この記事で分かること
- 米国の未上場企業約10万社の銀行融資データで、外部資金が足りない企業ほど上場しやすかったか、上場後に借入の量と条件がどう変わったか
- 上場後に金利が下がり、取引銀行・シンジケートローン・社債が増えたという結果を、情報の非対称性の縮小で説明する著者の議論と、その限界
- 日本の未上場企業が上場の目的と資本政策を詰めるときに使える、資金不足率の計算、借入計画の確認、利下げ効果の見積もりの手順
想定読者:上場を検討する未上場企業の CFO・経営企画、上場準備を支援する証券会社・監査法人・VC・PE の担当者、取引先の上場を見込む銀行の法人担当
前提知識:EBITDA・設備投資・負債比率の基本(統計の用語は本文で説明する)
上場準備に入るかを取締役会で議論すると、必ず「なぜ上場するのか」という問いが出る。銀行は貸してくれている。VC の追加の資金調達ラウンドも組めそうだ。それでも上場する理由として「資金調達の選択肢を広げる」と書くなら、その中身を数字で説明できるだろうか。東京証券取引所は2024年5月、グロース市場に新規上場する会社に対し、成長戦略や設備投資・資金計画などの施策に関連付けて IPO の目的を書き、上場後はその目的が実現できているかも踏まえて進捗を開示するよう求めた1。上場の目的は、上場後に検証される約束になりつつある。
「上場すれば資金が取りやすくなる」という説明は教科書的だが、実証の裏づけは意外に一様でない。そこへ、米国の大手銀行が監督当局に出している融資データを使い、未上場の段階から企業を追った研究が出た。この記事は、その研究が何を示し、何を示していないかを整理し、日本の上場判断と資本政策の点検にどう使えるかを考える。
この記事が主に参照する研究
Andres Almazan, Nathan Swem, Sheridan Titman, Gregory Weitzner(2025)「資金へのアクセスと上場の判断:米国の未上場企業の分析(Access to Capital and the IPO Decision: An Analysis of US Private Firms)」Finance and Economics Discussion Series 2025-102(米連邦準備制度理事会)
- 公表:確認できた初出は2024年11月の草稿。参照した版:2025年11月の FEDS 版。2026年10月に NBER Working Paper としても公表。査読:未査読(WP)2
- データ:米国の大手銀行持株会社が報告する100万ドル超の事業向け融資(FR Y-14Q)から作った未上場企業約10万社の財務と融資条件(2012〜2023年)、うち上場した423社3
- 方法:上場の予測は相関の分析。上場後の変化は、上場前の特徴が近い未上場企業と比べる差の差の分析で、上場の因果効果だけを取り出した推定ではない4
- 位置づけ:「上場で透明性が上がり資金が取りやすくなる」という既存の仮説を、銀行の内部格付を含む新しいデータで検証したもの
「資 金不足率」と「情 報レント」——研究を読むための二つの道具
研究の中心にある変数は資金不足率で、(設備投資−EBITDA)÷総資産と定義される。EBITDA を手元で生まれる資金の目安とみれば、これがプラスの企業は投資の一部を外から調達しなければならない。データの制約から運転資本の増減は含めていない5。米国の未上場企業の平均は−0.12で、多くは稼いだ資金で投資を賄えていた。ところが後に上場した企業の上場前の平均はほぼ0(−0.00)で、設備投資は総資産の0.08(上場しない企業は0.05)、EBITDA は0.08(同0.16)だった。VC の出資を受けていた比率も29%対2%と大きく違う6。
もう一つの道具は情報の非対称性である。未上場企業の内情は取引銀行のほうがよく知っている。よく知る貸し手は、その情報の優位を使って他の貸し手より有利な条件を求めることができ、これを情報レント(ホールドアップ)と呼ぶ。上場すると監査済みの財務の定期開示と株価が加わり、貸し手の間の情報の差が縮まるので、条件は改善しやすくなる、というのが著者らの仮説だ。研究はこれを、各銀行が借り手ごとに付けるデフォルト確率(PD)の推定値の「ばらつき」で確かめようとした。同じ企業に貸す複数の銀行の見立てが近づけば、情報の差が縮んだと読める7。
