この記事で分かること
- 1年程度の金利が予想外に20bp上振れすると米国株は約1%下がるという推計と、発表直後の株価の動き全体では長期金利より株式リスクプレミアムと期待配当の変化が大きく効くという研究の整理
- 発表前の株価上昇(pre-FOMC drift)や会合周期のパターンは、米国のその後の期間に有意でなくなったり逆転したりしており、売買ルールにはならないこと
- 会合翌朝の日本株の変化を、長期金利の分と残りに分けて読む教材上の手順(日本株向けの仮定に基づく設例。論文の検証結果ではない)
想定読者:日本株・米国株のアナリストや運用担当、マーケットを説明するセールス、金融政策の日程を気にする事業会社の財務・IR担当
前提知識:株価を将来の配当の現在価値とみる考え方と、政策金利・長期金利の違い(研究の指標は本文で説明する)
FOMCの声明は、米国の夏時間なら日本時間の午前3時に出る。翌朝の会議で日経平均の下げを「利上げ観測が強まったため」と説明しても間違いではないが、下げのうち金利の上昇で説明できるのが何割で、残りが何なのかは分からない。
本稿は、FRBの金融政策と株価に関する30年あまりの実証研究を整理し、同じ方法で測り直したレビュー論文を手がかりに、政策イベントの前後の株価を分解して読む方法を考える。
この記事が主に参照する研究
Benjamin Knox、Annette Vissing-Jorgensen(2026)「FRBが株式市場に与える影響:大きさ、経路、ショック(The Effect of the Federal Reserve on the Stock Market: Magnitudes, Channels and Shocks)」Finance and Economics Discussion Series 2026-023
- 公表:初版は2025年(SSRN)。参照した版:FRBのワーキングペーパー(2026年5月掲載、本文の日付は2025年8月25日)。同じ題名のレビュー論文が Annual Review of Financial Economics 第17巻(2025年11月)に掲載されたが、掲載版の本文は確認できていない
- データ:米国のFOMCの発表(1994〜2023年、定例会合239回ほか)前後のS&P500の日中データ、国債先物、VIX、株価指数オプション
- 方法:既存研究のサーベイに、著者自身の推計を加える。30分の発表窓のイベントスタディと、株価の変化を金利・株式リスクプレミアム・期待配当に分ける分解
- 位置づけ:新しい理論ではなく、既存の3つの実証事実を同じ分解で測り直した整理1
株価を動かす3つの経路と、3種類の「サ プライズ」
株価を将来の配当の現在価値とみると、政策発表で株価が動く経路は3つしかない。割引に使う無リスク金利が変わるか、株式に上乗せされる株式リスクプレミアムが変わるか、期待される配当そのものが変わるかである。論文は、ある年のフォワード金利の変化が株価に効く大きさは、その年以降の配当が株価に占める比重に比例すると整理している2。
影響の大きさは「乗数」で測る。発表の前後の短い時間に、FF金利などの短期金利が市場の予想からどれだけずれたか(金利サプライズ)を測り、株価の変化をそれに回帰した係数である。予想外の利上げは株価を下げるので、乗数は負になる3。
同じ「予想外の利上げ」でも中身は一つではない。論文は政策ルール(テイラー・ルール)の枠組みで、サプライズを3種類に分ける。政策ルールから外れた純粋な政策ショック、景気や物価にFRBがどれだけ強く反応するかについての見方の修正(反応関数のニュース)、FRBの景気判断が市場に伝わる情報効果である。種類が違えば、効く経路も、株価が動く向きも変わりうる4。
表1 ショックの種類と、株価・金利に出やすい組み合わせ
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| 種類 | 中身 | 株価と金利の動き方 | 主な経路 |
|---|---|---|---|
| 純粋な政策ショック | 政策ルールでは説明できない、予想外の利上げ・利下げ | 引き締めなら株価は下がり、短期金利は上がる(逆向き) | 金利・株式リスクプレミアム・期待配当のすべてが株価を押し下げる方向 |
