想定読者:製造業の経営企画・FP&A・営業企画で、出荷や売上の前提を作り、数字が落ちた理由を説明する立場の方
前提知識:前年同月比、%と%ポイントの違い(鉱工業指数の知識は不要です)

結論:自社に最も近い品目で局面を見て、出荷の伸びの差を自社要因の候補にする

以下のT社は学習用の架空事例(工業用プラスチック成形品メーカー、年商70億円)で、業界の数字は経済産業省が公表する実際の指数から編集部が計算した値です。T社の2026年6〜8月の出荷数量は、前年同期より1.4%増えました。同じ3か月に、T社に最も近い鉱工業指数の品目「プラスチック製機械器具部品」の出荷は7.2%増えています1。T社は業界より5.8ポイント低く、この差が自社要因の候補です。

鉱工業指数は、経済産業省が毎月公表する製造業などの生産・出荷・在庫の統計で、基準年(現行は2020年)の年平均を100とした指数です2。定義の全体像は用語集の鉱工業生産指数(IIP)に、景気判断での位置づけは景気動向指数に委ね、本記事は出荷を業界と比べる使い方に絞ります。経済指標がマクロ経済の状態を測る指標で、政府機関などの調査から作られるという一般的な考え方はCorporate Finance Institute(CFI)も説明していますが、鉱工業指数の内容はすべて経済産業省の資料に基づきます3。

手順は、品目とウエイトを選ぶ(図表1)、在庫循環図で局面を判定する(図表2)、出荷の伸びの差で業界要因と自社要因の候補に分ける(図表3)、予測指数の過去の誤差を確かめて先行き2か月に使う(図表4)の順です。業界が在庫調整局面で出荷が落ちている時期は、自社の落ち込みのうち業界と同じ幅を業界要因とみなします。業界が回復しているのに自社が追随しないときの差は、取引先別の出荷や価格改定など自社側の事実で確かめる対象です。指標が自社売上に先行するかの検証は事業計画に使う経済指標の選び方に委ね、ここでは同じ時点の比較に絞ります。

自社製品に当てる系列を選ぶ:業種・品目とウエイト

出荷指数は鉱工業製品に対する需要動向を、在庫指数は生産者の段階に残っている在庫の動きを、在庫率指数は在庫と出荷の比率の推移から需給状況を示します4。出荷・在庫指数は品目ごとの数量を基準年=100として指数化し、基準年のウエイト(出荷は出荷額、在庫は在庫額)で加重平均して業種などの指数を作ります5。

T社の主力は、機械器具に組み込まれるプラスチック成形部品です。経済産業省の業種別・品目別ファイルで探すと、業種「プラスチック製品工業」のなかの品目グループ「工業用プラスチック製品」(品目は「プラスチック製機械器具部品」の1つ)が最も近く、ウエイトは図表1のとおりです6。

図表1:業種「プラスチック製品工業」の構成とウエイト(単位:ウエイトは鉱工業全体を10,000とした値、構成比は%。2020年基準)
業種・品目グループ出荷ウエイト在庫ウエイト業種内の構成比(出荷)業種内の構成比(在庫)
プラスチック製品工業(業種全体)413.8432.8100.0%100.0%
プラスチック製管・フィルム・シート・建材類185.4271.544.8%62.7%
工業用プラスチック製品(T社の主力。品目はプラスチック製機械器具部品)142.140.334.3%9.3%
発泡プラスチック製品20.829.15.0%6.7%
プラスチック製日用雑貨・容器類(品目に中空成形容器を含む)65.591.915.8%21.2%
基準年:2020年。構成比は品目グループのウエイト÷業種全体のウエイトで、四捨五入のため合計は100.0%にならない。出所:経済産業省「鉱工業指数」業種別・品目別の月次原指数ファイル(2026年9月30日更新)を基に大手町プレップ作成。加工内容:構成比は編集部の計算。(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)

