想定読者:銀行・証券・IFAのウェルスマネジメント担当者、富裕層向け商品の企画担当者、資産形成の相談を受ける実務家
前提知識:株式と投資信託の基本、リスク許容度と適合性の考え方

次は架空の面談である。証券口座に投資信託を積み立てている40代の顧客が、雑談の途中で「インフレ対策にビットコインも少し持っています」と話す。担当者は資産配分の表に書き込む欄がなく、聞き流す。あるいは、別の種類の投資家だと受け止めて、話題を避ける。

どちらの反応も、暗号資産の投資家は一般の投資家とは別の人々だという前提に立っている。その前提は事実なのか。ブロックチェーン上の取引は公開されていても、口座の持ち主の年収も、ほかに何を持っているかも分からない。この空白を、銀行口座の入出金から埋めようとしたのが次の研究である。

この記事が主に参照する研究

Aiello, D., S. R. Baker, T. Balyuk, M. Di Maggio, M. J. Johnson and J. D. Kotter(2023)「Who Invests in Crypto? Wealth, Financial Constraints, and Risk Attitudes」NBER Working Paper No. 31856

  • 公表:初版 2023年11月(NBER WP)。参照した版:同じ版(インターネット付録を含む)。査読:未査読(WP)。2026年4月のセミナー案内に、学術誌で査読中との記載がある1
  • データ:米国の消費者6,300万人超の匿名化された銀行・カード取引(2010年1月〜2023年6月)。主な比較は約81万人の標本2
  • 方法:属性の比較、資金の流出入と価格の時系列回帰、給与の変化と給付金の前後の比較(イベントスタディ)、個人ごとの物価上昇率との回帰。給付金は著者がおそらく因果と解釈し、物価との関係は相関として示されている
  • 位置づけ:新しいデータによる投資家の実態の記述と、投資動機の検証

読む前に​押さえる​3つの​見方

第1に、この研究が見ているのは「保有」ではなく「資金の出入り」である。銀行口座やクレジットカードから取引所への支払いを入金、その逆を出金として数える3。取引所の中での売買や、取引所の外に移した暗号資産の値動きは直接には見えない。証券についても証券会社への入出金を見ており、給与天引きの積立は含まれない。

第2に、所得の変化を2種類に分けている。週の給与が過去12か月の平均から大きく離れた週を所得ショックとし、新しい水準がその後の半年も続けば恒久的、続かなければ一時的と呼ぶ。平均的な大きさは週収に対して恒久的な増加が69%、一時的な増加が約130%だった4。大きな賞与は後者に、昇給や転職は前者に入りやすい。

第3に、物価については、個人の買い物かごで加重した地域の物価上昇率を作り、期待​インフレ率の代わりに使う。ガソリンや食料品への支出が多い人ほど、それらの値上がりを強く受ける。調査による期待インフレ率との相関は0.360で、期待そのものを測っているわけではない5。

投資家の​顔ぶれは、​一般の​投資家と​大きく​重なる

標本の暗号資産投資家のうち80.2%は証券口座にも入金しており、非投資家の59.9%を上回る6。証券の代わりに暗号資産だけを持つ人が多数を占めるわけではない。所得でも、年収7.5万ドル超が取引件数の約73%を占める一方、4.5万ドル未満も約11%ある。金額は高所得層に集中していた7。

図1 暗号資産投資家と非投資家の属性図1 重なりが大きく、差は一部の項目に暗号資産投資家と非投資家の比較(%)暗号資産投資家非投資家証券口座へ入金したことがある80.2%59.9%ギャンブルの支出がある38.8%26.6%大手金融機関に勤務したことがある10.4%6.4%所得が標本の中央値未満のことがある43.6%49.8%当座貸越の手数料を払ったことがある32.4%34.2%手取り生活(収支に余裕の少ない家計)7.1%10.3%
単位:%。​米国の​標本812,530人​(暗号資産投資家142,188人)、​取引データは​2023年6月まで。​各項目は​各指標の​定義に​該当した​人の​割合。​金融機関勤務は​上位200社からの​給与、​手取りの​項目は​2か月の​収支の​差が​400ドル​未満の​時期が​過半の​人。​出所:R1(p.44 Table I、定義はp.69)の​数値の​一部を​基に​大手町​プレップ​作成。