| 反応関数のニュース | 景気や物価にFRBがどれだけ強く反応するかについての見方の修正 | 景気が悪いときにFRBが予想より強く支えると分かれば、株価は上がり、長期金利は上がることもある | 主に株式リスクプレミアムの低下。著者は株価には情報効果より重要とみる |
| FRBの情報効果 | 利上げが「FRBは景気を強く見ている」という知らせとして受け取られる | 引き締めでも株価が上がりうる(同じ向き) | 期待配当の上昇・リスクプレミアムの低下。証拠は弱いとする研究もある |
研究が示した結果:反応は大きいが、金利だけでは説明できない
出発点は、発表の10分前から20分後までの30分窓で測る乗数である。先行研究では、1日の窓で−4.68(1989〜2002年)、30分窓で−4.03(1990〜2004年)という推計があった5。著者らが1994〜2023年の定例会合239回で測り直すと、1年程度までの金利をまとめたサプライズ(mps)に対する乗数は−4.83で、1%水準で有意だった。単位は金利1%ポイント当たりの株価の変化率(%)なので、20bpの上振れで約0.97%、つまり約1%の下落になる6。
そのうち長期金利の変化で説明できる部分は、mpsでは−4.83のうち−3.57(約4分の3)、当月の金利だけをみるサプライズ(Kuttner)では−3.26のうち−1.08(約3分の1)だった。残りは株式リスクプレミアムか期待配当の変化に当たるが、両者を合わせた残りの成分は、mps・Kuttnerのいずれでも統計的に有意ではなかった7。ただしこの割合は仮定に左右される。12年より先のフォワード金利も9〜12年と同じだけ下がったと仮定すると、Kuttnerでは金利の経路が消え、mpsでも−2.1に縮む8。
より重要なのは当てはまりの低さだ。mpsの回帰のR2は0.257にとどまる。発表直後の数分で株価の変動は急に大きくなり、30分窓の「信号対雑音比」は12.3(14時の発表)と20.3(14時15分の発表)に達する。ショックが1種類で乗数が一定なら、R2は92〜95%になるはずだという。著者らは、市場が読み取る中身が回ごとに違い、乗数は符号さえ変わりうると解釈している9。30分窓の株価の変化そのものを分解すると、長期金利の成分の係数は0.24、株式リスクプレミアムと期待配当の成分は0.76で、VIXは株価と逆に大きく動いた10。
30分窓のショックはもともと小さい。平均の絶対値はmpsで4bpにすぎず、会合と会合の間に1〜4四半期先の金利は20〜29bp動いていた。金利の経路の変化の大半は発表の窓の外で起きている11。記者会見の開始直後にも変動の山があり、会見は声明と同じくらい情報を持つとされる12。
窓の外での影響は、平均リターンのパターンとして現れた。一つは発表前の24時間の上昇(pre-FOMC drift)で、1994年9月〜2011年3月にS&P500の超過リターンは1回平均49bp、年8回で年約4%、年間の実現超過リターンの約80%に当たった13。著者らの分解では、このうち長期金利の成分は0.08%で有意でなく、大半は株式リスクプレミアムと期待配当の成分だった。続く2011年4月〜2023年12月は1回平均0.16%で、統計的に有意ではなかった(VIXの低下は有意)14。オプション価格から測ると、FOMCを含む1〜2日の株式リスクプレミアムは周辺の日より1〜2bp高いだけで、FOMC当日には満期の最も長い区分のオプションから測る累積のリスクプレミアムが約7bp下がった。著者らは、上昇の多くは高いリスクプレミアムへの報酬ではなく、リスクプレミアムを下げる良い知らせが続いた結果だと解釈している15。
もう一つは会合の周期である。1994〜2016年には、FOMCの日を起点に数えた偶数週の超過リターンが奇数週より日次で11.48bp高く(1%水準で有意)、そのうち長期金利の成分は6.08bpだった。ところが2017〜2021年には逆向きの差(−12.01bp、10%水準で有意)が出た。著者らは、この期間はFRBの知らせが平均して予想より悪かったと解釈している16。前の週に株価が大きく下がった日に偶数週の上乗せが日次34bpと大きく、金利の低下を伴わなかったことは、FRBが景気の悪化に予想より強く対応するという「FRBプット」の形の反応関数のニュースと整合するという17。