T社に近い品目は、業種の出荷ウエイトの34.3%を占める一方、在庫ウエイトでは9.3%にとどまります。業種の在庫指数は管・フィルム・シート・建材類が62.7%を占め、T社の製品の在庫をあまり映しません。実際に2025年8月の在庫の前年同月比は、業種が115.7÷107.8−1=+7.3%、T社に近い品目が157.1÷154.8−1=+1.5%と開きました7。業種の系列をそのまま当てず、品目まで下ります。

比べる前に2点を確認します。第1に、指数は数量の指数なので、自社の出荷も売上高ではなく数量(または価格の影響を除いた値)にそろえます。第2に、在庫率指数は在庫指数÷出荷指数ではありません。経済産業省の定義は、品目ごとの在庫率(在庫量÷出荷量)を基準年=100として指数化し、在庫額ウエイトで加重平均したものです8。2026年8月(鉱工業、季節調整済、速報)は、在庫指数97.6を出荷指数100.8で割ると96.8ですが、公表の在庫率指数は106.3でした9。総合の指数では、出荷が上昇し在庫が低下しても在庫率が上昇することがあると、経済産業省も説明しています10。

在庫循環図:出荷と在庫の前年比で業界の局面を判定する

経済産業省は、生産または出荷と在庫の動きから経済状況をみる手法を在庫循環と呼びます。景気が上向くと企業は需要増を見込んで在庫を積み増し(在庫積み増し局面)、景気が山を迎えると需要が見込みを下回って在庫がたまり始め(在庫積み上がり局面)、悪化すると減産して在庫を減らし(在庫調整局面)、回復すると生産を増やしても在庫が減る(意図せざる在庫減局面)という順です。在庫循環図は、原指数の生産または出荷と在庫の前年同月比を、横軸・縦軸にとったグラフです11。経済産業省の図は、原点を通る2本の対角線(点線)の上・左・下・右に、この4つの局面名を置いています12。本記事も対角線で分けた4領域で読みます。

在庫循環図の座標と局面(編集部の整理)
横軸 x=直近3か月の出荷(原指数)の合計÷前年同期の合計−1(%)、縦軸 y=月末の在庫(原指数)÷前年同月の在庫−1(%)
y>|x|:在庫積み上がり局面、x>|y|:在庫積み増し局面、y<−|x|:意図せざる在庫減局面、x<−|y|:在庫調整局面

前年同月比を使うのは、季節性を避けるためです。原指数の前月比は季節要因で大きく動くため(品目の出荷は2026年7月の118.9から8月の83.0へ−30.2%)、前月比には季節調整済指数(X-12-ARIMAによる)を使い、両者は混ぜません13。自社の月次データの季節性の扱いは用語集の季節性のモデル化に委ねます。出荷を直近3か月でみるのは、単月の振れを抑えるためで、経済産業省の速報時の図も最新の四半期の生産に直近3か月の平均を使っています14。

2026年8月の点は次のとおりです。出荷は、2026年6〜8月の114.7+118.9+83.0=316.6を、前年同期の103.5+111.2+80.6=295.3で割って1を引き、x=+7.2%です。在庫は、8月末の163.0を前年8月末の157.1で割って1を引き、y=+3.8%です。x>|y|なので在庫積み増し局面です(8月は速報値)。他の月も同じ式で、図表2に24点の値を示します。

