この記事で分かること
- 米国上場株22,630銘柄・45の企業特性を調べた研究では、欠損はどの規模の企業にもあり、分布の端にある企業ほど欠けやすかった(端29%、中央14%)こと
- 欠けた値を中央値で埋めると、時系列と他の特性を使って推定する方法より誤差が大きく、端の企業では差が広がったこと。全特性がそろう企業だけに絞ると、リターンの分析結果そのものが変わったこと
- 類似会社の選定、候補企業のスクリーニング、与信・KPI の分析で、空欄を「除外・補完・要確認」に分ける手順(架空12社の設例つき)
想定読者:情報端末やデータベースから財務データを取り出して比較・選別する投資銀行・FAS・PE の実務家、与信モデルや KPI の集計を担う財務・経営企画の担当者、定量分析をする株式アナリスト
前提知識:中央値・平均の違いと、財務比率(営業利益率・成長率など)の計算。研究の統計手法は本文で説明する
買収候補のロングリストを作るため、情報端末から上場企業200社の財務データを書き出したとする。売上高成長率の列には十数か所の空欄がある。締め切りが迫ると、空欄の会社を表から外すか、業種の中央値を入れて先に進みたくなる。
だが、空欄はどの会社にも同じ確率で現れているのだろうか。新規上場したばかりの会社、決算期を変えた会社、大型買収で連結範囲が変わった会社は、比較できる前年の数値がそもそも無い。こうした会社は、成長率が極端に高いか低い側に寄っていてもおかしくない。もしそうなら、空欄を外す処理も中央値で埋める処理も、候補の選び方を気づかないうちに変えてしまう。この問いに、米国の研究者4人が半世紀分のデータで答えた。
この記事が主に参照する研究
Svetlana Bryzgalova、Sven Lerner、Martin Lettau、Markus Pelger(2025)「欠けている財務データ(Missing Financial Data)」Review of Financial Studies 38(3)
- 公表:初稿2022年3月、SSRN 登録2022年5月。掲載誌のオンライン公開2024年7月。参照した版:London Business School の機関リポジトリが公開する受理稿(2024年6月15日版)。査読:済1
- データ:米国の上場株(NYSE・NASDAQ・AMEX)22,630銘柄、1967年1月〜2020年12月の648か月。株価データベース CRSP と財務データベース Compustat から作る45の企業特性2
- 方法:欠損の量と構造の記述、欠損を予測する回帰、観測できている値を隠して当てる補完法の比較、ポートフォリオによるリターンの比較。欠損と各変数の関係は相関の分析で、因果の識別ではない
- 位置づけ:統計学で確立した欠損データの考え方を、企業の財務データに体系的に当てはめた実証研究と、新しい補完手法の提案
空欄の現れ方には型がある
統計学では、欠損を起き方で区別する。どの値が欠けるかがまったくの偶然で決まる場合を「完全にランダムな欠損」と呼ぶ。完全にランダムな欠損なら、空欄の行を外しても系統的な偏りは生じない(件数が減って推定がぶれやすくなるだけである)。欠け方が企業の規模や業績、あるいは欠けている値そのものと関係している場合は、外した後の母集団が元の母集団と性質の違うものになりうる。偏りが実際に生じるか、どの程度かは、欠損の仕組みと分析の目的による。こうして生じる偏りを選択バイアスと呼ぶ。
埋める側にも落とし穴がある。全体や業種の中央値で埋めると、空欄の会社はすべて「ちょうど真ん中の会社」として扱われる。前期の値で埋めると、その会社の状態が1年間止まっていたことにされる。どちらも、空欄の会社について持っている他の情報(規模、株価の動き、他の財務比率)を使っていない。さらに、後から分かった値を過去の時点の分析に入れると、当時は知り得なかった情報で判断したことになる(ルックアヘッドバイアス)。
研究が扱う「企業特性」は、簿価時価比率、総資産の伸び、営業利益率、会計発生高、過去のリターンや売買回転率など、株式の分析でよく使う45の指標である。各月に全銘柄を順位で並べ、順位を−0.5〜0.5に換算して分析している3。以下の補完の誤差もこの順位の単位で測った RMSE(二乗平均平方根誤差)で、100倍するとパーセンタイルポイントの単位になる。RMSE は大きなずれを重く数えるため、単純な平均的なずれの幅とは一致しない。