図1の3つの事実に共通するのは、長期金利で説明できる部分が合計の全部ではなく、その割合が事実や測り方によって大きく違うことだ。著者らは結論で、株価については反応関数のニュースが情報効果より重要とみられ、発表窓の株価の変化は金利よりも株式リスクプレミアムと期待配当の変化で動くと述べる。一方で、期待配当を高い頻度で測ったデータは乏しく、キャッシュフローの役割ははっきりしないとしている18。
研究の範囲と限界:米国株・FOMCの結果で、分解には仮定がある
対象は米国の株式市場全体とFOMCで、量的緩和、個別株や国ごとの違いは扱っていない19。分解は名目金利で行い、国債先物のデュレーションを丸め、12年より先のフォワード金利は動かないと仮定している。先に見たとおり、この仮定で金利の役割は大きくも小さくもなる。株式リスクプレミアムと期待配当は高い頻度では分けられず、オプションから測るリスクプレミアムの指標もまだ発展途上だと著者ら自身が書いている20。FOMCの日の上昇は数日のうちに一部が戻るという研究もある21。
ショックの種類の見分け方には争いがある。定例・臨時の発表全体の約3分の1を、株価と短期金利が同じ向きに動く情報効果に分類する研究がある一方、情報効果の証拠は統計的に弱く、市場がFRBの反応の強さを読み違えていただけだとする研究もある22。著者の一人は、株価の下落が利下げを予測し、その予測力はマクロ指標より強いと論じたFRBプットの研究の共著者でもある23。反応関数を重くみる結論は、この研究の流れの上にある。
日本への当てはめで見逃せないのが、米国外の結果である。pre-FOMC driftを最初に報告したLucca and Moenchの2013年の改訂版では、1994〜2011年に欧州の主要指数はFOMC前に29〜52bpの上昇を示したが、日経平均は主要指数で唯一、FOMC発表日の有意なリターンを示さなかった。欧州・英国・日本の株価は、自国の中央銀行の発表前には同じような上昇を示さなかったという(結果の表は非掲載)24。主論文が紹介する別の研究も、1998〜2016年に日本を含む米国外の中央銀行の会合の前後で異常な超過リターンを見いださなかった25。参照した版はFRBのワーキングペーパーで、結論は暫定的なものと著者ら自身が断っている26。
大手町プレップの考察:「金 利が上がったから下がった」は説明の半分
以下は研究の結果を踏まえた編集部の推論である。第一に、政策イベントの日の株価の説明は、金利の変化と、それ以外の変化の2段に分けて書く方が正確だと考えられる。研究の分解では、金利サプライズに対する反応のうち長期金利の経路が占めるのは3分の1から4分の3で、仮定次第で変わる。朝会のコメントに「長期金利の上昇で説明できるのは下げの何割か」を一言添えるだけで、読み手が受け取る情報は増える。
第二に、同じ大きさのサプライズに同じ反応を期待しない方がよい。R2の低さは、単一の乗数では発表ごとの株価の動きを十分に説明できないことを示す。株価と長期金利が逆向きに動いたか、同じ向きに動いたか、VIXがどちらに動いたかを並べると、表1のどの種類が強かったかの手がかりになる。ただし1回の発表に複数の種類が混ざるので、断定には使えない。
第三に、平均リターンのパターンを売買のルールにしない。「良い知らせが続いた結果」という著者らの解釈は、同じ知らせが続く保証がないことも意味する。
第四に、株式リスクプレミアムは数bp単位で動いても株価には大きく効く。配当割引モデルでは、割引率と成長率の差が小さいほど価格の感応度が大きくなり、後の設例では1bpの上昇で指数が約0.3%動く。会合の日の1%の変動は数bpのリスクプレミアムの変化で説明できる大きさで、企業の資本コストを会合ごとに見直す理由にはならないだろう(仮説)。
日本の実務への応用:時刻のずれと、日本株に固有の事情
FOMCは年8回開かれ、2026年9月16日の声明は米国東部の夏時間で午後2時に公表された27。日本時間では午前3時(米国の標準時の期間は午前4時)に当たる。日本株の最初の反応は翌朝の寄り付きで、その間の米国株や為替の動きが混ざる。研究の30分窓のような切り分け(イベントスタディの窓をごく短くしたもの)は、日本株の終値ではできない。日本株でFOMCを測るなら、米国の30分窓の金利サプライズと株価の反応を先に確かめ、そのうえで翌朝の日経平均やTOPIXの動きを、米国の反応と為替でどこまで説明できるかを見る順番になる。
