想定読者:小売・消費財・外食など、個人の消費に売上が左右される会社の経営企画・FP&A(財務計画・分析)・営業企画の方で、消費者心理の指標が下がったと報じられたときに、自社の売上見通しを変えるべきか迷う方
前提知識:相関係数(2つの系列の連動の強さを−1〜+1で表す数値)と前年同月比の意味。ExcelのCORREL関数が使えると進めやすくなります

結論:品目ごとに先行性を確かめ、効く品目の最初の数か月だけを切替条件に使う

消費者態度指数(内閣府が毎月公表する、家計の今後半年間の見通しを点数にした指数)が下がったと報じられた日に、自社の売上見通しも下げるべきでしょうか。自社の売上で確かめるまで決められません。本記事は、家電専門店チェーンR社(学習用の架空事例)を例に、経路の仮説、指標の比較、時差相関(指数を数か月ずらして売上と相関を取る方法)による先行性(指数が売上に何か月先行するか)の測定、崩れる場面の確認、切替条件への落とし込みの順に確かめます。

R社の結果は、大型家電では指数が3か月先行する関係が見られ(相関係数0.60)、消耗品・小物では見られない(絶対値で最大0.10)、というものです。ただし大型家電も、後半の18か月だけでは0.31に下がります。結論は、確かめられた品目に限り、確かめられた最初の3か月間だけ、弱気ケースへの切替条件として使う、です。海外の解説(米国の指数)でも、回答者が先行きを判断する情報を十分に持たない可能性と、指数の値が一般に予測の用途に役立たないことが、欠点に挙げられています1。

心理から売上までの経路を、品目別の仮説として先に書く

消費者態度指数は、内閣府の消費動向調査から作ります。毎月15日時点で全国8,400世帯(二人以上の世帯5,376、単身世帯3,024)に、暮らし向き・収入の増え方・雇用環境・耐久消費財の買い時判断の4項目について、今後半年間の見通しを5段階で尋ね2、回答区分に+1、+0.75、+0.5、+0.25、0の点数を与えて、回答の構成比(%)との積を合計したものが項目ごとの消費者意識指標、4項目の単純平均が指数です3。全員が「変わらない」と答えれば50になります。

たとえば2026年8月(二人以上の世帯、原数値=季節調整をしていない数値)の耐久消費財の買い時判断は、構成比が良くなる0.2%・やや良くなる2.8%・変わらない25.3%・やや悪くなる50.1%・悪くなる21.6%で、0.2×1+2.8×0.75+25.3×0.5+50.1×0.25+21.6×0=27.475、公表値は27.5です4。直近の水準は50を大きく下回り、2024年1月〜2026年8月の季節調整値(季節の影響を除いた値)は31.5〜39.7の範囲です5。50との上下より、前年同月差などの変化で読みます(編集部の方針)。

内閣府は消費者の意識を「今後の消費動向を予測するもの」として調査していますが6、消費支出の金額は調べていません7。心理から支出への関係は調査の外にあり、自社の売上で確かめるしかありません。消費者態度指数(二人以上の世帯・季節調整値)は景気動向指数の先行系列にも入っていますが8、それは景気全体に対する位置で、自社の売上に先行するかは別の問題です。景気動向指数は用語集の景気動向指数に、一般的な検証手順は事業計画に使う経済指標の選び方に委ねます。

経路は図表1のとおりです。耐久消費財の買い時判断は、自動車・家具類・テレビ・冷蔵庫などが対象で9、R社の大型家電に近い項目です。購入を先延ばしできる耐久財は心理の影響を受けやすく、毎日必要な日用品は受けにくい、というのが本記事の仮説(編集部)で、時間差は2〜4か月と置きます。どちらもデータから導いた結果ではありません。