欠損は多く、端の企業に偏っていた
まず量である。1967〜1981年は全観測の25%超が欠けており、1990〜2020年でも10%が欠けていた。2000年以降でも、45の特性がすべてそろっていた銘柄は全体の25%にとどまる4。45特性すべての観測を条件にすると、どの時点でも企業の70%超、時価総額では48%が分析から外れる。よく使う5つの特性に絞っても、そろう銘柄は1967〜1980年に50%、標本の終盤でも80%だった5。比較的最近の2020年末でも、営業利益率(売上高から原価・支払利息・販管費を引き、簿価自己資本で割った指標)は14%、総資産の伸びは10%が欠けていた6。
次に偏りである。欠損は小型株の問題と思われがちだが、時価総額が最も大きい五分位の企業でも特性の15%が欠けていた。そして、特性の値が分布の両端にある企業の欠損率は29%で、中央の企業(14%)の約2倍だった7。図1は付録の表から2つの特性を取り出したものである。
総資産の伸び(投資)は、値が低い側の企業で43.9%、高い側で37.7%が欠けていたのに対し、中間の2区分では23.1%・21.9%だった。会計発生高は端で52.3%・51.2%、中間の2区分で26.0%・23.9%と、U字の形がよりはっきりしている。規模別では小さい企業ほど欠けやすいが、差は水準別ほど大きくない8。急拡大や急縮小の局面にある企業ほど比較できる数値が欠けやすい、と編集部は読む。
欠損はまとまって起きる。いったん欠けると平均1〜2年続き、欠損の約4割は上場直後など、それまで一度も値がない状態で起きていた。途中で起きる欠損について、常に観測できる7つの特性(時価総額や株価の変動など)に、特性ごとの固定効果、直前の値が観測できたかどうか、欠損がそれまで続いた期間を加えたモデルで予測すると、推定に使っていない期間で AUC(判別の精度。1が完全)が0.97に達した9。空欄は、観測できる情報からかなり予測できる。つまり偶然ではない。
中央値で埋めると、端の企業で誤差が広がった
著者らは、データがより均質な1977年以降に絞り(標本全体は1967年から)、観測できている値の一部を実際の欠損の起き方に似せて隠し、各方法で埋めた値と元の値のずれを測った。比べたのは、断面の中央値、業種の中央値、前期の値、過去の値の推移だけを使うモデル、そして著者らが提案する「その企業の過去の値と、同じ月の他の特性の両方を使うモデル」である。後者は、多数の特性に共通する少数の要因(因子)を観測できる部分から推定し、それに企業ごとの過去の値を組み合わせる。
結果は図2のとおりである。将来の情報を使わない条件で、組み合わせたモデルの誤差は0.18、中央値と業種中央値はともに0.30だった。順位の誤差を RMSE で測ると、中央値補完は約30パーセンタイルポイント、組み合わせたモデルは約18パーセンタイルポイントに当たる。著者らはこの差を「約2倍」とまとめており、表の数値で割ると1.7倍である10。分布の端にある値に限ると、中央値の誤差は0.41に広がり、組み合わせたモデル(0.23)の1.8倍になった11。中央値は定義上、端の会社を真ん中に寄せるため、端ほど外れる。
前期の値で埋める方法(誤差0.22)は、過去の推移を使う時系列モデル(0.21)より悪かった。財務比率は止まっておらず、前期と相関しながら動くためだと著者らは説明する。また、隠す値を完全にランダムに選ぶ検証では、過去の値を使う方法の成績が実際より良く見える。現実の欠損は1年以上続く塊で起き、直前の値がないことが多いからだ12。将来の値まで使って埋めればさらに精度は上がるが、投資判断の検証に使うと先読みになる、と著者らは注意している13。
