この記事で分かること
結論:AIが速くなるのは「候補の当たり出し」と「採否理由の言語化」。実在確認・数値・採否の確定は人が行います
類似会社比較法(コンプス)の作業時間の多くは、倍率の計算ではなく「どの会社を入れて、どの会社を外すか」を決めて、その理由を説明できる形にすることに費やされます。生成AIはこの2つの端(最初の候補出しと、最後の理由の文章化)で効きます。一方、候補が実在する上場企業かどうかの確認、財務数値の取得、6軸の配点確定、外れ値の採否は人が行う工程です。AIに候補社名を出させたまま名簿として使うと、非上場会社・上場廃止済みの会社・社名を取り違えた会社が混ざります。
本記事は候補抽出と採否判断のプロセスに絞っています。類似会社比較法そのものの手順は類似会社比較法(Comps)の作成5ステップ、どの倍率を使うかの判断はマルチプルの選び方で解説済みのため、本記事では繰り返しません。
全体像:ピア選定7ステップとAI・人の分担
この記事の守備範囲(既存記事との分担)
本記事は「候補をどう集め、どう落とすか」に集中します。類似会社比較法の全体手順と倍率の計算方法、どの倍率を主軸にするかの判断、EVから株主価値へ落とす計算とネットデットの調整は、いずれも別記事で解説済みなので繰り返しません(必要な箇所で個別にリンクします)。以下では、それらの前提を踏まえたうえで、候補8社を採点して5社に絞り、採否理由を残すという一つの作業を最後まで通します。
設例:評価対象と候補8社(すべて仮設の架空企業)
評価対象はカムイ計測工業株式会社(仮設・非上場)とします。産業用センサー(変位・圧力)の設計製造と、計測機器の校正・保守サービスを手がけ、売上構成は製品70%・サービス30%、主要顧客は自動車と半導体製造装置メーカーです。基準日は2026年6月30日、単位は百万円で統一します。
| 項目 | カムイ計測工業(対象) |
|---|---|
| LTM売上高 | 48,000 |
| LTM EBITDA | 7,200 |
| EBITDAマージン | 15.0% |
| 売上高3年CAGR | 8% |
| 海外売上比率 | 35% |
| 決算期/会計基準 | 3月/日本基準 |
| ネットデット | 12,400(有利子負債18,000-現預金5,600) |
AIが出した候補と、人が業界地図から加えた候補を合わせて、次の8社をロングリストとします(いずれも仮設の架空企業です)。EV/EBITDAとPERは説明のため整数に丸めた仮設値です。
| 候補(仮設) | 決算期/基準 | LTM売上高 | LTM EBITDA | マージン | 3年CAGR | 海外比率 | EV | EV/EBITDA | PER |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ①トウホク精密計測 | 3月/日本 | 52,000 | 8,320 | 16.0% | 7% | 30% | 91,520 | 11倍 | 18倍 |
| ②サンライズ計装 | 3月/日本 | 61,000 | 6,100 | 10.0% | 3% | 12% | 48,800 | 8倍 | 13倍 |
| ③ミナト測器 | 12月/IFRS | 39,000 | 6,240 | 16.0% | 9% | 41% | 81,120 | 13倍 | 21倍 |
| ④ケイヨウ・インスツルメンツ | 3月/IFRS | 88,000 | 15,840 | 18.0% | 11% | 55% | 190,080 | 12倍 | 20倍 |
| ⑤ヤマト自動制御 | 3月/日本 | 45,000 | 6,750 | 15.0% | 6% | 28% | 67,500 | 10倍 | 16倍 |
| ⑥アオバ・センシング | 12月/日本 | 21,000 | 3,570 | 17.0% | 14% | 33% | 85,680 | 24倍 | 38倍 |
| ⑦グローバル・メトロロジーHD | 12月/IFRS | 132,000 | 23,760 | 18.0% | 5% | 85% | 332,640 | 14倍 | 22倍 |
| ⑧シラユキ電子 | 3月/日本 | 240,000 | 7,200 | 3.0% | 2% | 8% | 43,200 | 6倍 | 9倍 |
この時点では、8社のEV/EBITDAは6倍から24倍まで4倍の開きがあります。この段階の平均や中央値を計算しても意味はありません。まず絞り込みの物差しを決めてから、絞り込んだ後の集合で統計量を出すという順序が重要です。
6軸スコアリングマトリクスを設計する
「似ている」という感覚を、後から検証できる形にするための採点表です。軸は6つ、合計20点満点とし、事業類似性だけ重み2倍にします。倍率を左右する最大の要因が事業内容だからです。
各軸の素点は次の基準で機械的に決めます。採点者が変わっても同じ点になることが目的なので、感覚語ではなく数値の閾値で書きます。
| 軸 | 3点(または最高点) | 2点 | 1点 | 0点 |
|---|---|---|---|---|
| ①事業類似性(×2) | 重なる事業が売上の70%以上 | 40〜70% | 20〜40% | 20%未満 |