外部資金が足りない企業ほど、3年以内に上場していた
まず、どんな企業が3年以内に上場したかを見る。基準となる上場確率(ある四半期の時点から3年以内に上場する確率)は0.20%と低いが、資金不足率が1標準偏差(0.23)高い企業では、その確率が相対で73%高かった(係数0.673、標準誤差0.080、1%水準で有意)8。売上の規模や成長率も上場と強く結びついていた。図1は、それぞれの特徴を一つずつ動かしたときの上がり方を並べたものだ。
注目すべきは収益性の向きである。設備投資と EBITDA を分けて入れると、投資は上場の確率を押し上げ、収益性は押し下げた。しかも投資が多い企業ほど、収益性の低さが上場を強く予測した(交差項−1.491、有意)9。稼ぎで投資を賄えない企業が上場を選んでいた、という形である。イタリアの未上場企業を調べた古典的研究(Pagano ら 1998)は、収益性の高い企業ほど上場し、上場後に投資や負債比率が下がることから「投資資金のためではなく、投資の後の帳尻合わせに上場している」と結論しており、米国の新しいデータはこれと逆の向きを示した10。
プライベート資金を取れる企業でも同じ関係があった。VC の出資を受けた企業に限ると、資金不足率の係数はどの推定でも全体より大きかった(たとえば5.061)11。ただし VC 出資企業は上場確率の水準そのものが違うので、係数の大きさから「何倍効く」とは言えない。被買収企業を除く、規模の近い企業どうしで比べる、テック・ライフサイエンス企業とシリコンバレーを除く、といった確認でも結果は大きく変わらなかったと著者は報告している12。
上場後、企業は借入を減らさず、より多くの貸し手から安く借りていた
次に、上場した企業を、上場前の特徴が近い同業種の未上場企業3社と比べ、上場前後の変化を追った。上場後4年で、設備投資は対照より46%、総資産は40%、無形資産は23%多くなった13。この資産の増加は上場で得た株式資金だけで賄われたのではない。負債は約65%増え、負債比率は1年目に約4%ポイント下がった後に戻り、2〜4年目には対照と統計的に有意な差が見られなかった14。研究の標本では、上場は「借金を返して身軽になる」機会ではなく、株式と負債の両方で調達を広げる機会として使われていた。
表1 上場した企業は、上場後4年で何が変わったか
表は横にスクロールできます →
| 項目 | 上場後の変化 | 比べ方・基準 | R1 の図表 |
|---|---|---|---|
| 設備投資 | +46% | 対照と比べた4年後の差(有意) | 図1(p.33) |
| 総資産 | +40% | 対照と比べた4年後の差 | 図2(p.34) |
| 無形資産(総資産−有形資産) | +23% | 対照と比べた4年後の差 | 図3(p.35) |
| 有利子負債 | 約+65% | 対照と比べた4年後の差 | 図4(p.36) |
| 負債比率(負債÷総資産) | 1年目 −4%pt | 2〜4年目は対照と有意な差なし | 図5(p.37) |
| 新規融資の金利 | −38bp | 銀行の PD・LGD 等で調整後(調整前 −51bp) | 表6(p.47) |
| 銀行間の PD のばらつき | −6%pt | 4年後。標準偏差6.4%pt のほぼ1つ分 | 図6(p.38) |
| 取引銀行の数 | +1行弱 | 上場前の平均2.3行 | 図7(p.39) |
| 負債に占めるシンジケートローン | 約+15%pt | 上場前の平均9% | 図8(p.40) |
| 負債に占める社債 | 約+8%pt | 上場前は3% | 図9(p.41) |
条件も良くなった。新規融資の金利は上場後に51bp下がり、銀行自身が付けた PD と損失率(LGD)で借り手のリスクを調整した後も38bp(標準誤差0.179%ポイント、5%水準で有意)下がった。上場前の平均的なクレジットスプレッド(10年国債との差)183bpの約21%にあたる15。銀行間の PD のばらつきは、この分析だけ PD の水準と取引銀行の数が近い企業を別に選んで比べており、上場直後から縮み、4年後には対照より6%ポイント小さくなった。上場前に収束が始まっていた形跡はない16。取引銀行の数は4年後に対照より1行弱多く(上場前の平均2.3行)、負債に占めるシンジケートローンの比率は約15%ポイント、社債の比率は約8%ポイント上がった17。
