この記事で分かること
- 投資ケース(この会社を買うべきか)の標準的な進め方——6ステップの型
- コンサルのケース面接との決定的な違い:価格と数字に着地する
- 評価される思考の見せ方と、詰まったときのリカバリー
問いの形:「良い会社か」ではなく「buyか」
PE・IBの面接ケースは「この会社(業界)に投資すべきか」「クライアントはこの買収を進めるべきか」という形で出ます。コンサルケースと似て見えますが、求められる着地点が違います——「示唆」ではなく「価格つきの結論」。市場が魅力的でも、値段次第で答えは変わる(良い会社≠良い案件)——この一段を持っているかが最初の分岐です。
6ステップの型
| ステップ | やること |
|---|---|
| ①問いの確認(30秒) | 買い手は誰か(PE か事業会社か——払える価格の構造が変わる)、時間軸、成功の定義(IRR目線か戦略目的か) |
| ②事業の構造(3分) | 何で稼ぐか:顧客・収益モデル・競争優位。ドライバー分解(P×Qの型)で骨格を宣言 |
| ③市場と競争(3分) | 成長性・構造(寡占か断片か——断片ならロールアップの目)・自社の位置 |
| ④財務とリターンの当たり(5分) | EBITDA水準→入口倍率の仮置き→LBOならレバレッジとFCFでペーパーLBO級の概算。「◯xで買って◯年後◯xで売れるなら、IRRはおよそ◯%」 |
| ⑤リスクと打ち手(3分) | 失敗シナリオ(本物の悲観)と、価格・契約・実行での手当て |
| ⑥結論(1分) | 「◯◯という条件(価格上限・確認事項)つきでbuy/見送り」。条件付きの決断が最も実務的な着地 |
コンサルケースとの違い(両刀使いのための整理)
- 着地:コンサル=施策の提言/IB・PE=価格と投資判断。「参入すべき」で終わると片翼です。
- 数字の扱い:市場規模の推定(フェルミ)より、利益とキャッシュへの換算(マージン・倍率・レバレッジ)が主戦場。暗算の錨(5年で2倍=15%)を装備しておく。
- リスクの語法:「リスクは3つあります」で終えず、ダウンサイドでも投資が守られる構造(価格・コベナンツ余地・契約)まで言う。
- 共通する武器:構造化・仮説思考はそのまま通用します。戦コン出身者は翻訳表で財務の語彙だけ足せば強い。
評価される所作・詰まったときのリカバリー
- 宣言してから潜る:「②③を2分ずつで見て、④で数字に落とします」——地図を先に見せる人は安心して聞けます。
- 数字を丸める勇気:「概算で」と断って整数で走る(丸めの作法)。精密さの演出より構造の正しさ。
- 詰まったら原則に戻る:「価値はFCF×リスク×時間なので(物差し)、まずFCFの安定性から確認させてください」——原則からの再出発は、沈黙よりはるかに高評価です。
- 問われたら喜んで修正する:面接官の突っ込みは追加情報。固執せず「その前提なら結論はこう変わります」と感応度で応じる(感応度の頭)。
Q. 業界知識がない業種のケースが出たら?
A. 知識でなく構造で戦います。「この業界は詳しくないので、収益モデルの確認から入らせてください——顧客は誰で、何に対して支払い、繰り返し買いますか?」。良い質問は知識の欠如を補って余りある評価になります。
Q. 計算ミスに途中で気づいたら?
A. 即座に申告して直します。「先ほどの残債、引き忘れがありました。正しくは◯です。結論は変わりません/変わります」。ミスの隠蔽・辻褄合わせだけが不合格級で、自己検算からの修正はむしろ実務能力の証明です。
まとめ
- 投資ケースの着地は「価格つきの結論」。良い会社かではなく、いくらならbuyか。
- 6ステップ:問い→事業→市場→数字の当たり→リスクと手当て→条件付き決断。
- 宣言・丸め・原則への回帰・修正の潔さ——所作が思考の質を伝える。
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本記事について
本文中の数値例はすべて理解のための設例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。制度・実務慣行に触れる箇所は一般的傾向の整理です。個別案件への適用時は必ずその時点の一次情報・専門家にご確認ください。