| ②地域・売上構成 | 海外比率差 ±10pt以内 | ±10〜20pt | ±20〜35pt | ±35pt超 |
| ③規模(売上高倍率) | 0.5〜2.0倍 | 0.33〜0.5倍/2.0〜3.0倍 | 0.2〜0.33倍/3.0〜5.0倍 | それ以外 |
| ④収益性(マージン差) | ±2pt以内 | ±2〜5pt | ±5〜10pt | ±10pt超 |
| ⑤成長率(CAGR差) | ±2pt以内 | ±2〜4pt | ±4〜7pt | ±7pt超 |
| ⑥決算期・会計基準(最大2) | ― | 決算期・会計基準とも一致 | どちらか一方が相違 | 両方相違 |
③規模の軸は「売上高が対象の何倍か」で測ります。時価総額で測る流儀もありますが、非上場企業を評価する場面では対象側に時価総額が存在しないため、事業規模を表す売上高で揃えるほうが実務的です。なお上場ピア側の流動性が極端に低いと倍率が歪むので、浮動株比率が著しく低い会社は別途注記します。
ロングリスト8社を採点し、ショートリスト5社へ絞る
基準に当てはめて機械的に採点します。合計点は各軸の合計で、①のみ素点を2倍しています。
| 候補 | ①事業 (×2) | ②地域 | ③規模 | ④収益性 | ⑤成長 | ⑥決算期 | 合計 | 採否 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ①トウホク精密計測 | 6 | 3 | 3 | 3 | 3 | 2 | 20 | 採用 |
| ②サンライズ計装 | 4 | 1 | 3 | 2 | 1 | 2 | 13 | 除外 |
| ③ミナト測器 | 6 | 3 | 3 | 3 | 3 | 0 | 18 | 採用 |
| ④ケイヨウ・インスツルメンツ | 4 | 2 | 3 | 2 | 2 | 1 | 14 | 採用(境界) |
| ⑤ヤマト自動制御 | 4 | 3 | 3 | 3 | 3 | 2 | 18 | 採用 |
| ⑥アオバ・センシング | 6 | 3 | 2 | 3 | 1 | 1 | 16 | 採用 |
| ⑦グローバル・メトロロジーHD | 6 | 0 | 2 | 2 | 2 | 0 | 12 | 除外 |
| ⑧シラユキ電子 | 2 | 1 | 1 | 0 | 1 | 2 | 7 | 除外 |
採否の理由は、点数ではなく「どの軸の、どの数値が理由か」まで書きます。これが後の説明責任を支えます。
| 候補 | 採否理由(人が確定) |
|---|---|
| ②サンライズ計装 | 除外。売上の約4割が計装工事の請負で、①が素点2(4点)にとどまる。海外比率12%(差23pt)で②が1点、EBITDAマージン10.0%(差5.0pt)で④が2点。工事売上は完成基準の影響で利益率と季節性が異なり、倍率の比較可能性を損なう。合計13点。 |
| ④ケイヨウ・インスツルメンツ | 採用(境界ケース)。医療機器が売上の約4割を占め①は4点だが、②③④⑤で計9点、⑥はIFRSのみ相違で1点、合計14点でしきい値ちょうど。医療機器事業の倍率が全社倍率を押し上げている可能性があるため、感応度として「④を外した場合」も併記する。 |
| ⑦グローバル・メトロロジーHD | 除外。事業は最も近い(①6点)が、海外売上比率85%(差50pt)で②が0点。為替・地域ミックスの影響が大きく、日本市場中心の対象企業と同じ倍率で語れない。決算期・会計基準も両方相違(⑥0点)。合計12点。 |
| ⑧シラユキ電子 | 除外。電子部品商社が主体で計測関連は売上の約2割(①2点)。EBITDAマージン3.0%(差12.0pt)で④は0点、売上高は対象の5.0倍で③1点。商社モデルは売上総額が大きく出るため、EV/Salesはもちろん、EV/EBITDAでも構造が異なる。合計7点。 |
結果、ショートリストは①トウホク(11倍)・③ミナト(13倍)・④ケイヨウ(12倍)・⑤ヤマト(10倍)・⑥アオバ(24倍)の5社になりました。
AIに任せる部分と、人が判断する部分
| 工程 | AIに任せてよいこと | 人が必ず行うこと |
|---|---|---|
| 候補の当たり出し | 事業説明から社名候補を列挙。見落としがちな隣接業種の指摘 | 実在・上場・証券コード・決算期の一次情報確認、候補の追加 |
| 事業内容の整理 | 有報・決算短信の事業の説明を読ませ、重なる/重ならない領域を箇条書き化 | セグメント別売上比率の数値確定、①の素点確定 |
| 財務データ取得 | (任せない) | 開示資料からの転記と検算。AIに数値を「探させない」 |
| 採点 | 基準表を渡したうえでの機械的な当てはめ案 | 基準そのものの設計、境界ケースの最終判断 |
| 期ずれ・基準調整 | 調整手順のチェックリスト化、転記漏れの指摘 | LTMの数式計算そのもの(Excelで実行し検算) |
| 外れ値の解釈 | 分子側・分母側それぞれの原因仮説の列挙 | 開示資料での事実確認、採否と処理方法の決定 |
| 理由の文章化 | 採否理由・境界ケースの論点整理の下書き | 数値の照合と、断定的な表現の削除 |
AIに候補を出させるときの3つの落とし穴