著者らはこれらをまとめて、上場で透明性が上がり、情報の非対称性が下がったことで、借入の条件と借入先の幅が改善したと解釈している。収束が上場の後にだけ起きること、市場型の負債も上場の後にだけ増えることを、選別だけでは説明しにくい根拠に挙げる18。
どこまで言えるか——標本、因果、版の注意
第一に、標本は米国の大手銀行から100万ドル超を借りている比較的大きな未上場企業である。上場企業1,390社のうち特定できたのは423社(30%)で、IPO 調達額では61%を占めるが、医薬・バイオは500社超のうち37社しか入っていない。著者は、銀行と取引できている企業はもともと資金を取りやすいので、この偏りはむしろ仮説に不利に働くと述べる19。銀行借入のない赤字のバイオ企業のような上場は、この研究の対象からほぼ外れている。
第二に、上場後の変化は、上場したことの効果(処置効果)と、伸びる企業が上場を選んだこと(選別効果)を分けていない。上場の申請後に市場が下げて撤回した企業を比較に使う操作変数の方法は、標本期間が短いことなどから使えなかったと著者自身が書いている20。欧州16か国で上場の完了と撤回を比べた Larrain らの研究(2025)は、この方法で上場が収益性を高めたと推定し、資金制約の緩和と整合すると述べており、方向としては補い合う21。PD のばらつきは情報の差ではなく単なる意見の違いでも生じうる、銀行が PD を偏らせる誘因がある、といった反論にも著者は触れている22。
第三に、版の注意がある。本稿が読んだ FEDS 版には、節の一部に書きかけと見られる記述が残っている。2024年11月の草稿はリスク調整後の金利の低下を約45bpとしていたなど、版によって数値が違い、最新の NBER 版(2026年10月)は本文を確認できていない23。数値は版を明記して使うべき研究である。
背景も押さえておきたい。米国では1996年の規制緩和の後、後期のスタートアップへのプライベート資金が増え、初回の VC 出資から上場までの年数の中央値は1990年代の約4年から、同研究が扱う近年のデータでは7年に延びていた(Ewens and Farre-Mensa 2020)24。プライベート資金が厚くなっても、外部資金の必要が大きい企業にとって上場の意味は残る、というのが今回の研究の主張である。
大手町プレップの考察:上場の価値は「株 式の調達額」より「そ の後の借り方」に出る
編集部の見方では、この研究から読み取れる最も実務的な点は、上場の資金面の効果を株式の調達額だけで測ると小さく見誤るということだ。研究の企業は上場後も借入を増やし、負債比率を元に戻していた。上場で得た株式は、それ自体が投資資金であると同時に、借入の余地を広げる担保のような働きもしていた可能性がある(仮説)。
日本に持ち込むときの違いも大きい。日本の未上場企業でも銀行借入が主な外部資金である会社は多いと考えられるが、その割合を本稿では統計で確認していない(仮定)。メインバンク制と呼ばれる関係のように、情報を最も持つ一行が条件に強い影響を持つ取引であれば、研究のいう情報レントの問題は日本でも起こりうる(仮説。日本の取引関係の実態は、本稿では一次資料で確かめていない)。また、研究は米国の監督当局に報告された銀行ごとの PD を使っており、日本で同じ「銀行間の見立ての差」を測れるデータがあるかは、本稿では確認できていない(確認事項)。資本市場の厚み、社債市場の利用のしやすさ、上場の費用も米国とは違う。研究の数値、たとえば38bpの金利低下は、日本の個別企業でそのまま期待してよい値ではない。
日本の実務への応用:東証が求める「I POの目的」と資金計画をつなぐ
