは2011〜2023年平均で5年物−55bp、10年物−57bpだった12。
金利に対する感応度については、次の数字が示されている。将来の基礎的財政黒字(現在は赤字で、黒字は遠い将来に生じると想定)のデュレーションは52年と長い。これに対して純債務は、長期の資産を持つためにデュレーションがマイナス36年になる。実質金利が恒久的に1%ポイント下がると、一次近似で、将来黒字の現在価値は約52%増え、純債務の価値は約36%減る13。逆に金利が恒久的に上がれば、同じ仕組みで財政の余地は失われる、というのが著者らの結論である。
推計の前提と限界:数字は「会 計上の試算」として読む
数字を使う際の注意点は3つある。第一に、反実仮想は「量的緩和がなければ利回りが2%ポイント高かった」といった仮定を置いた会計上の置き換えで、金利が高ければ株式など長期資産の収益も下がったはずだという点は織り込んでいない。著者ら自身、これらは下限の試算だと述べている14。第二に、デュレーションは仮定に強く依存する。株式のデュレーションは配当利回りからゴードン成長モデルで約76年と置かれ、資産全体の24.1年の大部分はこの仮定から来ている。貸付は一律3年、預金・当座預金は0年である。第三に、低い借入金利の原因は金融抑圧だけとは限らず、金融リテラシーの低さや個人向け金融市場の未発達、1990年代の資産価格暴落の影響もあり得ると著者らは認めている。2026年5月付の版は、国債の流動性への需要(convenience yield)が資金コストを下げた可能性も補完的な解釈に加えたが、金融抑圧との切り分けは今後の課題としている15。
関連研究では、安全金利が成長率を下回れば債務に財政コストがない可能性を論じたBlanchard(2019)16に対し、この論文は日本がその条件を満たしていなかったことから出発する。評価の方法は、米国債の市場価値が将来黒字の現在価値を上回る可能性を示したJiangらの研究17を受け継ぐ。日本銀行の国債買入れと低金利が財政の安定に役立つのは一時的だとする先行研究も紹介している18。
最後に時期の問題がある。バランスシートと収益率の計算は2023年末までで、2024年3月のマイナス金利政策の終了19以降は数値に入っていない。同じ版はかわりに「標本外の検証」の節を加え、2022年12月から2026年1月までに10年債利回りが20bpから233bpへ、30年債が150bpから387bpへ上がったことを挙げる。著者らは、予想インフレ率では一部しか説明できないこの上昇を、資金コストを約2%ポイント高く置いたQEなしの試算の想定が既に現実になったと解釈し、今後は資金コストを上回る収益を得続けるのは難しいと結論づける20。ただし2024年以降の純収益やくさびを計算し直したものではない。利回りには海外金利など他の要因も重なり得るため、編集部は仮説を支える材料の一つとして読む。
日本銀行は2026年6月、長期国債の買入れを段階的に減らし2027年4月以降は月約2兆円とする計画を決め、保有残高は2027年3月末に約480兆円(2024年6月末比約17%減)になるとの試算を示した21。2026年10月20日時点の日本銀行の資産のうち国債は504.0兆円、負債の当座預金は418.3兆円である22。論文が描いた構図の「負債側は変動金利」という骨格は今も残るが、その金利はもはやゼロではない。
大手町プレップの考察:「持 続した理由」と「こ れからの弱点」は同じ構造から生じる
以下は編集部の見方で、論文が検証した内容ではない。
日本の公的部門は、短期の資金で長期の資産を持つ銀行や年金基金に近い形をしている。金利低下・株高・円安の局面ではこの形が大きな運用益を生み、2013〜2023年の数字はその結果である。同じ構造は金利上昇と円高の局面では逆に働く。持続してきた理由と今後の弱点は同じところにある、と読むのが妥当だと考えられる。
注意したいのは、論文の「純収益」が統合政府全体を1つの財布とみなした時価ベースの数字だという点である。財務省は、年金積立金などは将来の年金給付に充てられる資産で、財政健全化と直接関連づけて見るのは適当でないとしている23。運用益がそのまま国債の利払いに回る仕組みではない以上、「運用で稼いでいるから国債は安全」と短絡しないほうがよいと考えられる。危機時に資産価値が下がり得るという財務省の指摘も、リスクのある資産でリスクのない約束を裏付けているという論文の問題意識と重なる。
金利上昇の効き方には、変動金利の負債(当座預金への付利や短期証券)の利払いがすぐ増える経路と、長期の資産の評価が下がる経路がある。固定利付の国債は借換えのたびに少しずつ効く。どの経路がどの速さで効くかは資産と負債の構成で変わり、これを架空の数字で確かめたのが後の設例である。
日本の実務への応用:国債と金利の前提をどう扱うか