候補出しはAIが最も役立つ工程ですが、そのまま名簿にすると必ず事故が起きます。典型は次の3つです。
- 上場していない会社を挙げる。大手企業の子会社、非上場のオーナー企業、TOBで非公開化された会社、上場廃止済みの会社が混ざります。倍率は市場価格から計算するので、非上場企業はそもそもピアになりません。
- 社名を取り違える。持株会社と事業会社(「◯◯ホールディングス」と「◯◯株式会社」)、旧社名と現社名、同業の類似社名を混同します。財務数値を引く段階で連結範囲が変わるため、致命的です。
- 古い情報で答える。AIは学習データの時点までの情報しか持たないため、その後の経営統合・社名変更・上場廃止・決算期変更を反映しません。「◯年時点の情報である可能性がある」と自ら注記させても、その注記自体が正確とは限りません。
対策は単純で、AIには社名の候補と「なぜ候補か」の理由だけを出させ、数値・証券コード・上場状況は一切出させないことです。そのうえで、次の順に一次情報で確認します。
- 金融庁のEDINET「書類簡易検索」で、提出者名・証券コードから有価証券報告書の提出実績を確認する(提出があれば実在し、開示義務がある会社であることが分かります)。
- 各社IRサイトで、最新の決算短信を開き、決算期・会計基準・連結範囲を確認する。
- 上場市場と市場区分を確認する。東証の市場区分によって流動性や開示水準に差があるため、区分もピア選定の注記に残します。
- 直近1年の適時開示を見て、経営統合・株式併合・上場廃止・決算期変更の有無を確認する。
AI出力全般の検証の型は後述の検証節でリンクする記事に整理してあります。本記事ではピア選定に固有の項目に絞ります。
プロンプト例と出力例
プロンプトA:候補のロングリスト草案を作らせる
【役割】 あなたは日本の上場企業を対象に類似会社比較法を担当するアナリストです。 【目的】 評価対象企業の類似会社候補(ロングリスト)の「たたき台」を作ります。最終的な採否は人間が判断します。 【評価対象企業(公開情報の範囲で記載)】 - 事業:産業用センサー(変位・圧力)の設計・製造と、計測機器の校正・保守サービス - 売上構成:製品70%/サービス30% - 主要顧客:自動車メーカー、半導体製造装置メーカー(BtoB・直販中心) - 事業規模:直近12か月売上高 48,000百万円 - 海外売上比率:35% - 決算期:3月 会計基準:日本基準 【対象期間】直近12か月(LTM)。基準日は2026年6月30日。 【単位】百万円。ただし本タスクでは数値を出力しません。 【依頼事項】 上記と事業内容が重なる日本の上場企業の候補を、最大15社挙げてください。 「主力事業が重なる会社」だけでなく、「一部セグメントが重なる会社」も分けて挙げてください。 【出力形式】 Markdown表。列は次の7つ。 社名/推定される主力事業/対象と重なる事業領域/重ならない事業領域/候補とした根拠/確信度(高・中・低)/人間が確認すべき事項 【計算方法】 計算は行いません。財務数値は出力しません。 【禁止事項】 - 証券コード・株価・時価総額・売上高などの数値を出力しないこと(数値は人間が開示資料から取得します) - 上場している確証がない会社を上場企業として挙げないこと - 社名を推測で補完しないこと。正式名称が不確かな場合は「正式名称が不確か」と明記すること - 特定の銘柄の売買を勧める記述をしないこと 【不明情報の処理】 不明な点は「不明」と書いてください。推測で埋めないでください。 学習データの時点以降に社名変更・経営統合・上場廃止が起きている可能性があるため、 全社について「上場状況は未確認」と明記してください。 【出典の表示】 根拠が公表資料の一般的な事業説明に基づく場合は「一般的な事業説明」、 それ以外は「根拠不明」と各行に記載してください。 【レビュー項目】 出力の末尾に、人間が確認すべき事項を箇条書きで示してください (実在確認/上場市場/証券コード/決算期/会計基準/連結範囲/直近の組織再編)。
出力例(抜粋・実在の企業ではありません)
| 社名 | 重なる領域 | 重ならない領域 | 確信度 | 確認事項 |
|---|---|---|---|---|
| トウホク精密計測 | 変位センサー、校正サービス | 不明 | 高 | 上場状況は未確認/決算期は未確認 |
| サンライズ計装 | 計測機器の製造 | プラント計装工事(比率は不明) | 中 | 工事売上の比率をセグメント情報で確認 |
| (社名の正式名称が不確か) | 圧力センサー | 不明 | 低 | 正式名称が不確か。実在確認が必要 |
この出力の価値は「トウホク精密計測」という固有名詞ではなく、確信度が低い行と確認事項が明示されていることにあります。確信度「低」の行から先に一次情報にあたるだけで、確認作業の順序が決まります。
プロンプトB:採否理由の言語化と外れ値の仮説出し
