この記事で分かること
- 各国の企業調査を集めた研究で、物価が低く安定した国の企業ほど、中央銀行の物価目標や直近の物価上昇率を正しく答えられなかったこと
- 物価の見通しが外から変えられた企業は雇用と投資を動かしたが、その向きは国と局面で逆になったこと
- 事業計画のマクロ前提を「誰の見通しか」「物価と景気をどう組み合わせたか」で点検する手順(学習用の設例つき)
想定読者:事業会社の経営企画・FP&A・財務で予算や中期計画の前提を管理する方、事業計画を精査する投資銀行・FAS・PEの方
前提知識:予算の前提一覧と感応度分析の基本(物価の統計や研究の用語は本文で説明します)
来期予算の前提シートに「消費者物価上昇率 2.0%」と書かれている。前年もその前の年も2.0%だった。数字の出所を尋ねると、「日銀の目標がそうだから」という答えと、「社長が今年もそのくらいだろうと言った」という答えが返ってくる。原材料の値上げ交渉や賃上げの議論では物価がしきりに話題になるのに、計画の物価前提だけは毎年同じ値のまま据え置かれている。
この前提には二つの問いが隠れている。一つは、経営者が物価や景気の現状と先行きをそもそもどの程度正確に把握しているのか。もう一つは、その見通しが外れたり変わったりしたとき、企業の価格・投資・雇用の決定が実際に動くのか。各国の企業調査を横断して整理した研究がこの二つに答えている。本稿では研究の結果と限界を確かめ、計画のマクロ前提を置くときに何を記録し、何を一緒に動かすべきかを考える。
この記事が主に参照する研究
Bernardo Candia、Olivier Coibion、Yuriy Gorodnichenko「企業のマクロ経済の見通し(The Macroeconomic Expectations of Firms)」NBER Working Paper No. 30042
- 公表:初出 2021年11月(カナダ銀行の年次経済会議で報告)。ワーキングペーパーの初版 2022年5月(NBER WP)。参照した版:同版(SSRN に後の改訂版があるとの情報があるが、本文は未確認)。改訂版は2023年刊行のHandbook of Economic Expectations(経済の期待に関する専門書)の1章(本稿では未読)。査読:WP 版は未査読1
- データ:米国・ニュージーランド(NZ)・イタリア・ウルグアイ・ノルウェー・ハンガリー・ウクライナなどの企業調査。米国の調査は2018〜2021年
- 方法:調査の回答の比較と相関の分析。決定への因果効果は、既存のランダム化比較試験の結果を整理(レビュー)
- 位置づけ:既存研究のレビューに、各国の調査を並べた新しい比較(物価水準と注意の程度、期待を織り込んだフィリップス曲線)を加えた章
企業の見通しは、専門家とも家計とも違う
マクロ経済の「見通し」や「期待」は、経済学では人々が将来の物価や景気について抱く予想を指す。予想を測る調査は三つの層に分かれる。エコノミストなど専門家への調査、家計への調査、そして企業への調査である。値付けをし、人を雇い、設備を買うのは企業なので、物価や景気の動きを説明するうえで企業の予想は重要だと考えられてきた。ところが企業調査は少なく、研究では長く専門家の予想が企業の予想の代わりに使われてきた2。
研究はまず、この代用が成り立たないことを示す。米国企業を代表するよう設計された調査(SoFIE)では、2018年に企業の1年先の物価予想が3%を超え、専門家の2%強より家計の約3.5%に近かった。2019〜20年は約2%に下がり、2021年7〜9月期には4.7%まで上がった3。企業どうしの予想のばらつきも大きく、米国では標準偏差が約1〜2%ポイントと、専門家より大きく家計よりやや小さかった4。
もう一つの論点は、予想が「固定されている(アンカーされている)」かどうかである。中央銀行の物価安定の目標が信頼されていれば、目先の物価が揺れても5年先の予想はあまり動かないはずである。米国企業では、1年先の予想を上げた企業が5年先の予想もほぼ同じ方向に上げており、両者の改定の傾きは0.71、決定係数は0.62と、家計や専門家より強い連動が見られた5。
物価が落ち着いた国の企業ほど、物価と政策目標を知らなかった
企業の予想がばらつく理由として、研究は「足元の物価を知らない」ことと「中央銀行の目標を知らない」ことを挙げる。いくつかの調査はこれを直接尋ねている。