銀行・保険のALM担当にとって、この論文の枠組みは自社の金利リスク管理と同じ形をしている。預金という短期の負債で長期の資産を持つ点は、統合政府と変わらない。違いは、著者らによれば民間金融機関には部分的な為替ヘッジが期待・要求される点で、外債の利回りはヘッジ後で比べる必要がある。外貨建て資産の比較は為替ヘッジ比率の決め方の記事も参考になる。金利上昇局面で長期債を抱えた銀行に何が起きたかはシリコンバレー銀行の破綻を検算した記事で扱った。
事業会社の財務・経営企画にとっての論点は、企業価値評価や投資判断で使うリスクフリーレートである。論文の見方に立てば、過去10年の国債利回りは日本銀行の大量の買入れに支えられた水準だった。日本銀行が保有を減らしていく局面では、過去の平均を将来の前提にそのまま置くのは慎重であるべきだと編集部は考える。
債券・株式の投資家にとっては、日本国債の利回りが政策と需給の両方で決まってきたことを前提に、利回りが上がるシナリオを必ず併記することが基本になる。政策金利の決まり方は金融政策と市場の解説、政策金利の到達点の考え方は中立金利から借入計画の金利シナリオを作る記事に整理している。
学習用の設例:同じ資産でも負債の構成で金利上昇の効き方が変わる
学習用の設例(架空)
- 架空の国の公的部門(GDP=100)。単位はすべてGDP比%
- 資産:長期のリスク資産100(デュレーション20年)、貸付50(3年)。資産合計150、平均デュレーション14.3年
- 負債の構成A:変動金利の負債100、固定利付債120(7年)、無利子の負債(現金)20
- 負債の構成B:変動金利の負債20、固定利付債200、現金20(いずれも負債合計240、純債務90)
- 金利はすべての年限で同じ幅だけ上がる。固定利付債は毎年7分の1が満期を迎え新しい金利で借り換える。評価の変化はデュレーションによる一次近似
金利が1%ポイント上がったとき、構成Aでは1年目の利払いが1.17増える(変動金利の負債100×1%+借り換える固定利付債約17×1%)。構成Bでは0.49にとどまる。固定利付債がすべて借り換わった後はどちらも2.20で同じになるので、違いは「いつ効くか」にある。
時価で見ると差はさらに大きい。資産の評価は両構成とも−21.5変わる。負債の評価は、固定利付債が多い構成Bのほうが大きく下がり(−14.0)、資産の値下がりの一部を相殺する。その結果、時価ベースの純債務は構成Aで+13.1、構成Bで+7.5増える。表1は上昇幅を変えた結果である。
表は横にスクロールできます →
| 構成と上昇幅 | 利払い増 1年目 | 利払い増 借換え後 | 資産の 評価変化 | 負債の 評価変化 | 純債務の 変化(時価) |
|---|---|---|---|---|---|
| 構成A +0.5%pt | 0.59 | 1.10 | −10.8 | −4.2 | +6.6 |
| 構成A +1.0%pt | 1.17 | 2.20 | −21.5 | −8.4 | +13.1 |
| 構成A +2.0%pt | 2.34 | 4.40 | −43.0 | −16.8 | +26.2 |
| 構成B +0.5%pt | 0.24 | 1.10 | −10.8 | −7.0 | +3.8 |
| 構成B +1.0%pt | 0.49 | 2.20 | −21.5 | −14.0 | +7.5 |
| 構成B +2.0%pt | 0.97 | 4.40 | −43.0 | −28.0 | +15.0 |
読み取りたいのは、資産の構成を変えなくても、負債を短期・変動で調達するほど、金利上昇が利払いと時価の両方に早く大きく効くという点だ。論文が描いた日本の統合政府は、構成Aに近い形をしている。一次近似は上昇幅が大きいほど誤差が増えるので、2%ポイントの行はコンベクシティを無視した目安として読む。
明日から使える確認項目
- 「国の借金」の数字を引用するときは、範囲(国・地方/一般政府/日本銀行を含む統合政府)と、総債務か純債務かを必ず併記する。財務省の資料の一般政府総債務1,409兆円と純債務537兆円、論文の統合政府の純負債GDP比94.3%は、範囲が違う数字である。
- 計画やバリュエーションで国債利回りを使う場合、「日本銀行の国債保有が減っていく局面でも、この水準は妥当か」を会議で問う。基準ケースに加えて、+1%ポイントと+2%ポイントのケースを並べ、割引率・支払利息・年金債務の割引率がそれぞれどう動くかを1枚にまとめる。
- 自社のバランスシートを、変動金利(期間0年とみなす)・固定金利(時価の感応度にはデュレーション、利払いの試算には満期・借換えの予定を使う)・長期資産に分け、設例と同じ手順で「1年目の利払い増」と「時価の変化」を別々に計算する。どちらか一方だけで判断しない。
- 外貨資産の利回りは、為替ヘッジ後(ベーシスを含むヘッジコスト控除後)とヘッジなしの両方で示し、ヘッジなしの場合は円高局面の損失額を併記する。
よくある質問
純債務で見れば、日本の財政は健全だということですか。
