この記事で分かること
- ICO・IEO・STOを、何を売るか・誰が売るか・誰が審査と開示を担うか・誰が買えるかで並べ、日本の手続の違いを見分ける方法
- 学習用の架空事例(A社が手取り300百万円を集める)で、株式・J-KISS・ICO型・IEO型・STO型を比べる表の作り方
- 発行体が最初に決める3つの問いの判断手順と、2026年7月に成立した暗号資産関連の法改正の位置づけ
想定読者:スタートアップの資金調達を学ぶ方、VCや事業会社で出資・投資の検討に関わる方
前提知識:株式と新株予約権の基本(暗号資産の知識は不要です。J-KISSの仕組みは既存記事に委ねます)
結論:ICO・IEO・STOの違いは「誰が売り、誰が審査し、買い手にどんな権利が付くか」で決まり、適用される法律も分かれる
トークンによる調達は、付ける権利と販売の担い手によって、適用される法律と必要な登録業者が変わります。日本では、トークンが資金決済法の暗号資産に当たる場合(ICOとIEO)と、収益分配などの権利を表して金融商品取引法の有価証券として扱われる場合(STO)に大きく分かれます。1結論は次の3点です。時点は2026年10月3日で、日本法の一般的な整理です。
- ICOは、発行体が自らトークンを売る形です。トークンが暗号資産に当たるなら、金融庁の事務ガイドラインは、これを業として売る行為を暗号資産交換業に当たるとしています。発行体が自分で売るなら、発行体自身の登録が論点になります。2
- IEOは、登録を受けた暗号資産交換業者が発行体の依頼で売る形です。対象事業の審査、情報の提供、調達資金の管理といった責任の一部を、交換業者が負う点がICOとの実務上の違いです。3
- STOは、事業収益の分配を受ける権利などをトークンで表す形です。有価証券なので、開示規制と、金融商品取引業者の関与が前提になります。
学習用の例(図表3)では、トークンで集めると株式の希薄化は避けられる一方、費用や分配の義務という別の負担が生じることを、数字で確認します。
対象時点と言葉の整理:ICOを「IPOのトークン版」と呼ばない理由
暗号資産の規制は現在、資金決済法にあります。2026年7月23日に公布された改正法(令和8年法律第64号)は暗号資産の規制を金融商品取引法へ移しますが、施行は公布から1年を超えない範囲で政令が定める日です。本稿では政令を確認できていないため、現行の規制を前提に説明し、改正の要点は第8節にまとめます。4
ICO(Initial Coin Offering)は、金融庁の注意喚起で「企業等が電子的にトークン(証票)を発行して、公衆から資金調達を行う行為の総称」とされ、法律上の定義はありません。5IEO(Initial Exchange Offering)は、金融庁の法案説明資料で、暗号資産取引業者(現行法の暗号資産交換業者)が発行者の依頼に基づいて販売する暗号資産を指す語として使われています。6STO(Security Token Offering)は、本稿では収益分配などの権利を表すトークンの募集を指し、法令上の用語は電子記録移転有価証券表示権利等です。
ICOは「IPOのトークン版」と説明されることがあります。CFIも、最も正確な比較ではないと述べ、特徴として、仲介者を省いて企業と投資家が直接つながる点と、トークンが通常は株式持分でなく製品・サービスへの持分を与える点を挙げています。7これは一般的な概念の説明です。日本では、収益分配などの権利を付けると有価証券として扱われる場合があり、仲介者を省くことは規制を省くことを意味しません。比較の軸は、トークンに付く権利と、販売・審査・開示を誰が担うかです。
類型比較:同じ「トークンで調達」でも、売り手・審査者・買い手が違う
図表1は、3つの類型を並べた表です。本稿では、JVCEA(日本暗号資産等取引業協会)の規則が定める自己販売業務をICO型、受託販売業務をIEO型と呼びます(編集部の整理)。
| 項目 | ICO型(自己販売) | IEO型(受託販売) | STO型 |
|---|---|---|---|
| 売るもの | 暗号資産に当たるトークン(権利の中身は設計次第) | 収益の分配などを受ける権利を表すトークン(有価証券) | |
| 売り手 | 発行体自身 | 暗号資産交換業者(発行体の依頼) | 金融商品取引業者(募集の取扱い) |
| 必要な登録 | 暗号資産交換業(発行体が自ら売る場合) | 登録済みの暗号資産交換業者が売る | 第一種金融商品取引業(募集の取扱い) |
| 審査・開示の担い手 | 登録した発行体自身が、対象事業の審査と情報開示の態勢を整える | 交換業者の独立した審査部門が審査。協会が検証 | 開示は有価証券届出書(募集の場合)。販売業者は自主規制で取引開始基準を定める |