図1のとおり、米国では中央銀行の目標を「分からない」と答えた企業が50%を超え、2%と正しく答えたのは約25%だった。NZでも正答は約3分の1にとどまり、40%超が4%以上と答えた6。直近1年の物価上昇率についても、2018年の米国で実績どおり3%と答えた企業は20%に満たず、約25%が4%以上と答えた。一方、物価が高く変動の大きいウルグアイでは、約85%の企業が実績の6.5%に近い6%か7%と答えた7。
著者らはこの対比を、物価が長く低く安定していると、物価を追い続ける手間に見合う利益が小さいからだと解釈する。経済学でいう「合理的な不注意」である。国を並べると、平均の物価上昇率が高い国ほど企業や家計の予想が専門家の予想に近く、インドやウルグアイ、ウクライナでは差が平均1%ポイント未満だった。ただし調査の数も期間も限られ、著者ら自身がこの比較は示唆にとどまると書いている8。
回答者が誰かでも結果は変わる。欧州の大企業の最高財務責任者(CFO)約1,500人への調査では、物価予想は専門家の予想に近かった。ただしこれは顧客名簿から集めた大企業だけの調査で、企業全体を代表しない9。逆に、米国の家計調査に「管理職かどうか」を加えた同じ研究者らの別の研究では、中間・現場の管理職の物価と失業の予想は一般の家計とほとんど変わらなかった10。
見通しが変わると雇用と投資が動く。ただし向きは国と局面で異なった
企業が物価を知らないとしても、その予想が決定に効かないなら実務上の問題は小さい。研究は二つの証拠を挙げる。一つは、各国の企業の予想を使うと、物価と失業率のあいだの関係(予想を織り込んだフィリップス曲線)がはっきり現れることである。日本を含む12か国で、失業率が平常の水準(自然失業率の近似値)を上回る時期ほど、実際の物価上昇率が企業の予想を下回っていた。企業の予想の代わりに前年の物価上昇率を使うと、この関係はほぼ消えた11。ただしこれは相関の分析である。
もう一つは因果の証拠で、企業の予想を外から無作為に動かした実験である。表1に要点を整理した。
表1 マクロの見通しの変化は企業の決定をどう動かしたか
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| 標本 | 方法 | 結果 | 出所 |
|---|---|---|---|
| ニュージーランド(CGK 2018。R1がレビュー) | ランダム化比較試験(目標を知らせる) | 予想を下げた企業が、その後雇用と投資を減らした。価格・賃金は計画から系統的にずれず | R1 p.21 |
| イタリア・全期間(R2) | 繰り返しの情報提示を操作変数に(約1,000社/回) | 予想1%ポイント上昇で、雇用は12か月後に0.7%減、有形固定資産は2年で1%超減、売上は2年で約2%減。価格改定率は1四半期後に0.2%ポイント高く、その後の2四半期にかけて効果が消退 | R2 p.16〜19 |
| イタリア・ゼロ金利制約期(R2) | 同上 | 価格と与信の利用の反応が強まり、雇用の減少は消える | R2 p.4 |
| 日本の上場企業(R3) | 固定効果つきの相関(因果ではない) | 翌年の成長率見通しが1%ポイント高い企業は投資伸び率が約2.5%ポイント、雇用伸び率が約0.2%ポイント高い | R3 p.16 |
NZの実験では、中央銀行の目標を知らされた企業のうち、もともと目標を知らなかった企業が物価予想を下げ、その後の半年で雇用と投資を他の企業より減らした。価格と賃金については、計画からの系統的なずれは見られなかった12。イタリアでは中央銀行の企業調査(1回約1,000社)が2012年から、無作為に選んだ一部の企業にだけ直近の物価上昇率を示してから予想を尋ねてきた。示された物価が1%ポイント高いと1年先の予想は0.55%ポイント上がった。同じ企業への情報提示を繰り返したことで、提示を受けた企業と受けない企業の予想には長期にわたる差が生じた13。この差を手がかりに推定すると、予想が1%ポイント高い企業は12か月後の雇用が0.7%少なく、2年で有形固定資産を1%超、売上を約2%減らした。価格改定率は1四半期後に0.2%ポイント高く、その後の2四半期にかけて効果が消退した14。
