この記事で分かること
- コンベクシティの定義と、デュレーションでは説明できない誤差の正体
- 二次近似の式と、±100bp・±200bpの整数設例による検算
- 正のコンベクシティが「タダではない」理由(利回りとのトレードオフ)
- 負のコンベクシティを持つ商品と、日本市場での実務上の意味
30秒で分かる定義
コンベクシティ(Convexity:凸性)とは、債券の価格と利回りの関係を表す曲線の「曲がり具合」を数値化したもので、デュレーションによる直線近似では捉えきれない価格変動を補正する二次の感応度指標です。読み方は「コンベクシティ」。通常の債券は正のコンベクシティを持ち、これは金利が下がったときの値上がり幅が、同じだけ金利が上がったときの値下がり幅より大きいという、投資家にとって有利な非対称性を意味します。デュレーションが接線の傾きだとすれば、コンベクシティはその接線から曲線がどれだけ離れていくかを示す量です(デュレーション)。
なぜ実務で重要なのか
債券運用担当にとって、コンベクシティは同じデュレーションの銘柄を選び分ける基準になります。デュレーションが同じ2銘柄なら、コンベクシティの高いほうが金利変動に対して有利です。ただし市場もそれを知っているため、高コンベクシティの銘柄は利回りが低く設定されます。ALM・リスク管理では、±100bpや±200bpといった大きな金利ショックを想定したストレステストを行う場面で、二次項を無視すると損益推計が大きくずれます。資産・負債のマッチングを行う生命保険会社や年金では、負債側のコンベクシティも考慮しないと、大きな金利変動時にマッチングが崩れます。ハイブリッド証券や仕組債を扱う実務では、オプション性によってコンベクシティが負になる場面があり、この符号を見誤ると想定と逆の損益が発生します。
計算式(または仕組み)
※ Δy は利回りの変化幅(小数表示。100bpなら0.01)
第1項がデュレーションによる直線近似、第2項がコンベクシティによる補正です。ここで重要なのは、Δyが二乗されているため、第2項は金利が上がっても下がっても常に同じ符号になるという点です。コンベクシティが正であれば、金利が上昇したときは損失を小さくする方向に、下落したときは利益を大きくする方向に働きます。この片方向の効果が、正のコンベクシティを「投資家にとって有利」たらしめています。
整数設例で確認する
設例(架空数値・単位:百万円)。時価10,000、修正デュレーション7.0年、コンベクシティ60の債券Pを考えます。
| 金利変動 | デュレーション項 | コンベクシティ項 | 合計(価格変化率) | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| +100bp | −7.00% | +0.30% | −6.70% | −670 |
| −100bp | +7.00% | +0.30% | +7.30% | +730 |
| +200bp | −14.00% | +1.20% | −12.80% | −1,280 |
| −200bp | +14.00% | +1.20% | +15.20% | +1,520 |
検算します。±100bpではΔy=0.01なので、デュレーション項は 7.0×0.01=7.00%、コンベクシティ項は 0.5×60×0.01²=0.5×60×0.0001=0.0030=0.30%。±200bpではΔy=0.02なので、デュレーション項は 7.0×0.02=14.00%、コンベクシティ項は 0.5×60×0.02²=0.5×60×0.0004=0.0120=1.20%です。金利変動幅が2倍になると、デュレーション項は2倍だがコンベクシティ項は4倍になる——ここが二次項の性質です。変動が小さいうちは無視できても、大きくなると急速に効いてきます。
非対称性を金額で確認すると、±100bpでは 730−670=60の差、±200bpでは 1,520−1,280=240の差が生じます。時価10,000に対して、大きな金利変動時には2.4%相当の差になります。
コンベクシティが低い債券との比較
同じ時価10,000・修正デュレーション7.0年ながら、コンベクシティが20しかない債券Qと比べてみます。コンベクシティ項は 0.5×20×0.0001=0.10%となるため、+100bpで−6.90%(−690)、−100bpで+7.10%(+710)です。債券Pと比べると、金利上昇時は20だけ損失が小さく、金利下落時は20だけ利益が大きい。つまり正のコンベクシティは、どちらに動いても有利に働きます。