欠損の扱いは、分析の結論そのものも変えた。売上高株価比率が途中・末尾で欠けた銘柄(上場直後の欠損は除く)と観測できる銘柄では、時価加重の平均リターンに年率で最大12%ポイントの差があった14。規模で並べた十分位のうち小型株の層は、全特性の観測を条件にすると、全銘柄のほぼ50%から10%未満に縮んだ。簿価時価比率・総資産の伸び・営業利益率の3つを同時に求めるだけで、標本の15%が落ちる。簿価時価比率・規模・総資産の伸び・営業利益率の4つの並べ替えのいずれでも、全特性の観測を求めると端の十分位の平均リターンは全体として下がり、営業レバレッジの最下位十分位ではシャープレシオ(リスク1単位あたりの超過リターン)が25%低くなった15。全銘柄を補完して推定した4因子のモデルが、全特性のそろう銘柄だけで推定した9因子のモデルよりシャープレシオで上回った例もある16。
中央値で埋めた場合の歪みも具体的だ。特性ごとのリターンを回帰で取り出すと、総資産や営業レバレッジでは中央値補完の誤差が組み合わせたモデルの4〜5倍になった。組み合わせたモデルで再現した系列は、元の系列との相関が全特性で92%を超えたのに対し、中央値補完では営業レバレッジで40%を下回った17。
米国の株式データでの結果で、反対の結果もある
この研究の対象は、米国の上場株と、株式リターンの分析で使う指標である。M&A の類似会社比較、銀行の与信モデル、社内の KPI 集計を検証したものではない。順位に換算したデータで測った誤差なので、営業利益率が何%ずれるかという金額や比率の単位にそのまま読み替えることもできない。著者らは、米国外のデータやアナリスト予想・ESG 評価では欠損がさらに深刻だろうと見ているが、本研究で確かめたわけではない18。
同時期の研究の結論は一様ではない。Freyberger、Höppner、Neuhierl、Weber の研究は、82の特性のデータで全項目がそろう観測は全体の約10%しかなく、平均で埋める方法は推定を偏らせ、標準誤差を小さく見せすぎると論じた。方向は本研究と同じである19。一方、Chen と McCoy は、159の予測変数で機械学習のポートフォリオを組むと、平均で埋めても高度な補完(EM 法)とほとんど成績が変わらないと報告した(等加重で年66%対67%、時価加重で年37%対39%)。欠損が時間方向に長く続き(今月簿価時価比率が欠けている銘柄の81%は過去すべての月でも欠けていた)、変数どうしの相関も弱いため、観測できる情報から欠けた値を推定する余地が小さいという説明である20。
Bryzgalova らはこれに対し、予測の当たり具合やロング・ショートの成績は補完の粗さの影響を受けにくいことがあるが、それでモデルの係数や変数の重要度が歪んでいないとは言えない、と応じている。どちらの結論が当てはまるかは、用途・評価の物差し・データで変わる、というのが著者ら自身のまとめである21。
大手町プレップの考察:問題は埋め方より、欠けた理由を捨てること
ここからは編集部の見方である。上位と下位を大まかに分ける目的なら、粗い補完でも結論は大きく変わらないことがある。だが、類似会社の倍率の中央値、スクリーニングの合否、与信モデルの係数のように「個々の値」や「境界線の近く」が結論を決める用途では、欠けた会社が端に寄っているかどうかが効いてくる。研究が示した「端ほど欠けやすく、中央値は端ほど外れる」という組み合わせは、まさに境界線の判定を狂わせる型である。
実務で失われやすいのは、値そのものより「なぜ欠けたか」という情報だと考えられる(仮説)。新規上場、決算期変更、大型買収、データベースの未収録は、それぞれ確認先が違う。目論見書の過去の数値、月数を調整した比較、プロフォーマの開示、有価証券報告書の原本である。空欄を中央値で上書きした時点で、この手掛かりは消え、表の上では「確認済みの普通の会社」に見えてしまう。高度な補完を組めない場面でも、欠けた理由を残して確認に回すことはできる。
日本のデータでは、制度が生む空欄にも注意する
日本では、開示制度の見直しが新しい種類の空欄を生んでいる(以下、日本への当てはめは編集部の類推である)。2024年4月以降、上場会社の第1・第3四半期の開示は決算短信に一本化された(四半期報告書の廃止)。東京証券取引所の集計では、2024年6月末に終わる第1・第3四半期の決算短信を期限内に開示した2,438社のうち、キャッシュ・フロー計算書を開示した会社は「1割台半ば」にとどまり、IFRS 任意適用会社では11.7%が開示をやめた22。この集計は、会社ごとにLTM
