この記事で分かること

  • EOMONTHとEDATEの構文 =EOMONTH(開始日, 月) / =EDATE(開始日, 月) と、「財務モデルの期末日行はEOMONTHで作る」という原則の理由
  • タイムライン行の標準設計(期首=前期末+1、期末=EOMONTH(期首,0)、期間日数、年度・四半期ラベル)と、月次・四半期・半期・年次で変わる引数(0/2/5/11)
  • 3月決算の日本企業で年度・「◯年3月期」・四半期番号を数式で出す方法と、建設期・運営期・返済期のフラグ行の立て方
  • DATEDIF・YEARFRACによる日割計算(Actual/365)、SUMIFS・SEQUENCEとの組合せ、EDATEの「31日問題」など典型的な事故

結論:EOMONTHは「月末」、EDATEは「同じ日」。期末日行はEOMONTHで作る

まず構文です。どちらも引数は2つだけで、第2引数の「月」は正の数なら未来、負の数なら過去へずらします。

=EOMONTH(開始日, 月)
開始日から指定した月数だけ進んだ(戻った)月の末日を返します。=EOMONTH("2026/4/1",0) は 2026/4/30、=EOMONTH("2026/4/1",-1) は 2026/3/31 です。

=EDATE(開始日, 月)
開始日から指定した月数だけ進んだ(戻った)同じ日を返します。=EDATE("2026/4/1",1) は 2026/5/1。ただし移動先の月に同じ日が存在しない場合は、その月の末日に切り詰められます。

財務モデルにおける使い分けは、実質的に次の一行に集約されます。期末日(各列の最終日)の行はEOMONTHで作り、EDATEは「開始日から◯か月後」という期間の長さ(テナー)を測るときに使う。この原則を外すと、後述する「31日問題」でタイムラインが静かに壊れます。

両関数はExcel 2007以降は標準関数です(それ以前は分析ツールアドインが必要でした)。戻り値は日付そのものではなくシリアル値なので、セルの表示形式を日付にしないと「46142」のような数字が出ます。これは異常ではなく仕様です。

本記事は関数そのものよりも、財務モデルのタイムライン設計にどう落とすかに集中します。関数の一覧はExcel関数の早見辞典|財務モデリング頻出関数リファレンス、用語の定義は用語集のEOMONTH・EDATE関数およびタイムラインとフラグ行をご覧ください。

2つの関数の違いを、境界日で確認する

違いが表面化するのは「月末付近の日付」を起点にしたときだけです。月初(1日)を起点にしている限り、両者は事実上同じ振る舞いをします。だからこそ、月末を起点にした瞬間に事故が起きます。

開始日=EDATE(開始日,1)=EOMONTH(開始日,1)何が起きているか
2026/1/312026/2/282026/2/282月に31日がなく切り詰め。偶然一致
2026/2/282026/3/282026/3/31EDATEは「28日」を保持し、月末から3日ずれる
2026/3/312026/4/302026/4/304月に31日がなく切り詰め。偶然一致
2026/4/302026/5/302026/5/31EDATEは1日手前。ここから崩壊が始まる
2028/1/312028/2/292028/2/292028年はうるう年。どちらも自動で29日
表:EDATEとEOMONTHの戻り値の比較。うるう年は両関数とも自動判定するため、日数のハードコードは不要です。

致命的なのは、この表の2行目が連鎖することです。「前月末+1か月」をEDATEで順に作っていくと、2026/1/31 → 2/28 → 3/28 → 4/28 → 5/28 …と、2月を通過した瞬間に以後すべての列が月末からずれます。ずれた期末日でもモデルは計算を続けるので、エラーは出ません。気づかないのが最大のリスクです。EOMONTHなら常にその月の末日を返すため、この崩壊は起きません。

逆に、EDATEでなければ困る場面もあります。「COD(運転開始日)から20年後」「実行日から15年後の最終返済期日」のように、月末とは無関係な基準日からテナーを測るときです。EOMONTHを使うと勝手に月末へ丸められてしまい、契約上の期日と一致しません。

タイムライン行の標準設計

財務モデルのタイムラインは、モデルの一番上に置く数行の「共通インフラ」です。ここを間違えると、売上・費用・借入・税金のすべてが同じ間違いを引き継ぎます。標準形は次の5行です。