図1で差が目立つのは2項目である。ギャンブルの支出がある人の割合は38.8%と26.6%、大手金融機関の勤務経験は10.4%と6.4%だった。同じ州・所得区分の中で比べても、暗号資産投資家である確率はギャンブルの経験があると8.4%ポイント、金融機関の勤務経験があると7.1%ポイント高い。これらは属性との関連であり、ギャンブルをすると暗号資産を買うという因果を示すものではない8。当座貸越の項目は単純比較で差が小さく、所得を揃えた回帰でも統計的に有意な差は確認されなかった9。

ただし、同じ投資家に見えても比重は所得で変わる。年間投資額の中央値で見ると、年収7.5万ドル未満では暗号資産と証券がともに1,000ドル未満で近い水準にあり、10万〜15万ドルでは暗号資産が証券の約半分、15万ドル超では証券が約5倍だった10。低・中所得層では、投資に回すお金のうち暗号資産の割合が大きい。

著者らは、暗号資産投資家の証券への投資額が各所得層で非投資家とほぼ同じであることから、暗号資産が他の投資を大きく押しのけた証拠はないとみている11。ただしこれは同じ所得層どうしの比較で、同じ人が暗号資産を始めなかった場合と比べたものではない。

資金の​動きは​株式と​違い、​価格を​追う

顔ぶれの次に、資金の動きを見る。ビットコインの収益率が1%ポイント高いと、取引所への入金の伸びは0.98%ポイント、出金の伸びは1.86%ポイント高かった。証券口座への入金とS&P500の収益率の間には統計的に有意な関係は確認されず、出金だけに小さな正の関係があった12。著者ら自身も、この点は株式と異なると書いている13。

出金が増える局面に、誰が売っているのか。2017年の急騰では、それ以前に始めた層が取引所から資金を引き出し、2017〜18年に始めた層が入金していた14。価格を追うのは市場全体の平均像で、内側では参入時期によって反対の動きが起きている。

表1 参入の時期で異なる金額と物価への反応

表は横にスクロールできます →

最初の入金の時期人数暗号資産への入金(ドル)証券への入金(ドル)金融機関勤務の比率物価への反応(係数の和)
初期層(2018年より前)39,58912,87245,78913.3%−0.5
コロナ期(2020年)9,99013,29939,05810.4%2.37
高インフレ期(2021年以降)74,0124,84931,1828.7%1.38
米国。​入金額は​標本期間の​1人平均。​物価への​反応は​全期間の​推計で、​log​(1+暗号資産の投資額)を​被説明変数と​する​Investor CPIの​係数と​参入時期の​交差項の和​(編集部の計算。百分率に換算する前の値)。​別々の​回帰式の​ため基準は​揃っていない。​高インフレ​期だけで​推計すると、​コロナ期の​交差項は​負に​変わる​(脚注参照)。​出所:R1(p.44 Table I、​p.51 Table VIII)を​基に​大手町​プレップ​作成。

表1のとおり、参入の時期は金額や物価への反応とも関係している。初期層の1人平均の入金額は高インフレ期の参入者の2倍を超え(累計のため、参入が早いほど大きく出やすい)、大手金融機関の勤務経験者の比率も高い。物価への反応の係数は、全期間の推計では初期層で負になる一方、コロナ期以降の参入者は正で大きい15。「暗号資産の投資家」と一括りにした場合に見えなくなる差である。

一時収入と​物価に​対する​反応は、​証券にも​同じ​向きに​出る

図2 暗号資産と証券の反応の比較図2 同じ刺激に、証券の方が大きく反応log(1+投資額)の係数の百分率換算(%)暗号資産証券一時的な給与の増加(2週間)0.94%3.89%恒久的な給与の増加(2週間)0.39%1.49%給付金1回目(2週間)1.35%4.0%給付金3回目(2週間)4.95%7.4%高インフレ期の物価1標準偏差(月次)6.60%13.88%
単位:%。​米国の​個人に​ついて、​log​(1+投資額)の​回帰係数​(対数の係数)を​百分率に​換算した​値で、​投資の​ない​週を​含む。​平均投資額の​増加率ではない。​最下段は​暗号資産投資家の​標本に​限る。​給付金2回目は​暗号資産の​係数が​統計的に​有意でなく、​証券は負​(後の週に増えるため)で​図から​除いた。​「一時的」は​給与の​増加が​半年続かない​場合。​両者の​差の​検定は​論文に​示されていない。​出所:R1(p.21・​p.23〜24・​p.28〜29、​p.48〜50 Table V〜VII、​定義は​p.68)の​数値を​基に​大手町​プレップ​作成。