図表2:在庫循環図(品目「プラスチック製機械器具部品」、24か月) −8 −4 0 4 8 8 4 0 −4 −8 横軸:出荷(直近3か月)の前年同期比(%) 縦軸:在庫(月末)の前年同月比(%) 在庫積み上がり局面 在庫積み増し局面 在庫調整局面 意図せざる在庫減局面 24年9月 25年3月 26年3月 26年4月 26年8月(速報) ● 24年9月〜25年8月 月出荷在庫 24年9月−5.5+4.0 24年10月−6.7+3.8 24年11月−6.3+4.9 24年12月−5.7+4.7 25年1月−1.6+0.4 25年2月+4.6+0.9 25年3月+7.6+0.6 25年4月+3.3+0.6 25年5月−1.4+0.4 25年6月−2.2+0.1 25年7月−3.7+2.3 25年8月−4.2+1.5 ■ 25年9月〜26年8月 月出荷在庫 25年9月−4.0+2.7 25年10月−2.50.0 25年11月−3.5−0.2 25年12月−4.1−0.2 26年1月−6.5+1.3 26年2月−4.1−0.3 26年3月−1.6+1.8 26年4月+1.0+6.9 26年5月+1.9+3.1 26年6月+3.8+4.1 26年7月+5.9+1.9 26年8月+7.2+3.8 点線は局面の境目(対角線)、実線は月の順 数値の単位は%。26年8月は速報値。 出荷は直近3か月、在庫は月末の前年比
単位:%。対象期間:2024年9月〜2026年8月(月次24点。2026年8月は速報値)。出所:経済産業省「鉱工業指数」品目別・月次原指数(品目「プラスチック製機械器具部品」、2020年基準、2026年9月30日更新)を基に大手町プレップ作成。加工内容:出荷は直近3か月の合計の前年同期比、在庫は月末の前年同月比。対角線による領域分けは編集部の整理。(スマートフォンでは図を横にスクロールできます)

図表2の24点は、在庫調整局面が15点(2024年9月〜2025年1月の5か月と2025年5月〜2026年2月の10か月)、在庫積み増し局面が5点(2025年2〜4月と2026年7〜8月)、在庫積み上がり局面が4点(2026年3〜6月)で、意図せざる在庫減局面は0点です。同じ領域に3か月以上続けて入ったら局面と判定すると(3か月は編集部の目安)、2025年5月からの在庫調整局面と2026年3〜6月の在庫積み上がり局面が該当し、7〜8月の在庫積み増し局面は2か月のため移りかけです。単月の前年同月比では直近12か月で局面が5回入れ替わりますが、3か月合計なら2回です(編集部の計算)。

同じ方法を業種全体の系列で描くと、2025年4月から2026年3月までの12か月は在庫積み上がり局面が続きました(編集部の計算)。図表1の在庫ウエイトの違いが一因かもしれませんが、未確認の仮説です。読み方には3つの限界があります。第1に、前年同月比は前年の動きの影響を受け、前月の前年同月比と当月を比べるには前年の変動の分析が必要です15。第2に、実データは理論の順に一巡するとは限りません(図表2は2025年2月に在庫調整局面から在庫積み増し局面へ飛び、2026年は在庫積み上がり局面から在庫積み増し局面へ理論と逆の順に動いています)。第3に、経済産業省は、企業が一定の在庫を保持する行動変容が生じているという見方も考えられると述べており16、在庫の水準の変化と循環は分けて読みます。

業界要因と自社要因に分ける

出荷の分解(編集部の整理。%ポイントの足し算による分解)
差(ポイント)=T社の出荷の前年同期比(%)−業界(品目)の出荷の前年同期比(%)
T社の前年同期比=業界要因(業界の前年同期比)+自社要因の候補(差)。T社は数量で、期間は直近3か月にそろえる

図表3は5つの期間の比較で、品目の値は図表2のxと同じ方法、T社の値は学習用の仮定です。

図表3:T社(架空)と品目の出荷の前年同期比、業界要因と自社要因の候補(単位:%、差はポイント)
期間(直近3か月)T社の出荷業界:品目の出荷差(自社要因の候補)読み方
2025年7〜9月−4.4−4.0−0.4落ち込みの約9割は業界要因
2025年10〜12月−5.2−4.1−1.1業界要因が中心。差が出始める
2026年1〜3月−4.3−1.6−2.7業界は持ち直し、T社は遅れる
2026年4〜6月+0.2+3.8−3.6業界の回復に追随せず(点検の目安に該当)
2026年6〜8月(8月は速報)+1.4+7.2−5.8差が最大。取引先別などで確認
対象期間:2025年7月〜2026年8月。差は表示値どうしの差で、品目構成などの違いも含む。最後の期間は8月が速報値で、4〜6月と6月が重なる。出所:品目は経済産業省「鉱工業指数」品目別の月次原指数を基に大手町プレップ作成。T社は学習用の仮定。(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)