タイムライン行の構造(月次モデル・3月決算) 期首 前期末 + 1 EOMONTH(期首, 0) 月末へ丸める 期末 2026/4/30 +1日 = 次の期首 以降、横方向にコピー この2ステップだけを右へコピーすれば、月数がいくつでも隙間も重複もないタイムラインになります。 行と数式 第1期 第2期 第3期 第4期 期首 =前期末 + 1(初列はモデル開始日) 2026/4/1 2026/5/1 2026/6/1 2026/7/1 期末 =EOMONTH(期首, 0) 2026/4/30 2026/5/31 2026/6/30 2026/7/31 期間日数 =期末 - 期首 + 1 30 31 30 31 年度・四半期 =YEAR(EDATE(期末, -3)) FY2026 Q1 FY2026 Q1 FY2026 Q1 FY2026 Q2 四半期末フラグ =--(MOD(MONTH(期末), 3) = 0) 0 0 1 0
図:期首→EOMONTH→期末→(+1日)→次の期首という循環と、その上に載る期間日数・ラベル・フラグの5行。

各行の役割を確認します。期首は初列だけモデル開始日(入力セル)を参照し、2列目以降は =前列の期末+1 とします。期末=EOMONTH(期首,0) の一択です。期間日数=期末-期首+1。両端を含むので「+1」を忘れないでください(4/1〜4/30なら 30-1+1=30日)。

初列の期首を =EOMONTH(モデル開始日,-1)+1 と書く流儀もあります。ユーザーが開始日に月中の日付(たとえば2026/4/15)を入れてしまっても、自動的に月初へ丸めてくれるため、入力ミスに強くなります。どちらを採るかはモデルの規約次第ですが、モデル内で統一することが条件です(モデルの書式規約)。

タイムラインを1行で持つのか、期首・期末・日数・ラベルまで持つのかは、モデルの粒度と目的で決まります。月次で資金繰りまで見るモデルなら日数行は必須、年次のバリュエーションモデルなら期末行とラベル行だけで足ります(モデルの粒度設計)。年次から月次へ解像度を上げる手順は四半期・月次モデルへの展開|年次モデルから解像度を上げるで扱っています。

月次・四半期・半期・年次:変わるのは第2引数だけ

ここがEOMONTHの最も実務的な使いどころです。期末行の数式を =EOMONTH(期首, N) と書いておけば、Nを差し替えるだけで期間の刻みが変わります。Nは「その期に含まれる月数 − 1」です。

刻み期末の数式第1期の期首第1期の期末日数
月次=EOMONTH(期首,0)2026/4/12026/4/3030
四半期=EOMONTH(期首,2)2026/4/12026/6/3091
半期=EOMONTH(期首,5)2026/4/12026/9/30183
年次=EOMONTH(期首,11)2026/4/12027/3/31365
表:3月決算・2026年4月開始のモデルにおける刻みごとの第1期(説明用の仮設例)。

四半期モデルで1年分を並べると、期末は 2026/6/30・2026/9/30・2026/12/31・2027/3/31、日数は 91・92・92・90 で合計365日になります。半期なら183日と182日で365日。日数の合計が必ず365日(うるう年は366日)になることは、タイムラインの検算として毎回確認すべきポイントです。合計が合わないなら、期首の+1を落としたか、EOMONTHの引数を間違えています(検算チェックの設計|「壊れたら赤く光る」モデルの作り方)。

刻みを可変にしたい場合は、月数を入力セル(1/3/6/12)に置き、期末を =EOMONTH(期首, $C$5-1) と書きます。CHOOSEやスイッチと組み合わせて刻みを切り替える設計はCHOOSE関数の使い方|財務モデルのシナリオ切替を作る方法で詳しく扱っています。

3月決算の日本企業:年度・「◯年3月期」・四半期番号を数式で出す

日本の実務で厄介なのが、決算期がカレンダー年とずれることです。3月決算の会社では、2026年4月から2027年3月までが1つの会計年度であり、これを「2026年度」とも「2027年3月期」とも呼びます。同じ期間に2つの呼び名があるため、ラベル行を数式で作るときは、どちらを出すのかを先に決める必要があります(決算期とカレンダー年度の変換)。

年度(4月始まりの「◯年度」)

=YEAR(EDATE(期末, -3))
期末を3か月前へ戻すと、4〜12月はその年のまま、1〜3月は前年の10〜12月になります。結果として、4月始まり年度の「開始年」が取り出せます。2026/4/30 → 2026/1/30 → 2026、2027/3/31 → 2026/12/31 → 2026。どちらもFY2026です。