図2は、資金の動きのうち価格以外の要因を比べたものである。図の%は平均投資額の増加率ではない。論文の被説明変数はlog(1+投資額)で、投資のない週も含む。その回帰の係数(対数の係数)を百分率に換算した値が図の%であり、この節の%も同じ換算値である。給与が一時的に増えた後の2週間の換算値は暗号資産0.94%、証券3.89%で、恒久的な増加ではそれぞれ0.39%と1.49%だった16。一時的な給与増への暗号資産の反応で、所得が中央値未満の層との差を表す交差項の換算値は0.32%だった17。一時的な給与の減少では、どちらからも引き出す動きが小さく表れ、恒久的な減少では統計的に有意な変化は確認されなかった18。

コロナ期の給付金でも、暗号資産の換算値は1回目の後に1.35%、3回目の後に4.95%で、証券は4.0%と7.4%だった19。受取前に増加傾向がないことから、著者らはおそらく因果と解釈する一方、経済的な大きさは小さく、給付金が暗号資産の急騰を支えたという見方には否定的である20。

物価上昇の​リスクへの反応はどうか。個人の物価上昇率が1標準偏差(3.58%ポイント)高い場合の換算値は、暗号資産が全期間で3.13%、2021年以降の高インフレ期で6.60%、証券が5.56%と13.88%である21。著者らはこれを、投資家が暗号資産を伝統的な証券と同じくらいのインフレ対策とみなしている証拠と読む22。ここで検証されたのは投資家の行動であり、暗号資産が実際に物価上昇を相殺するかどうかではない。

各項目の換算値では証券の反応が暗号資産の1.5〜4.1倍だが(編集部の計算)、論文は両者の差の検定を示していない。証券には自動の積立があり、投資のない週の多さも資産で異なるため、この倍率を金額の差と読むことはできない23。

この​研究で​分からない​こと

ウェルスマネジメントの読者が最も注意すべき点は、題名に Wealth とあるものの、分析の軸が残高ではなく所得区分であることだ。最上位の区分は15万ドル超で、それより上の超富裕層は分けられていない24。保有額が金融資産の何割かも、この論文からは分からない。個人の年齢や性別も見えず、郵便番号単位の平均で比べている25。対象は米国の銀行口座を持つ個人で、取引所を経由しない保有は捉えにくい。銀行口座を持たない低所得層も代表性の説明から外れる。

論文の中にも読み替えの注意点がある。所得ショックの閾値は本文と変数の定義表で異なり、高インフレ期に絞るとコロナ期の参入者の交差項の符号が逆になる。いずれも脚注に記した26。討論者の Guidolin は、変動性の役割が分析されていない点や、調査データの研究と結論が異なる点を挙げている27。

実際に反対の結論もある。Weber らの米国の家計調査は、保有者は若く男性に偏り所得が高いとし、保有者のほぼ2割が金融資産の半分以上を暗号資産で持つと答えたと報告する。期待リターンなどの信念は、属性全体の約2倍の説明力を持ち、著者らは暗号資産を独特の資産と位置づける28。Kogan らは個人向け取引基盤 eToro の約20万口座から、同じ投資家が株式と金では逆張りし、暗号資産では順張りに近い売買をしていると示し、属性の違いでは説明できないとした29。

大手町​プレップの​考察:人が​違うのではなく、​当てはめる​見方が​違う

以下は編集部の見方であり、3本の研究のいずれかが直接検証したものではない。3本を並べると、結論の違いは矛盾というより見ている層の違いと考えられる。銀行取引の研究は所得や他の投資といった財務の属性を見て、重なりを見つけた。調査の研究は信念を尋ね、大きな差を見つけた。eToro の研究は同じ人の売買を比べ、資産によって行動が変わることを見つけた。