【役割】 あなたは類似会社比較法の採否理由を文章化する担当者です。採点と数値は人間が確定済みです。 【入力資料】 以下は人間が決算短信・有価証券報告書から取得し、検算済みの採点表です。 (ここに8社×6軸の採点表と、売上高・EBITDA・マージン・CAGR・海外比率・EV/EBITDAの表をMarkdownで貼る) 【評価軸と配点】※人間が確定済み。変更しないこと ① 事業類似性 0〜3点 × 重み2 ② 地域・売上構成 0〜3点 ③ 規模 0〜3点 ④ 収益性(EBITDAマージン)0〜3点 ⑤ 成長率(売上高3年CAGR)0〜3点 ⑥ 決算期・会計基準 0〜2点 合計20点満点。合計14点以上かつ①が4点以上をショートリストとする。 【対象期間】直近12か月(LTM)。基準日は2026年6月30日。 【単位】金額は百万円、倍率は「倍」、比率は「%」(小数第1位)。単位を混在させないこと。 【依頼事項】 1. 各社について採用/除外の理由を100字以内で書いてください。理由には必ず 「どの軸が何点で、どの数値が根拠か」を含めてください。 2. 合計点がしきい値(14点)の前後2点以内にある会社を「境界ケース」として抽出し、 判断が分かれる論点を挙げてください。 3. EV/EBITDAが他社と離れている会社について、原因の仮説を 「分子(EV)側の要因」と「分母(EBITDA)側の要因」に分けて挙げてください。 原因は断定せず、開示資料のどこ(注記名・セグメント名)を見れば確認できるかを示してください。 【計算方法】 表の数値を再計算・再推定しないでください。表にない数値は使わないでください。 【禁止事項】 - 表にない企業を追加しないこと - 表にない数値を作り出さないこと - 「割安/割高」「妥当」といった投資判断の結論を書かないこと 【不明情報の処理】 表にない情報は「不明」と記載してください。推測しないでください。 【検算】 各社の合計点を①×2+②+③+④+⑤+⑥で再計算し、入力表の合計と一致するか確認してください。 一致しない行があれば行名と差分を明示してください。 【出典の表示】 各理由文の末尾に、根拠とした列名を(例:④収益性、⑥決算期)の形式で示してください。 【レビュー項目】 末尾に、人間が確認すべき点を箇条書きで示してください。
このプロンプトで重要なのは「表にない数値を使わせない」「計算させない」「断定させない」の3点です。採点も統計計算も人がExcelで確定させたうえで、AIには確定済みの表を渡して文章化だけを任せます。
日本企業特有の論点①:3月決算と12月決算の期ずれ調整
日本の上場企業は3月決算が多数を占めますが、12月決算も一定数あります。決算期が違う会社を並べると、景気局面や為替水準の異なる期間を比較してしまうため、期間を揃える必要があります。この作業を期間調整(カレンダー化)と呼びます。
実務では、対象企業の決算期(ここでは3月)に合わせて、各ピアのLTM(直近12か月)を組み直します。組み方は次の式です。
| LTMの組み方(12月決算の会社を3月末基準に揃える) | |
|---|---|
| LTM=直近の通期実績 + 当期の四半期累計 - 前年同期の四半期累計 |
③ミナト測器(12月決算・IFRS)を、対象と同じ2025年4月〜2026年3月に揃える計算です。単位は百万円です。
| 構成要素 | 期間 | 売上高 | EBITDA | 出所 |
|---|---|---|---|---|
| (A) 直近通期 | 2025年1月〜12月 | 37,500 | 6,000 | 2025年12月期 決算短信 |
| (B) 当期の四半期累計 | 2026年1月〜3月 | 9,800 | 1,560 | 2026年12月期 第1四半期決算短信 |
| (C) 前年同期の四半期累計 | 2025年1月〜3月 | 8,300 | 1,320 | 同短信の前年同期比較欄 |
| LTM=(A)+(B)-(C) | 2025年4月〜2026年3月 | 39,000 | 6,240 | ― |
検算します。売上高は 37,500 + 9,800 - 8,300 = 39,000。EBITDAは 6,000 + 1,560 - 1,320 = 6,240。EBITDAマージンは 6,240 ÷ 39,000 = 16.0%で、先の一覧表と一致します。
日本特有の注意点が3つあります。
- Q1・Q3の情報源は四半期決算短信になりました。2024年4月1日以後に開始する事業年度から、金融商品取引法上の四半期報告書は廃止され半期報告書に一本化されました。第1・第3四半期の業績は取引所の四半期決算短信で開示されます(東証の開示区分でも「第1・第3四半期決算短信」が独立項目として掲げられています)。米国のように四半期ごとに10-Qが揃う前提ではないため、四半期の粒度と監査手続の水準が日米で異なる点を意識してください。
- 短信は速報値で、後から訂正されることがあります。ピア選定の資料には、参照した短信の公表日と訂正の有無を必ず記録します。
- EBITDAは短信に載っていません。減価償却費は短信のキャッシュ・フロー計算書欄または補足資料から取ります。Q1・Q3の短信でキャッシュ・フロー計算書が省略されている場合は、減価償却費が拾えず期ずれ調整ができません。そのときは「調整不能」と記録し、⑥の配点を下げるか候補から外します。数値が拾えないことをAIに埋めさせてはいけません。
日本企業特有の論点②:日本基準・IFRS・米国基準の混在