論文はそう主張していません。純負債を重視する著者らも、その増加が抑えられたのは低い資金コストとリスクを取った運用の収益によると分析し、金融抑圧がなければ長期的には持続しないと述べています。財務省も、政府資産は危機時に価値が下がり得るとして総債務を重視しています。
この論文は、日本の財政危機を予測しているのですか。
予測ではありません。2023年末までのバランスシートを使い、金利が恒久的に動いたときに財政の余地がどちらへ動くかを示した試算です。2026年5月付の版は2022年12月以降の長期金利の上昇を標本外の確認として取り上げていますが、2024年以降の数値を計算し直したものではありません。
日本銀行の当座預金が、なぜ政府の負債として扱われるのですか。
論文は日本銀行を政府と一体のものとして合算しているためです。日本銀行が国債を買うと、統合政府の中では国債が当座預金に置き換わり、固定金利の負債が付利のつく変動金利の負債に変わったと見なせます。
まとめ
2023年に発表されたChien、Cole、Lustigの論文は、日本の高い政府債務が持ちこたえてきた理由を、成長率ではなく統合政府の資産と負債の構造に求めた。短期・変動の資金で長期のリスク資産を持つ形が、2013〜2023年には大きな収益を生んだが、その収益の多くは量的緩和と無ヘッジの為替リスクに依存していたと推計されている。同じ構造は、金利が上がる局面で利払いと時価の両面から財政の余地を削る方向に働く。実務では、国債利回りを所与とせず、範囲をそろえた数字で金利上昇の効き方を経路ごとに確かめることが出発点になる。
脚注
- R4(日本銀行「金融市場調節方針の変更について」2026年9月18日)p.1。無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.25%程度で推移するよう促し(従来は1.0%程度)、補完当座預金制度の適用利率(日本銀行当座預金<所要準備額相当部分を除く>への付利金利)を1.25%とした。いずれも9月24日から適用。↩
- R7(財務省「日本の財政関係資料(令和8年4月)」)5(p.6)。一般政府債務残高(内閣府経済社会総合研究所の集計、令和6年度末実績)1,409兆円。注10で、一般政府純債務残高は一般政府債務残高から金融資産残高(一般政府)約872兆円を差し引いたもので537兆円とする。↩
- R7 コラム①(p.16)。政府が保有する資産の多くは市場での売却可能性がないか、あっても財政危機時に価値が下落する可能性があること等に留意する必要があり、政府としてはまず国・地方の総債務残高対GDP比で財政状況を評価するとしている。同ページに IMF の資料(2026年4月)による一般政府の純債務残高対GDP比(日本141.7%、2024年)の国際比較がある。↩
- R1(Chien, Cole and Lustig「What About Japan?」NBER Macroeconomics Annual 2026 の章、2026年5月28日付の草稿。以下同じ。ページは章PDFの物理ページ)p.6。著者らは、総債務から金融資産を差し引いた純負債のほうが財政状態のより有益な尺度だと主張し、2023年末の総負債をGDP比276%、純債務を94%とする。同時に p.7 で、日本の低金利のやり方は金融抑圧なしには長期的に持続しないと述べる。純負債を「より有益な尺度」とする記述は2025年3月のWP版にはなく、章版で加わった。↩
- R1 p.16・表3、p.2。国債と短期証券の加重平均の収益率と実質成長率(1997〜2023年)。期間別の差は2000〜2009年2.29%、2010〜2019年0.84%、2020〜2023年−2.60%。↩
- R1 p.2・p.18・p.56・表13(基礎的財政赤字の平均と累計)、p.12・表1(統合政府の純負債。1997年末24.7%、2012年末118.4%、2023年末94.3%、いずれもGDP比)。累計133%から約70%を引いて26年で割った年約2.42%という簡易検算は p.18 による(表4の2.28%に近いと著者らは述べる)。↩
- R1 p.2〜3・p.11、p.12・表1、p.16・表2(日本銀行の国債・短期証券保有はGDP比98.0%)。デュレーションをゼロと置く項目は p.31。↩
- R1 p.3・p.12(リスク資産は約GDP比95%、主に公的年金と外貨準備を通じて、主に2012年以降に増加)、p.32(2023年のデュレーション:資産24.1年、負債3.3年)。↩
- R1 p.17・表4パネルA。1998〜2023年の全期間では、負債0.69%、資産2.59%、差1.90%、純収益GDP比2.28%。↩
- R1 p.17・表4パネルB〜D、p.26〜29。QEなしの試算は、2012年以降の国債の収益率が実績より2%ポイント高く、日本銀行が当座預金で国債を買わなかったと置く。ヘッジの試算は3か月の為替予約で全額ヘッジし、ベーシスは広がらないと置く。全期間(1998〜2023年)では両方を置くと−0.55%。↩