そう読むと、「伝統的資産のように扱われている」という結論は、一時収入と物価への反応の向きには当てはまるが、価格への反応までは覆っていない。実務上は、顧客を暗号資産の保有者かどうかで分類するより、同じ顧客が暗号資産にどのような値動きの見方を持ち込んでいるかを確かめる方が役に立つと考えられる(仮説)。行動ファイナンスでいう投資家の​偏りは、人ではなく資産との組合せで現れるのかもしれない。

同じ著者らの姉妹論文は、2023年の版で暗号資産の利益の四半期平均1ドルあたりの四半期の支出増を約0.08ドルと推定し、株式に関する文献の値より大きいとした。ただし2024年2月の版では、差の多くを投資家の違いと読み直している30。米国の推計だが、含み益が生活水準に入り込むなら、下落の影響は投資勘定にとどまらない。この点も面談で確かめる価値があると編集部はみる。

日本の​実務への​応用:制度の​移行期に、​顧客の​全体像を​取り直す

日本の利用者はどうか。金融審議会のワーキング・グループ報告によると、国内の交換業者の口座は延べ1,300万超、預託金残高は5兆円以上(2025年10月時点)である。同報告が引く業界団体の資料では、保有者の約7割が年収700万円未満で、個人口座の預かり資産は8割以上が10万円未満だった31。投資経験者のうち保有者は7.3%、取引の動機の86.6%は長期的な値上がりへの期待とされる32。

これらは調査の設計も定義も米国の研究と異なるため、数字の直接比較はできない。それでも問いは立てられる。小口の保有者が多い点は、低・中所得層で比重が高くなりうるという米国の結果と読み合わせる価値がある。動機が長期の値上がりと答えられていても、実際の入金が価格の上昇局面に偏っていないかは、別途確かめる必要がある。申告された動機と観察された行動は別の情報である。

制度も動いている。暗号資産の規制を資金決済法から金融商品取引法へ移す改正法は、2026年7月23日に令和8年法律第64号として公布された。暗号資産関連の施行は公布から1年を超えない範囲で政令が定める日で、施行日は本稿の確認範囲では未確認である33。ワーキング・グループ報告は、交換業者に利用者のリスク負担能力の範囲内で取引が行われるよう確認する体制を求めた34。

もっとも、銀行や証券会社の担当者の多くにとって、暗号資産は自社の商品ではなく顧客の外部資産である。金商法第40条第1号の適合性原則は、顧客の知識、経験、財産の状況と契約の目的に照らして不適当な勧誘をしないよう求める35。編集部の見方では、暗号資産の保有状況を聞いていなければ、財産の状況や資産配分の全体像の把握は不十分になりうる。具体的な聴取の範囲は、各社の法務・コンプライアンス部門で確認してほしい。

賞与の読み替えにも注意がいる。研究の所得ショックには予期された変化も含まれうる36。定例賞与など本人が予期していた収入については、研究の結果をそのまま当てはめず、賞与月の入金の習慣があるかどうかを本人の履歴で見るのが現実的と考えられる。また、急な交換業者への送金には暗号資産詐欺の​兆候が含まれることもある。国内の苦情相談は月平均350件以上で、大半が詐欺的な勧誘や取引に関するものとされる37。投資行動の分析と被害防止の確認は分けて考える。

計算で​見る:同じ​保有でも​重みは​違う

学習用の設例(架空)

3人の顧客が暗号資産を持っている。年収・金融資産・時価は表2のとおりで、いずれも架空の数値である。評価額が70%下がった場合を仮定し、損失を金融資産と月収に対して見る。70%は予想ではなく、計算のための仮の値である。実在の顧客・銘柄を表さない。

表2 学習用の設例(架空):3人の顧客の比重

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項目顧客A顧客B顧客C
年収1,500万円600万円1,000万円
金融資産(暗号資産を含む)12,000万円800万円3,000万円
暗号資産の時価300万円120万円900万円
金融資産に占める比率2.5%15.0%30.0%
70%下落時の損失210万円84万円630万円
その損失の金融資産比1.8%10.5%21.0%
その損失の月収換算1.7か月1.7か月7.6か月
すべて​学習用の​架空の​数値で、​70%は​仮の​下落率​(予想ではない)。​月収は​年収÷12(額面)。​税・​売却費用は​無視した。​出所:学習用の​仮定に​基づき大手町​プレップ​作成。