| 主な法令・規則 | 資金決済法、日本暗号資産等取引業協会の規則 | 金融商品取引法、日本証券業協会の規則 | |
| 買い手の範囲 | 規則上の資格要件は、読んだ範囲では確認できず(プロ向けトークン販売は対象投資家のみ) | 募集は不特定多数向け、私募は人数・属性で限定 | |
| 投資家が得る権利 | 設計次第(収益分配を付けるとSTO側の扱いになる) | 収益の分配等を受ける権利 | |
なお、プロ向けトークン販売は、対象投資家を相手方とする場合に限って行える別の枠組みです。8
ICOとIEOの手続:暗号資産に当たるトークンを売るには何が必要か
入口は、トークンが暗号資産に当たるかどうかです。資金決済法は暗号資産を、不特定の者への代価の弁済に使え、不特定の者を相手方として購入・売却できる電子的な財産的価値(第1号)と、それと相互に交換できるもの(第2号)と定めます。法定通貨、通貨建資産、電子決済手段(ステーブルコインなど)と、電子記録移転有価証券表示権利等を表示するものは、暗号資産から除かれます。暗号資産の売買・交換や、その媒介・取次ぎ・代理を業として行うことが暗号資産交換業で、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ行えません。9
金融庁のガイドラインは、交換業者が発行者の依頼で販売し、発行者が販売を全く行わない場合は、発行者の行為は基本的に暗号資産交換業に該当しないと考えられるが、関与の度合いなどから最終的には個別に判断するとしています。10発行体が自ら売る場合の登録では、法律が、株式会社であること、財産的基礎、業務を適正かつ確実に遂行する体制の整備などを、登録の拒否事由として挙げています。11新たに登録を取るのか、登録を受けた交換業者に委ねるのかが、ICO型とIEO型の分かれ目です。
IEO型の手続は、JVCEAの規則に沿って進みます。規則は、会員(暗号資産交換業者)が受託販売業務を行うとき、対象事業の実現可能性等、情報の提供・公表の態勢、調達資金の管理態勢などを、営業部門から独立した部署が審査し、協会が検証すると定めます。実現可能性等が低いと判断されたときは販売できません。販売価格の妥当性も審査し、販売総額と発行総量は、事業計画で必要とされる資金額を上回らないようにします。調達資金は区分して管理し、販売前に購入者へ情報を提供・公表し、販売後は発行者の履行状況を確認します。12
発行体は、受託契約を通じて、情報の提供・公表、資金管理、勧誘・広告の適正化の態勢を整えます。また、規則のガイドラインは、発行者が販売方法や販売先を個別に指示して自ら売るのと同視できる場合や、広告・勧誘に関与する場合に、発行者にも登録が必要となる可能性があるとしています。13IEOにすれば発行体が販売から離れられる、とは限りません。
図表2のとおり、ICO型は発行体と投資家が直接つながり、IEO型とSTO型は間に登録業者が入ります。ICO型で仲介者がいないのは、登録の義務を発行体自身が負う形だからです。
STOの手続:有価証券としての開示と、第一種金融商品取引業者の関与
金融商品取引法は、信託の受益権や集団投資スキーム持分(出資した金銭を充てて行う事業の収益の配当や財産の分配を受ける権利)などを、有価証券とみなします。これらがトークンに表示されるものが、内閣府令で電子記録移転有価証券表示権利等と呼ばれ、そのうち流通性などを勘案して除かれるものを除いたものが電子記録移転権利で、第一項有価証券として扱われます。譲渡制限などの設計はこれに当たるかに影響し得ますが、内閣府令の中身は本稿では確認していません。14
資金決済法の暗号資産の定義は、これらを表示するものを除いています。同じトークン技術でも、収益分配の権利を表すものは有価証券の側で扱われ、金融庁のガイドラインも、電子記録移転権利を表示するものは暗号資産に該当しないと書いています。15不動産の信託受益権をトークン化する具体例と分配金の計算は、不動産STOに委ねます。
取得の勧誘が「募集」に当たる場合、発行者は原則として有価証券届出書を提出しなければ募集できません。発行価額の総額が1億円未満で内閣府令で定めるものなどは除かれます。募集に当たらない勧誘が私募で、区分は募集と私募の区分基準に委ねます。16
STOの募集の取扱いなどを業として行うには、第一種金融商品取引業の登録が要ります。同法第28条第1項第1号が、みなし有価証券を第一種から原則として外しつつ、電子記録移転権利は対象に残しているためです。17一方、発行体が自ら募集する行為は、条文上は第二種金融商品取引業の枠に入る書き方になっています。登録の要否は個別の事案で決まるため、本稿は判断しません。18販売する証券会社には日本証券業協会の自主規制もかかり、2020年6月17日公表の改正(同年7月1日施行)は、取引開始基準を定めることと、初めての取引で顧客から確認書を徴求することを会員に求めました。19(現行の条文は未確認です。)
