この​記事で​分かる​こと

  • Altman Zスコアの計算式(5つの財務指標の加重合計)と判定ゾーン
  • 整数の設例でZを実際に計算する手順
  • 非上場向けZ´・非製造業/新興国向けZ´´などの派生版の使い分け
  • 米国データ由来ゆえの限界と、日本企業での読み替え(格付・営業CF・インタレストカバレッジとの併用)

結論:Zスコアは​「複数の​財務指標を​1つに​束ねた​倒産の​早期警戒​シグナル」

Altman Zスコアは、1968年にEdward Altmanが提唱した倒産予測モデルです。収益性・レバレッジ・流動性・資産効率といった複数の財務指標を加重合計して1つのスコアにまとめ、値が低いほど倒産リスクが高いと読みます。単独で結論を出す道具ではなく、安全性分析の​指標や格付と併用する早期警戒シグナルとして使います。

計算式と​判定ゾーン​(オリジナル版:上場製造業向け)

Z = 1.2·X1 + 1.4·X2 + 3.3·X3 + 0.6·X4 + 1.0·X5

  • X1 = 運転資本 ÷ 総資産(流動性)
  • X2 = 利益剰余金 ÷ 総資産(累積収益力)
  • X3 = EBIT ÷ 総資産(本業の資産効率=収益性)
  • X4 = 株式時価総額 ÷ 総負債(簿価)(市場から見た財務余力)
  • X5 = 売上高 ÷ 総資産(資産回転)
Zスコアの判定ゾーン 危険ゾーン グレーゾーン 安全ゾーン 1.81 2.99 0 5.0 設例 Z=2.37 ※ オリジナル版(上場製造業)の閾値。派生版では閾値が異なる。
図:Z>2.99で​安全、​1.81〜2.99は​グレー​(要注意)、​Z<1.81は​危険。​設例の​Z=2.37は​グレーゾーン。

判定は、Z > 2.99:安全、1.81 < Z < 2.99:グレー(要注意)、Z < 1.81:危険が目安です(オリジナル版)。

設例:Zを​計算してみる

前提(単位:百万円)。総資産 10,000、運転資本 1,500、利益剰余金 2,000、EBIT 800、売上高 12,000、総負債(簿価)6,000、株式時価総額 4,500。

  • X1 = 1,500 ÷ 10,000 = 0.15 → 1.2 × 0.15 = 0.18
  • X2 = 2,000 ÷ 10,000 = 0.20 → 1.4 × 0.20 = 0.28
  • X3 = 800 ÷ 10,000 = 0.08 → 3.3 × 0.08 = 0.264
  • X4 = 4,500 ÷ 6,000 = 0.75 → 0.6 × 0.75 = 0.45
  • X5 = 12,000 ÷ 10,000 = 1.20 → 1.0 × 1.20 = 1.20

Z = 0.18 + 0.28 + 0.264 + 0.45 + 1.20 = 2.37。判定はグレーゾーン(要注意)です。X4(株式時価総額÷総負債)とX5(資産回転)が効いており、株価下落や売上減があれば危険ゾーンに近づく構図が読み取れます。

派生版の​使い分け

  • Z´(非上場向け):X4を株式時価総額の代わりに簿価純資産÷総負債に置き換える。上場していない中小企業に。
  • Z´´(非製造業・新興国向け):資産回転の業種差が大きいためX5(売上÷総資産)を除外し、係数と閾値を調整。サービス業などに。

対象企業の上場/非上場・業種に合わせて版を選ばないと、スコアも閾値も意味を失います。

日本企業での​使い方と​限界

  • 係数・閾値は米国データ由来:1960年代の米国上場製造業の倒産データで推計されたモデルなので、日本企業にそのまま当てはめると誤差が出る。「推定」であり確定診断ではない。
  • 会計・市場構造の違い:利益剰余金の意味、時価総額の変動、業種構成が米国と異なる。日本基準/IFRSの差(日本基準と​IFRS)も効く。
  • 入手:X1〜X5はEDINETの有価証券報告書・決算短信から取得可能。時価総額は株価×発行済株式数。
  • 併用が前提:日本の実務では、格付、営業キャッシュフロー、インタレストカバレッジ、コベナンツ抵触などと組み合わせて使う。Zだけで融資や投資を判断しない。

面接での​答え方​(30秒回答例)

Q:Altman Zスコアとは?
「運転資本/総資産、利益剰余金/総資産、EBIT/総資産、時価総額/総負債、売上/総資産という5つの指標を加重合計して1つのスコアにまとめ、倒産リスクを早期に測るモデルです。オリジナル版ではZが2.99超で安全、1.81未満で危険。ただし米国の上場製造業データで作られているので、日本企業では非上場版や非製造業版を選び、格付や営業CFと併用する必要があります。あくまで推定シグナルで、確定診断ではありません。」

よく​ある​質問​(FAQ)

Z​スコアだけで​倒産を​判定して​よい?

いいえ。​早期警戒​シグナルの​一つです。​米国​データ​由来の​限界が​あり、​業種・​上場区分で​版を​選び、​格付・​営業​CF・​インタレストカバレッジ・​コベナンツ​状況などと​併用して​総合的に​判断します。

非上場の​中小企業には​どの​版?

時価総額が​使えないため、​X4を​簿価純資産÷総負債に​置き換えた​Z´版を​使います。​サービス​業など​非製造業なら​Z´´版も​検討します。

まとめ

Altman Zスコアは、5つの財務指標を加重合計した倒産の早期警戒シグナルです。オリジナル版はZ>2.99で安全、Z<1.81で危険。日本企業では非上場版・非製造業版を選び、米国データ由来の限界を踏まえて格付や営業CFと併用します。あくまで推定であり、確定した倒産予測ではありません。

出典・参考​(2026-07-16確認)

  • Altman, E. (1968) “Financial Ratios, Discriminant Analysis and the Prediction of Corporate Bankruptcy”, Journal of Finance(モデルの原典)
  • 財務指標の入手:EDINET(有価証券報告書)、決算短信

※本記事は教育目的の一般的な解説です。Zスコアは統計的推定であり、特定企業の倒産を確定的に予測するものではありません。閾値・係数は版により異なります。設例は理解のための仮設例です。