決算期の呼称(「◯年3月期」)

=YEAR(EDATE(期末, 12-決算月)) & “年” & 決算月 & “月期”
決算月を入力セルに持たせた一般形です。3月決算(決算月=3)なら EDATE(期末,9) となり、2026/6/30 → 2027/3/30 → 2027年3月期。12月決算(決算月=12)なら EDATE(期末,0) なので 2026/6/30 → 2026年12月期。決算月を変えるだけで海外子会社や12月決算企業にも同じ行が使えます。

四半期番号

=ROUNDUP(MONTH(EDATE(期末, -3))/3, 0)
3月決算専用の簡潔形です。期末を3か月戻してから月を3で割って切り上げます。4月→1、6月→1、7月→2、12月→3、3月→4。="Q"&ROUNDUP(...) とすれば「Q1」表記になります。

検算しておきます。2026/6/30 → EDATE(-3)=2026/3/30 → MONTH=3 → 3/3=1 → 切り上げてQ1。2026/12/31 → 2026/9/30 → 9/3=3 → Q3。2027/3/31 → 2026/12/31 → 12/3=4 → Q4。3月決算の第4四半期(1〜3月)が正しくQ4になっています。

この2行(年度・四半期)が入っていると、実績データの取込みや期間集計が一気に楽になります。四半期開示との突合については決算短信と四半期開示、月次実績の締めとの関係は月次決算もあわせてご覧ください。

期間フラグ:建設期・運営期・返済期を1/0で表す

タイムラインができたら、その上にフラグ行を敷きます。フラグとは「その期がある局面に属するか」を1/0で表す行で、掛け算するだけで期間限定の計算をオン・オフできる、財務モデルで最も費用対効果の高い部品です。

=(期首<=終了日)*(期末>=開始日)
「期間が[開始日, 終了日]と重なるか」を判定する重なり判定式です。TRUE×TRUE=1、いずれかがFALSEなら0を返します。期末だけを見る方式(=--(期末<=終了日))よりも、マイルストーンが期の途中に来ても壊れにくくなります。

以下は説明用の仮設例です。プロジェクトファイナンス案件で、建設開始 2026/4/1、COD(運転開始日)2027/10/1、運営期間20年、借入テナーはCODから15年とします。終了日はEDATEで導きます。

運営終了日 =EDATE(COD, 240)-1 = 2047/9/30
最終返済期日 =EDATE(COD, 180)-1 = 2042/9/30
20年=240か月、15年=180か月。CODの応当日から1日引くことで「◯年間ちょうど」の最終日になります。ここでEOMONTHを使うと月末へ丸められ、CODが月中の案件では契約と1日以上ずれます。

四半期(期首〜期末)建設期運営期返済期局面
2026/4/1〜2026/6/30100建設・Capex計上
2027/7/1〜2027/9/30100建設最終期(利息は資産計上)
2027/10/1〜2027/12/31011COD。売上・元本返済が開始
2042/7/1〜2042/9/30011最終返済期
2042/10/1〜2042/12/31010無借金運営(配当余力が増える)
2047/10/1〜2047/12/31000運営期間終了後(全行ゼロ)
表:期間フラグの遷移(説明用の仮設例)。売上・返済・償却の各行はこのフラグを掛けるだけで期間制御できます。

フラグ行を敷いておく利点は、下流の行が単純になることです。売上は =運営期フラグ * 発電量 * 単価、元本返済は =返済期フラグ * 元本返済額 と書けば、期間の条件分岐がIFの入れ子から消えます。フラグの合計行(建設期+運営期=1になるか、返済期の合計=返済回数と一致するか)を検算行として置いておくと、期間設定のミスがその場で光ります。

フラグを土台にした収益・CFADS・借入・DSCRの統合手順はプロジェクトファイナンスモデルの作り方|収益・CFADS・借入・DSCRをExcelで統合に、借入残高・利息・リボルバーの実装はDebt Schedule(借入金スケジュール)の作り方|利息計算からリボルバーまでにまとめています。

期間日数と日割計算:DATEDIF・YEARFRACの使いどころ

タイムラインに日数行がある最大の理由は、利息計算です。借入契約の金利は年率で書かれているため、期の利息は「年率 × 期間日数 ÷ 年間日数」で日割りします。この年間日数の取り方を日数計算方式(Day Count Convention)と呼び、Actual/365、Actual/360、30/360などがあります。