数値例:同じ300百万円を5つのルートで集めると、何が違うか
以下は学習用の架空事例です。創業3年・従業員18名のポイント連携アプリ運営会社「A社」が、手取り300百万円を調達します。外部費用率・評価額・分配条件はすべて仮定で、実在の相場や実績ではありません。
- 手取り目標:300百万円。株式の調達前評価額:1,200百万円
- 外部費用率(募集総額に対する割合):株式1.0%、J-KISS0.5%、IEO型8.0%、STO型5.0%。ICO型は費用を見積もらない
- STO型:対象事業の年間収益(分配前)100百万円、分配割合30%、期間5年(収益に連動して分配する設計)
必要な募集総額と外部費用
募集総額 = 手取り目標 ÷(1 - 外部費用率)
外部費用 = 募集総額 × 外部費用率
株式は300÷(1-0.010)=303.03…で303.0、外部費用は3.0です。J-KISSは300÷0.995=301.50…で301.5、外部費用は1.5です。IEO型は300÷0.920=326.08…で326.1、外部費用は26.1です。STO型は300÷0.950=315.78…で315.8、外部費用は15.8です。小数第2位を四捨五入しており、表示値どうしの差(303.0-3.0など)はいずれも300.0に戻ります。
| ルート | 投資家が得る権利 | 発行体の主な負担 | 必要な登録業者・手続 | 外部費用率(仮定) | 募集総額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 株式 (第三者割当) | 議決権、配当、残余財産の分配を受ける権利 | 持分20.2%の希薄化(調達前評価額1,200の仮定) | 発行体が直接割り当てる。募集に当たる場合は届出 | 1.0% | 303.0 |
| J-KISS | 将来、株式へ転換できる権利(新株予約権) | 転換時まで持分は未確定。転換条件はキャップ等で決まる | 株式と同様に、募集・私募の区分を確認 | 0.5% | 301.5 |
| ICO型 | 設計次第(収益分配を付けるとSTO型の扱い) | 暗号資産交換業の登録と体制整備、情報提供、資金の区分管理 | 暗号資産交換業の登録(発行体自身) | 置かない | - |
| IEO型 | 設計次第(同上) | 交換業者の審査への対応、情報の提供・公表、資金管理。販売への関与は抑える | 登録済みの暗号資産交換業者に委託 | 8.0% | 326.1 |
| STO型 | 事業収益の分配を受ける権利(仮定:年30、5年) | 分配の義務(年30、5年累計150)。有価証券としての開示 | 第一種金融商品取引業者(募集の取扱い) | 5.0% | 315.8 |
図表3の読み方は次のとおりです。
- 株式は希薄化が起きます。調達前評価額が1,200なら、303.0÷(1,200.0+303.0)=20.2%です。株主には、会社法が配当・残余財産の分配を受ける権利と議決権を与えています。20J-KISSの持分計算はJ-KISSとはに、法的な受け皿は新株予約権による調達に委ねます。
- STO型は、株式の希薄化は起きない代わりに、分配の義務が生じます。年間分配額は100×30%=30、5年累計は30×5=150です。募集総額315.8に対しては、年30÷315.8=9.5%、5年累計150÷315.8=47.5%です。
- IEO型では、販売総額が事業計画で必要とされる資金額を上回らないことが審査項目です。必要資金額を300と置くなら、費用を見込んだ総額326.1との差26.1の扱いは、交換業者に確認する事項です。ICO型は、A社自身が登録を取るかが先に決まるため、試算しません。
株式投資型クラウドファンディングは、株式を募る別のルートで権利は株式に近いため、図表3には入れていません(株式投資型クラウドファンディングの解説)。株式の希薄化を避けた分、STO型では分配の義務、IEO型では費用、ICO型では登録という別の負担が現れます。
発行体が最初に決める3つの問い:権利、販売の担い手、買い手
図表4は、調達設計の最初の分岐です(分類の判定手順の詳細は扱いません)。問い1は、トークンに収益分配や事業持分の権利を付けるかどうかです。金融庁のガイドラインは、事業収益等の分配を受ける権利が表示されているなど、ICOが投資としての性格を有する場合は、金融商品取引法の規制対象になるとしています。付けるなら有価証券の側で設計し、付けないなら、暗号資産に当たる設計かを確認します。21