2025年7〜9月は、T社の−4.4%に対して業界が−4.0%で、落ち込みの約9割(91%)を業界要因で説明できます。この割合は10〜12月が79%、2026年1〜3月が37%と下がり、4〜6月以降はT社が業界の回復に追随していません。社内ルールの例として「差が−2.0ポイント以下の期が2期続いたら点検する」と決めておくと、2026年1〜3月と4〜6月が該当し、4〜6月の時点で点検を始めます(ルールは編集部の例)。

差は純粋なシェアの変化ではありません。取引先の業種の偏り、納期のずれ、品目構成の違いも含みます。品目構成は、自社の売上構成をウエイトにして品目別の指数を加重平均した自社版の指数で揃えられます17。T社の前年同期の出荷額構成が部品80%・中空成形容器20%だとすると、2026年6〜8月の自社版の指数の前年同期比は0.8×7.2%+0.2×3.0%=6.4%です(容器の出荷は357.9÷347.5−1=+3.0%)。T社との差は1.4−6.4=−5.0ポイントで、品目だけで比べた−5.8ポイントのうち0.8ポイントが品目構成の違いです。残る−5.0ポイントを、取引先別・製品別の出荷と価格改定の実績で確かめます。受注残や稼働率への波及は景気敏感業種の受注ショックを8四半期で試算するに委ねます。

製造工業生産予測指数:先行き2か月は過去の誤差を確かめて使う

製造工業生産予測指数は、主要企業(約800企業)に前月の生産実績と当月・翌月の生産見込を毎月尋ねた調査の集計で、鉱工業指数の速報と同じ日に公表されます18。経済産業省が予測するのではなく企業の生産計画から算出された見込みで、計画は実際の生産より多めに出る傾向があります19。業種別の公表系列にプラスチック製品工業はなく20、T社は製造工業全体の動きを環境の確認に使います。

検証表は、各月の「当月見込の前月比」(予測)と、翌月の調査で報告された「前月実績の前月比」(実績)を並べ、予測−実績を誤差(ポイント)とします。プラスは予測が実績より高かったことを示します。符号を残した平均が平均誤差(偏り)、絶対値の平均が平均絶対誤差(ずれの大きさ)で、両者の違いは用語集の予測精度に委ねます(用語集は実績−見込を誤差とするため符号の向きが逆です)。翌月見込(2か月先)の誤差は同じ形の表を別に作って確かめます。

図表4:製造工業生産予測指数の予測検証表(季節調整済前月比、単位:%、誤差はポイント)
対象月予測(当月見込の前月比)実績(翌月調査の前月実績の前月比)誤差(予測−実績)
2025年9月+2.8+1.8+1.0
2025年10月+2.00.0+2.0
2025年11月+1.1−1.6+2.7
2025年12月+0.3+0.8−0.5
2026年1月+9.3+6.5+2.8
2026年2月−1.5−2.8+1.3
2026年3月+3.8+2.4+1.4
2026年4月+2.1−0.5+2.6
2026年5月+5.1+3.3+1.8
2026年6月+3.7+0.4+3.3
2026年7月+1.2−0.2+1.4
2026年8月+6.4−3.0+9.4
12か月の平均(誤差は平均誤差=偏り)+3.0+0.6+2.4
平均絶対誤差--2.5
誤差がプラスの月数--11/12
対象期間:2025年9月〜2026年8月。実績は予測調査の対象品目の実績で、鉱工業生産指数そのものではない。出所:経済産業省「製造工業生産予測指数 時系列表(総合)」(2026年9月調査まで)を基に大手町プレップ作成。加工内容:誤差と平均は編集部の計算(表示値どうしの差)。(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)

12か月のうち11か月で予測が実績を上回り、平均誤差は+2.4ポイント、平均絶対誤差は2.5ポイントです。最大は2026年8月で、予測+6.4%に対し実績は−3.0%と、誤差は9.4ポイントでした。経済産業省が公表する実現率(前月調査の当月見込に対する前月実績の増減率)も、2025年1月〜2026年9月の21回の調査のうち20回がマイナスです21。