研究のいう「機械的な欠損」は、四半期ごとにしか更新されない指標の、四半期の間の月のように観測の頻度から生じるものである。研究はこれを欠損として数えず、前の値を据え置いて埋めることも補完の一種と位置づけて行っていない23。開示項目そのものが省かれる日本の状況とは性質が違う。それでも日本の LTM では、半期の数値を据え置いたり年換算したりして空欄を埋めた値を、実績と同じ列に並べないほうがよい(編集部の推論)。このほか、決算期変更の変則決算、IFRS への移行年、M&A による連結範囲の変更、上場からの期間が短い会社も、日本の財務データで空欄や不連続が生じうる場面である。研究は、こうした日本の場面に欠損が集中するかどうかを検証していない。これらの場面では比較可能性を個別に確かめる、というのが編集部の提案である。
設例:空欄4社の扱いで、候補の顔ぶれが変わる
学習用の設例(架空)
- 候補は12社。条件は「営業利益率10%以上、かつ売上高成長率(前年比)5%以上」
- 成長率が空欄の会社は4社。観測できた8社の成長率の中央値は4.75%
- 空欄の会社の「本当の成長率」は、設例の中で後から開示資料で確かめられた値とする。研究の傾向にならい、端に寄るように置いた(仮定)
表1 設例:成長率が空欄だった4社(架空)
表は横にスクロールできます →
| 会社 | 空欄の理由 | 営業利益率 | 本当の成長率 | 前期の成長率 |
|---|---|---|---|---|
| D社 | 新規上場で前年の比較数値が収録されていない | 14.0% | 24.0% | なし |
| G社 | 決算期変更で前年と月数がそろわない | 16.0% | −8.0% | 7.0% |
| J社 | 大型買収で連結範囲が変わり、比較情報が未収録 | 12.0% | 15.0% | 3.0% |
| L社 | データベースの更新遅れ | 13.0% | 2.0% | 6.0% |
本当に条件を満たすのは5社(A・D・H・J・K)である。空欄の会社を除外すると、新規上場のD社(成長率24%)と買収で伸びたJ社(15%)を見落とす。中央値4.75%で埋めても、中央値が基準の5%をわずかに下回るため、空欄の4社はすべて「条件未達」になり、見落としは同じ2社である。違いは、除外なら一覧から消えるのに対し、中央値で埋めると「確かめた結果、不合格だった会社」として残ってしまう点にある。
前期の成長率で埋めると、決算期変更のG社(前期7%、本当は−8%)と更新遅れのL社(前期6%、本当は2%)が誤って残り、J社(前期3%)とD社は落ちる。空欄に印を付け、観測できる営業利益率の条件だけで先に絞ってから4社を確認に回せば、確認できた範囲で5社すべてを正しく拾える。空欄4社の本当の成長率は中央値から平均11.3%ポイント離れており、観測できた8社の3.2%ポイントより大きい。埋める方法の誤差は、この「欠けた会社の散らばり」から生まれる。
表2 設例:欠損の扱い方ごとのスクリーニング結果
表は横にスクロールできます →
| 扱い方 | 残った会社 | うち正しい | 誤って残った | 見落とし | 要確認 |
|---|---|---|---|---|---|
| 空欄の会社を除外 | 3社(A・H・K) | 3社 | 0社 | 2社(D・J) | — |
| 観測できた会社の中央値で埋める | 3社(A・H・K) | 3社 | 0社 | 2社(D・J) | — |
| 前期の成長率で埋める | 5社(A・G・H・K・L) | 3社 | 2社(G・L) | 2社(D・J) | — |
| 空欄に印を付けて要確認に回す | 3社(A・H・K) | 3社 | 0社 | 0社 | 4社(D・G・J・L) |
200社のリストで空欄が十数社なら、目論見書や決算短信を1社ずつ確かめる範囲に収まる。空欄が数十社に及び、候補の大半を占めるなら、条件そのもの(前年比ではなく複数年の平均成長率にする、成長率の条件を後段に回す等)を見直すほうが筋がよい。
明日から使える確認手順