期の利息 = 借入残高 × 年利 × 期間日数 ÷ 365
Actual/365の場合。分子の期間日数は =期末-期首+1(両端含む)、または =YEARFRAC(期首, 期末+1, 3) で年数に直接換算できます。基準(basis)の3がActual/365です。

以下は説明用の仮設例です。期首残高5,000百万円、年利2.50%、四半期モデル(3月決算・FY2026)で計算します。

四半期期末(EOMONTH)日数Actual/365(百万円)30/360(百万円)
Q12026/6/309131.1631.25
Q22026/9/309231.5131.25
Q32026/12/319231.5131.25
Q42027/3/319030.8231.25
合計365125.00125.00
表:残高5,000百万円・年利2.50%の四半期利息(説明用の仮設例)。年間合計は一致しますが、四半期ごとの配分は最大0.43百万円ずれます。

年間合計はどちらも125.00百万円(5,000×2.50%)で一致しますが、四半期ごとの金額は違います。DSCRやカバナンツを四半期単位で判定する案件では、この差がテスト結果を左右します。ちなみに同じ条件をActual/360で計算すると年間126.74百万円となり、Actual/365より1.74百万円多くなります。契約書の日数計算方式は必ず確認してください。残高の取り方(期首・期末・平均)についても同様の注意が必要です(金利計算の残高基準(期首・期末・平均残高))。

YEARFRACの第3引数(基準)は、0=30/360(米国方式)、1=実日数/実日数、2=実日数/360、3=実日数/365、4=30/360(欧州方式)です。省略すると0(30/360米国方式)になるため、省略は禁止と規約に書いておくのが安全です。

DATEDIFは開始日と終了日の間の「満」年数・月数・日数を返します("y""m""d")。ここで頻出する事故が =DATEDIF("2026/4/1","2027/3/31","m") が12ではなく11を返すことです。3/31時点で「満12か月」に1日足りないためで、関数の仕様どおりの挙動です。期数を数える目的なら、DATEDIFではなく列番号やSEQUENCEで採番するほうが確実です。DATEDIFはMicrosoftのドキュメント上もLotus 1-2-3互換のために提供されている関数で、"md" 引数は負の値や不正確な結果を返す場合があると明記されています。財務モデルの本番ロジックに使うなら、この癖を承知の上で限定的に使ってください。

タイムライン設計は、Excel上で手を動かして初めて身につく

期首・期末・日数・ラベル・フラグの5行は、読むだけなら10分で理解できます。しかし実際に組むと、初列の扱い、刻みの切替、日数の検算、フラグの境界日で必ずつまずきます。財務モデリングのためのExcel実務講座では、こうした「壊れないタイムライン」の作法を実際のシート上で扱います。

→ 財務モデリングのためのExcel実務を見る

SUMIFS・SEQUENCE・LTMとの組合せ

SUMIFSで実績を期間集計する

タイムラインに期首・期末の行があると、明細データからの期間集計が一発で書けます。

=SUMIFS(実績!$D:$D, 実績!$B:$B, “>=”&C$8, 実績!$B:$B, “<=”&C$9, 実績!$C:$C, $A10)
C8=期首、C9=期末、A10=勘定科目。比較演算子は文字列として書き、セル参照は & で連結します。">=C$8" のようにセル参照を引用符の中に入れると、文字列「>=C$8」との比較になり、必ず0が返ります。これはSUMIFSで最も多い事故です。

期末が月末に揃っていれば、明細側の日付が月中のどこにあっても正しく1つの列に集計されます。逆にEDATEで作った「28日」の期末だと、29〜31日の取引が翌月に飛びます。EOMONTHで期末を作る理由は、集計の網羅性にも直結しているのです。SUMIFSの詳しい使い方はSUMIFS関数の使い方|財務モデル・予算管理で使える実務例と用語集の期間集計とSUMIFSをご覧ください。フラグ行を重み付けして加重平均や条件付き集計を行う場合はSUMPRODUCT関数の使い方|財務モデリングで強力な理由と実務例が役に立ちます。

SEQUENCEでタイムラインを一発生成する

Microsoft 365およびExcel 2021以降では、動的配列関数を使ってタイムライン全体を1つの数式で作れます。

月次60か月の期末:=EOMONTH($C$4, SEQUENCE(1, 60, 0, 1))
四半期20期の期末:=EOMONTH($C$4, SEQUENCE(1, 20, 2, 3))
C4=モデル開始日(2026/4/1)。前者は 2026/4/30〜2031/3/31 の60列、後者は 2026/6/30〜2031/3/31 の20列がスピルします。四半期版の「開始値2・増分3」が、前述の「N=含まれる月数−1」に対応しています。