経済産業省は、傾向的な誤りを除いた補正値も公表しています。2026年9月調査では、9月の予測+3.2%に対して補正値は+1.6%(90%の確率で収まる区間は0.4〜2.8%)です。ただし8月は、補正値+3.1%(区間1.5〜4.7%)に対し、鉱工業生産の前月比は−1.7%で区間の外でした。補正値の加工方法は予告なく修正されることがあり、時系列での利用は保証されないとも注記されています22。

自社で割り引くなら、9月は予測3.2%から平均誤差2.4ポイントを引いた+0.8%が一例で、補正値の+1.6%と並べて見ます。前半6か月の平均誤差(+1.6ポイント)を後半6か月に当てはめると、後半の平均絶対誤差は3.3から1.9ポイントに縮みました(編集部の簡易検証)。12か月という短い期間と8月の外れ値の影響を受ける例なので、引く幅は毎月見直します。予測指数はT社の出荷の予測ではないため、図表2の品目の動きや自社の受注実績と合わせて使います。誤差管理の一般論は着地見込みと予測精度の管理に委ねます。

季節調整・改訂・基準改定・稼働率指数の使い分け

  • 速報・確報・年間補正。速報は翌月末、確報は翌々月の中旬に公表され(図表2の最新点の8月分は確報が10月15日の予定)23、数字は改訂されます。2026年7月の生産(季節調整済)は、前月比が速報の+0.1%から確報で−0.2%に変わりました24。年1回の年間補正では前年1月以降の指数を見直し、2025年6月の生産の前月比は+2.1%から−0.3%になりました25。最新の点は暫定として扱い、確報や年間補正のあとに判定を見直します。
  • 基準改定。5年ごとの基準改定でウエイト・品目・基準年が更新され、直近は2023年4月分の確報で基準年が2015年から2020年に切り替わりました26。基準年が違う指数は同じ100でも同じ生産量ではなく、接続係数で水準をそろえた接続指数は品目の入れ替えを反映しないため、長期の比較は注意が必要です27。本記事の24か月は2020年基準の期間(2018年1月以降)内です。
  • 稼働率指数。生産量と生産能力の比から求めた指数で、実際の稼働率(%)は公表されていません28。業種別の月次ファイル(2026年7月分まで)にプラスチック製品工業の行はないため29、T社の業界の稼働は製造工業全体などで補う程度にとどめます。固定費の吸収との関係は用語集の稼働率に委ねます。

実務チェックリスト

  • 主力製品に最も近い品目を選び、業種内の出荷・在庫ウエイトを確認したか
  • 自社の出荷は金額でなく数量で、同じ3か月の前年同期比にそろえたか
  • 在庫循環図は原指数の前年比で作り、季節調整済の前月比と混ぜていないか
  • 局面は3か月以上の推移で判定し、速報の点は暫定と注記したか
  • 差を自社要因と断定せず、取引先別の出荷・価格改定・品目構成で確かめたか
  • 予測検証表を12か月以上つくり、符号を残した平均誤差と平均絶対誤差の両方を見たか
  • 基準年、接続指数の使用、速報か確報か、年間補正の時期をデータの注記に残したか

よくある質問(FAQ)

在庫循環図の横軸は、生産と出荷のどちらにしますか。

経済産業省の参考図表集の図は横軸に生産をとり、用語解説は「生産又は出荷」としています。本記事は自社の出荷数量と比べるため、需要側の出荷を使いました。生産を使うなら自社の生産数量と比べ、軸の定義を図に書き添えます。

自社の品目に在庫の系列がないときはどうしますか。

採用品目は生産・出荷が408、在庫が291、在庫率が283で、在庫のほうが少なくなります30。無ければ、品目グループや業種の系列を使ってウエイトの違いを注記するか、出荷だけで需要の動きを見ます。