日本銀行の金融政策決定会合も年8回で、各回2日間にわたる。展望レポートの基本的見解は「会合終了後直ちに」公表されるとされ、公表の時刻は固定されていない28。公表文が実際に出た時刻を窓の起点にし、総裁の記者会見は別のイベントとして測る必要がある。米国で会見直後に変動の山が出ていたことによる(編集部の推論)。
平均リターンのパターンについては、日本株には米国の結果を持ち込まない方がよい。先の研究では、日経平均にはFOMC発表日の有意なリターンが見られず、日銀を含む米国外の中央銀行の会合の前後にも異常なリターンは見いだされなかった。標本は2011年や2016年までで、その後の日銀の政策の変化は含まないが、「日銀会合の前は買われやすい」といった通説は、少なくともこれらの研究では支持されていない。
論文は米国株を年限別のフォワード金利で分解しており、日本株での寄与率は検証していない。日本株では、10年国債利回りの変化が全年限で同じ幅で、配当の見通しは不変と仮定すれば、TOPIXの変化を「金利の分」と「残り」に分ける教材上の感応度分析として試せる。日銀の政策手段と市場への波及を押さえたうえで、どの年限の金利が動いたかをイールドカーブで確かめると、残りの解釈がしやすい。
設例:会合の翌朝の指数の変化を2つに分ける
学習用の設例(架空)
- 架空の株価指数X。会合前の水準2,000、来期の配当70(指数ポイント)、配当の永続成長率3.00%、長期金利1.50%、株式リスクプレミアム5.00%
- 指数は定率成長の配当割引モデルで決まる(指数=配当÷(長期金利+株式リスクプレミアム−成長率)、期首の分母は3.50%)
- 会合の前後で配当と成長率は変わらず、長期金利は全年限で同じ幅だけ動くと仮定する
- ケースA:短期金利のサプライズ+10bp、長期金利+4bp、指数−1.5%。ケースB:長期金利+3bp、指数+0.6%
この指数の金利感応度は1÷(3.50%)=約28.6年で、1bpの金利上昇で指数は約0.3%下がる。ケースAでは、長期金利の上昇だけで指数を計算し直すと−1.13%で、(1+観測値)÷(1+金利の分)−1で求めた−0.37%が残りになる。残りをすべて株式リスクプレミアムの変化とみなすと、上昇幅は1.3bpにすぎない。米国の平均的な乗数をサプライズに当てはめた目安は−0.48%だが、観測値との差の原因はこの計算だけでは特定できない。
ケースBは長期金利が上がったのに指数が上がった日である。金利の分は−0.85%なので、残りは+1.46%と大きい。残りをすべて株式リスクプレミアムとみなせば5.1bpの低下で、表1でいえば、純粋な引き締めショックではなく、反応関数のニュースや情報効果に近い組み合わせになる(図2)。
表2は、観測した指数と長期金利の変化の組み合わせごとに、残りを株式リスクプレミアムとみなした変化を逆算したものだ。株価から前提を逆算する点はReverse DCFと同じ考え方である。たとえば指数が1%下がっても、長期金利が10bp上がっていれば、残りの株式リスクプレミアムはむしろ6.5bp低下しており、下げは金利だけで説明できる以上のものではない。逆に指数が1%上がり長期金利も5bp上がった日は、8.5bpの低下で、株価に良い知らせがあったことになる。
表2 設例:指数と長期金利の変化から逆算した株式リスクプレミアムの変化
表は横にスクロールできます →
| 指数の変化\長期金利 | −5bp | ±0bp | +5bp | +10bp |
|---|---|---|---|---|
| −2.0% | +12.1 | +7.1 | +2.1 | −2.9 |
| −1.0% | +8.5 | +3.5 | −1.5 | −6.5 |
| 0.0% | +5.0 | 0.0 | −5.0 | −10.0 |
| +1.0% | +1.5 | −3.5 | −8.5 | −13.5 |
| +2.0% | −1.9 | −6.9 | −11.9 | −16.9 |
この計算は、年限別のフォワード金利を使う論文の方法を大きく簡略化している。期待配当の変化も「残り」に入るので、残りを株式リスクプレミアムと呼ぶのは便宜上である。
明日から使える確認項目と分析手順
- イベントの記録表を作る。FOMC・日銀会合ごとに、公表の実際の時刻(日本時間)、記者会見の時刻、政策金利の決定、2年・10年の国債利回りの変化、株価指数の変化、VIXまたは日経平均VIの変化を1行にまとめる。