ではなぜ誰もが高コンベクシティ債を買わないのか。答えは単純で、市場が既にその価値を価格に織り込んでいるからです。有利な性質を持つ債券は買われて価格が上がり、その結果として利回りが下がります。高コンベクシティ債を持つということは、通常の環境で得られる利回りをいくらか放棄して、大きな金利変動が起きたときの有利さを買っている、ということです。コンベクシティは無料の昼食ではなく、利回りを対価として買うオプション性だと理解しておくと、運用判断の議論がぶれません。
投資判断への影響
判断が分かれるのは、金利のボラティリティをどう見るかです。金利が安定して推移すると見るなら、コンベクシティに対価を払う意味は薄く、利回りの高い低コンベクシティ債のほうが有利になります。逆に金利が大きく振れると見るなら、コンベクシティは保険として機能します。この判断は、オプションのボラティリティ取引と本質的に同じ構造を持っています。
もう一つの重要な論点が負のコンベクシティです。期限前償還条項付き債券(コーラブル債)や住宅ローンを裏付けとする証券化商品では、金利が低下すると発行体・借り手が期限前償還を選ぶため、値上がりが途中で頭打ちになります。この性質は、コンベクシティが負であることとして表現されます。設例と同じ修正デュレーション7.0年でコンベクシティが−30の商品を考えると、コンベクシティ項は 0.5×(−30)×0.0001=−0.15%となり、+100bpで−7.15%、−100bpで+6.85%。下落は大きく、上昇は小さいという、投資家にとって不利な非対称になります。
実務では、こうした商品の金利感応度を測るのに修正デュレーションではなく実効デュレーション(金利を上下に振って再評価し、その差から算出する方法)と実効コンベクシティを用います。オプション性が入った瞬間、キャッシュフローが固定である前提の公式が使えなくなるためです。転換社債のように株式オプションが埋め込まれた商品でも同様の考え方が必要になります(転換社債(CB)入門)。
財務モデル・Excelでの使い方
- 一次と二次を別の行に置く:「デュレーション項」「コンベクシティ項」「合計」の3行構造にすると、どちらがどれだけ効いているかが一目で分かります。
=-MD*Δyと=0.5*C*Δy^2を独立に持たせるのがポイントです。 - Δyの単位を必ず統一する:bp表示(100)と小数表示(0.01)が混在するのが最も多いミスです。入力欄をbpに統一し、計算セルで
=入力bp/10000と変換する設計にすると事故が減ります。 - ±25/50/100/200bpのシナリオ表を作る:データテーブル機能で金利変動幅を振り、価格変化額を一覧にします。デュレーションのみの推計と二次項込みの推計を並べれば、近似誤差の大きさが可視化できます(感応度分析・シナリオ分析の作り方)。
- ポートフォリオでは時価加重で集計する:コンベクシティはデュレーションと同様、時価加重平均で合成できます。金額ベースで扱いたい場合は、時価×コンベクシティを合計してから総時価で割ります(BPV・DV01と組み合わせると、一次を金額、二次を率で管理する形になります)。
この用語をExcelで「組める」状態にする
デュレーション項とコンベクシティ項を分けた価格変動推計シートを作り、±200bpまでの金利シナリオで近似誤差を検証できるようになる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
- 誤解「コンベクシティが高いほど良い債券」→ その分だけ利回りを諦めています。高コンベクシティは市場で評価済みであり、価格に織り込まれています。金利が動かなければ、低コンベクシティ・高利回りの銘柄のほうが結果的に有利です。判断すべきはボラティリティの見通しです。
- 誤解「デュレーションだけで十分」→ 変動幅が大きい局面では誤差が無視できません。設例では±200bpのときに1.20%の乖離が生じており、時価10,000に対して120の差です。ストレステストや規制上の金利ショック計測では、この誤差が結論を左右します。
- 確認ポイント:コンベクシティの単位と定義。コンベクシティは資料によって定義や表示単位が異なることがあります(年の二乗単位か、100で割った表示か等)。式に代入する前に、どの定義かを必ず確認してください。設例の60という値は、二次項が 0.5×60×Δy² で計算される前提です。
- 確認ポイント:オプション性の有無。期限前償還条項、投資家プット条項、株式転換権のいずれかがあれば、通常のコンベクシティ公式は使えません。実効ベースの計測に切り替える必要があります。
日本実務での扱い