- データを書き出したら、列ごとに空欄の件数と割合を数え、条件を1つ足すごとに母集団が何社減るかを記録する。研究では、3つの特性を同時に求めるだけで標本の15%が落ちた。類似会社の選定では、落ちた会社の一覧も残す。
- 空欄の会社と値がある会社を、常に取れる情報(時価総額、上場年数、直近の株価変動、業種)で比べる。空欄の会社が小型・新規上場・変動の大きい側に寄っていれば、除外も中央値補完も結論を偏らせると疑う。
- 空欄ごとに理由を1列で記録する(新規上場/決算期変更/会計基準の変更/連結範囲の変更/未収録/開示なし)。理由ごとに確認先が決まる。
- 補完した値は、実績と別の列か別の書式で示し、件数(n)と補完の方法を表の注に書く。中央値・平均・標準偏差(記述統計の使い分け)は、実績だけで計算した値も併記する。
- 過去の時点で判断した体裁の分析(スクリーニング結果の検証、定量フィルターの見直し)では、その時点で入手できた値だけで埋める。後から更新された財務データで埋めない。
- 空欄の比率の目安は編集部の仮の基準(研究で検証されていない)として、条件に使う列の空欄が1割を超えたら、条件の定義そのものを見直す。
よくある質問
欠損値は平均で埋めるより中央値で埋めるほうが安全ですか。
外れ値に強い点では中央値が優れますが、空欄の会社を
空欄の会社を外すだけなら、データをゆがめていないのではありませんか。
空欄が偶然に生じているなら、件数が減るだけで済みます。研究では、欠損は規模や特性の水準と関係し、観測できる情報からかなり予測できました。外した会社がどんな会社かを、時価総額や上場年数で確かめることが出発点です。
まとめ
米国の上場株を半世紀分調べた研究は、財務データの欠損が多いだけでなく、分布の端の企業に偏ることを示した。中央値で埋めると端の企業で誤差が大きく、全項目がそろう企業だけに絞るとリターンの分析結果まで変わった。機械学習の予測では粗い補完でも成績が変わらないという反対の結果もあり、影響の大きさは用途によって違う。類似会社やスクリーニングのように境界線の判定が結論を決める作業では、空欄を消す前に、欠けた理由を残して確認先を決めることが、手間に見合う対策だと編集部は考える。
脚注
- R1(受理稿, 2024年6月15日版)PDF p.2(First draft: March 22, 2022)。ページは PDF の物理ページ(論文の印刷ページは物理ページ−2)。SSRN 版(ID 4106794)は Crossref の記録で2022年5月28日に登録(SSRN のページは未確認)。掲載誌の受理は2023年12月12日、オンライン公開は2024年7月2日、掲載号は38巻3号(2025年3月)、803-882頁(London Business School のリポジトリの記録と Crossref)。記事は掲載誌の校正版ではなく受理稿に基づく。↩
- R1 p.9(1.1節)。NYSE・NASDAQ・AMEX の普通株等で、Compustat に少なくとも1件の記録がある銘柄。株価水準や金融業による除外はしておらず、除外しても結果は変わらないと著者らは記載している。↩
- R1 p.9(1.1節)・p.34(2.5節)。各月の断面の順位(分位)を−0.5〜0.5に換算する。外れ値の影響を抑え、時期・銘柄間で比べやすくするため。↩
- R1 p.4(Fact #1)。1967〜1981年は「25%超」、1990〜2020年は「10%」。2000年以降、欠損のない銘柄は25%。↩
- R1 p.4(Fact #2)・p.13(1.2節・図1F)。時価総額の割合48%は p.13。5特性は簿価時価比率・益回り・モメンタム・営業利益率・投資(総資産の伸び)。↩
- R1 p.10(1.2節)。2020年末の欠損率は営業利益率14%・総資産の伸び10%・レバレッジ8%・簿価時価比率3%。定義は R1 Internet Appendix 表IA.5(PDF p.130-131):営業利益率=(売上高−売上原価−支払利息−販管費)÷簿価自己資本、投資=総資産の前年同期比の増加÷前年の総資産。売上高営業利益率とは定義が違う。↩
- R1 p.14(1.3節・図3A)・p.15(図3B)。両端・中央は、銘柄ごとに観測できた値の平均がどの五分位にあるかで分けた区分(欠けている値そのものは観測できない)。45特性の平均。↩