期首行も =EDATE($C$4, SEQUENCE(1,60,0,1)) で作れますが、これが成立するのはC4が月初(1日)である場合に限る点に注意してください。C4に月中の日付が入っていると、EDATEは同じ日を保持するため月初になりません。安全策は =EOMONTH($C$4, SEQUENCE(1,60,-1,1))+1 です。動的配列の実務はExcel動的配列関数の実務|FILTER・SORT・UNIQUE・スピルで財務分析を速くすると用語集の動的配列関数で扱っています。

LTM・Calendarizationとの接続

バリュエーション実務では、決算期がばらばらな比較会社を同じ土俵に載せる必要があります。ここでもEDATEが効きます。

LTM期首 =EDATE(LTM期末, -12)+1
LTM期末が2026/6/30なら、EDATE(-12)=2025/6/30、+1で2025/7/1。2025年7月〜2026年6月のちょうど12か月になります。EOMONTHで書くと月末同士の比較になり、区間の両端が1日ずれます。

3月決算の会社を12月決算ベースへ換算する(Calendarization)際も、四半期の足し引きの前提として「どの期がどの暦年に属するか」をEDATEベースのラベル行で判定します。具体的な組み方はLTM・NTM・Calendarizationの実装|四半期データから直近12か月を組むと用語集のLTM・NTMをご覧ください。

よくある間違いと対処

1. 日付が文字列になっている

会計システムやPDFから貼り付けた日付は、見た目が日付でも文字列であることがあります。セル内で左寄せなら文字列を疑ってください。EOMONTHはExcelが解釈できる文字列なら受け付けますが、地域設定に依存し、解釈できなければ #VALUE! を返します。=ISNUMBER(A2) でまとめて判定し、区切り位置ウィザードかDATEVALUEで数値の日付に直してからタイムラインに載せます(Excelの財務データクリーニング実務|TRIM・重複削除・区切り位置・フラッシュフィルで「揃った表」を作る)。

2. 1900年のシリアル値のずれ

Excelの標準(1900年日付システム)は、実在しない1900年2月29日を日付として数えます。このため1900年3月1日より前の日付はシリアル値が実際のカレンダーと1日ずれます。1900年代前半の日付を扱う財務モデルはまれですが、シリアル値の直接演算や外部システムとの日付連携で差異が出たときは、この仕様と、Mac由来ファイルで使われることがある1904年日付システム(1462日のずれ)を疑ってください。

3. うるう年を日数でハードコードしている

「四半期は91日」「1年は365日」と直接打ち込むと、2028年のような うるう年(2月29日)で1日ずれます。日数は必ず =期末-期首+1 で計算させてください。EOMONTHはうるう年を自動判定するため、この方式にしておけば手当ては不要です。

4. EDATEで月末行を作っている

本記事の冒頭で扱った最大の事故です。月末行は必ずEOMONTH。期末行に「EDATE」の文字が1つでも見つかったら、その時点でモデルの検収を止めるくらいの規律で問題ありません。

5. 日付をハードコードで打ち込んでいる

各列に「2026/4/30」「2026/5/31」と手打ちすると、モデル開始日を1か月ずらす作業が全列の打ち直しになります。さらに、打ち直しの過程で1列だけ古い日付が残ると、SUMIFSの集計が静かに欠落します。入力すべき日付はモデル開始日と契約上のマイルストーン(COD、返済開始日など)だけで、それ以外は全て数式で導出するのが原則です。ハードコードの管理ルールは財務モデルの書式規律|色分け・単位・ハードコード管理の世界標準ルールにまとめています。

6. 期首の「+1」を忘れる/期末を翌期首と重複させる

期首を =前列の期末 としてしまうと、期末と次の期首が同じ日になり、その日の取引が二重計上されます。日数合計が365日を超えたら真っ先に疑うべき箇所です。Excelのエラー値が出ないタイプの間違いなので、検算行での自動検知が唯一の防御になります。

よくある質問(FAQ)

Q. EOMONTHとEDATE、迷ったらどちらを使えばよいですか?
A. 「その日付は月末であるべきか」で判断してください。財務モデルの期末日行・決算期末・月次集計の締め日は月末であるべきなのでEOMONTH。契約日から◯年後・◯か月後というテナーの計算は月末である必要がないのでEDATEです。迷ったときは、うるう年の2月と31日ある月を入れて挙動を確かめるのが確実です。