日本の制度は、この問いを避けにくくしている。東証は2024年5月の要請で、グロース市場の新規上場会社に、「事業計画及び成長可能性に関する事項」の成長戦略の中で、研究開発・設備投資・人員・資金計画などの施策に関連付けて IPO の目的を書くよう求め、上場後は年1回以上の更新で目的の実現状況も踏まえて進捗を示すよう求めた25。さらに2025年9月には、グロース市場の上場維持基準を「上場5年経過後に時価総額100億円以上」(現行は上場10年経過後に40億円以上)へ見直すことを公表し、2030年3月1日以後に最初に来る事業年度末から適用するとした。上場時に見込まれる時価総額が100億円未満の会社は、新基準を意識した成長戦略を書く必要がある26。
研究の枠組みを当てると、IPO の目的に「資金調達」を掲げる会社は、少なくとも二つを示せるはずだ。一つは、計画上の資金不足率がプラスで、内部資金と既存の借入枠では投資を賄えないこと。もう一つは、上場後に借入をどう広げるか——取引銀行を増やすのか、協調融資や社債を使うのか、負債比率をどこに置くのか——という負債側の計画である(負債比率の考え方は最適資本構成の解説を参照)。資金不足率がマイナスで投資も小さい会社が「資金調達のため」と書くなら、目的の説明として弱く、他の目的(知名度、採用、VC など既存株主の換金)を正直に書くほうが、上場後の進捗開示で説明しやすい(編集部の推論)。
学習用の設例:資金不足率と金利の低下を数字にする
学習用の設例(架空)
- A社:未上場の部品メーカー。総資産200億円、有利子負債80億円(取引銀行3行)
- 今後3年の計画:EBITDA 30・34・38億円、設備投資 50・60・70億円。期首総資産 200・220・245億円
- 銀行は有利子負債をEBITDAの3.0倍までしか貸さないと置く(仮定)。税・運転資本・配当は省く
A社の資金不足は1年目20億円(資金不足率10.0%)、2年目26億円(11.8%)、3年目32億円(13.1%)で、3年で78億円になる。図2は、同じ式を架空の B社・C社にも当てたものだ。
すべてを借入で賄うと3年目末の借入は158億円で、EBITDA の4.16倍になる。銀行の上限3.0倍で計算した借入残高の上限は114億円で、現在の借入80億円を引いた追加の借入余地は34億円しかない。資金不足の累計78億円との差、約44億円は株式など借入以外で埋める必要がある。ここで上場により株式市場で資金を調達すれば、投資を賄うだけでなく、自己資本が厚くなって次の借入の交渉余地も広がる。研究の企業が上場後に負債を増やしていた姿は、この順番と整合する(研究がこの順番を直接検証したわけではない)。
一方、金利の低下だけで上場の費用を賄えるかは別の計算になる。表2は、借入残高と金利の低下幅から年間の利息の減少を求め、上場に伴う年間の追加費用を1.5億円と置いたときの損益分岐を示した。
表2 設例:金利の低下で減る年間の利息
表は横にスクロールできます →
| 上場後の借入残高 | 10bp | 20bp | 38bp(R1の値) | 50bp |
|---|---|---|---|---|
| 80億円 | 8百万円 | 16百万円 | 30百万円 | 40百万円 |
| 120億円 | 12百万円 | 24百万円 | 46百万円 | 60百万円 |
| 160億円 | 16百万円 | 32百万円 | 61百万円 | 80百万円 |
| 240億円 | 24百万円 | 48百万円 | 91百万円 | 120百万円 |
| 上場費用を賄う借入残高 | 1,500億円 | 750億円 | 395億円 | 300億円 |
A社の現在の借入80億円に研究の38bpを仮に当てても、利息の減少は年30百万円で、仮定した費用150百万円の約20%にとどまる。利息の減少だけで費用を賄うには約395億円の借入が要る。この設例の条件では、利下げだけで上場の年間の追加費用を賄うのは難しく、論点になるのは借りられる量と相手の広がりのほうだ、という読み方になる(研究は上場の便益の大小を比べてはいない)。
明日から使える確認項目
- 中期計画の各年について、(設備投資−EBITDA)÷期首総資産を計算する。3年続けてプラスなら、上場の目的に資金調達を掲げる根拠になる。ゼロ前後かマイナスなら、資金調達以外の目的を主に据える(判断の線は編集部の仮の目安で、研究で検証された閾値ではない)。
- 計画の資金不足の合計と、現在の取引銀行が許容しそうな借入の上限(有利子負債÷EBITDA の倍率)を並べ、差額を株式・借入・その他のどれで埋めるかを資本政策の表に書く。