- R1 付録表C.2(PDF p.82)。総資産の伸びは水準区分の低い側から43.89%・23.13%・21.88%・37.65%、規模区分の小さい側から38.42%・32.44%・30.16%・24.25%。会計発生高は水準区分で52.34%・26.01%・23.93%・51.18%、規模区分で39.89%・34.04%・32.28%・26.67%。本文・図1では小数第2位を四捨五入し、小数第1位まで示した。会計発生高の定義は営業運転資本の変化÷簿価自己資本(表IA.5)。↩
- R1 p.17(1.3節・付録表C.3)・p.34(2.6節)・表1(p.16)。表1はロジット回帰で、推定は1988〜1998年、評価は1999〜2020年。表中の係数はすべて1%水準で有意と表記されている。AUC 0.97 は特性の固定効果と直前の欠損の情報を含めたモデル(途中で欠ける場合)の値。↩
- R1 p.41(4.1節)・表3(p.42)・p.43。補完の評価は1977年以降のデータに絞って行われている(R1 p.35〈3節〉。標本全体は1967〜2020年で、著者らは結果がこの選択に頑健と記載)。観測できている値の10%を、表1のロジットモデルの確率で隠した学習外の検証(全特性)。組み合わせたモデルは論文の local B-XS(20因子・正則化つき)。業種中央値も0.30。中央値に対する説明力(R²)は0.58。RMSE は二乗平均平方根誤差で、平均絶対誤差ではない。パーセンタイルポイントへの換算(×100)は大手町プレップによる。著者らの「約2倍」は全体の要約で、倍率(0.30÷0.18)は大手町プレップの計算。↩
- R1 表4(PDF p.44)。第1五分位(値が低い側)の値。第5五分位(高い側)も組み合わせたモデル0.23・中央値0.41で同じ。倍率(0.41÷0.23)は大手町プレップの計算。↩
- R1 表3(p.42)・p.42(4.1節)・p.34-35(2.6節)。前期の値と時系列のみのモデルは、過去の値がない場合に中央値で代替している。著者らは、完全にランダムに隠す検証は時系列だけのモデルの成績を押し上げると述べている。↩
- R1 p.33(2.4.2節)・p.43。将来の値も使う global BF-XS と、過去の情報だけの local B-XS の学習外の誤差の差は小さいと著者らは述べている。↩
- R1 p.52(5.1.1節・図13)。時価加重のポートフォリオで、途中・末尾で欠けた銘柄(上場直後の欠損を除く)と観測できる銘柄の平均リターンの差(単位は年率の%ポイント)。差の大きさは特性によって異なり、12%は最大の例。↩
- R1 p.56(5.1.3節・図15)・p.58(付録図D.9)。十分位の境界は NYSE 上場銘柄で決める。条件を増やしたときの平均リターン・ボラティリティ・シャープレシオの変化の方向は特性によって複雑だと著者らは留保している。↩
- R1 p.54(5.1.2節・図14)。Kelly, Pruitt and Su(2019)の IPCA(特性を手掛かりにした潜在因子モデル)による平均分散効率の組合せのシャープレシオ。学習外の比較は前半で推定し後半で評価。↩
- R1 p.60(5.2節・図16)。観測できている値を表1のロジットモデルで隠し、組み合わせたモデルと中央値で埋めて、特性ごとの因子模倣ポートフォリオ(断面回帰の係数)を元のデータの結果と比べた。↩
- R1 p.6(序論)・p.64(6節)。欠損はアナリスト予想(I/B/E/S)や ESG 評価にもあり、海外ではより深刻だろうという著者らの見通し。↩
- R2(NBER WP 版, 2022年12月)p.4(1節)。データは Chen and Zimmermann の82特性、1978〜2021年の約240万観測。掲載誌版(Review of Financial Studies 38(3), 2025)は未確認で、数値は WP 版による。↩