図表1:心理から自社売上までの経路と、品目による反応の違い(仮説) 家計の心理(内閣府の消費動向調査) 家計の支出(品目別) R社の売上(品目別) 消費者態度指数の4項目 (今後半年間の見通し) 暮らし向き 収入の増え方 雇用環境 ◆耐久消費財の買い時判断 ◆:R社の大型家電に近い項目 耐久財(家電・家具など) 心理の影響:大(仮説) 外食・旅行 心理の影響:中(仮説) 日用品(消耗品など) 心理の影響:小(仮説) 大型家電 時間差の想定:2〜4か月 (R社は扱わない) 消耗品・小物 時間差:想定せず 共通の要因(所得・雇用・物価・制度など)が、心理と支出の両方を同時に動かすことがある → 心理と売上が連動していても、心理が売上を動かしたとは限らない(相関は因果ではない)
単位:なし(概念図)。対象期間:なし(検証前の仮説)。「心理の影響」の大・中・小と矢印の太さは編集部の仮説です。出所:学習用の仮定に基づき大手町プレップ作成。(スマートフォンでは図を横にスクロールできます)

5つの指標を、作成主体・速報性・自社との対応で比べる

心理や判断を尋ねる調査系と、売れた金額や支出を集計する実績系を並べます(2026年10月時点)。名称が似た統計に注意してください。消費活動指数は日本銀行、消費動向指数(CTI)と家計調査は総務省統計局が10、消費者態度指数を作る消費動向調査と景気ウォッチャー調査は内閣府が作成する、別々の統計です。景気ウォッチャー調査の結果は、回答の構成比に点数を掛けて求めるDI(ディフュージョン・インデックス)で示されます。

図表2:消費関連の5つの指標の比較(2026年10月時点)
指標(種類)作成主体対象・内容公表の例(2026年)自社との対応注意点
消費者態度指数11(調査系)内閣府8,400世帯に毎月15日時点の今後半年間の見通しを尋ねる調査月の末日前後〜翌月初め(8月分は9月1日)耐久財(大型家電)と比べる支出の金額は調べていない。季節調整値は年1回遡及改訂。調査方法の変更あり
景気ウォッチャー調査12(調査系)内閣府景気の動きを観察できる立場の2,050人。現状は3か月前との比較、先行きは2〜3か月先8月調査は9月8日に公表家計動向関連(小売・住宅など)のDIと比べる有意抽出のため標本誤差は計算できない
消費活動指数13(実績系)日本銀行財・サービスの販売・供給統計から作る。耐久財・非耐久財・サービスの内訳がある原則、毎月第5営業日(7月分は9月7日)耐久財の内訳を大型家電と比べる2026年4月に推計方法を見直した
家計調査14(実績系)総務省統計局全国約9千世帯が家計簿をつけ、収入・支出などを毎月調べる調査月の翌々月上旬(7月分は9月4日)品目別の支出(家電など)と比べる標本調査。2026年9月に物価指数の基準改定に伴い実質増減率を遡及改定
商業動態統計15(実績系)経済産業省約26,500の事業所・企業の販売額。家電大型専門店など業態別がある速報は翌月末ごろ(8月分は9月30日)、確報は翌々月中旬ごろ(7月分は9月15日)同じ業態の販売額と自社の売上を並べる販売額は消費税込みで通信販売を含む
対象時点:2026年10月(公表日は2026年9月までの実績)。単位:世帯・人・事業所・日(各欄に記載)。出所:内閣府、日本銀行、総務省統計局、経済産業省の公表資料(各行の脚注)を基に大手町プレップ作成。加工内容:項目の要約と、「自社との対応」の整理(編集部)。(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)

図表2から分かることは3点です。第1に、図表2の例では調査系の2つが対象月の末日から1〜8日後、実績系の3つが30〜46日後に公表され、速報性と売上との距離が逆になっています。第2に、同じ点数方式でも水準は統計ごとに違い、2026年8月は景気ウォッチャー調査の現状判断DIが46.4、消費者態度指数が35.5(いずれも季節調整値)で16、水準どうしは比べられません。第3に、比べる相手は総合ではなく、自社の品目に近い内訳です。消費活動指数の耐久財のウエイトは、100のうち8.6にすぎません17。実績系は先行性を期待する指標ではありませんが、家電大型専門店の販売額と自社の既存店売上(前年も営業していた店舗だけの売上)を並べれば、業界全体と自社固有の動きを切り分けられます。