ショートリストにはIFRS適用会社(③ミナト、④ケイヨウ)と日本基準の会社が混在しています。IFRSの任意適用が進んだ結果、同じ業種でも会計基準が割れるのが日本市場の特徴です。ここを揃えずに倍率を並べると、事業の差ではなく会計処理の差を比較することになります。差分の全体像は日本基準とIFRSの実務差分に整理してあるので、ここでは倍率に直接効く2点だけ扱います。
(1) 営業利益の定義差
日本基準は営業損益・営業外損益・特別損益の3区分ですが、IFRSには特別損益がなく、事業構造改革費用や固定資産売却損益が「その他の営業収益・費用」として営業損益に含まれることが一般的です。したがって「営業利益+減価償却費」を機械的にEBITDAとすると、IFRS会社だけ一過性の損益が混入します。
④ケイヨウ・インスツルメンツ(IFRS)の調整例です(単位:百万円)。
| 項目 | 金額 | 調整の理由 |
|---|---|---|
| IFRS営業利益 | 11,000 | 出発点 |
| - その他の営業収益(固定資産売却益) | △800 | 一過性。日本基準なら特別利益 |
| + その他の営業費用(事業構造改革費用) | +1,400 | 一過性。日本基準なら特別損失 |
| - 持分法による投資利益 | △300 | 連結売上に対応しない損益のため除外 |
| + 減価償却費・償却費 | +4,540 | 使用権資産の償却を含む |
| 調整後EBITDA | 15,840 | 売上88,000に対し18.0% |
検算します。11,000 - 800 + 1,400 - 300 + 4,540 = 15,840。マージンは 15,840 ÷ 88,000 = 18.0%です。どこまで足し戻してよいかの線引きはEBITDAの正常化調整で詳述しています。
(2) のれん償却の有無
日本基準はのれんを規則償却しますが、IFRSと米国基準は償却せず減損テストのみです。EBITDAは償却費を足し戻すので影響は消えますが、PERやEV/EBITでは日本基準の会社だけ利益が小さく出ます。①トウホク精密計測(日本基準)の例です。
| 項目 | 金額(百万円) |
|---|---|
| 日本基準 営業利益 | 5,600 |
| + 減価償却費 | +2,300 |
| + のれん償却額 | +420 |
| EBITDA | 8,320 |
5,600 + 2,300 + 420 = 8,320で、売上52,000に対し16.0%です。ここでの実務判断は「どちらの基準に揃えるか」を先に決めて全社に同じ処理を適用することです。EBITDAで比較するなら償却の差は消えるので、EV/EBITDA倍率を主軸に据え、PERは参考指標として基準の違いを注記する、という整理が扱いやすくなります。
日本企業特有の論点③:持分法・非継続事業・政策保有株式・セグメント粒度
- 持分法投資損益:日本基準では営業外損益、IFRSでは営業損益に含めて表示する会社があります。EBITDAには含めない方針で統一し、そのうえで持分法投資(BS)を非事業資産としてEVから控除するかどうかも全社で揃えます。控除するなら簿価か時価か、税効果を引くかまで方針を書き残します。
- 非継続事業:IFRS・米国基準では売却予定事業を非継続事業として区分表示します。損益計算書からは抜けているのに、EVの計算に使う株価には売却予定事業の価値が織り込まれている、というねじれが起きます。売上・EBITDAから非継続事業を除いたなら、EV側でも売却予定資産を控除して整合させます。
- 政策保有株式:日本企業は他社株式を保有していることが多く、これを非事業資産としてEVから控除するか否かで結果が変わります。カムイ計測工業の例では、政策保有株式の時価2,000(税効果考慮後1,400)を控除すると株主価値が1,400増えます。控除する/しないは全社で統一し、していない場合はその旨を明記します。ネットデットに何を含めるかの詳細はネットデット完全ガイドを参照してください。
- セグメント開示の粒度:これが最も厄介です。日本では報告セグメントが「産業機器事業」のように大括りで、対象と重なる部分だけの売上・利益が取り出せないことがよくあります。米国のGICSのような業種分類で機械的にスクリーニングする発想は、日本の開示ではそのまま使えません。粒度が粗いときは、有報の「事業の内容」「生産・受注及び販売の状況」や決算説明資料の製品別売上、さらにIRへの質問で補います。それでも判定できない場合は、①の素点を1段階下げたうえで「粒度不足により保守的に判定」と記録します。セグメント情報の読み方はセグメント情報の読み方にまとめています。
外れ値の扱い:除外の前に「なぜ外れているか」を確認する
ショートリスト5社のEV/EBITDAは 10・11・12・13・24倍で、⑥アオバ・センシングだけが大きく離れています。ここで「外れ値だから除外」と処理するのは危険です。理由は2つあります。
第一に、n=5では統計的な外れ値判定がほとんど機能しません。Excelの四分位関数でも、使う関数によって結論が逆になります。
| 計算方法 | Q1 | Q3 | IQR | 上側フェンス Q3+1.5×IQR | 24倍の判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| QUARTILE.INC(Excel既定) | 11.0 | 13.0 | 2.0 | 16.0 | 外れ値 |