- R1 p.3・p.25〜29。くさびの計算は、2023年の資産・債務比率0.66、日本株の無レバレッジ・ベータを非金融法人の負債資本比率0.85からレバード・ベータの54%と置く調整(著者らは保守的な選択と説明、p.25脚注18)、日本株の期待超過収益5.1%(AQRの資本市場予想)などの仮定による。QEの寄与は全体の約33%(65/197bp、p.27)、QEと為替の両方で約61%((65+56)/197、p.29)。過去の収益率を使った別の計算では2.23%(p.25、付録A.5 p.52〜53。付録の式は調整係数0.45のままで本文の0.54とそろっていない)。2025年3月のWP版は、くさび1.82%、係数0.45、QEの寄与36%、両方で約3分の2(66.5%)としていた。↩
- R1 p.20〜22。2010〜2019年平均では1か月物−41bp、3か月物−31bp、12か月物−27bp。著者らは、民間金融機関は少なくとも部分的な為替ヘッジを期待または要求される(expected or required)ため、このずれが国内に資金をとどめ、低金利を支えていると解釈している(p.20脚注17、p.21〜22)。↩
- R1 p.29〜33(6節)。黒字のデュレーションは、内閣府の2024年の中長期試算(2033年まで基礎的赤字)と、2033年以降の定常状態(実質金利0.3%、GDPのリスクプレミアム2%、成長率0.5%)の仮定から計算されている(p.32〜33)。↩
- R1 p.29(5.4.3節)。他の負債の収益率は変わらないと置いたこと、金利が高ければ長期資産の実現収益も下がったことを挙げ、これらの数値は真の影響の下限だとする。↩
- R1 p.31(デュレーションの仮定:日本株75.6年、国債指数7.19年、貸付3年、預金0年、外国証券は米国株59年と債券の50/50)、p.3・p.26(低金利の他の要因)、p.7(convenience yield による補完的な解釈と、金融抑圧との定量的な切り分けは今後の課題との記述。章版で追加)。p.26では、日本国債は他国の国債と比べて convenience yield を享受していないとする先行研究も紹介している。↩
- R3(Blanchard, NBER WP 25621, 2019年2月)p.2(要旨)。R1 p.2・p.15は、日本はこの条件(実質金利<実質成長率)を満たしていなかったとする。↩
- R2(Jiang ほか, NBER WP 26583, 2022年1月改訂版)p.2(要旨)・p.3(導入)。国債全体の市場価値は、将来の基礎的財政黒字をそのリスクに応じて割り引いた現在価値に等しくあるべきだが、米国では前者が後者を上回る可能性があるとする。R1 p.6はこの方法に依拠すると述べる。↩
- R1 p.6・p.26(Hansen and İmrohoroğlu, 2023 の紹介)。同論文の本文は本記事では確認していない。↩
- R8(日本銀行「金融政策の枠組みの見直しについて」2024年3月19日)p.1。「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みとマイナス金利政策は役割を果たしたとし、無担保コールレートを0〜0.1%程度で推移するよう促す方針とした。↩
- R1 p.29〜30(5.5節「Out of Sample Test of our Financial Repression Hypothesis」。章版で追加)、p.1(要旨)・p.4・p.41。2022年12月から2026年1月までに10年債利回り20bp→233bp、30年債150bp→387bp、40年債180bp→400bp超。長期の予想インフレ率の上昇で説明できるのは一部(Christensen and Spiegel, 2024 による)で、長期の実質成長期待が高まった証拠はないとし、くさびの推計は控えめ(conservative)だったと述べる。p.10は、日本銀行の国債買入れが月6兆円から4兆円に減り、月2兆円まで減らす意向であることにも触れる。バランスシートと収益率の数値は2023年末までのまま。↩
- R5(日本銀行「長期国債の買入れ計画について」2026年6月16日)p.1〜2。月間の買入れ予定額を2027年1〜3月まで原則として四半期ごとに約2,000億円ずつ減額し、2027年4月以降は月2兆円程度とする。保有残高の見通しは、月2兆円程度の買入れを続けた場合の試算値(額面)。↩
- R6(日本銀行「営業毎旬報告(令和8年10月20日現在)」2026年10月22日公表)。資産の国債504,003,730,754千円、負債の当座預金418,348,350,260千円を兆円に換算(四捨五入)。↩