R社の月次売上と指数を、前年の同じ月との比較にそろえて検証する

以下は学習用の架空事例です。R社は家電専門店のチェーンで、年商400億円のうち240億円が大型家電(冷蔵庫・洗濯機・テレビなど)、160億円が消耗品・小物です。品目別に、月次の既存店売上の前年同月比(%)を36か月分(X1年1月〜X3年12月)用意しました。指数Dは消費者態度指数に性質を似せた架空の系列です。

売上は前年同月比(%)、指数は0〜100の点数なので、前年同月差(当月の値から12か月前の値を引いた差。ポイント)にそろえます。前年同月差には原数値を使います。同じ月どうしの差なので季節性がほぼ打ち消され、季節調整値のように毎年3月調査の公表時に遡及改訂されることもないためです18(編集部の方針)。実在の指数(原数値)の前年同月差は、2025年1月〜2026年8月の20か月で−7.0〜+5.3ポイントでした19。架空の指数Dの−6.8〜+5.8ポイントは、同程度の大きさです。

図表3が入力値です(X0年7〜12月の指数は、k=6まで計算するために置いています)。

図表3:検証に使う架空データ(R社の既存店売上の前年同月比と、指数Dの前年同月差)
月指数D(ポイント)大型家電(%)消耗品・小物(%)
X0年X1年X2年X3年X1年X2年X3年X1年X2年X3年
1月-3.33.11.06.00.7-5.20.43.5-4.1
2月--0.62.51.77.94.8-1.71.32.3-1.9
3月--2.32.01.211.55.80.52.82.03.2
4月--4.31.7-1.72.61.65.20.03.40.9
5月--3.61.5-1.61.67.23.71.5-1.8-1.9
6月--0.10.4-1.3-3.40.29.72.91.80.9
7月2.90.4-1.7-2.1-5.45.1-0.72.50.01.9
8月3.71.7-2.7-3.5-2.17.2-1.41.21.74.9
9月3.3-0.9-2.7-3.40.7-1.6-1.32.00.05.0
10月4.6-0.3-0.6-6.85.25.2-0.15.2-4.01.6
11月3.32.50.1-5.56.811.3-3.73.03.71.8
12月5.83.30.2-5.00.24.4-1.8-0.50.7-2.3
単位:売上は%、指数Dはポイント。対象期間:売上はX1年1月〜X3年12月、指数DはX0年7月〜X3年12月。出所:学習用の仮定に基づき大手町プレップ作成(架空の系列)。マイナスは半角の「-」で、Excelに貼り付けられます。(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)

時差相関 r(k)
r(k)=売上の前年同月比(t月)と、指数Dの前年同月差(t-k月)の相関係数。t=X1年1月〜X3年12月の36か月、k=0〜6

ずらし方とExcel(CORREL関数)での計算は、先に挙げた経済指標選びの記事と同じです。大型家電のk=3の途中計算は、売上が平均2.41%・標準偏差4.42、3か月前の指数が平均0.19・標準偏差2.46、共分散6.55(いずれも36で割った値)で、r=6.55÷(2.46×4.42)≒0.60です。

図表4のとおり、大型家電はk=3で最大の0.60となり、k=2の0.47とk=4の0.49が両隣になだらかな山を作ります。仮説の2〜4か月の範囲内で、符号も仮説どおりです。k=2〜5は、無相関でも5%の確率で絶対値が超える0.33(t分布・自由度34)を上回ります。消耗品・小物は−0.06〜0.10で、どのずらし月数でも0.33に届かず、「日用品は受けにくい」という仮説と整合します。