- 取引銀行ごとに、直近の新規融資の金利・期間・担保と、銀行から示された格付や評価の説明を並べる。行によって条件の差が大きいなら、その差は開示で埋まる情報の差なのか、事業の見方の差なのかを社内で区別する。
- 上場後の負債の方針を決める。上場時に借入を返済して負債比率を下げるのか、維持して投資に回すのか。取引銀行を増やす、クラブディールや社債を検討する時期を、IPO の目的の記載と合わせる。
- 金利の低下を上場の効果として見込むなら、借入残高×低下幅で年間の金額を出し、上場に伴う追加費用(監査・内部統制・IR・上場料など、自社の見積もり)と比べる。
よくある質問
利益が出ている会社は上場しないほうがよいということですか。
そうではありません。研究は、収益性が高い企業ほど上場の確率が低かったという相関を示しただけで、上場の是非を判断したものではありません。利益が出ている会社が上場するなら、資金調達以外の目的をどう説明するかが問われる、という意味で参考になります。
VC から十分に調達できるなら、上場の資金面の意味は小さいのですか。
研究の標本では、VC の出資を受けた企業に限っても、資金不足率が大きいほど上場しやすいという関係が見られ、係数は全体より大きく推定されました
まとめ
米国の大手銀行の融資データで未上場企業を追った研究は、外部資金が足りない企業ほど上場しやすく、上場後は借入を減らさずに増やし、リスクを調整しても金利が下がり、借入先が広がったことを示した。著者はこれを情報の非対称性の縮小で説明するが、選別と効果を分けた推定ではなく、版によって数値も異なる。日本で上場を考える会社にとっては、IPO の目的を資金不足率と上場後の借入計画という二つの数字で裏づけられるかが、東証の求める開示に耐える出発点になる。
脚注
- R5(東京証券取引所 上場部「グロース市場における投資者への情報発信の充実に向けた対応について」2024年5月31日)p.2〜4(PDF の物理ページ)。成長戦略やその実現のための施策(研究開発、設備投資、営業、人員、資金計画等)に関連付けて IPO の目的を記載すること、上場後は IPO の目的が実現できているかも踏まえて進捗を記載することが「期待されます」とされている。↩
- R1(FEDS 2025-102, 2025年11月)p.1〜2(表紙・要旨。ページは PDF の物理ページで、本文の印刷ページ番号+2)。確認できた最も早い版は、同じ題名・著者の草稿(表紙の日付 November 2024。https://uncipc.org/wp-content/uploads/2024/11/Weitzner_IPO_Paper.pdf 、2026年10月26日確認)。SSRN 5578612(Crossref の登録は2025年10月)、NBER Working Paper No. 35888(Issue Date 2026年10月、DOI 10.3386/w35888。論文ページの要旨のみ確認し本文は未取得)もある。草稿の謝辞にある学会・セミナー報告の日付と、2024年11月より前の版の有無は確認できなかった。学術誌への掲載は確認できなかった(2026年10月26日)。↩
- R1(FEDS 2025-102, 2025年11月)p.8〜9(2.1〜2.2節)。総資産500億ドル以上の銀行持株会社に報告義務があり、米国の銀行部門の資産の85.9%(2018年第4四半期)を占める。金融・不動産・公的機関、総資産1,000万ドル未満の企業、標本期間中ずっと上場していた企業を除き、約10万社・100万超の企業×四半期。IPO は SDC の2012〜2023年の1,390社のうち423社を特定。↩
- R1(FEDS 2025-102, 2025年11月)p.12(3.1節、3年以内に上場するかの線形確率モデル)、p.16(3.2節、傾向スコアで選んだ対照3社とのコホート差の差。PD のばらつきの分析だけは、PD の水準と取引銀行の数によるマハラノビス距離で対照を選ぶ。3.4節 p.19)、p.22(3.6節、処置効果と選別効果の両方を含むと著者が明記)。↩