保有額だけを見れば顧客Aが顧客Bの2.5倍だが、金融資産に占める比率は2.5%と15.0%で逆になる。一方、月収換算の損失はともに1.7か月で同じだ。金融資産で見ればBの比重が重く、当面の家計で見れば両者は近い。顧客Cは比率30.0%、損失は月収の7.6か月分で、どちらの物差しでも重い。1つの指標では見誤るので、2つ併記する。

参入の時期も数字にしておく。架空の銘柄Xの価格が100、400、800、400と動いたとする。価格100で100万円を入れ、800で半分を売った人は、売却代金400万円と残り200万円で計600万円、元本の6.0倍になる。価格400と800で100万円ずつ入れた人の評価額は150万円で、損益は−25%である。終値は同じ400でも、平均取得単価(533)が違えば顧客の体験は反対になる。暗号資産の比率の上限を計算で詰める手順はリスク​寄与度の​検算に、売却時の手取りは課税比較の​記事に譲る。

面談で​確認する​順序

次の手順は研究を基に編集部が組み立てたもので、効果が検証されたものではない。数値の基準はすべて編集部の仮の目安である。

  1. 外部資産として聞く。「証券口座や預金のほかに、取引所の口座や金・不動産などをお持ちですか」と、暗号資産だけを特別扱いしない形で尋ねる。
  2. 比重を2つの物差しで出す。金融資産に占める比率と、仮の下落時の損失の月収換算を計算する。比率5%超で追加の確認、比率15%超または月収換算6か月超で資産全体の計画の見直しを話題にする(仮の目安。研究で検証されていない)。
  3. 参入時期と平均取得単価を聞く。「最初に買ったのはいつ頃で、追加した時期はいつですか」。値上がりが話題になった時期に入金が集中していれば、価格を追う傾向の可能性を記録する。
  4. 資金源を確かめる。賞与などの一時収入か、生活防衛資金か、借入か。「その資金が半年使えなくても生活に支障はありませんか」と聞く。
  5. 動機と行動を照らす。「インフレ対策」と言われたら、どの支出の値上がりに備えるのか、株式や物価連動の資産と比べてどう考えたのかを尋ねる。実際にヘッジとなる保証がない点は、この研究の範囲外である。
  6. 出口を決める。値上がり時にいくら引き出すか、下落時にどうするかを事前に言葉にする。含み益を前提に支出を増やしていないかも聞く。
  7. 聞いた内容と提案の関係を面談記録に残し、同じ顧客の証券の入金パターンと並べて見る。自社の取引データをこの目的で分析する場合は、個人情報の利用目的と社内規程を先に確認する。

よく​ある​質問

暗号資産を​持つ顧客は、​リスク​許容度が​高いと​考えて​よいですか。

それだけでは​判断できません。​研究では​証券投資と​重なる​人が​多い​一方で、​低・​中所得層では​投資額に​占める​暗号資産の​割合が​大きい​傾向が​ありました。​保有の​事実ではなく、​比重と​資金源を​確認してください。

この​研究の​結果は​日本の​富裕層にも​当ては​まりますか。

直接には​分かりません。​研究の​対象は​米国で、​所得区分の​最上位は​15万​ドル​超です。​金融資産の​大きい層を​分けて​分析した​ものではないため、​日本の​富裕層への​当てはめは​仮説と​して​扱ってください。

まとめ

米国の銀行取引データが描いた暗号資産の投資家は、証券投資と大きく重なり、所得も幅広かった。その一方で資金は価格を追い、初期の参入者と新しい参入者は反対に動いていた。一時収入や物価への反応は同じ向きに証券にも表れ、係数は証券の方が大きかった。ただし分析の軸は所得であり、資産規模別の結論ではない。面談では「持っているか」で終わらせず、比重、参入時期、資金源、動機、出口の順に聞くことが、この研究を実務に移す一つの方法である。