図表4:ずらし月数別の時差相関(品目別・架空データ、36か月) 大型家電(実線・●) 消耗品・小物(破線・□) 縦軸:売上の前年同月比との相関係数 r(n=36) −0.4 −0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 +0.33 −0.33 0 1 2 3 4 5 6 ずらし月数 k(指数を k か月前の値にして売上と比べる) 最大 0.60(k=3) 最大 0.10 灰色の破線:n=36で、無相関でも|r|が超える確率が約5%となる値(±0.33)
単位:相関係数(無次元)。対象期間:X1年1月〜X3年12月の36か月。出所:学習用の仮定に基づき大手町プレップ作成(架空の系列)。(スマートフォンでは図を横にスクロールできます)

ただし、相関0.60は売上の動きの大半を説明できるという意味ではありません。指数から3か月後の大型家電の前年比を予測しても、外れ幅(指数で説明できない部分の標準偏差)は4.42×√(1-0.604²)=3.52ポイント残り、指数を使わない場合の4.42ポイントから2割ほどしか減りません。しかも標本内の計算なので、将来の外れ幅はこれより大きくなりえます。予測式(回帰)の作り方は回帰分析入門に委ねますが、点の予測には大きすぎる外れ幅です。

先行性が崩れる場面:期間、一時要因、心理と支出の乖離、データの変更

期間で関係が変わる

k=3で、前半の18か月(X1年1月〜X2年6月)と後半の18か月(X2年7月〜X3年12月)の相関を別々に取ると、前半は0.85、後半は0.31です。18組では無相関でも5%の確率で絶対値が0.47を超える(t分布・自由度16)ため、後半の0.31は偶然と区別できません。

一時要因の月が関係を崩す

後半の相関を下げているのは、X2年10月〜X3年2月の5か月です。メーカーの値上げ予告に伴う駆け込み購入(X2年10〜12月)とその反動(X3年1〜2月)があったと仮定しており、大型家電の前年比は+5.2、+11.3、+4.4、−5.2、−1.7%と、指数とは別の理由で動いています。5か月を除くと、r(3)は後半13か月で0.81、全31か月で0.83です。ただし、除く月を結果を見てから決めると相関をいくらでも高く見せられるため、除外は事前に理由を記録した一時要因に限ります。実在の統計でも、内閣府は季節調整で消費者意識指標の一部の2020年3月・4月や2026年2〜3月を異常値として設定しており、2026年3月の消費者態度指数(季節調整値)は前月差−6.4ポイントと急落しました20。

心理と支出の乖離、相関と因果

4項目はいずれも今後半年間の見通しで、実際の購買ではありません。所得・物価・金利・補助金などが心理と支出を同時に動かしているだけかもしれず、図表4はR社の過去36か月の相関であって、「心理が上がるから売れる」という因果の証明ではありません(図表1の下段)。所得から需要を置く方法は可処分所得から家計の購買力を需要予測に入れるの記事に、所得への反応の品目差は所得弾力性で商品別の需要の伸びを見分けるの記事に委ねます。

データ側の変更と改訂、標本の短さ

消費動向調査は、2013年4月に訪問留置から郵送へ、2018年10月に郵送・オンライン併用へ変わり、2020年4月と2025年3月にも新規世帯の調査方法が変わりました21。内閣府の試験調査(2012年7月〜2013年3月)では、郵送の指数は訪問より低く、二人以上の世帯(当時の「一般世帯」)で平均2.4ポイントの差がありました22。変更をまたぐと、前年同月差にも12か月間、方式の違いが入ります。季節調整値は毎年3月調査の公表時に遡及改訂されるため、検証は公表時点の値か原数値の前年同月差で行います。36組という短さも限界で、前年同月比は隣り合う月で動きを共有するため、実質的なデータ数は36より少なくなり、0.33や0.47は各月が独立という前提の最低限の目安にとどまります。