| QUARTILE.EXC | 10.5 | 18.5 | 8.0 | 30.5 | 外れ値ではない |
同じ5個のデータで、13.0+1.5×2.0=16.0 と 18.5+1.5×8.0=30.5 という2つのフェンスが出ます。統計的判定は「除外の根拠」にはならず、注意を向ける先を教えてくれるだけだと考えてください。
第二に、外れる理由が分子(EV)側にあるのか分母(EBITDA)側にあるのかで、取るべき対応が正反対になります。
| 要因 | 典型例 | 確認する開示 | 対応 |
|---|---|---|---|
| 分母(EBITDA)が一時的に小さい | 新工場の立上げ費用、大型リコール、一過性の販促費 | 短信の増減理由、セグメント情報、特別損失の注記 | 正常化EBITDAで再計算して残す |
| 分母の定義がずれている | のれん償却・持分法・非継続事業の処理漏れ | CF計算書の償却費、連結の範囲 | 定義を揃えて再計算(除外しない) |
| 分子(EV)が高い=成長期待 | 高成長・高マージン、TAM拡大期待 | 会社予想、中期経営計画、成長率実績 | 残したうえでレンジ上限として注記 |
| 分子が高い=イベント要因 | TOB観測、大株主の異動、買収提案報道 | 適時開示、大量保有報告書 | 支配権プレミアムが混入するため除外 |
| ネットデットの誤り | リース債務・優先株・少数株主持分の漏れ | BS、注記、資本の部 | EVを再計算(除外しない) |
アオバ・センシングを調べたところ、直近12か月に新工場の立上げ費用1,190百万円が計上されていたと分かったとします。正常化EBITDAは 3,570 + 1,190 = 4,760百万円、EV/正常化EBITDA は 85,680 ÷ 4,760 = 18.0倍となります。24倍よりは下がりましたが、それでも他4社より高い水準です。残りの差は売上高3年CAGR 14%という成長率の違いで説明できるため、除外せず、ショートリストに残したうえで「レンジ上限の説明要因」として注記するという判断になります。仮にTOB観測報道が確認された場合は、支配権プレミアムが株価に混入しているため除外するのが妥当です。
中央値と平均値の使い分け、そして評価レンジへの落とし込み
外れ値の処理前後で統計量がどう動くかを見ます。
| データ | 5社の倍率 | 合計 | 平均 | 中央値 |
|---|---|---|---|---|
| 処理前 | 10, 11, 12, 13, 24 | 70 | 14.0倍 | 12.0倍 |
| アオバを正常化後 | 10, 11, 12, 13, 18 | 64 | 12.8倍 | 12.0倍 |
| アオバを除外(4社) | 10, 11, 12, 13 | 46 | 11.5倍 | 11.5倍 |
検算します。処理前の平均は 70 ÷ 5 = 14.0倍、正常化後は 64 ÷ 5 = 12.8倍、4社では 46 ÷ 4 = 11.5倍です。中央値は最初の2ケースで 12.0倍のまま動きません(並べ替えて3番目の値だから)。
ここから読み取るべきことは次の3点です。
- 平均は1社の処理方法で1.2〜2.5倍ぶん動きますが、中央値はほとんど動きません。だから、サンプル数が10社に満たないコンプスでは中央値を主、平均を参考とするのが実務の標準です。
- 平均と中央値の乖離そのものが情報です。処理前は平均14.0倍が中央値12.0倍を2.0倍上回っており、これは「分布が上側に歪んでいる=突出した1社がいる」というサインです。乖離が大きいときは、必ずその1社の理由を調べます。
- 「中央値を使ったから客観的」ではありません。母集団(誰を入れたか)の決め方のほうが、代表値の選び方よりはるかに結果を左右します。だから6軸マトリクスと採否理由を残します。
PERも同じ構図です。5社のPERは 16・18・20・21・38倍で、合計113倍、平均 113 ÷ 5 = 22.6倍、中央値20.0倍。ここでもアオバの38倍が平均を押し上げています。
評価レンジへの落とし込み
採用倍率を決めたら、対象企業のLTM EBITDA 7,200百万円に掛けてEVを出し、ネットデット12,400百万円を差し引いて株主価値を求めます(単位:百万円)。
| 採用倍率 | 根拠 | EV | 株主価値 |
|---|---|---|---|
| 10.0倍 | ショートリスト最小値 | 72,000 | 59,600 |
| 11.5倍 | アオバ除外時の中央値・平均 | 82,800 | 70,400 |
| 12.0倍(中心値) | 5社の中央値 | 86,400 | 74,000 |
| 13.0倍 | Q3(QUARTILE.INC) | 93,600 | 81,200 |