日本市場でコンベクシティが実務的に効いてくるのは、まず超長期国債の領域です。20年・30年・40年といった年限の国債は、デュレーションが長いだけでなくコンベクシティも大きくなるため、金利が大きく動く局面では二次項の寄与が無視できません。生命保険会社が長期の保険負債とのマッチングのために超長期債を保有する場合、資産と負債の双方についてデュレーションだけでなくコンベクシティのミスマッチも管理対象になります。金融庁は保険会社に対して経済価値ベースのソルベンシー規制の導入を進めており(2026年7月時点)、資産・負債を経済価値で評価する枠組みのもとでは、こうした二次の感応度の管理がより重要になります。
銀行では、バーゼル枠組みに基づく銀行勘定の金利リスク(IRRBB)の計測において、±200bpといった大きな金利ショックシナリオが用いられます(2026年7月時点)。この幅ではデュレーションのみの一次近似では誤差が大きいため、経済価値の変動額を算出する際にはキャッシュフローを再割引する方式が採られ、結果としてコンベクシティの効果が自動的に織り込まれます。
一方、負のコンベクシティを持つ商品については、日本市場では米国ほど存在感がありません。米国では住宅ローン担保証券(MBS)市場が巨大で、借り手が自由に期限前返済できるため、市場全体の金利感応度が負のコンベクシティに大きく影響されます。日本では住宅ローンの証券化市場が相対的に小さく、事業会社の普通社債にコール条項が付されることも多くありません。ただし、劣後特約付社債(ハイブリッド社債)には発行体のコール条項が組み込まれるのが通常であり、この領域ではオプション性を踏まえた評価が必要になります。債券価格と利回りの基本的な関係は債券の基礎で、利回り計算の詳細は債券利回りの基礎とYTMで確認できます。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:コンベクシティとは何ですか。なぜデュレーションだけでは足りないのですか。
「価格と利回りの関係は直線ではなく曲線です。デュレーションはその接線の傾きにあたる一次の感応度で、金利変動が小さいうちは十分な近似ですが、変動が大きくなると曲線と接線のずれが無視できなくなります。このずれを補正するのがコンベクシティで、価格変化率は −修正デュレーション×Δy+0.5×コンベクシティ×Δyの二乗、で近似します。二次項はΔyが二乗されるため常に正の方向へ働き、通常の債券では金利が下がったときの値上がりが金利が上がったときの値下がりより大きいという有利な非対称を生みます。ただしその有利さは価格に織り込まれており、高コンベクシティ債は利回りが低くなります。」(30秒回答例)
深掘りでは「負のコンベクシティを持つ商品は何か、なぜそうなるのか」「実効デュレーションが必要になるのはどんなときか」「デュレーションが同じ2銘柄をどう選ぶか」が定番です。
よくある質問(FAQ)
Q. コンベクシティが大きくなるのはどんな債券ですか?
A. 一般に、残存期間が長いほど、クーポンが低いほど、そして利回り水準が低いほどコンベクシティは大きくなります。キャッシュフローが遠い将来に、かつ広く分散して発生する債券ほど、価格・利回り曲線の曲率が強くなるためです。ゼロクーポンの超長期債はその典型で、デュレーションもコンベクシティも極端に大きくなります。
Q. コンベクシティはどうやって求めるのですか?
A. 理論的には、各キャッシュフローの現在価値に「受取までの期間×(期間+1)」で重みを付けて合計し、価格と割引率の項で調整して求めます。実務では、金利を±一定幅動かして再評価した3つの価格から数値的に近似する方法(実効コンベクシティ)が広く使われます。オプション性のある商品では後者しか使えないため、こちらが標準的な手法です。
出典・参考(2026-07-21確認)
- Bank for International Settlements「Interest rate risk in the banking book」(バーゼル銀行監督委員会)(https://www.bis.org/)
- 財務省(国債の商品性・発行年限別の発行計画に関する資料)(https://www.mof.go.jp/)
- 金融庁(経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する検討・保険会社向けの監督指針)(https://www.fsa.go.jp/)
- 日本銀行(金融システムレポート/金融機関の市場リスク分析)(https://www.boj.or.jp/)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。