予算には、点の予測ではなくシナリオの切替条件として入れる

外れ幅が大きいため点の予測には使わず、大型家電の売上前提に次の切替条件を置きます。

弱気ケースへの切替条件(R社・大型家電)
3か月前の指数Dの前年同月差が−2.0ポイント以下なら、弱気ケースに切り替える

−2.0は切りのよい値で、過去36か月のうち8か月(22%)が該当しました(X1年6〜8月、X2年11〜12月、X3年10〜12月)。該当月の大型家電の前年比は平均−0.1%、非該当の28か月は平均+3.1%で、差は3.2ポイントです。前年比がマイナスだった月は、該当月で6か月(75%)、非該当月で6か月(21%)でした。外れた2か月(X2年11〜12月)は駆け込み購入と重なっています。後半だけで見ると、該当5か月の平均は+2.0%、非該当13か月は+1.9%で差が消えます。連続する月は同じ出来事なので、独立な事例は3局面で、2局面で当たり、1局面は外れました。閾値を過去のデータで決めているため、実際の当たりはこれより下がる前提で使います。

予算では、ベースを+3.1%(非該当月の平均)、弱気を−0.1%(該当月の平均)とし、適用は大型家電の、先行が確かめられた3か月(k=3)に限ります。X3年12月分の公表後(X4年1月初め)に見直すと、指数DはX3年10〜12月に−6.8、−5.5、−5.0ポイントで、対応するX4年1〜3月は3か月とも条件に該当し、弱気ケースです。X3年1〜3月の大型家電の売上を月20億円(3か月で60億円)とすると、差額は60億円×3.2%=1.92億円で、年商400億円の約0.5%です。

切替で動くのは年商の約0.5%です。効く品目が売上の6割、効く期間が3か月、差が3.2ポイントに限られるためです。売上の水準を決めるのは客数・単価・出店などのドライバーで、心理指標は「下振れの警報」として使います。単月のぶれを避けるため、3か月移動平均や2か月連続などの条件も検討します(内閣府の報告書の第1表も、前月差と3か月移動平均の前月差を並べています23)。相関と当たりは四半期ごとに取り直し、先行の月数や符号が変わったら外します。シナリオ設計はシナリオプランニングの実務に、切替の実装は用語集のシナリオ切替3方式の比較に委ねます。

実務チェックリスト

  • 品目ごとに、心理→支出→売上の経路・期待する符号・時間差を、データを見る前に書いたか
  • 売上は前年同月比、指数は前年同月差にそろえ、36か月以上でk=0〜6の相関を取り、目安(n=36なら0.33)を超えるかを見たか
  • 山の形と符号を確かめ、前半・後半に分けて、後半だけでも目安(18組なら0.47)を超えるかを見たか
  • 駆け込み・反動・災害・制度変更などの一時要因の月を、事前に記録した理由で別に扱ったか
  • 公表時点の値か原数値で検証し、季節調整値の遡及改訂と調査方法の変更による段差を確認したか
  • 点の予測にせず、切替条件・適用品目・適用月数・見直しの周期(四半期ごと)を書いたか
  • 条件に該当した月数だけでなく、独立な局面が何回あり、何回当たったかを記録したか

よくある質問(FAQ)

景気ウォッチャー調査や家計調査も、同じ手順で比べてよいですか。

手順は同じです。違いは公表の遅れで、景気ウォッチャー調査は8日後ごろに出ますが、家計調査や商業動態統計は30〜46日後なので、実測の先行月数からその分を引いた月数が、予算で使える先行です。

消費者態度指数は、二人以上の世帯・単身世帯・総世帯のどれを使えばよいですか。

顧客層に近い系列を選びます。報告書の本文は二人以上の世帯で、単身世帯と総世帯(両者を世帯数の比で加重平均)の値はe-Statに載っています24。単身世帯は調査世帯が3,024と少なく、試験調査(2012〜13年)では郵送と訪問で前月差の向きが食い違った月が、比べられる8か月のうち単身世帯で4回、二人以上の世帯で2回ありました25。