- R1(FEDS 2025-102, 2025年11月)p.10(2.3節)。資金調達の不足(financing deficit)の標準的な定義から、Y-14 で十分に得られない運転資本の増減などの小さな項目を除いている。↩
- R1(FEDS 2025-102, 2025年11月)p.10〜11・表1(p.42)。いずれも上場した企業の上場前の四半期と、上場しなかった企業の四半期の平均。比率は総資産に対する割合。↩
- R1(FEDS 2025-102, 2025年11月)p.3〜4(序論)・p.17(3.3節)・p.19(3.4節)。ホールドアップ・情報レントの議論は Sharpe(1990)・Rajan(1992)などの理論に拠ると著者は述べる。PD は銀行が借り手ごとに推計する長期の年間デフォルト率(p.11)。↩
- R1(FEDS 2025-102, 2025年11月)p.13(3.1節)・表3列1(p.44)。日付の固定効果を入れた推定。基準の上場確率0.20%は p.13 の記述。73%は著者の値で、係数0.673と標準偏差0.23を基準の0.20%で割って丸めた値から計算すると約77%になる(差の理由は本文から確認できなかった)。↩
- R1(FEDS 2025-102, 2025年11月)p.13〜14・表4(p.45)。資金不足率の推定では、資金不足率を統制すると設備投資の係数は有意でなく、投資(正)と収益性(負)の大きさが等しいという仮説を棄却できない(p.13)。交差項は表4の全列で負かつ有意。↩
- R2(Pagano, Panetta and Zingales 1998)の要旨(Crossref に登録された要旨で確認。本文は未確認)。イタリアの未上場企業の大規模データで、上場の確率は規模と業種の時価簿価比率とともに上がり、上場は将来の投資と成長の資金のためではなく、高い投資と成長の後の帳尻合わせ(rebalance)とみられる、上場後に借入コストが下がる、としている。上場後に投資・収益性・負債比率が下がった点と、収益性が上場を負に予測する R1 の結果がイタリアと逆である点は R1(FEDS 2025-102, 2025年11月)p.5・p.13 の紹介による。↩
- R1(FEDS 2025-102, 2025年11月)p.14〜15(3.1.2節)・表5(p.46)。VC 出資の有無は Preqin との照合で判定(8,000社超、p.48)。5.061は日付の固定効果を入れた列1の値で、他の列は2.644〜6.367。全標本との相対の大きさの比較は著者も行っていない。↩
- R1(FEDS 2025-102, 2025年11月)p.15〜16(3.1.3節)・付表C11〜C17(本稿では付表の数値までは確認していない)。↩
- R1(FEDS 2025-102, 2025年11月)p.16〜17(3.2節)・図1〜3(p.33〜35)。%は対数の係数に基づく著者の表現。設備投資の差は有意と明記されている。無形資産は総資産から有形資産を引いて求めたもので、研究開発費の直接のデータは無い(p.17)。↩
- R1(FEDS 2025-102, 2025年11月)p.17(3.2節)・図4〜5(p.36〜37)。負債の約65%は4年目の値。4年目のレバレッジの係数は正。イタリア・英国の研究が上場後のレバレッジの恒久的な低下を報告しているのと異なると著者は述べる。↩
- R1(FEDS 2025-102, 2025年11月)p.18〜19(3.3節)・表6(p.47)。新規に組成された融資に限った推定で、列1が−0.511(5%水準で有意)、PD・LGD とその積、融資の期間・金額、銀行×日付・銀行×企業の固定効果を入れた列4が−0.384(標準誤差0.179、5%水準で有意)。上場前の上場企業の平均金利は約401bp、10年国債との差は183bp。21%は著者の値(38÷183で約21%)。融資がシンジケートかどうかを統制しても結果はほぼ同じ(p.21 脚注54)。↩
- R1(FEDS 2025-102, 2025年11月)p.19〜20(3.4節)・図6(p.38)。同じ企業・四半期の銀行間の PD の標準偏差を、PD の水準と取引銀行数が近い対照(マハラノビス距離)と比べた。4年後の差6%ポイントは標準偏差(6.4%ポイント)のほぼ1つ分。銀行の組み合わせを固定しても同様(付図C1)。上場前に収束が見られない点は p.22。↩