脚注

  1. R8(2026年4月20日のセミナー案内。講演者紹介に Review of Financial Studies で査読中との記載)。二次情報で、掲載の事実は確認できていない。改訂版の本文は入手できておらず、本稿の数値はすべて2023年11月の版による。ページはPDFの物理ページ(印刷ページ+2)で示す。↩
  2. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.8〜9・p.44 Table I。6,300万人超・月平均約950万人。データの提供元はデータ集計業者で、銀行との契約に基づくため利用者のオプトインによる選択がないと著者は説明する。無作為標本ではなく、代表性の比較は論文に掲載されていない。比較の標本は812,530人(暗号資産投資家142,188人)。↩
  3. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.3、p.10。取扱先は約43、大半はCoinbase。給与天引きの投資は含まれない(p.10、p.18)。↩
  4. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.11。一時的な減少は−69%、恒久的な減少は−52%。閾値は脚注26を参照。↩
  5. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.13。式(2)。相関の相手はミシガン大学の消費者調査の中央値。↩
  6. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.44 Table I Panel A。p.4 は「約80%」と書く。証券投資のない人の暗号資産保有は9%(p.4)。↩
  7. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.16。所得は2023年6月時点の区分。取引件数の比率で、金額の比率ではない。↩
  8. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.17・p.45 Table II Panel A(州×所得区分の固定効果の線形確率モデル)。論文本文は increases と書くが、断面の関連である。ギャンブルは「一度でもカジノ等で取引した」、金融機関は「上位200社の給与を受けた」という広い定義(p.10、p.69)。↩
  9. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.45 Table II Panel A の Overdrafter の係数は−0.0013(t値−0.64)。本文(p.17)は所得を統制しても低いと書いており、表と一致しない。本稿は表に従う。手取り生活の係数は−0.0240で1%水準で有意。↩
  10. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.18・p.41 図6 Panel A。暗号資産投資家について、課税後の証券口座への能動的な入金と比べた値。↩
  11. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.18・p.41 図6 Panel B、p.32。中央値の比較である。標本期間の1人平均では、暗号資産投資家の証券への入金は36,409ドル、非投資家は24,654ドル(p.44)。↩
  12. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.19・p.47 Table IV。月次(126か月)。入金0.984、出金1.862。S&P500 は入金−0.593(t値−0.76)、純入金−0.856(t値−0.90)、出金0.459(t値1.96)。本文はビットコインの収益率を月次と書くが、定義表(p.68)は前年比とする。どちらの定義でも、時系列の関連であり因果の識別ではない。↩
  13. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.6。↩
  14. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.15・p.37 図2。2020年にも同様の動きがあると著者は述べる(p.15)。↩
  15. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.44 Table I、p.51 Table VIII、p.30。入金額は累計のため、参入が早いほど大きく出やすい。初期層の負の和は著者の脚注25(p.30)も示す。係数の和の入力は Table VIII Panel A の列(3)〜(5)で、初期層1.397−1.897、コロナ期0.7731+1.597、高インフレ期0.3025+1.077。全期間の推計で時間固定効果を含む。コロナ期は標本が9,990人と小さい。↩
  16. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.21・p.48 Table V Panel A。いずれも1%水準で統計的に有意。人の固定効果と週×州×所得区分の固定効果を含む。被説明変数はlog(1+金額)(p.68)で、%は対数の係数0.0094・0.0382などを(exp(β)−1)で百分率に換算した値である(編集部の再計算と一致)。論文本文(p.21)は投資の増加率のように書くが、投資額ゼロの週を含むlog(1+金額)の換算値は、平均投資額の増加率とは一致しない。↩
  17. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.22・p.62 Table IA.V。対数の係数の差0.0032(5%水準で有意)の換算値である。同じ表で、証券への反応は中央値未満の層の方が小さい。↩