- 短期金利のサプライズを、決定そのものではなく「市場の予想からのずれ」で測る。決定が予想どおりでも、声明や会見で先行きの見通しが動けばサプライズになる。
- 株価の変化を「長期金利の分」と「残り」に分ける。指数の配当と成長率を固定し、設例と同じ式で長期金利の変化だけを反映した指数を計算し、(1+観測値)÷(1+金利の分)−1を残りとする(単純な差は近似)。
- 株価と長期金利の向き、VIXの向きを表1と照らし、どの種類のショックが強かったかを仮説として書く。断定はせず、翌週以降の金利の織り込みの変化で確かめる。
- 朝会や顧客向けのコメントには「下げのうち長期金利で説明できるのは約何割、残りは何bpのリスクプレミアムの上昇に相当」と書く。何割で「金利主導」とみなすかは研究で検証されておらず、過去のイベントの分布と比べて判断する(編集部の仮の目安)。
- 「会合の前は上がりやすい」「偶数週は強い」といった平均のパターンを、日本株の売買や資金調達の時期の判断に使わない。研究では米国のその後の期間に弱まるか逆転した。会合の周期は、本稿の参照研究では日本株で検証していない。
よくある質問
FOMCで予想外の利上げがあれば、日本株も同じように下がりますか。
研究が推計したのは米国株の反応です。日本株は翌朝の寄り付きまでに為替や米国株の動きが混ざるため、同じ大きさの反応を前提にはできません。
金融政策のイベントの前に株を買っておくと有利ですか。
米国では1994〜2011年に発表前の上昇が大きかったものの、その後の期間には統計的に有意ではなく、日経平均のFOMC発表日や、日銀を含む米国外の中央銀行の会合の前後でも確認されていません。
まとめ
Knox and Vissing-Jorgensenのレビューは、FRBの金利サプライズが米国株を大きく動かすこと、1年程度の金利の20bpの上振れで株価が約1%下がることを確認したうえで、サプライズへの反応の一部は長期金利の経路で説明できる一方、発表直後の株価の動き全体では株式リスクプレミアムと期待配当の変化の方が大きいと整理した。発表前の上昇は米国のその後の期間に有意でなくなり、会合の周期は逆転した。国際比較では、日経平均のFOMC発表日リターンや米国外の中央銀行の会合前後の異常リターンは確認されなかった。日本株の会合翌朝を「長期金利の分」と「残り」に分けるのは、研究の分解を仮定で簡略化した教材上の手順で、残りの大きさと向きは市場が何を受け取ったかの仮説として読む。
脚注
- R1(FEDS 2026-023。FRB の掲載ページは2026年5月、PDF 本文の日付は2025年8月25日、29ページ)。ページは PDF の物理ページで、p.1 は FEDS の表紙、p.2 が論文の表紙と要旨(以下同じ)。初版は SSRN(DOI: 10.2139/ssrn.5233918。Crossref の登録は2025年、月は二次情報で2025年4月)。同題の論文が Annual Review of Financial Economics 17巻 pp.267–294(2025年11月6日、DOI: 10.1146/annurev-financial-090524-120826)に掲載されたことを Crossref で確認したが、掲載版の本文は確認していない。対象の3事実と範囲は p.3、定例会合の回数(mps は1994〜2023年の239回)は表1(p.28)・p.7。↩
- R1 p.5(2.3節・式8)。株価の変化を期待配当・無リスクのフォワード金利・フォワードの株式リスクプレミアムの変化に分解し、ある年のフォワード金利の上昇は、その年以降の配当が株価に占める比重に比例して株価を下げると説明している。↩
- R1 p.3(2.1節・式1)。乗数 b は、発表前後の狭い窓の市場リターンを予想外の金利変化に回帰した係数。予想外の利上げは金利の上昇、株式リスクプレミアムの上昇、期待配当の低下のいずれかを通じて株価を下げると予想される(b<0)。↩
- R1 p.3〜4(2.2節・式2〜7)。テイラー・ルールの記法は Bauer, Pflueger and Sunderam(2024a)による。純粋なショックは株価を確実に下げるが、反応関数のニュースや FRB の見通しのニュースでは必ずしもそうならないとされる。表1は4.1〜4.3節(p.9〜12)と合わせて編集部が整理した。↩