まとめ

消費者心理の指標は、名前ではなく品目ごとの経路の仮説から使い始めます。売上は前年同月比、指数は前年同月差にそろえて0〜6か月ずらした相関を取り、山の形・符号・前半後半・一時要因の月を確かめます。R社の例では、大型家電にだけ3か月の先行が見られましたが、外れ幅は大きく、期間によって崩れました。使う場合は、確かめた品目と月数に限った弱気ケースの切替条件にとどめ、四半期ごとに取り直します。

脚注

  1. Corporate Finance Institute「Consumer Confidence Index (CCI)」(2022年3月1日公開)。冒頭で、米国のコンファレンスボードが実施する指数を、現在と先行きの経済状況に対する消費者の楽観の度合いを測るものと説明し、「Drawbacks of the CCI」の節で、回答者が今後6か月の景気・雇用・家計の状況を評価する情報を持たない可能性があること、指数の値は一般に予測の用途には役立たないことを挙げている(要約は編集部。米国の指数についての記述で、日本の統計の記載はない。参考文献 R1)。↩
  2. 内閣府経済社会総合研究所 景気統計部「消費動向調査 令和8年8月実施調査結果」(2026年9月1日)p.1「調査の概要」。調査客体は8,400世帯(二人以上の世帯5,376、単身世帯3,024)、令和8年8月調査の調査基準日は8月15日。調査時点が毎月15日であることは「『消費動向調査』の概要」の「調査の時期及び調査時点」による。p.15 の調査票は、5項目(暮らし向き・収入の増え方・雇用環境・耐久消費財の買い時判断・資産価値)について「今後半年間」の見通しを5つの選択肢から選ばせている(参考文献 R2・R3)。↩
  3. 同 p.8「利用上の注意」1。5段階評価に、良くなる・大きくなる・増えるに+1、やや良くなる等に+0.75、変わらないに+0.5、やや悪くなる等に+0.25、悪くなる等に0の点数を与え、点数に各回答区分の構成比(%)を乗じて合計し、項目ごとの消費者意識指標(原数値)とする。「資産価値」を除く4項目の単純平均が消費者態度指数(原数値)。全員が「変わらない」なら50になることは、この点数からの編集部の計算(参考文献 R2)。↩
  4. 同 p.4 参考表「消費者意識指標 回答区分別構成比(二人以上の世帯、原数値)」の令和8(2026)年8月。耐久消費財の買い時判断は、良くなる0.2、やや良くなる2.8、変わらない25.3、やや悪くなる50.1、悪くなる21.6(%)で、意識指標は27.5。27.475への計算は編集部(参考文献 R2)。↩
  5. 同 p.6 時系列表2表「消費者態度指数、消費者意識指標の推移(二人以上の世帯、季節調整値)」。2024年1月〜2026年8月の32か月で、最小は2025年4月の31.5、最大は2026年2月の39.7(最小・最大の抽出は編集部。参考文献 R2)。↩
  6. 内閣府経済社会総合研究所「『消費動向調査』の概要」(令和8(2026)年3月現在)の「調査事項」の注記に、「消費者の意識は今後の消費動向を予測するものとして、物価の見通しは物価上昇への期待をみるために調査している」とある。調査の目的は「景気動向判断の基礎資料を得ること」(「調査の目的及び根拠」。参考文献 R3)。↩
  7. 内閣府経済社会総合研究所「消費動向調査」トップページ。調査結果は「消費者態度指数」「1年後の物価の見通し」として公表し、耐久消費財等の保有買替状況を年1回調べているとしたうえで、「「消費支出金額」は調べておりません。」と明記している(参考文献 R4)。↩
  8. 内閣府経済社会総合研究所「景気動向指数の利用の手引」。「1.統計の目的」に、先行指数は一般的に一致指数に数か月先行するとあり、現行系列は2021年1月分から採用された。「4.第13次改定(2021年3月)の主な内容」の採用系列の新旧対照表で、先行系列に「消費者態度指数 ※二人以上世帯・季節調整値」が入っている(旧系列は「総世帯・原数値」)。2026年10月時点の記載(参考文献 R5)。↩