Q. EDATEで作った月末行が1日ずつずれていくのはなぜですか?
A. EDATEは「日」を保持するためです。2026/1/31にEDATE(,1)を適用すると2月には31日がないので2/28へ切り詰められ、以後はその「28日」が引き継がれて3/28、4/28…と進みます。一度短い月を通過すると元の月末には戻りません。EOMONTHなら毎回その月の末日を計算するため、この現象は起きません。

Q. 3月決算の「2026年度」と「2027年3月期」は、どう出し分けますか?
A. 年度(開始年で呼ぶ)は =YEAR(EDATE(期末,-3))、決算期の呼称(終了年で呼ぶ)は =YEAR(EDATE(期末,12-決算月)) です。同じ2027/3/31に対して前者は2026、後者は2027を返します。社内資料とIR資料で呼び方が違うことが多いので、ラベル行は両方持っておくと混乱が減ります。

Q. 期間日数は「期末-期首+1」とDATEDIFのどちらで出すべきですか?
A. 単純な引き算をおすすめします。DATEDIFの "d" は両端を含まない日数を返すため結局+1が必要になり、なおかつ関数自体に互換性維持のための癖があります。年数換算が必要な場面ではYEARFRACを基準(basis)明示で使い、日数そのものは引き算で出す、という切り分けが実務では扱いやすいはずです。

Q. EOMONTHが #NUM!#VALUE! になるのはどんなときですか?
A. #VALUE! は開始日がExcelの解釈できない文字列のとき、#NUM! は開始日が有効な日付でないとき、または「開始日+月数」が有効な日付の範囲を外れる(結果が1900/1/1より前のシリアル値になるなど)ときに返ります。過去方向へ大きな負の月数を指定した場合が典型です。

まとめ

EOMONTHは月末、EDATEは同日。財務モデルの期末日行はEOMONTHで作り、EDATEはテナー計算とLTM期首・年度ラベルの導出に使う、という役割分担が実務の答えです。

タイムラインの標準形は、期首=前期末+1、期末=EOMONTH(期首, N)、期間日数=期末−期首+1、そして年度・四半期ラベルとフラグ行。Nを0・2・5・11と差し替えるだけで月次・四半期・半期・年次が切り替わり、日数の合計が365日(うるう年は366日)になるかどうかが常に検算になります。

3月決算の日本企業では、年度と決算期呼称という2つのラベルをEDATEで出し分けます。期間フラグは重なり判定 =(期首<=終了日)*(期末>=開始日) で立て、下流の売上・返済・償却行に掛けるだけで局面制御が完了します。

最後に、日付にまつわる事故の大半は「文字列日付」「ハードコード」「EDATEでの月末行」の3つに集約されます。この3点だけを検収項目に入れておけば、タイムライン起因のトラブルはほぼ防げます。

壊れないタイムラインの上に、動くモデルを載せる

期首・期末・日数・フラグが正しく組めていれば、その上に載る売上予測、Capex、借入返済、税金の各スケジュールは驚くほど素直に書けます。関数の知識をモデル構築の手順に変えたい方へ。

→ 財務モデリングのためのExcel実務を見る

出典・参考(2026年8月21日確認)

  • Microsoft「EOMONTH 関数」Microsoft サポート——構文、月末日の返し方、#VALUE!#NUM! の発生条件
  • Microsoft「EDATE 関数」Microsoft サポート——構文、指定月数前後の応当日、存在しない日付の切り詰め挙動
  • Microsoft「YEARFRAC 関数」Microsoft サポート——基準(basis)0〜4の定義(30/360米国方式、実日数/実日数、実日数/360、実日数/365、30/360欧州方式)
  • Microsoft「DATEDIF 関数」Microsoft サポート——Lotus 1-2-3互換のために提供されている旨、"md" 引数が負値・不正確な結果を返し得る旨の注意
  • Microsoft「SEQUENCE 関数」Microsoft サポート——引数(行、列、開始、目盛り)とスピルの挙動
  • Microsoft「Excel が 1900 年を、うるう年として扱う理由」および「1900 年日付システムと 1904 年日付システムの違い」Microsoft サポート——シリアル値のずれ
  • Microsoft「SUMIFS 関数」Microsoft サポート——条件の指定方法(比較演算子と文字列連結)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための仮設例です。