- R7 コラム①(p.16)。「国・地方の公債等残高」に含まれない債務の見合資産は将来の年金給付に充てられる年金積立金などであり、財政健全化と直接関連付けて見ることは適当でないとしている。↩
参考文献(2 026年10月確認)
- R1 Chien, Y., H. Cole and H. Lustig (2026), “What About Japan?,” in Leahy, Ramey and Violante (eds.), NBER Macroeconomics Annual 2026, vol. 41, ch. 2, NBER(章の草稿、2026年5月28日付). WP版:NBER Working Paper No. 31850, DOI: 10.3386/w31850(2023年11月、2025年3月改訂)、Federal Reserve Bank of St. Louis Working Paper 2023-028, DOI: 10.20955/wp.2023.028. 初出:SITE 2023 Session 9(スタンフォード大学、2023年8月21日)で発表。参照した版:NBER Macroeconomics Annual 2026 の章 PDF(2026年5月28日付。NBERの掲載ページは暫定稿で正式な審査を経ていない可能性があると表示)。査読:確定版ではない(NBERの会議で討論された章の草稿)。章のDOIは未確認。 nber.org (参照箇所:章PDF(https://www.nber.org/system/files/chapters/c15418/c15418.pdf、59頁)p.1〜41・p.52〜56、表1〜4・13。脚注4〜15・18・20と図1・図2の根拠。2023年の初出は https://economics.stanford.edu/events/site-2023/session-9-fiscal-sustainability 、WP版は https://www.nber.org/papers/w31850。閲覧日:2026年10月)
- R2 Jiang, Z., H. Lustig, S. Van Nieuwerburgh and M. Z. Xiaolan (2019), “The U.S. Public Debt Valuation Puzzle,” NBER Working Paper No. 26583. DOI: 10.3386/w26583(掲載誌:Econometrica 92(4), 2024, pp.1309-1347, DOI: 10.3982/ECTA20497). 参照した版:NBER WP 版(2022年1月改訂版)。査読:掲載誌版は査読済み(本記事はWP版を参照)。 nber.org (参照箇所:p.2(要旨)・p.3(導入)。脚注17の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R3 Blanchard, O. J. (2019), “Public Debt and Low Interest Rates,” NBER Working Paper No. 25621. DOI: 10.3386/w25621. 参照した版:NBER WP 版(2019年2月)。査読:未査読(WP)。 nber.org (参照箇所:p.2(要旨)。脚注16の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R4 日本銀行
「金 融市場調節方針の変更について」(2 026年9月18日) boj.or.jp (参照箇所:p.1。脚注1の根拠。閲覧日:2026年10月) - R5 日本銀行
「長 期国債の買入れ計画について」(2 026年6月16日) boj.or.jp (参照箇所:p.1〜2(別紙・参考)。脚注21の根拠。閲覧日:2026年10月) - R6 日本銀行「営業毎旬報告(令和8年10月20日現在)」(2026年10月22日公表) boj.or.jp (参照箇所:資産の「国債」、負債の「当座預金」。脚注22の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R7 財務省「日本の財政関係資料(令和8年4月)Ⅰ.我が国財政の現状」(2026年4月) mof.go.jp (参照箇所:5(p.6)、コラム①(p.16)。脚注2・3・23の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R8 日本銀行
「金 融政策の枠組みの見直しについて」(2 024年3月19日) boj.or.jp (参照箇所:p.1。脚注19の根拠。閲覧日:2026年10月)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。