まとめ

自社に最も近い品目を選び、出荷と在庫の前年比で局面を3か月以上の推移から判定し、出荷の伸びの差を自社要因の候補として切り出します。差は品目構成や取引先の違いを含むため、自社側の事実で確かめます。予測指数は偏りを検証表で確かめたうえで補正値や差し引く幅と並べて使い、速報・確報・年間補正・基準改定による改訂も記録します。

脚注

  1. 経済産業省「鉱工業指数 統計表一覧(データダウンロード)」の品目別・月次・原指数ファイル(シート「出荷」、品目番号1112002010「プラスチック製機械器具部品」、2020年=100、2026年9月30日8時50分更新で、2026年8月は速報値)。2026年6〜8月の原指数の合計を前年同期と比べた値で、計算は本文の在庫循環図の節で示す(編集部の計算)(参考文献 R1)。↩
  2. 経済産業省「統計の概要」の「統計の概要」に生産・出荷・在庫・在庫率・生産能力・稼働率の各系列があること、「統計の利活用事例」に景気動向指数や月例経済報告などで使われること、「統計の沿革」に現在が2020年基準であること。同省「Q&A」の「鉱工業指数とは?」に、基準年の年平均を100とした比率で示すとの記載(参考文献 R2、R3)。↩
  3. Corporate Finance Institute「Economic Indicators」の「What are Economic Indicators?」。経済指標をマクロ経済の状態を評価・測定するための指標とし、政府機関などが調査(census または survey)として集めたデータから作られると説明している。一般的な概念の参考であり、日本の鉱工業指数への言及はない(参考文献 R4)。↩
  4. 経済産業省「統計の概要」の「統計の概要」。出荷指数は鉱工業製品に対する需要動向を観察するもの、在庫指数は出荷されずに生産者の段階に残っている在庫の動きを示すもの、在庫率指数は在庫とその出荷の比率の推移から需給状況を示すものと説明(参考文献 R2)。↩
  5. 経済産業省「統計の概要」の「統計の作成方法」。品目別の指数を基準年のウェイトで加重平均するラスパイレス算式で、ウェイトは生産指数が付加価値額、出荷指数が出荷額、在庫指数が在庫額。同省「利用上の注意、用語の解説」の「業種分類」に、日本標準産業分類に準じつつ一部を組み替えた独自の分類との記載(参考文献 R2、R5)。↩
  6. 経済産業省「統計表一覧」の業種別・月次・原指数ファイル(b2020_gom1j.xlsx、シート「出荷」「在庫」のウエイト列)と、品目別・月次・原指数ファイル(b2020_hom1j.xlsx、品目番号1112002010 ほか)。構成比は編集部の計算(参考文献 R6、R1)。↩
  7. 同上のファイルのシート「在庫」の原指数。業種は2024年8月107.8、2025年8月115.7、品目は2024年8月154.8、2025年8月157.1。割り算は編集部の計算(参考文献 R6、R1)。↩
  8. 経済産業省「統計の概要」の「在庫率指数」。品目毎の一月当たりの在庫率(在庫量/出荷量)を基準年=100として指数化し、各品目別指数を基準年の在庫額ウェイトで加重平均する。採用は283品目で、在庫指数から季節変動が激しい品目を除いている(参考文献 R2)。↩
  9. 経済産業省「生産・出荷・在庫・在庫率指数速報(2026年8月)」p.1の季節調整済指数(出荷100.8、在庫97.6、在庫率106.3)。原指数は出荷89.7、在庫98.2、在庫率115.7で、在庫÷出荷×100は109.5。割り算は編集部の計算(参考文献 R7)。↩
  10. 経済産業省「指数の作成と利用(第9版)」第5章「5.6 在庫・在庫率・在庫投資の整合性」p.26〜27。総合指数では出荷が上昇し在庫が低下しても在庫率が上昇することがあり(個別の指数では生じない)、生産・出荷・在庫指数は二つから他の一つを推測できる仕組みになっていないと説明(参考文献 R8)。↩