問い2は販売を誰に委ねるかで、暗号資産の側では自分で売る(ICO型)か交換業者に委ねる(IEO型)かを、有価証券の側では取扱いを任せる第一種金融商品取引業者を選びます。問い3は誰に売るかです。
図表4の不適合の例は、収益分配を付けたトークンを、交換業者の販売の枠だけで売る設計です。JVCEAの規則は、収益分配の債務を負うトークンの販売には適用されず、電子記録移転権利の募集の取扱いは、第一種金融商品取引業の登録を受けた者の業務です。
2026年7月に成立した改正法で変わること:法案資料に基づく概観
以下は、2026年4月時点の法案の概要・説明資料の記載です。成立した条文の細部は精査していません。22
- 暗号資産取引の規制を資金決済法から金融商品取引法へ移し、有価証券とは別の金融商品とします。暗号資産交換業者は暗号資産取引業者に名称が変わります。
- IEOトークンなど発行者のいる暗号資産(特定暗号資産)では、発行者が募集・売出しの前に、経理の状況、暗号資産の性質・機能・供給量・基盤技術などを公表し、臨時情報と年1回の定期情報も公表します。財務監査が行われていない場合は投資上限を設ける予定です。
- 虚偽記載への民事責任・罰則・課徴金と、インサイダー取引規制を整備します。有価証券届出書の提出免除基準を1億円未満から5億円未満へ引き上げる改正も含まれ、参議院の議案要旨では施行は2027年4月1日です(細目の内閣府令は未確認)。23
IEO型では、図表1で交換業者の審査と協会規則が担うとしていた部分に、発行者自身の情報公表の義務が法律上加わる方向です。STO型は現在も金融商品取引法の有価証券であり、法案資料の暗号資産の章には、STOそのものの変更点は書かれていません。設計する時点では、施行日を定める政令と成立した条文の確認が必要です。
投資する側の確認観点と、この記事の限界
出資・投資を検討する側は、トークンが持つ権利の内容(収益分配、議決、償還の有無)、販売を担う登録業者の登録、開示資料(届出書、協会規則に沿った販売前の情報)を確認します。分配や提供の義務が財務に与える影響はキャップテーブルと希薄化と並べ、交換業者の体制は交換業者のガバナンスDDで確認します。期末評価は暗号資産の期末評価と暗号資産の会計処理に委ねます。
本稿は一般的な整理で、特定の企業やトークンが各規制に当たるかは判断しません。IEOの国内実例は、本稿では確認していないため書いていません。
実務チェックリスト
- トークンに収益分配や事業持分の権利を付けるかを、販売方法より先に決めたか
- 暗号資産に当たる設計か、電子記録移転有価証券表示権利等に当たる設計かを、専門家と確認したか
- IEO型なら、交換業者の審査項目(実現可能性、情報の提供・公表、資金管理)に対応できる態勢が自社にあるか
- STO型なら、募集か私募か、第一種金融商品取引業者を誰にするか、届出書の要否を確認したか
- 株式・J-KISSと並べた比較表に、持分の希薄化だけでなく、分配義務・費用・登録の負担を入れたか
よくある質問(FAQ)
収益分配を付けなければ、金融商品取引法の対象にならないのですか。
収益分配の有無だけでは決まりません。ガイドラインは、投資としての性格を有する場合を金融商品取引法の対象としており、性格は権利の内容などから個別に判断されます。
IEOとSTOは、どちらも登録業者が売るので同じ手続ですか。
違います。IEOは暗号資産交換業者がJVCEAの規則に沿って売り、STOは金融商品取引業者が有価証券として売ります。根拠法も、審査・開示の担い手も異なります。
まとめ
ICO・IEO・STOの違いは、売り手、審査・開示の担い手、買い手、そして投資家に付く権利で整理できます。日本では、トークンが暗号資産に当たるか有価証券に当たるかで、資金決済法と金融商品取引法のどちらの手続になるかが分かれます。A社の学習用の例では、トークンで集めても希薄化の代わりに別の負担が生じました。発行体は、権利、販売の担い手、買い手の順に決め、株式・J-KISSと同じ表で比べます。
脚注
- 資金決済法第2条第14項は暗号資産の定義を定め、ただし書で「金融商品取引法第二十九条の二第一項第八号に規定する権利を表示するもの」を除いています。金融商品取引業等に関する内閣府令第1条第4項第17号は、電子記録移転有価証券表示権利等を「法第二十九条の二第一項第八号に規定する権利」と定めています(参考文献 R3・R5)。↩
- 金融庁「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)16 暗号資産交換業者関係」Ⅱ-2-2-8-1は、ICOで発行されるトークンが資金決済法第2条第14項の暗号資産に該当する場合、当該トークンを業として売却または他の暗号資産と交換する行為は暗号資産交換業に該当するとしています(R6)。↩