- R1 p.5(3.1節)。Bernanke and Kuttner(2005)は1989年7月〜2002年12月、1日の窓で b=−4.68(t=3.03)とし、20bp の上振れで約1%の下落に当たるとした。Gürkaynak, Sack and Swanson(2005a)は1990年1月〜2004年12月、10分前〜20分後の30分窓で b=−4.03(t=−3.63)。いずれも R1 による先行研究の紹介で、原論文は確認していない。↩
- R1 表1(p.28)・p.6・p.19(7節の結論1)。mps は Bauer and Swanson(2023a)の金利サプライズ(1〜4四半期先のユーロドル先物の変化の第1主成分で、4四半期先の金利に1対1で効くよう尺度を合わせたもの)。乗数 −4.83(t=−7.33)、239回。20bp の例は結論の「1年の金利への20bp のショックで1%の下落」による。−4.83×0.20=−0.966 は編集部の計算。↩
- R1 表1(p.28)・p.6(3.2節)。mps の金利成分 −3.57(t=−6.33)、株式リスクプレミアム・期待配当の成分 −1.26(t=−1.39)。Kuttner(1995〜2023年、231回)は乗数 −3.26(t=−2.51、5%水準で有意)、金利成分 −1.08(t=−2.07)、残り −2.18(t=−1.46)。本文の丸め(−4.8 のうち −3.6、−3.3 のうち −1.1)と「約4分の3」「約3分の1」は R1 の記述。表の値で割ると約74%・約33%(編集部の計算)。各成分の和は掛け算の分解のため合計と一致しない(p.6 脚注3)。↩
- R1 p.7(3.2節)。12〜30年のフォワード金利が9〜12年と同じだけ下がったと仮定した場合、Kuttner の金利成分は正で有意でなくなり、mps の −3.6 は −2.1 になる。実質金利で測れば、金利の役割はより大きくなりうるとも書かれている。↩
- R1 p.7〜8(3.3.1節・式9〜10)・表1(p.28)。信号対雑音比は発表窓と直前の30分のリターンの分散の比から求め、R2=sn÷(sn+1)で換算する。14時の発表は2013年3月〜2023年12月(86回)、14時15分は1995年2月〜2013年1月(127回)。↩
- R1 表2(p.28)・p.8(3.3.2節)。30分窓の S&P500 の対数リターンに各成分を回帰した係数で、長期金利 0.24(t=2.39)、株式リスクプレミアム・期待配当 0.76(t=7.51)、VIX の変化 −0.86(t=−11.94)。分散分解(表3)では、金利の成分の分散が55%、残りの成分が107%、共分散の項が −63%。↩
- R1 p.12(5節冒頭)。平均の絶対値は Kuttner(1995〜2023年)2bp、mps(1994〜2023年)4bp。会合の発表日から次の発表日までの平均の絶対変化は、誘導目標(レンジの中央値)13bp、1〜4四半期先のユーロドル先物20〜29bp(2023年3月以降は OIS で代替。p.12 脚注14)。↩
- R1 p.7〜8(3.3.1節・3.3.3節)。記者会見は2018年までは2回に1回、その後は毎回開かれている。講演や議事要旨の公表の信号対雑音比は、声明や会見よりかなり低いとする研究(Vissing-Jorgensen 2024)が紹介されている。↩
- R1 p.13(5.2節)。Lucca and Moench の原典(R2 p.3)でも、1994年以降の発表前24時間の上昇は平均49bp、年間の実現超過リターンの約80%とされている。1980〜1993年は約20bp、1960〜1979年は確認されなかった(R1 p.13)。↩
- R1 表4(p.28)・p.13〜14(5.3節)。1994年9月〜2011年3月は0.49%(t=4.61)、うち長期金利の成分0.08%(t=1.22)、残りの成分0.41%(t=3.03)、VIX −0.33(5%水準で有意)。2011年4月〜2023年12月は0.16%(t=1.50)、VIX −0.46(t=−2.67)。1994〜2003年の累積31%のうち金利成分は10%で、2003年以降は金利成分がほぼゼロ、2008年3月〜2009年12月の15回は1回平均約180bp(p.14)。↩