注目すべきは向きの違いである。NZでは予想の上昇が雇用と投資を増やす向きに、イタリアの全期間では減らす向きに働いた。イタリアの企業は物価が上がると景気も自社の業績も悪くなると考える傾向があり、政策金利がゼロ近くに張り付いた時期に限ると、反応は価格と与信の利用で強まり、雇用の減少は消えた。著者らは、この違いは企業が予想の変化の原因を需要の強さと受け取るか、供給の制約と受け取るかによるようだと解釈している。解釈そのものを変えて比べた実験ではなく、結果を説明するための著者らの見方である15。実際、物価と成長の予想の組み合わせ方も国で違い、NZやスウェーデンの企業は「物価高と好景気」を、ウクライナや南アフリカの企業は「物価高と不景気」を結びつけていた16。
日本の上場企業についても、内閣府の企業アンケートを使った別の研究がある。1989〜2015年の約1,000社で、回答者の66%は経営企画・戦略・経営管理などの部署だった17。翌年の実質成長率を1%ポイント高く見込んだ企業は、翌年の投資の伸び率が約2.5%ポイント、雇用の伸び率が約0.2%ポイント高かった18。見通しの外れ幅が大きい企業ほど翌年の利益が低く、楽観・悲観どちらの外れでも同じ傾向だった。著者らの記述では、外れ幅1%ポイントにつき利益が約8%低い。いずれも企業ごとの差と年ごとの差を除いた相関で、見通しの外れが利益を下げたという因果までは示していない19。
研究の対象と限界
主論文は、専門書の章として書かれたレビューである。決定への因果効果はNZ(2018年発表)とイタリア(2020年発表)の既存研究を紹介したもので、主論文が新たに示したのは国際比較の部分にあたる。比較に使える質の高い企業調査は少なく、著者らが基準(企業全体を代表する標本、平均350件超の回答、回答を誘導しない設問など)を満たすとしたのは一部の国に限られる20。
日本企業がどの程度物価に注意を払っているかは、この研究では測られていない。日本は、設問の作りが結果を左右する例と、フィリップス曲線の標本の一つとして登場するだけである。NZの実験は従業員500人を超える企業がごく少ない標本、イタリアは従業員50人以上の企業の標本で、ゼロ金利制約の有無によっても結果が変わった。ほかの国や規模の企業にそのまま当てはまるとは限らない。なお、主論文の要約と元の研究とでは、イタリアの価格と雇用の反応の書き方が一部異なる。本稿は元の研究の数値と記述を使った21。
大手町プレップの考察:前提の数字より、前提の出所と組み合わせ
以下は研究の結果から編集部が考えた推論で、研究が検証したものではない。
第一に、計画のマクロ前提に入っている数字が、経営陣の実感なのか、外部の専門家の予測なのか、政策目標なのかを区別して記録する価値がある。研究が示したのは、物価が落ち着いた国の企業の予想は専門家の予想から離れやすく、直近の実績すら正しく把握されていないことが多いという点だった。社内の実感に基づく前提は、それ自体が誤りとは限らないが、外部の予測との差を言葉で説明できる状態にしておく必要がある。
第二に、物価の前提は単独で動かさず、景気や販売数量の前提と組にして動かすほうがよい。著者らの解釈に従えば、同じ物価の上昇でも、需要が強いことの表れなのか、原材料や人手の制約によるものなのかで、企業の反応は逆になりうる。前提一覧の物価の行だけを動かす感応度分析は、この区別を落とす。
第三に、日本は長く物価が低く安定していた。研究の示唆を当てはめれば、日本企業でも物価への注意は薄かった可能性があり、物価が動いた局面では、計画の前提が実態から遅れやすいと考えられる。これは仮説で、日本企業について確かめた結果ではない。
日本の実務への応用:短観と内閣府調査を「企 業の見通し」として使うときの注意
日本で企業の見通しを知る代表的な資料は、日本銀行の短観にある「企業の物価見通し」と、内閣府の「企業行動に関するアンケート調査」である。研究は短観の設問について、2%を中心とする狭い選択肢が回答を2%に寄せていると指摘し、短観の企業の予想が専門家の予想とほぼ重なる理由の一つとみている22。日本銀行の解説によれば、物価全般の見通し(消費者物価指数をイメージ)は「前年比+6%程度以上」から「−3%程度以下」までの10区分と、具体的なイメージがない理由から選ぶ形式である。自社の販売価格の見通しは±20%程度までの区分で尋ねている23。集計値を「日本企業の物価予想」としてそのまま使う前に、この形式を知っておきたい。
