この記事で分かること

  • 類似会社選定基準(コンパラブル・スクリーニング)の定義とプロセス全体像
  • 業種・事業内容・規模・成長率・収益性という5つの絞り込み軸
  • 整数設例による絞り込みプロセスの確認
  • 比較会社が少ない業種での実務的な対処法

30秒で分かる定義

類似会社選定基準(コンパラブル・スクリーニング、Comparable Company Screening Criteria、読み方:るいじがいしゃせんていきじゅん)とは、業種・事業内容・規模・成長率・収益性などの軸で対象企業に近い上場会社を絞り込み、比較可能なコンプスセット(ピアグループ)を構築する実務プロセスです。類似会社比較法の評価結果は、この選定の質にそのまま左右されるため、Comps分析の中で最も判断力が問われる工程とされています。

なぜ実務で重要なのか

IB・PE・エクイティリサーチのあらゆるバリュエーション業務で、Compsを作る際に必ず最初に直面する工程です。面接・モデルテストでも「この会社の比較対象をどう選ぶか」は頻出の設問であり、選定プロセスを言語化できるかどうかが評価の分かれ目になります。恣意的な比較会社選定は評価額を意図的に高く(低く)見せる手段にもなり得るため、選定基準の妥当性を説明できることが実務家の信頼性に直結します。

仕組み:5つの絞り込み軸

スクリーニングは、広い業種分類から出発し、事業内容・規模・成長率・収益性の順に軸を重ねて絞り込んでいくのが標準的な進め方です。

絞り込み軸確認内容
①業種分類GICS等の業種コード、事業セグメント区分での一次スクリーニング
②事業内容顧客層(B2B/B2C)、収益モデル(サブスク/一括販売等)の近さ
③規模売上高・時価総額が対象企業と極端に乖離していないか
④成長率売上・利益成長率のレンジが近いか
⑤収益性粗利率・EBITDAマージンが極端な外れ値でないか

整数設例で確認する

設例(架空数値)。業種分類コードで抽出した初期候補企業45社から、段階的に絞り込むプロセスを示します。

  • ①業種分類での初期抽出:45社
  • ②事業内容(B2Bソフトウェアに限定)で絞り込み:18社
  • ③規模(売上高が対象企業の0.5倍〜2倍のレンジ)で絞り込み:9社
  • ④成長率・収益性(マイナス成長や極端な低採算企業を除外)で絞り込み:6社

最終的なコンプスセットは6社となります。45社から6社まで絞り込む過程で、各段階の除外理由を記録しておくことが、後で選定プロセスを説明する際に重要になります。

案件プロセス上の位置付け

類似会社の選定は、Comps作成の5ステップの最初の工程であり、この後のマルチプルの平均値・中央値の算出、フットボールチャートでの評価レンジ提示のすべての土台になります。選定基準が甘い(業種が近いだけで規模・収益性が大きく異なる会社を含める)と、算出されるマルチプルの分散が大きくなり、評価レンジの説得力が下がります。

財務モデル・Excelでの使い方

スクリーニングシートでは、候補企業を1行1社で並べ、各絞り込み軸の指標(売上高・成長率・粗利率・EBITDAマージン)を列に持ちます。

  • 各軸にIF関数で「レンジ内か外か」を判定するフラグ列を作り、最終的に全軸を満たす会社をAND()関数で自動抽出する
  • 除外した会社にはその理由(規模乖離・赤字・特殊要因等)をコメントで残し、後日レビューを受けた際に説明できるようにする
  • 最終的なコンプスセットのマルチプル(中央値・平均値・四分位範囲)を別シートに出力し、外れ値の影響を確認する

この用語をExcelで「組める」状態にする

業種・規模・成長率・収益性の軸で候補企業を機械的に絞り込むスクリーニングシートを組めるようになる。

Comps教材で類似会社選定の手順を見る →

実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「業種分類が同じなら比較会社として使える」→ 正しくは、事業内容・収益モデルまで近くなければ意味のある比較になりません。同じ業種コードでも、B2BとB2Cではマルチプルの水準が大きく異なることがあります。

誤解2:「比較会社は多いほど良い」→ 正しくは、無理に対象を広げると異質な会社が混入し、マルチプルの分散が大きくなって評価の説得力を損ないます。

実務家はさらに、選定した比較会社の中に買収観測(M&Aの噴)が出ている会社がないか、直近で一時的な業績変動がないかを個別に確認します。

日本実務での扱い

(2026年7月時点)日本市場は上場企業数が米国市場より少なく、特にニッチな業種では国内だけで十分な比較会社数を確保できないことが珍しくありません。この場合、実務ではアジア太平洋地域や米欧の同業他社まで対象を広げ、会計基準の違い(日本基準・IFRS・US GAAPでのEBITDA定義の差)や為替変動の影響を調整したうえで比較する運用が一般的です。有価証券報告書のセグメント情報(セグメント情報の読み方)を確認し、多角化企業の場合は特定セグメントの構成比が対象企業に近いかも選定基準に加えます。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:比較会社をどうやって選びますか。
「まず業種分類で候補企業を広く抽出し、事業内容(顧客層・収益モデル)、規模(売上高・時価総額)、成長率、収益性(粗利率・EBITDAマージン)の順に絞り込みます。除外した会社の理由を記録し、最終的なコンプスセットの選定根拠を説明できるようにします。」

深掘りでは「比較会社が少ない業種ではどうするか」「一時的な業績変動がある会社をどう扱うか」が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. 比較会社は何社くらいが目安ですか?
A. 業種によりますが、5〜10社程度に絞り込むケースが多いです。事業内容の近さを優先し、無理に社数を増やす必要はありません。

Q. 非上場企業を比較会社に含めることはできますか?
A. 市場マルチプルを算定する類似会社比較法では、原則として株価データが継続的に取得できる上場企業のみを対象にします。

出典・参考(2026-07-25確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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