- R1 p.15〜16(5.4〜5.5節)。2016年8月〜2023年12月、FOMC を含む1〜2日の株式リスクプレミアムは周辺の日より約1bp(Martin の下限)〜2bp(Tetlock らの指標)高い。下限の性質を考えると2〜3倍の可能性もある。FOMC 当日、同じ満期日のオプションから測る累積の株式リスクプレミアムの、満期が最も長い区分での低下は約7bp(1996〜2023年)、満期の長いオプションがある部分標本では11bp・15bp。解釈は著者らのもの。↩
- R1 p.17(6節・6.2節)・表5(p.29)。偶数週は週0・2・4・6で、週0は FOMC の発表日の前日から3日後まで、週2は9〜13日後など(p.17 脚注21)。1994〜2016年の差は11.48bp(t=3.83)、うち金利成分6.08bp(t=1.92、10%水準)、残り5.88bp(t=1.19、有意でない)、1〜2年の株式リスクプレミアムの成分2.36bp(t=2.75)。本文の「約12bp」は Cieslak, Morse and Vissing-Jorgensen(2019)の値。2017〜2021年は −12.01bp(t=−1.84)で、R1 は「統計的に有意な逆のサイクル」と記述している(表の記号は10%水準)。↩
- R1 p.18(6.3節・表6)。前週(t−5〜t−1)の超過リターンが下位5分位の日。FF 金利先物や国債利回りの偶数週の低下は伴わず、R1 は Martin の株式リスクプレミアムが偶数週に下がったことを紹介している。↩
- R1 p.19(7節の結論2〜4)。↩
- R1 p.3(1節)。↩
- R1 p.6〜7(3.2節)・p.16(5.5節)・p.19(7節)。デュレーションは Bauer and Swanson の値(1.9・4.4・7.8・12.5年)を2・4・8・12年に丸めている(p.6)。↩
- R1 p.8〜9(3.3.3節)が紹介する Boguth, Fisher, Grégoire and Martineau(2024)。FOMC の発表日(と続く数日)のリターンは部分的に平均回帰し、取引による価格圧力と解釈されている。↩
- R1 p.10〜11(4.2〜4.3節)。前者は Jarocinski and Karadi(2020)、後者は Bauer and Swanson(2023b)。Cieslak and Schrimpf(2019)の分類(純粋60.8%・成長32.5%・リスクプレミアム6.7%)も p.10 で紹介されている。↩
- R3 p.1(要旨)。2017年4月版(初版2016年12月)。株価のリターンは標準的なマクロ指標の公表より FF 金利の誘導目標の変更をよく予測し、株安は緩和を予測するとしている。R1 p.11〜12 も、この流れの研究を反応関数のニュースの根拠として紹介している。↩
- R2 p.16(表6の説明)・p.41(表6)。FOMC 発表日の終値ベースのリターン(1994年9月〜2011年3月)。欧州5指数は29bp(スイス)〜52bp(フランス)。自国の中央銀行の発表前の結果は、本文で「非掲載の結果」として述べられている。参照したのは FRB ニューヨーク連銀のスタッフレポート(2011年9月、2013年8月改訂)で、Journal of Finance 掲載版(2015年)の本文は確認していない。↩
- R1 p.15(5.4節)による R4 の紹介。ユーロ圏・英国・日本など11か国の中央銀行の会合を調べ、1973〜1998年のドイツ連邦銀行や国内中心の企業でも同様だったとされる。FRB の会合の前後では米国外の株価も高かった。R4 の原論文の本文は確認していない(オープンアクセス版の掲載先が取得できなかった)。↩
- R1 p.1(FEDS の注記:スタッフのワーキングペーパーは議論のための予備的な資料)・p.19(7節冒頭:文献は急速に変化しており、暫定的に教訓を引き出すとしている)。↩
- R5。2026年の FOMC は1月・3月・4月・6月・7月・9月・10月・12月の8回。声明は「For release at 2:00 p.m. EDT」(2026年9月16日)。日本時間への換算(夏時間は午前3時、標準時は午前4時)は編集部の計算。↩
- R6。2026年は1月・3月・4月・6月・7月・9月・10月・12月の8回で、各回2日間の日程。同ページの注記で、展望レポートの基本的見解の公表時間は「会合終了後直ちに」とされている。↩