内閣府の調査は年1回、上場企業に実質経済成長率の見通しを数値で尋ねる。2026年2月公表の令和7年度調査(対象3,223社、回答1,468社、回答率45.5%)では、次年度の見通しの平均が0.9%(前年度調査は1.2%)、今後3年間と5年間の平均がいずれも1.0%だった24。上場企業の平均的な見通しと自社の前提を並べるのに使える。短観の項目を前提行に対応させる方法は日銀短観で事業計画の前提を更新する、物価と割引率の整合はハードルレートはなぜ金利や物価に追随しないのかで扱った。
学習用の設例:物価だけ動かすか、景気と一緒に動かすか
学習用の設例(架空)
- 甲社は国内の消費財メーカー。現在の価格・数量で売上高1,000億円、材料費450億円(数量に比例)、人件費・経費400億円(数量に比例しない)、営業利益150億円
- 来期は費用がすべて物価上昇率で上がり、販売価格は「物価上昇率×転嫁率」だけ上がると置く
- 計画(A)は社内の見通しで、物価1%、数量+1%、転嫁率50%
図2は数量の伸びを1%に固定し、物価の前提と価格転嫁の率だけを動かしたものである。転嫁率100%なら物価が1%ポイント上がるごとに営業利益は+1.6億円増えるが、50%なら−3.5億円、0%なら−8.5億円になる。この費用構造では、転嫁率がおよそ85%を下回ると物価上昇は減益要因になる。値上げと費用増の時期のずれまで扱うなら、仕入値上がりと価格改定の時間差をPLに織り込むで扱った月次モデルが使える。
表2 設例:物価だけ動かすか、景気と一緒に動かすか
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| シナリオ | 物価 | 数量 | 転嫁率 | 営業利益 | 計画との差 |
|---|---|---|---|---|---|
| A 計画(社内の見通し) | 1% | +1% | 50% | 152.0 | — |
| D 物価だけ3%に上げる | 3% | +1% | 50% | 145.0 | −7.0 |
| B 需要型(物価高・数量増) | 3% | +2% | 80% | 159.7 | +7.7 |
| C 供給型(物価高・数量減) | 3% | −1% | 30% | 128.0 | −24.0 |
表2は、物価を3%に上げたときの見え方を比べたものである。物価の行だけを変えたD案では、営業利益は計画から−7.0億円の変化にとどまる。ところが物価高を需要の強さと読むB案(数量+2%、転嫁率80%)では+7.7億円、供給の制約と読むC案(数量−1%、転嫁率30%)では−24.0億円となり、同じ物価3%でも両者の差は31.7億円に開く。研究がNZとイタリアで見た反応の向きの違いを、著者らの需要・供給の解釈に沿って計画の数字に置き換えるとこうなる。どの組み合わせが現実的かは自社の業種と取引条件で決まり、ここでの数値は計算のための仮定である。
明日から使える確認項目
- 前提一覧の物価・成長率・為替の各行に「出所の種類」の欄を足し、社内の見通し/外部の専門家予測/政策目標/調査の平均のどれかを書く。前提一覧シートの出典欄を、数字の出所と見通しの主体まで分けて書く形である。
- 予算会議の前に、経営陣と事業部長に「直近12か月の消費者物価の上昇率は何%か」「日銀の物価目標は何%か」を数字で答えてもらい、統計の実績と並べる。外れが大きい人の見通しが前提に入っていないかを確かめる。
- 社内の前提と外部の予測(短観の物価見通し、内閣府調査の成長率見通し、民間の予測)の差を一覧にし、差が1%ポイントを超える行は理由を一文で書く。1%ポイントは編集部の仮の目安で、研究で検証された閾値ではない。
- 物価の感応度とは別に、「物価高×数量増×転嫁率高」と「物価高×数量減×転嫁率低」の二つのシナリオを作り、物価と景気の組み合わせを明示する(相関を考慮したシナリオ設計の考え方)。
- 期末に、計画時のマクロ前提と実績の差を予実差異の説明に残し、翌年の前提の置き方に戻す。
よくある質問
計画の物価前提は日銀の2%目標に合わせておけば十分ですか。
目標は政策の目指す水準で、来期の予測値ではありません。目標を使うこと自体は一つの選択ですが、外部の予測や直近の実績との差を確かめ、出所が政策目標であることを前提一覧に書いておくと、後で説明しやすくなります。
研究では経営者の見通しが外れていたのに、なぜ社内の見通しを前提に使うのですか。
自社の価格や需要の手触りは外部の予測に入っていないことがあるからです。研究が示したのは平均的な傾向で、社内の見通しを捨てる根拠にはなりません。社内と外部の両方を並べ、差の理由を記録しておくのが現実的です。