  11. 経済産業省「利用上の注意、用語の解説」の「在庫循環」「在庫循環図」。局面の順序は在庫積み増し→在庫積み上がり→在庫調整→意図せざる在庫減。在庫循環図は「原指数の生産又は出荷、在庫の前年同月比を縦軸と横軸に取りグラフ化したもの」(参考文献 R5)。↩
  12. 経済産業省「鉱工業指数参考図表集(2026年8月速報)」のPDF15ページ目(印刷ページ14)「鉱工業の在庫循環図」。横軸は生産前年同期比、縦軸は在庫前年同期末比(いずれも%)で、2本の対角線の点線と、上に在庫積み上がり局面、左に在庫調整局面、下に意図せざる在庫減局面、右に在庫積み増し局面の名称がある(参考文献 R9)。対角線で領域を分けるという読み方は、この図に基づく編集部の整理。↩
  13. 経済産業省「年間補正について」(2026年3月19日)の注に、前月(期)比は季節調整済指数(X-12-ARIMA)、前年(度、同期、同月)比は原指数によるとある。同省「利用上の注意、用語の解説」の「原指数」「季節調整済指数」も同旨。品目の出荷の原指数は品目別・月次・原指数ファイル(2026年7月118.9、8月83.0)。計算は編集部(参考文献 R10、R5、R1)。↩
  14. 同図の注に、「2026Ⅲ速」の生産は6月、7月、8月の平均値、在庫は8月末の値を使用とある(参考文献 R9)。↩
  15. 経済産業省「指数の作成と利用(第9版)」第5章「5.1 前年同月比の見方」p.1〜2。前月の前年同月比と当月の前年同月比を比べて上昇しているかを判断するには、前年の変動が十分に分析されていなければならないと説明(参考文献 R8)。↩
  16. 同第5章 p.28。コロナ禍の半導体不足などの供給制約を経て、ジャストインタイムで極力在庫を持たないのではなく、ジャストインケースとして一定の在庫を保持する行動変容が生じているという見方も考えられる、との記載(参考文献 R8)。↩
  17. 経済産業省「利用上の注意、用語の解説」の「加重平均」。個別品目指数にウェイトを乗じた総和をウェイトの総和で除して総合化する方法で、品目別指数の加重平均で独自の指数を作れると説明し、小型乗用車と普通乗用車から乗用車指数を作る例を挙げている。ウエイトを自社の売上構成にする使い方は編集部の応用(参考文献 R5)。↩
  18. 経済産業省「製造工業生産予測調査 調査の概要」の「調査の対象」「抽出方法」「調査事項」「調査の時期」。調査対象数は約800企業で、品目ごとに生産量等の上位から累計して概ね80%を把握できる事業所の属する企業を選ぶ有意抽出。調査事項は前月の生産数量と当月・翌月の生産見込数量で、調査票の提出締切日は毎月10日。同省「統計の概要」の「統計の目的」に、速報公表時に同時に公表され先行き2か月の動向を把握できるとある(参考文献 R11、R2)。↩
  19. 経済産業省「製造工業生産予測調査 Q&A」。調査結果は特定の者が予測を行ったものではなく企業の生産計画から算出された先行き見込みで、企業の生産計画は実際の生産よりも多めにでる傾向があるため、傾向的な部分を修正した補正値を別途作成し公表していると説明(参考文献 R12)。↩
  20. 経済産業省「統計表一覧」の製造工業生産予測指数 時系列表(b2020_ygzosm1je.xlsx、2026年9月調査まで)のシート名。業種別のシートは鉄鋼・非鉄金属工業、金属製品工業、汎用・生産用・業務用機械工業、電子部品・デバイス工業、電気・情報通信機械工業、輸送機械工業、化学工業、石油製品工業、パルプ・紙・紙加工品工業、その他などで、プラスチック製品工業のシートはない(参考文献 R13)。↩
  21. 経済産業省「統計の概要」の「実現率、予測修正率」。実現率は今月予測調査における前月実績÷前月予測調査における当月見込−1(季節調整済指数)。値は同時系列表のシート「製造工業」の実現率列で、2025年1月〜2026年9月調査の21回のうちプラスは2026年1月調査の+0.5%のみ。図表4の予測・実績は同シートの「当月見込」「前月実績」の前月比の列(参考文献 R2、R13)。↩