- R3(arXiv v6, 2024年1月)p.2-3(1節)。ニューラルネットワークの予測で並べた十分位のロング・ショート。取引コスト・空売り費用は考慮していない。B2M が欠けている銘柄の約90%は益回りも欠けていた。掲載誌版(Journal of Financial Economics 155, 2024)の数値は未確認。↩
- R1 p.62-63(5.2節・脚注18)。↩
- R4 p.2(概要)。2024年6月30日に終了する第1四半期または第3四半期の決算発表を四半期末後45日以内に行った上場内国会社が対象。「1割台半ば」は東証の表現どおりで、正確な社数は資料に示されていない。この集計は CF 計算書の開示状況であり、会社ごとの LTM フリーキャッシュフローの算出可否や、他の資料から数値を得られるかは調べていない。↩
- R1 p.9(1.1節・脚注7)。四半期ごとに更新する特性の四半期の間の月は欠損として数えず、評価も四半期の時点で行う。研究の補完モデルは四半期の間の月の値も推定する。↩
参考文献(2 026年10月確認)
- R1 Bryzgalova, S., S. Lerner, M. Lettau and M. Pelger (2025), “Missing Financial Data,” Review of Financial Studies 38(3): 803-882. DOI: 10.1093/rfs/hhae036. 参照した版:受理稿(2024年6月15日版。London Business School の機関リポジトリ LBS Research Online で公開)。初稿:2022年3月、SSRN 4106794(2022年5月登録)。査読:済。 doi.org (参照箇所:受理稿 PDF p.2〜64(本文)、p.82(付録表C.2)、p.130-131(Internet Appendix 表IA.5)。ページは PDF の物理ページ(印刷ページは物理ページ−2)。脚注1〜18・21・23の根拠。本文は https://lbsresearch.london.edu/id/eprint/3748/ で確認。閲覧日:2026年10月)
- R2 Freyberger, J., B. Höppner, A. Neuhierl and M. Weber (2022), “Missing Data in Asset Pricing Panels,” NBER Working Paper No. 30761. DOI: 10.3386/w30761. 掲載誌版:Review of Financial Studies 38(3): 760-802(2025), DOI: 10.1093/rfs/hhae003。参照した版:NBER WP 版(2022年12月)。査読:WP 版は未査読(掲載誌版は査読済み)。 nber.org (参照箇所:p.2〜5(要旨・1節)。脚注19の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R3 Chen, A. Y. and J. McCoy (2024), “Missing Values Handling for Machine Learning Portfolios,” Journal of Financial Economics 155: 103815. DOI: 10.1016/j.jfineco.2024.103815. 参照した版:arXiv 2207.13071 v6(2024年1月。v1 は2022年7月)。査読:掲載誌版は査読済み(参照した arXiv 版は著者の公開版)。 arxiv.org (参照箇所:p.1〜4(要旨・1節)。脚注20の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R4 株式会社東京証券取引所(2024)「四半期開示の見直し後の四半期決算短信の開示動向(対象:2024年6月30日に終了する第1四半期又は第3四半期に係る決算短信)」2024年9月5日。 jpx.co.jp (参照箇所:p.2(概要)。脚注22の根拠。閲覧日:2026年10月)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。