まとめ
各国の企業調査を整理した研究では、物価が低く安定した国の企業ほど、物価の現状も中央銀行の目標も正確に把握していなかった。一方で、外から与えられた情報で予想が変わった企業は雇用と投資を動かし、その向きは国と局面で逆になった。著者らは、この違いを、企業が物価の変化を需要の強さと読むか供給の制約と読むかによると解釈している。日本企業について同じことが確かめられたわけではないが、計画のマクロ前提については、数字の出所を記録し、物価と景気を組にして動かすという二つの手当てが考えられる。
脚注
- R1(NBER WP, 2022年5月)p.1〜2。NBER の掲載ページの Issue Date は May 2022。共著者 Gorodnichenko の研究ページには、Internet Archive の2022年1月20日の保存版に本稿の記載がなく、2022年5月16日の保存版に「Handbook of Economic Expectations に掲載予定」として載っている。改訂版は同書(Elsevier, 2023年)pp.321〜353(Crossref で書誌を確認。本文は未読)。本記事のページは PDF の物理ページ(印刷ページ+2)。↩
- R1 p.3(序論。専門家の予想が企業の代わりに使われてきたが代用にならないとする)、p.5(企業調査の難しさ)。↩
- R1 p.8・図1A。SoFIE(Survey of Firm Inflation Expectations)は2018年4〜6月期〜2021年7〜9月期。専門家は Survey of Professional Forecasters、家計はミシガン大学の消費者調査。↩
- R1 p.10〜11・図3。横断面の標準偏差。物価の水準との間に弱い正の相関があるとしている。↩
- R1 p.12・図4(注は p.30)。SoFIE の2019年10〜12月期と2020年10〜12月期の回答で、1年先と5年先の予想の改定を外れ値に強い回帰(Huber 回帰)で比べた傾きと決定係数。本文 p.12 には「households」とあるが、文脈と図4の注から企業についての記述と判断した。↩
- R1 p.13・図5。米国は SoFIE、NZ は同国の企業調査の質問。↩
- R1 p.14・図6。米国は2018年4〜6月期(直近の実績は約3%)、NZ は2013年10〜12月期(約1.5%。1か2%と答えた企業は40%未満、4%以上が約50%)、ウルグアイは2018年4〜6月期(6.5%。1%ポイント超外れたのは15%)。↩
- R1 p.14〜16・図7。予想と専門家の予想の差の絶対値の平均を、専門家の予測誤差の標準偏差で割った指標を、平均の物価上昇率と比べた。著者らは調査が少なく期間が短いこと、家計調査の作り方が国で違うことを挙げ、示唆にとどまるとしている(p.16)。合理的な不注意(rational inattention)は、情報を集める費用と利益を比べて注意の配分を決めるという考え方。↩
- R1 p.10 脚注8・付録図5。デロイトの欧州 CFO 調査(2015年開始、19か国・1回約1,500人、2018年から12か月先の消費者物価の予想を数値で質問)。大企業のみで、回答者は同社の顧客名簿から集めており、著者らの品質基準は満たさないとしている。↩
- R4(NBER WP, 2022年4月)p.3〜4。米国の Nielsen Homescan の調査で10万人超・100万件超の回答。約3分の1が何らかの管理職(採用・解雇、価格・賃金の決定、部下の管理など)。属性を調整すると管理職と非管理職の予想はほぼ同じで、物価予想はどちらも2.5%。↩
- R1 p.19〜20・図10(注は p.36)。米国・ノルウェー・イタリア・NZ・ハンガリー・ウルグアイ・日本・スウェーデン・南アフリカ・セルビア・コロンビア・チェコ。失業率のギャップは失業率と HP フィルターで平滑化した失業率の差。国ごとの平均を除いている。低インフレ国と高インフレ国に分けても同様とする。ウクライナは2015年の急騰のため除外。↩
- R1 p.21。Coibion, Gorodnichenko and Kumar(2018, American Economic Review 108(9))の実験の要約。半年の間隔をおいた2回の調査で、1回目に一部の企業に中央銀行の目標を伝え、2回目に価格・雇用・賃金・投資の実績を計画と比べた。後続の研究(Coibion, Gorodnichenko, Kumar and Ryngaert 2021)も同様の反応を確認したと R1 は記す。元論文の本文は未読。↩