検算します。7,200 × 12.0 = 86,400、86,400 - 12,400 = 74,000。7,200 × 10.0 = 72,000、72,000 - 12,400 = 59,600。7,200 × 13.0 = 93,600、93,600 - 12,400 = 81,200。7,200 × 11.5 = 82,800、82,800 - 12,400 = 70,400。したがって株主価値レンジは59,600〜81,200百万円、中心値74,000百万円です。なお政策保有株式(税効果考慮後1,400)を非事業資産として控除する方針を採る場合、中心値は 74,000 + 1,400 = 75,400百万円になります。EVから株主価値への調整項目の詳細はEVからエクイティバリューへのブリッジで確認してください。
Excelでの実装
採点表はスプレッドシート1枚で完結します。列構成の例です。
- 入力列:社名/証券コード/決算期/会計基準/LTM売上高/LTM EBITDA/3年CAGR/海外比率/EV/情報源(短信の公表日)
- 計算列:EBITDAマージン=EBITDA÷売上高、規模倍率=売上高÷対象売上高、各軸の素点を
IFSまたはLOOKUPで閾値から自動判定 - 採点列:合計=①×2+②+③+④+⑤+⑥、採否=
IF(AND(合計>=14, ①素点>=2), "採用", "除外") - 統計列:
MEDIAN/AVERAGE/QUARTILE.INC/QUARTILE.EXCを並べ、フェンスも両方式で計算して結論が一致するか確認 - 記録列:採否理由(AI草案を人が確定)/確認日/確認者
閾値を数式に埋め込むと、後から基準を変えたときに全社が一斉に再採点されます。基準を変えた履歴(いつ、なぜ、どの閾値を変えたか)も同じシートに残してください。ピア選定でいちばん問われるのは「なぜこの5社なのか」であり、その答えは数式ではなく記録に残ります。
AI出力の検証方法(ピア選定に固有の項目)
検証の一般的な型は生成AI出力の検証手順に譲り、ここではピア選定でしか出てこない検証項目だけを挙げます。
- 実在・上場・市場区分の確認:AIが挙げた全社について、EDINETの提出書類と各社IRで確認する。1社でも確認できなければ、その行は候補から削除する(「たぶん実在する」で残さない)。
- 社名の同定:持株会社と事業会社、旧社名と現社名を取り違えていないか。連結財務諸表を出しているのがどちらかを確認する。
- 決算期・会計基準の突合:AIが「3月決算」と書いていても、必ず短信の表紙で確認する。決算期変更(変則決算)があると、その期のLTMが12か月分でなくなる。
- LTMの期間一致:全ピアのLTMが同じ12か月をカバーしているか。1社でもずれていると、比較が成立しない。
- EBITDA定義の統一:全社について、営業利益の起点・のれん償却・持分法・非継続事業・リース費用の扱いが同じ方針になっているかを一覧で確認する。
- EVの構成要素:時価総額の基準日が全社同じか、ネットデットに含めた項目(リース債務・優先株・少数株主持分・年金債務)が全社同じか。
- 採点の再計算:合計点を手作業で1社だけ再計算し、シートの数式結果と一致するか確認する。
- 統計量の再計算:中央値・平均・四分位を、AIに計算させず自分で計算する。フェンスは2方式とも算出し、結論が割れたら財務的な理由で判断する。
- 採否理由の事実照合:AIが書いた理由文の中の数値・比率・セグメント名が、すべて入力表に存在するか照合する。表にない固有名詞や数値が出てきたら、その文は削除する。
- 断定表現の削除:「割安」「妥当」「明らかに」といった評価語は、AI草案から必ず削る。
機密情報・個人情報の注意
ピア選定そのものは上場企業の公開情報で完結しますが、「どの会社を評価対象にしているか」という情報は未公表の案件情報であり、外部AIサービスに入力すべきではありません。事業内容を渡すときも、対象企業が特定できる固有名詞・製品名・取引先名は伏せ、業種と数値レンジだけで記述してください。判断の枠組みと社内ルールの作り方は生成AIに入れてよい情報・いけない情報にまとめてあります。
よくある失敗
- AIが出した社名リストをそのまま採点表に入れる。非上場会社や社名の取り違えが混ざり、後工程で全部やり直しになります。採点の前に実在確認を挟むのが唯一の対策です。
- 絞り込む前の集合で中央値を計算する。ロングリスト8社の中央値(11.5倍)と、ショートリスト5社の中央値(12.0倍)は別物です。統計量は必ず絞り込み後に出します。
- 決算期を揃えずに倍率を並べる。3月決算と12月決算が混在したままだと、比較しているのは会社の差ではなく期間の差になります。
- 「営業利益+減価償却費」で全社のEBITDAを機械的に作る。IFRS会社に一過性損益が混入し、日本基準会社にはのれん償却が残ったままになります。
- 外れ値を理由を調べずに除外する。分母が一時的に小さいだけなら、正常化して残すのが正しい処理です。逆にTOB観測が理由なら、フェンスの内側にあっても除外すべき場合があります。
- 採否理由を「事業が似ているため」で済ませる。数か月後に「なぜこの会社を外したのか」と聞かれて答えられなくなります。軸・点数・数値の3点セットで記録してください。
実務チェックリスト
- 評価対象の事業の輪郭(製品・顧客・収益モデル・地域)を、採点前に文章で定義した
- AIには社名候補と理由だけを出させ、数値・証券コードは出させていない
- 候補全社の実在・上場・市場区分をEDINETと各社IRで確認した