- R1(FEDS 2025-102, 2025年11月)p.20〜21(3.5節)・図7〜9(p.39〜41)。シンジケートローンの比率の上昇は上場前の平均9%に対し167%増と著者は表現。社債(Mergent FISD で特定)の比率は上場前3%で、上昇は上場後にだけ起きる。↩
- R1(FEDS 2025-102, 2025年11月)p.7・p.22〜23(3.6節)。著者の解釈。↩
- R1(FEDS 2025-102, 2025年11月)p.9(2.2節)。423社は一致率30%。調達額2.5億ドル超の IPO の63%、5億ドル超の74%を含む(p.9 脚注25)。医薬・バイオの過少は規模で説明できると著者は付表C3で示している。↩
- R1(FEDS 2025-102, 2025年11月)p.6〜7・p.22(3.6節)。Bernstein(2015)の操作変数は、標本の開始が2012年で期間が短いこと、2012年の JOBS 法で非公開の申請と撤回ができるようになり撤回の観測が減ったこと、標本が IPO の一部に限られることから、検出力が足りないと著者は述べる。↩
- R3(Larrain, Phillips, Sertsios and Urzúa I 2025)の要旨(Crossref に登録された要旨で確認。本文は未確認)。上場の試みの前後の財務を観測できる16か国の企業で、完了と撤回を比べ、過去の市場リターンを操作変数に使っている。SSRN の初版は2021年。↩
- R1(FEDS 2025-102, 2025年11月)p.4 脚注8・p.18 脚注44・p.20 脚注48。銀行×日付の固定効果で銀行全体の誘因は吸収されると著者は述べる。事業の段階が変わったことでばらつきが下がった可能性については、それなら上場の前から徐々に下がるはずだと反論している(p.20)。↩
- R1(FEDS 2025-102, 2025年11月)p.14(3.1.1節)・p.23(3.7節)にメモ書きのような文が残っており、本稿ではこの2節の内容を使っていない。草稿(2024年11月)p.4 では、借り手のリスクを条件にした借入コストの低下を約45bpとしている。NBER 版の要旨は FEDS 版とほぼ同じ内容だが、本文の数値は確認できていない。↩
- R4(Ewens and Farre-Mensa 2020)OSF に公開された2020年2月7日版の p.1〜4。1996年の National Securities Markets Improvement Act(NSMIA)の後、後期の VC 出資を受けたスタートアップへのプライベート資金の供給が増え、創業者が長く非公開でいる新しい均衡になったと論じる。年数は初回の VC 出資から IPO までの中央値。対象は VC 出資を受けたスタートアップ。↩
- R5 p.3〜4(PDF の物理ページ)。グロース市場では、新規上場時の「事業計画及び成長可能性に関する事項」の開示と、上場後の年1回以上の更新が義務付けられている(R5 p.3)。IPO の目的の記載と進捗の開示は「期待されます」という要請。↩
- R6(東京証券取引所 上場部「グロース市場の上場維持基準の見直し等の概要」2025年9月26日)p.2(PDF の物理ページ)、R7(JPX「上場維持基準の詳細:時価総額」2025年12月8日更新)。1年の改善期間内に基準に適合しなければ監理・整理銘柄の指定を経て上場廃止となるが、適合計画を開示した場合の例外がある。100億円未満の場合の成長戦略の記載は、新規上場では2025年12月末日以後の申請から求められる(R6)。↩
参考文献(2 026年10月確認)