- R2(NBER WP 改訂版, 2019年7月)p.3、p.8(従業員50人以上、近年は1回約1,000社)、p.11〜12・表1(提示された物価1%ポイントに対し、6か月先の予想は0.59%ポイント、1年先は0.55%ポイント、4年先は0.37%ポイント上昇)。掲載誌版は Quarterly Journal of Economics 135(1)(2020年)。予想の差が長く続いたのは同じ企業への情報提示が何年も繰り返されたためである点は R1 p.21〜22。↩
- R2 p.16・表3(価格の改定率と雇用。情報提示の有無を操作変数とする推定)、p.19・表4(有形固定資産と売上。年次の財務データ)。与信枠の利用率は予想1%ポイント上昇で約1%ポイント上がった(p.18)。↩
- R1 p.21〜22、R2 p.4・p.19。R2 は、NZ(CGK)では予想の上昇の後に雇用と投資が増え、イタリアと逆だったと明記している。ゼロ金利制約の時期の結果は R2 p.4 の記述(価格と与信の利用の反応が強まり、雇用への効果は消える)による。↩
- R1 p.17・図8。予想の無条件の相関。スウェーデンの調査は企業全体を代表しないと著者らが注記している。イタリアはゼロ金利制約の前はほぼ無相関、制約の時期は正の相関。家計は負、専門家は正の相関を予想する傾向があり、企業はその中間とする。↩
- R3(NBER WP, 2018年6月)p.3・p.11。内閣府経済社会総合研究所の「企業行動に関するアンケート調査」(1989〜2015年度)で、上場企業の回答率は約40%。部署は2006年以降に把握でき、経営企画・戦略、総務・経営管理、社長室の合計が66%。↩
- R3 p.16・表1。企業と年の固定効果を入れた最小二乗法。翌年の実質成長率の見通しは、3年先の自社の投資・雇用の計画とも正の関係にあった(同表)。売上の伸び率は0.3%ポイント高い。↩
- R3 p.17〜18・表2。見通しの外れ(見通し−実績の絶対値)と翌年度の利益・生産性の関係。本文の「約8%」は著者らの記述で、表2列1の係数は外れ1%ポイントあたり−80.2百万円。掲載誌版(Journal of Monetary Economics 114, 2020年)の数値は未確認。大きく景気に敏感な企業、生産性が高い・社歴の長い・銀行が株主の企業ほど見通しが正確だった(p.4)。↩
- R1 p.3(既存研究のレビューに新しい比較を加えると明記)、p.6〜7(品質の基準と、ノルウェー・ハンガリー・ウルグアイ・ウクライナ・米国 SoFIE・イタリアの一部・NZ を質の高い調査とする判断)、p.25(引用文献の発表年)。↩
- R2 p.5(NZ の調査は従業員500人超の企業がごく少なく、イタリアの調査は4分の1が500人超)、p.8。R1 p.21〜22 の要約は、イタリアの全期間について価格は「ほとんど変わらない」、ゼロ金利制約の時期は雇用を「増やす」と書くが、R2 本文は価格改定率が1四半期後に0.2%ポイント高く、その後の2四半期にかけて効果が消退する(p.16)、ゼロ金利制約の時期は雇用への効果が消える(p.4)と書く。本記事は R2 本文の記述を使った。↩
- R1 p.10・図2、p.37・表1(日本:日本銀行、物価全般〈消費者物価〉、四半期、2014年開始、10区分、1・3・5年先)。選択肢が2%を中心とし、他の設問(±20%)より狭いことが回答を2%に寄せる、というのは著者らの解釈。↩
- R5 第2章3(3)物価見通し(PDF の物理ページ p.16〜17、印刷ページ p.14〜15)。物価全般は前年比の選択肢10区分(+6%程度以上=+5.5%以上、−3%程度以下=−2.6%以下)と「イメージがない」理由3区分、販売価格は現在の水準と比べた変化率の選択肢9区分(±20%程度まで)と「分からない」。1年後・3年後・5年後を尋ねる。↩
- R6 p.1(図1−1と本文)と調査の要領(調査時期は2026年1月、プライム・スタンダード市場などの上場企業、回答は実数値の単純平均)。R1 は同調査を年1回の調査のため分析の対象外としている(p.6 脚注2)。↩