- 持株会社と事業会社、旧社名と現社名を取り違えていないか確認した
- 直近1年の適時開示で、経営統合・上場廃止・決算期変更の有無を確認した
- 6軸の判定基準を数値の閾値で先に決め、採点前に文書化した
- 全ピアのLTMが同じ12か月をカバーしている
- 期ずれ調整に使った四半期決算短信の公表日と訂正の有無を記録した
- EBITDAの定義(営業利益の起点・のれん償却・持分法・非継続事業・リース)を全社で統一した
- EVの時価総額基準日と、ネットデットに含める項目を全社で統一した
- 政策保有株式を非事業資産として控除するかどうかの方針を明記した
- 統計量は絞り込み後の集合で計算し、中央値を主・平均を参考とした
- 外れ値について、分子側・分母側のどちらが原因かを開示資料で確認した
- 採否理由を全社分、軸・点数・根拠数値の3点セットで記録した
- AI草案から断定的な評価語を削除し、数値をすべて入力表と照合した
面接での答え方(30秒回答例)
質問例:「類似会社をどう選びますか。AIは使いますか」
「候補出しの初期段階だけAIを使います。事業内容の説明から候補社名と理由を挙げさせ、数値や証券コードは出させません。そのうえで、全社の実在・上場・決算期をEDINETと各社IRで確認します。採否は、事業類似性・地域・規模・利益率・成長率・決算期と会計基準の6軸で採点し、事業類似性だけ重みを2倍にした20点満点で判断します。日本企業では3月決算と12月決算の期ずれ調整と、日本基準とIFRSの営業利益の定義差の調整が必ず論点になるので、そこは数式で機械的に処理します。外れ値は除外の前に、分母が一時的に小さいのか分子に成長期待が乗っているのかを開示資料で確認します」
よくある質問(FAQ)
Q. ピアは何社くらい必要ですか。
A. 案件や業種によりますが、5〜10社に収まることが多く、本記事の設例も5社です。社数を増やすほど統計は安定しますが、事業の似ていない会社を足して社数を稼ぐと、代表値が業界平均に近づくだけで対象企業の評価にはなりません。少数でも採否理由が説明できる状態を優先してください。
Q. AIに証券コードや財務数値を出させて、後から確認すればよいのではありませんか。
A. 確認作業の量が増えるだけで得はありません。もっともらしい数値が出てくると、確認が形式的になりやすいという実務上のリスクもあります。数値は最初から開示資料から取り、AIには数値を扱わせないほうが速く、安全です。
Q. 米国のGICSのような業種分類でスクリーニングすればよいのでは。
A. 業種分類は候補の入口としては有効ですが、日本の報告セグメントは「産業機器事業」のように大括りなことが多く、同じ分類でも事業構成が大きく異なります。分類は入口に使い、採否は6軸マトリクスのようにセグメント別の実態で判断してください。
まとめ
類似会社の選定でAIが効くのは、最初の候補出しと最後の理由の文章化という両端です。真ん中にある実在確認・数値取得・期ずれ調整・会計基準の統一・採否の確定は、いずれも人が担う工程で、ここを省くと成果物の信頼性がまとめて失われます。6軸20点のスコアリングマトリクスと採否理由の記録を残しておけば、「なぜこの5社なのか」という問いにいつでも答えられます。外れ値は除外する前に理由を調べ、分母の一時的要因なら正常化して残し、支配権プレミアムの混入なら除外する。中央値を主、平均を参考にしつつ、両者の乖離そのものを分布の歪みのサインとして読む。この規律が、AIを使っても崩れない評価の土台になります。
出典・参考(2026-08-03確認)
- 金融庁「EDINET(金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)」書類検索 https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp/week0010.aspx
- 金融庁「EDINET利用規約」 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/guide/static/disclosure/WZEK0030.html
- 日本取引所グループ(東証)「適時開示が求められる会社情報」 https://www.jpx.co.jp/equities/listing/disclosure/info/index.html
- 日本取引所グループ「統計月報(株式関連)」 https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/monthly/index.html
- 日本取引所グループ「サイトのご利用上の注意と免責事項」 https://www.jpx.co.jp/term-of-use/
- 企業会計基準委員会(ASBJ) https://www.asb-j.jp/jp/
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・会計・投資に関する助言ではありません。実際の判断は専門家にご確認ください。設例は理解のための仮設例です。AI製品の仕様・料金は変更されることがあるため、利用前に各社の公式情報をご確認ください。