- 日本暗号資産等取引業協会「新規暗号資産の販売に関する規則」(2024年2月9日一部改正)第2条第5号は自己販売業務を「会員自ら発行する新規暗号資産の販売を行う業務」、第6号は受託販売業務を「会員が発行者の依頼に基づき新規暗号資産の販売を行う業務」と定義しています(R7)。↩
- 令和8年法律第64号「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」は、令和8年4月10日提出、同年7月15日参議院で可決、7月23日公布と衆議院の議案審議経過に記載されています(R12)。附則第1条は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内で政令で定める日に施行するとし、公布から20日を経過した日に施行する規定(罰則関係など)を別に定めています(R13)。参議院の議案情報も、同年7月15日の本会議可決、7月23日公布、法律番号64を記載しています(R14)。暗号資産に係る規定の施行日を定める政令は、本稿では確認していません。↩
- 金融庁「ICO(Initial Coin Offering)について~利用者及び事業者に対する注意喚起~」(平成29年10月27日)の「1.ICOとは」に、ICOは企業等が電子的にトークン(証票)を発行して公衆から資金調達を行う行為の総称とあります。「3.事業者の方へ」には、仕組みによって資金決済法や金融商品取引法等の規制対象となり、登録なしに事業を行った場合は刑事罰の対象となるとあります(R2)。↩
- 金融庁「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料」(2026年4月)p.3 は、発行者がいる暗号資産(特定暗号資産)の例として「IEOトークン」を挙げ、IEOを「暗号資産取引業者が発行者の依頼に基づいて販売する暗号資産」と注記しています(R11)。↩
- Corporate Finance Institute「Initial Coin Offering (ICO)」は、ICOを暗号資産・ブロックチェーンの環境での資金調達活動で、IPOになぞらえて見ることはできるが最も正確な比較ではないと述べ、主な利点を仲介者を排して企業と投資家が直接つながる点に置き、トークンは通常は株式持分を与えず、多くは製品やサービスへの持分を与えると説明しています。一般的な概念の説明であり、日本の制度の根拠ではありません(R1)。↩
- 事務ガイドライン16 Ⅱ-2-2-9は、プロ向けトークン販売を、企業等が発行者となって暗号資産を発行し、その売却等を暗号資産交換業者に依頼して対象投資家から調達する行為と定義し、この販売は対象投資家を相手方とする場合に限って行い得るとしています(R6)。↩
- 資金決済法第2条第14項(暗号資産。第1号・第2号と除外)、第15項(暗号資産交換業。第1号 売買・交換、第2号 その媒介・取次ぎ・代理)、第63条の2(内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ暗号資産交換業を行ってはならない)。電子決済手段は同条第5項に定めがあります(R3)。↩
- 同ガイドラインⅡ-2-2-8-1(注1)。交換業者がトークンの発行者の依頼に基づいて販売を行い、発行者がその販売を全く行わない場合は、発行者の行為は基本的には暗号資産交換業に該当しないと考えられるとし、発行者と交換業者の契約内容、販売行為の内容、発行者による販売への関与の度合い等を考慮の上、最終的には個別具体的に判断することに留意するとしています(R6)。↩
- 資金決済法第63条の5第1項は、登録申請者が株式会社等でないとき、内閣府令で定める基準に適合する財産的基礎を有しないとき、暗号資産交換業を適正かつ確実に遂行する体制の整備が行われていないときなどを、登録の拒否事由として定めています(R3)。↩
- 同規則 第15条第1項(受託販売審査項目の6点)、同条第5項(実現可能性等が低いなどの場合は受託販売をしてはならない)、第9条(審査部門の独立性)、第15条第4項(協会による審査結果の検証)、第18条第1項・第2項(販売価格の妥当性、販売総額・発行総量が事業計画で必要とされる資金額を上回らないこと)、第6条(調達資金の区分管理)、第5条・第15条第6項(販売前の情報提供と公表)、第16条(履行状況のモニタリングと、不備が続く場合の取扱い中止・契約解除など)(R7)。↩