参考文献(2 026年10月確認)
- R1 Candia, B., O. Coibion and Y. Gorodnichenko (2022), “The Macroeconomic Expectations of Firms,” NBER Working Paper No. 30042. DOI: 10.3386/w30042. 参照した版:NBER WP 版(2022年5月)。改訂版は Handbook of Economic Expectations(Elsevier, 2023年)pp.321–353、DOI: 10.1016/B978-0-12-822927-9.00018-5(本稿では未読)。査読:WP 版は未査読。 nber.org (参照箇所:本文 p.1〜22、図1〜10の説明と注(p.27〜36)、表1(p.37〜)。脚注1〜9・11・12・15・16・20〜22の根拠。初出は NBER の掲載ページ(Issue Date May 2022)と Internet Archive の著者ページの保存版(2022年1月20日・5月16日)で確認。閲覧日:2026年10月)
- R2 Coibion, O., Y. Gorodnichenko and T. Ropele (2020), “Inflation Expectations and Firm Decisions: New Causal Evidence,” Quarterly Journal of Economics 135(1), 165–219. DOI: 10.1093/qje/qjz029. 参照した版:NBER Working Paper No. 25412(2018年12月、2019年7月改訂)。査読:済(掲載誌版。本稿は WP 版を参照)。 nber.org (参照箇所:p.3〜5・p.8・p.11〜12(表1)・p.16〜19(表3・表4)。脚注13〜15・21の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R3 Tanaka, M., N. Bloom, J. M. David and M. Koga (2020), “Firm Performance and Macro Forecast Accuracy,” Journal of Monetary Economics 114, 26–41. DOI: 10.1016/j.jmoneco.2019.02.008. 参照した版:NBER Working Paper No. 24776(2018年6月)。査読:済(掲載誌版。本稿は WP 版を参照)。 nber.org (参照箇所:p.2〜4・p.11・p.16〜18(表1・表2)。脚注17〜19の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R4 McClure, E. M. L., O. Coibion and Y. Gorodnichenko (2022), “The Macroeconomic Expectations of U.S. Managers,” NBER Working Paper No. 29986. DOI: 10.3386/w29986. 参照した版:NBER WP 版(2022年4月)。査読:未査読(WP)。 nber.org (参照箇所:要旨・序論 p.2〜4。脚注10の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R5 日本銀行調査統計局「短観(全国企業短期経済観測調査)の解説」(2026年4月) boj.or.jp (参照箇所:第2章3(3)物価見通し(印刷ページ p.14〜15)。脚注23の根拠。閲覧日:2026年10月26日)
- R6 内閣府経済社会総合研究所「令和7年度 企業行動に関するアンケート調査結果(概要)」(2026年2月27日公表) esri.cao.go.jp (参照箇所:p.1「我が国の経済成長率見通し」と調査の要領。脚注24の根拠。調査の一覧は https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/ank/menu_ank.html 。閲覧日:2026年10月26日)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。