- R1 Almazan, A., N. Swem, S. Titman and G. Weitzner (2025), “Access to Capital and the IPO Decision: An Analysis of US Private Firms,” Finance and Economics Discussion Series 2025-102, Board of Governors of the Federal Reserve System. DOI: 10.17016/FEDS.2025.102. 参照した版:FEDS 版(2025年11月)。同題の NBER Working Paper No. 35888(2026年10月、DOI: 10.3386/w35888)は要旨のみ確認。SSRN 5578612 も 2026年7月14日に改訂されている(本文は取得できず未確認)。前身の題名は “Why Do Firms Go Public? An Analysis of US Private Firms”(FRB のワークショップ一覧、2024年)。査読:未査読(WP)。 federalreserve.gov (参照箇所:FEDS 版の全文(ページは PDF の物理ページ)。草稿(2024年11月)は初出と版の違いの確認に使用。脚注2〜20・22〜23の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R2 Pagano, M., F. Panetta and L. Zingales (1998), “Why Do Companies Go Public? An Empirical Analysis,” Journal of Finance 53(1), 27–64. DOI: 10.1111/0022-1082.25448. 参照した版:Crossref に登録された要旨(本文は未確認)。査読:済。 doi.org (参照箇所:要旨。脚注10の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R3 Larrain, B., G. M. Phillips, G. Sertsios and F. Urzúa I. (2025), “The Effects of Going Public on Firm Profitability and Strategy,” Review of Financial Studies 38(8), 2467–2514. DOI: 10.1093/rfs/hhaf026. 参照した版:Crossref に登録された要旨(本文は未確認)。査読:済。 doi.org (参照箇所:要旨。脚注21の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R4 Ewens, M. and J. Farre-Mensa (2020), “The Deregulation of the Private Equity Markets and the Decline in IPOs,” Review of Financial Studies 33(12), 5463–5509. DOI: 10.1093/rfs/hhaa053. 参照した版:OSF に公開された著者版(2020年2月7日)。査読:済(掲載誌版は未確認)。 doi.org (参照箇所:著者版 p.1〜4。脚注24の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R5 東京証券取引所 上場部(2024)「グロース市場における投資者への情報発信の充実に向けた対応について」2024年5月31日。 jpx.co.jp (参照箇所:p.2〜4(PDF の物理ページ)。脚注1・25の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R6 東京証券取引所 上場部(2025)「グロース市場の上場維持基準の見直し等の概要」2025年9月26日。 jpx.co.jp (参照箇所:p.2(PDF の物理ページ)。脚注26の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R7 日本取引所グループ「上場維持基準の詳細:時価総額」(2025年12月8日更新)。 jpx.co.jp (参照箇所:グロース市場の時価総額基準と見直しの適用日。脚注26の根拠。閲覧日:2026年10月)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。