  18. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.21・p.48 Table V Panel B。被説明変数は出金額の対数で、一時的な減少の換算値は暗号資産0.16%、証券0.14%。↩
  19. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.23〜24・p.49 Table VI。暗号資産の3回目の係数0.0484の換算は4.96%だが、本文は4.95%と書くため本文の値を使った。証券の4.0%・7.4%も本文の値(係数の換算は4.02%・7.42%)。2回目は暗号資産の係数が統計的に有意でなく、証券は−2.3%。著者は証券の増加が3〜6週後に遅れて現れたためと説明する(p.24)。↩
  20. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.25(おそらく因果)、p.5〜6(経済的に小さい)、p.7〜8(給付金が急騰の背景という見方への反証)。↩
  21. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.28〜29・p.50 Table VII。暗号資産投資家の標本。論文の脚注22の式で3.13%・6.60%を再現できた。証券の5.56%は丸めた係数からの再計算では5.55%になる。本文の値を使った。高インフレ期の感応度は他の期間の7.3倍((0.2438+1.541)÷0.2438。編集部の計算。p.6は「7倍超」)。↩
  22. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.30。要旨(p.2)では相関と表現している。↩
  23. 証券の換算値÷暗号資産の換算値は、一時的な増加4.1倍、恒久的な増加3.8倍、給付金1回目3.0倍、3回目1.5倍、高インフレ期の物価2.1倍(論文の%の値から編集部が計算)。被説明変数はlog(1+金額)で、投資額ゼロの週を多く含む。証券の周期的な動きは給与と自動積立によると著者は説明する(p.22)。↩
  24. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.16 脚注13。所得は7区分。論文の wealthier は所得の高い人の意味で使われている。残高が変数にないことは p.68〜69 の定義表で確認した。↩
  25. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.17・p.46 Table III。年齢の中央値は暗号資産投資家37.9歳、非投資家38.5歳、男性比率は49.4%と49.3%だが、いずれも居住地の郵便番号の値の平均で、本人の値ではない。低所得の銀行口座なし層は代表性の説明から除かれている(p.9)。↩
  26. (1) 所得ショックの閾値は本文と式(1)が1標準偏差(p.11、p.20)、定義表が0.5標準偏差(p.69)。どちらが推計に使われたかは論文からは確定できない。(2) 全期間ではコロナ期参入の交差項は+1.597(p.51)、高インフレ期だけでは−0.3056(p.66 Table IA.XI)で、本文(p.30)は「おおむね同様」と書く。初期層も高インフレ期だけでは1.976−0.8263=1.15で正に変わる(編集部の計算)。(3) 初期層の定義はTable Iの説明(2017年の高値より前、p.44)とTable III・本文(2018年1月より前、p.16、p.46)で表現が異なる。表1は定義表(p.69)に合わせた。↩
  27. R5 p.8・p.10(調査データ等との結論の違い)、p.15(変動性)、p.17(類似の結論への注意)。↩
  28. R2(IZA DP 版, 2023年7月)p.5(保有者の特徴・ほぼ2割)、p.7(説明力・独特)。ニールセンの家計パネル調査で、R1 と違い自己申告のデータである。過去のリターンの情報を示すと購入が増えるという実験の結果も要旨に報告されている。人種については同じ論文の要旨と導入で記述が異なるため本稿では扱わない。↩
  29. R3(NBER WP 版, 2023年6月)p.2 要旨、p.3。期間は2015〜2019年で、国際的な個人向け証券会社の口座である。↩
  30. R4(NBER WP 版, 2023年7月、10月改訂)p.2 要旨、p.4。含み益からの限界消費性向。同じ著者のデータだが R1 とは別の論文である。 2024年2月9日付の版(FDIC のサイトに掲載)では、株式との差の多くは投資家の違いによると読み方が改められている。↩
  31. R6 p.3(PDF p.7)。口座数・預託金は日本暗号資産等取引業協会の月次資料、年収は日本暗号資産ビジネス協会のアンケート、預かり資産は日本暗号資産等取引業協会の2024年度の年間報告を出典とする(報告の脚注9〜11)。原資料は未確認で、アンケートの回答者の偏りは確認していない。↩
  32. R6 p.3(PDF p.7)。保有者の割合は金融庁の顧客意識調査(2024年7月)、動機は日本暗号資産ビジネス協会のアンケート(報告の脚注13・14)。↩
  33. R7。公布年月日は令和8年7月23日、法律番号は64。議案要旨の二に暗号資産取引に係る規制を資金決済法から削除するとあり、三に施行期日の定めがある。政令で定める施行日は確認していない(2026年10月31日時点)。↩
  34. R6 p.20(PDF p.24)イ③。報告段階の提言で、成立した法律・政令の条文としては確認していない。↩
  35. R6 p.21(PDF p.25)脚注66。↩
  36. R1(NBER WP 版, 2023年11月)p.22。↩
  37. R6 p.3〜4(PDF p.7〜8)。金融サービス利用者相談室の件数。↩

参考文献​(2026年10月確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。