  22. 経済産業省経済解析室「当月の鉱工業生産指数の先行きを試算した補正値」(2026年9月30日)p.1〜2。9月前月比の補正値1.6%(0.4〜2.8%)と予測調査結果3.2%、(参考1)2026年8月の鉱工業生産指数−1.7%と補正値3.1%(1.5〜4.7%)。補正値の下段は90%の確率で収まる区間推定値で、加工方法は過去の予測誤差から傾向的な誤りを試算して除去するもの、「時系列での利用は保証いたしません」との注記がある(参考文献 R14)。↩
  23. 経済産業省「鉱工業指数 公表予定」(e-stat_iip.xml、2025年12月26日更新)。2025年11月分確報から2027年2月分速報までの予定で、速報は対象月の翌月末、確報は翌々月の中旬。2026年8月分は速報2026年9月30日8時50分、確報2026年10月15日13時30分(参考文献 R15)。↩
  24. 経済産業省「2026年7月の鉱工業(生産・出荷・在庫)指数の動向(速報)」p.1では生産(季節調整済)が前月比+0.1%(4か月連続の上昇)、同(確報)p.1では−0.2%(4か月ぶりの低下)で、指数は速報の104.7が確報で104.4。確報と速報を比べると生産は下方修正とある(参考文献 R16、R17)。↩
  25. 経済産業省「年間補正について」(2026年3月19日)。年に1回、前年の季節調整済指数を再計算し、季節指数の計算の際に原指数の見直しも行う。2025年の年間補正前後の比較表で、2025年6月の生産の前月比は補正前+2.1%、補正後−0.3%。同省「Q&A」の「年間補正とは?」に、前年の1月に遡って修正した指数値を公表するとある(参考文献 R10、R3)。↩
  26. 経済産業省「最近の見直し」(最終更新2023年6月20日)に、2023年4月分確報より基準年次を2015年から2020年へ切り替えたとある。5年ごとの基準改定は同省「利用上の注意、用語の解説」の「基準改定」と「Q&A」の「何故、基準改定を行うのか?」(参考文献 R18、R5、R3)。↩
  27. 経済産業省「利用上の注意、用語の解説」の「基準年」「接続指数」。接続指数は接続係数を乗じて水準を調整したもので、品目の入れ替え等は考慮されておらず長期の比較は注意が必要、前月比や前年比も接続処理による誤差が生じるとの記載。2020年基準の指数値が2018年1月から公表されていることは同省「Q&A」の「過去データはどこまで遡ることができますか?」(参考文献 R5、R3)。↩
  28. 経済産業省「Q&A」の「実稼働率は公表しているか?」に、公表していないとの回答。同「統計の概要」の「稼働率指数」に、生産量と生産能力の比から求めた指数で、採用品目は139品目とある(参考文献 R3、R2)。↩
  29. 経済産業省「統計表一覧」の製造工業生産能力・稼働率指数(業種別・月次・原指数、b2020_ngom1j.xlsx、2026年9月14日更新、2026年7月分まで)のシート「稼働率」の行。製造工業、鉄鋼・非鉄金属工業、金属製品工業、生産用機械工業、汎用・業務用機械工業、電子部品・デバイス工業、電気・情報通信機械工業、輸送機械工業、窯業・土石製品工業、化学工業、石油・石炭製品工業、パルプ・紙・紙加工品工業、その他工業などで、プラスチック製品工業の行はない(参考文献 R19)。↩
  30. 経済産業省「統計の概要」の「統計の作成方法」。生産・出荷指数の採用系列数は408品目、在庫指数は291品目(受注製品で製品在庫のない品目などがあるため少ない)、在庫率指数は283品目(参考文献 R2)。↩

参考文献(2026年10月確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。T社は理解のための学習用の架空事例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。業界の数値は経済産業省の公表値から編集部が計算したもので、将来の動向を保証するものではありません。