- 同規則のガイドライン(第1条関係)は、発行者が国内居住者への販売を全く行わない場合は原則として発行者の登録は不要とする一方、(注3)発行者が販売方法や販売先を交換業者に個別具体的に指示し自ら販売する場合と同視できるとき、(注4)発行者が広告・宣伝・勧誘に関与する場合には、関与の態様・程度・内容によっては、発行者にも暗号資産交換業の登録が必要となる可能性があるとしています。また、同規則は発行者が将来の事業収益等を分配する債務を負担するトークン(投資性を有するトークン)の販売には適用されないとしています(R7)。↩
- 金融商品取引法第2条第3項の括弧書は、同条第2項各号に掲げる権利で、電子情報処理組織を用いて移転できる財産的価値に表示される場合(流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定める場合を除く)を「電子記録移転権利」とし、第一項有価証券として扱っています。第2条第2項第5号は集団投資スキーム持分(出資した金銭を充てて行う事業から生ずる収益の配当や財産の分配を受ける権利)を定めています。金融商品取引業等に関する内閣府令第6条の4は、法第29条の2第1項第8号の権利を、財産的価値に表示される場合に該当するものと定めています(R4・R5)。↩
- 事務ガイドライン16 Ⅰ-1-1(注)は、資金決済法第2条第14項各号の内容を充足する場合でも、金融商品取引法第2条第3項に規定する電子記録移転権利を表示するものは暗号資産に該当しないとしています(R6)。↩
- 金融商品取引法第2条第3項(有価証券の募集・私募の定義)、第4条第1項(募集・売出しの届出。ただし書第5号に、発行価額または売出価額の総額が1億円未満で内閣府令で定めるものの除外)(R4)。↩
- 金融商品取引法第28条第1項第1号は、第一種金融商品取引業に、有価証券(同法第2条第2項のみなし有価証券は電子記録移転権利を除いて除く)についての第2条第8項第1号から第3号まで、第5号、第8号、第9号の行為を含めています。第9号は有価証券の募集もしくは売出しの取扱い、または私募もしくは特定投資家向け売付け勧誘等の取扱いです。登録は第29条にあります(R4)。↩
- 金融商品取引法第2条第8項第7号は、列挙した有価証券(ヘは第2条第2項第5号・第6号に掲げる権利)の募集または私募を金融商品取引業の行為とし、第28条第2項第1号は同号の行為を第二種金融商品取引業と定めています(R4)。↩
- 日本証券業協会「電子記録移転有価証券表示権利等の法令上の整備に伴う『協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則』等の一部改正について」(令和2年6月17日)は、第2条第10号でトークン化有価証券を定義し、第6条第1項第10号で取引開始基準を定めるべき取引に含め、第8条第4項で初めての取引時に確認書を徴求することを定めるとし、施行は令和2年7月1日としています(R8)。↩
- 会社法第105条第1項は株主の権利として剰余金の配当を受ける権利・残余財産の分配を受ける権利・株主総会における議決権を、第308条第1項は1株につき1個の議決権を定めています(R9)。↩
- 同ガイドラインⅡ-2-2-8-1(注3)。トークンの発行者による将来的な事業収益等の分配を受ける権利が当該トークンに表示されているなど、ICOが投資としての性格を有する場合は、当該トークンは金融商品取引法の規制対象となるとしています(R6)。↩
- 金融庁「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案の概要」(R10)と「説明資料」p.2〜5(R11)の記載に基づきます。説明資料は2026年4月時点の法案についての資料で、成立した条文の細部は本稿では精査していません。↩
- 参議院「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」議案審議情報の議案要旨(財政金融委員会)は、主な内容の「一7」に有価証券届出書の提出免除基準を一億円から五億円に引き上げることを挙げ、施行期日について、暗号資産関係(一1〜一3)と資金決済法の改正(二)は公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日、一4〜一7は令和九年四月一日から施行するとしています(R14)。↩
参考文献(2026年10月確認)
- R1 Corporate Finance Institute「Initial Coin Offering (ICO)」(2019年3月25日公開、2024年2月更新) corporatefinanceinstitute.com (参照箇所:冒頭の定義、「How Does an ICO Work?」の「Creation of tokens」。一般的な概念の参考であり、日本の制度の根拠ではない。脚注7の根拠。閲覧日:2026年10月3日)