参考文献(2 026年10月確認)
- R1 Knox, B. and A. Vissing-Jorgensen (2026), “The Effect of the Federal Reserve on the Stock Market: Magnitudes, Channels and Shocks,” Finance and Economics Discussion Series 2026-023, Board of Governors of the Federal Reserve System. DOI: 10.17016/FEDS.2026.023. 参照した版:FEDS 版(2026年5月掲載、本文の日付2025年8月25日、29ページ。書誌年は FEDS 表紙の指定どおり2026年)。初出:SSRN 5233918(2025年)。査読:参照した版は未査読(WP)。同題の掲載版:Annual Review of Financial Economics 17: 267–294(2025年11月6日、DOI: 10.1146/annurev-financial-090524-120826。本文は未確認)。 federalreserve.gov (参照箇所:PDF p.1〜29(本文・表1〜5・図1〜5)。脚注1〜22・25・26の根拠。図1・表1は論文の数値と記述を編集部が抜き出して整理したもので、原図・原表の転載ではない。閲覧日:2026年10月)
- R2 Lucca, D. O. and E. Moench (2011), “The Pre-FOMC Announcement Drift,” Federal Reserve Bank of New York Staff Reports No. 512. 参照した版:2013年8月改訂版。査読:参照した版は未査読(スタッフレポート)。掲載誌版:Journal of Finance 70(1): 329–371(2015年。本文は未確認)。 newyorkfed.org (参照箇所:p.3(序論)・p.16(国際比較)・p.41(表6)。脚注13・24の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R3 Cieslak, A. and A. Vissing-Jorgensen (2017), “The Economics of the Fed Put,” Working Paper. 参照した版:2017年4月版(初版2016年12月、NBER の会議資料として公開)。査読:参照した版は未査読。 conference.nber.org (参照箇所:p.1(要旨)。脚注23の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R4 Brusa, F., P. Savor and M. Wilson (2020), “One Central Bank to Rule Them All,” Review of Finance 24(2): 263–304. DOI: 10.1093/rof/rfz015. 参照した版:書誌は Crossref で確認、内容は R1 p.15 の紹介による(本文は未確認)。査読:済。 doi.org (参照箇所:脚注25の根拠(R1 による要約)。閲覧日:2026年10月)
- R5 Board of Governors of the Federal Reserve System, “Meeting calendars, statements, and minutes (2021-2027)” および “Federal Reserve issues FOMC statement”(2026年9月16日)。 federalreserve.gov (参照箇所:2026年の会合日程と声明の公表時刻。脚注27の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R6 日本銀行「金融政策決定会合の運営」(2026年・2027年の開催日および各資料の公表日)。 boj.or.jp (参照箇所:会合の回数・日程・公表時間の注記。脚注28の根拠。閲覧日:2026年10月)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。