  9. 内閣府経済社会総合研究所「統計表の見方と用語の解説:消費動向調査」「1. 消費者の意識」。耐久消費財の買い時判断は、「自動車や家具類、テレビ、冷蔵庫などの耐久消費財について、これらの買い時が今後半年間に今よりも良くなると思うか、悪くなると思うか」を尋ねるもの(参考文献 R6)。↩
  10. 総務省統計局「消費動向指数(CTI)」。「消費動向指数は、家計調査の結果を補完し、消費全般の動向を捉える分析用のデータとして総務省統計局が作成しています」とある(参考文献 R7)。↩
  11. 消費者態度指数(消費動向調査)。作成は内閣府経済社会総合研究所景気統計部(報告書の表紙)。8,400世帯・調査基準日15日・今後半年間の見通しの5段階は報告書 p.1・p.15。公表は、令和8年8月調査が2026年9月1日(報告書 p.1、トップページの「最新の調査結果」)、9月調査が10月5日、10月調査が10月29日の予定(公表予定)。季節調整値は毎年3月調査の公表時に遡及改訂(報告書 p.8「2. 季節調整について」)。調査方法の変更は「調査の沿革」と報告書 p.9〜11(参考文献 R2・R3・R4・R8)。↩
  12. 景気ウォッチャー調査。内閣府が主管し、調査客体は2,050人、調査期間は毎月25日から月末(「調査の概要」)。「有意抽出調査であるため、標本誤差はない(計算できない)」(「利用上の注意」)。令和8年8月調査の結果は内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)が令和8年9月8日に公表し、現状判断は「3か月前と比較しての景気の現状に対する判断」、先行き判断は「2~3か月先の景気の先行きに対する判断」を点数化したDI(報告書の表紙・p.4・p.6〜7)(参考文献 R9・R10・R11)。↩
  13. 消費活動指数。日本銀行(調査統計局経済調査課景気動向グループが照会先)が、「財とサービスに関する各種の販売・供給統計を基礎統計」として作成し、名目値と実質値、旅行収支を調整したものと調整していないもの、形態別の内訳などを公表している。公表日時は原則として毎月第5営業日14:00(トップページ)。図表の形態別消費は耐久財・非耐久財・サービスで、2026年9月7日掲載分の最新月は7月(図表)。2026年4月30日に、GDP統計の2020年基準への改定や近年の経済構造の変化を踏まえた推計方法の見直しを実施した(参考文献 R12・R13・R14)。↩
  14. 家計調査。総務省統計局が、全国約9千世帯を対象に家計の収入・支出、貯蓄・負債などを毎月調査している(トップページ)。二人以上の調査世帯数は8,076、単身は673で、勤労者世帯などは日々の収入・支出を家計簿で調査し、二人以上の世帯の結果は原則として調査月翌々月上旬に公表する(「家計調査の概要」の3・4・7)。2026年7月分は9月4日の公表で、同日、消費者物価指数の2025年基準改定に伴う実質増減率等の遡及改定のお知らせがある(トップページの更新情報・お知らせ)(参考文献 R15・R16)。↩
  15. 商業動態統計。問い合わせ先は経済産業省 大臣官房調査統計グループ サービス動態統計室。調査対象は約26,500の事業所又は企業で、家電大型専門店は、売場面積500㎡以上の家電大型専門店を10店舗以上有する企業を調査する(「調査の概要」の調査の対象・調査票(丁2))。更新情報は、2026年9月30日に8月分速報、2026年9月15日に7月分確報(トップページ)。公表予定では、2026年7月分〜12月分の速報は翌月の28〜31日、確報は翌々月の15〜18日(公表予定)。販売額は消費税分を含み、インターネット等による通信販売等の販売額も含む(「利用上の注意」)。2025年1月分から、令和3年経済センサス-活動調査に合わせた2回目の「水準の調整」を実施(「調査の概要」)(参考文献 R17・R18・R19・R21)。↩