- R2 金融庁「ICO(Initial Coin Offering)について~利用者及び事業者に対する注意喚起~」(平成29年10月27日) fsa.go.jp (参照箇所:「1.ICOとは」、「3.事業者の方へ」。脚注5の根拠。閲覧日:2026年10月3日)
- R3 資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)e-Gov法令検索 laws.e-gov.go.jp (参照箇所:第2条第5項・第14項・第15項、第63条の2、第63条の5。脚注1・9・11の根拠。閲覧日:2026年10月3日)
- R4 金融商品取引法(昭和23年法律第25号)e-Gov法令検索 laws.e-gov.go.jp (参照箇所:第2条第2項第5号・第3項・第8項、第4条第1項、第28条第1項・第2項、第29条、第29条の2第1項第8号。脚注14・16・17・18の根拠。閲覧日:2026年10月3日)
- R5 金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年内閣府令第52号)e-Gov法令検索 laws.e-gov.go.jp (参照箇所:第1条第4項第17号、第6条の4。脚注1・14の根拠。閲覧日:2026年10月3日)
- R6 金融庁「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)16 暗号資産交換業者関係」 fsa.go.jp (参照箇所:Ⅰ-1-1(注)、Ⅱ-2-2-8-1(本文・注1・注3)、Ⅱ-2-2-9。脚注2・8・10・15・21の根拠。閲覧日:2026年10月3日)
- R7 日本暗号資産等取引業協会「新規暗号資産の販売に関する規則」および同ガイドライン(2024年2月9日一部改正) jvcea.or.jp (参照箇所:第2条、第5条、第6条、第9条、第15〜18条、ガイドライン第1条関係。脚注3・12・13の根拠。閲覧日:2026年10月3日)
- R8 日本証券業協会「電子記録移転有価証券表示権利等の法令上の整備に伴う『協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則』等の一部改正について」(令和2年6月17日) jsda.or.jp (参照箇所:Ⅰ・Ⅱ、新旧対照表(第2条第10号、第6条第1項第10号、第8条第4項)。脚注19の根拠。閲覧日:2026年10月3日)
- R9 会社法(平成17年法律第86号)e-Gov法令検索 laws.e-gov.go.jp (参照箇所:第105条第1項、第308条第1項。脚注20の根拠。閲覧日:2026年10月3日)
- R10 金融庁「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案の概要」(2026年4月) fsa.go.jp (参照箇所:1ページ。脚注22の根拠。閲覧日:2026年10月3日)
- R11 金融庁「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料」(2026年4月) fsa.go.jp (参照箇所:p.2〜5。脚注6・22の根拠。閲覧日:2026年10月3日)
- R12 衆議院「閣法 第221回国会 57 金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 議案審議経過情報」 shugiin.go.jp (参照箇所:審議経過の表(提出・可決・公布年月日、法律番号)。脚注4の根拠。閲覧日:2026年10月3日)
- R13 衆議院「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」本文(附則) shugiin.go.jp (参照箇所:附則第1条(施行期日)。提出時の法案の本文。脚注4の根拠。閲覧日:2026年10月3日)
- R14 参議院「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」議案審議情報(第221回国会 閣法57) sangiin.go.jp (参照箇所:参議院本会議経過、公布年月日・法律番号、議案要旨の「三、施行期日」。脚注4・23の根拠。閲覧日:2026年10月3日)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための学習用の架空事例であり、実在の企業・案件・トークンとは関係ありません。