  16. 景気ウォッチャー調査 令和8年8月調査結果 p.6 図表1:現状判断DI(季節調整値)の合計は46.4。消費動向調査 報告書 p.2 第1表:消費者態度指数(二人以上の世帯・季節調整値)は2026年8月に35.5(参考文献 R11・R2)。↩
  17. 日本銀行「消費活動指数」の図表(2026年9月7日掲載)。「(2)消費活動指数における形態別消費」の注に「< >内は、消費活動指数におけるウエイト」とあり、耐久財<8.6>、非耐久財<44.3>、サービス<47.1>(合計100.0。参考文献 R13)。↩
  18. 同 p.8「2. 季節調整について」(1)。月次データの季節調整はセンサス局法X-12-ARIMAによる。毎年3月調査の公表時に季節調整値の遡及改訂を行う。原数値の前年同月差が季節性をほぼ打ち消すという点は編集部の整理(参考文献 R2)。↩
  19. 同 p.6 時系列表1表(原数値)の2024年1月〜2026年8月から、2025年1月〜2026年8月の20か月の前年同月差を編集部が計算。最小は2025年4月の−7.0(31.3−38.3)、最大は2026年2月の+5.3(40.0−34.7)(参考文献 R2)。↩
  20. 同 p.8〜9「2. 季節調整について」の季節調整スペック(X-12-ARIMA)の「曜日調整・異常値等」。「暮らし向き」は調査方法ダミーと異常値(TC2020.Mar、TC2020.Apr、AO2026.Mar)、「耐久消費財の買い時判断」は調査方法ダミーと異常値(TC2020.Apr、AO2026.Feb)などが設定されている。2026年3月の消費者態度指数(季節調整値)は p.2 第1表で、2月39.7から3月33.3へ、前月差−6.4(参考文献 R2)。↩
  21. 内閣府「『消費動向調査』の概要」の「調査の沿革」と、報告書 p.9〜11「4.調査の沿革」。平成25(2013)年4月に訪問留置調査法から郵送調査法へ変更(調査客体を6,720世帯から8,400世帯へ変更)、平成30(2018)年10月に郵送・オンライン併用調査法へ変更、令和2(2020)年4月に1か月目の新規世帯への調査員の訪問を取り止め、令和7(2025)年3月に1か月目の新規世帯もオンライン回答を可能とした(参考文献 R3・R2)。↩
  22. 内閣府経済社会総合研究所「『消費動向調査(試験調査)』調査結果の概要」(平成25年5月15日)「試験調査と訪問調査の結果比較」(1)。平成24年7月〜25年3月の試験調査(郵送調査法)の消費者態度指数(原数値)は、一般世帯・単身世帯とも調査期間の全てを通じて訪問調査より低く、水準差は一般世帯で平均2.4ポイント、単身世帯で平均4.2ポイント(参考文献 R20)。↩
  23. 内閣府 報告書 p.2 第1表。消費者態度指数の欄に、前月差と、前月差(3か月移動平均)が掲載されている(参考文献 R2)。↩
  24. 内閣府 報告書の目次の注に「掲載の調査結果は全て二人以上の世帯の数値」とあり、単身世帯・総世帯の数値は e-Stat を参照するよう案内している。p.9「3.総世帯について」では、総世帯は二人以上の世帯と単身世帯を合わせた全ての世帯で、各データは世帯数のシェアをウエイトに加重平均して算出する。調査世帯数(単身世帯3,024)は p.1「調査の概要」(参考文献 R2)。↩
  25. 内閣府「消費動向調査(試験調査)」調査結果の概要 (1)。消費者態度指数の変化方向(前月差)について、前月差が比較できる平成24年8月〜25年3月の8か月のうち、両調査で方向が異なる月は、「調査客体数の少ない単身世帯では4回」、一般世帯(二人以上の世帯)では2回(参考文献 R20)。↩

参考文献(2026年10月確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための学習用の架空事例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。