この記事で分かること

  • Fund of Funds(FoF)とは何か、LPと原資産PEファンドの間に立つ「器」としての基本構造
  • 地方銀行・企業年金・GPIFなど日本の機関投資家がFoFを使う理由と、確認できる範囲の実態
  • ゲートキーパーの役割と、GPIFが実際に採用している運用体制の実例
  • FoFを経由することで生じる「二重フィー構造」が最終的な手取りリターンに与える影響(設例と検算)

結論:FoFはPEへの「入口」だが、フィーは二重にかかる

Fund of Funds(FoF)とは、投資家(LP)から集めた資金を、みずから投資先企業を選ぶのではなく、複数のプライベートエクイティ(PE)ファンドに分散して出資する「上位ファンド」のことです。地方銀行や企業年金のように、単独では優良PEファンドへの最低出資額を満たせなかったり、PEファンドを審査・モニタリングする専門人材を十分に確保できなかったりする投資家にとって、FoFはPE市場への実務上の入口として機能します。

一方で、FoFを経由すると、原資産となる個々のPEファンドが徴収する管理報酬・キャリー(成功報酬)に加えて、FoF自体の管理報酬・キャリーも負担することになります。これがいわゆる「二重フィー構造」です。以下では、この構造を仮設例で実際に計算したうえで、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が公表している運用体制を手がかりに、FoFの中核機能である「ゲートキーパー」の役割を解説します。

Fund of Fundsの基本構造|LPと原資産ファンドの間に立つ「器」

通常のPEファンドでは、投資家(Limited Partner/LP)がファンド運営会社(General Partner/GP)に出資し、GPがその資金をもとに投資先企業を選定・買収します。LPとGPの基本的な役割分担はPEファンドの構造で解説しています。

FoFは、このLPとGPの間にもう一段の構造を挟みます。最終的な投資家(以下では便宜的に「LP」と呼びます)はFoFに出資し、FoF自体が今度は「LP」の立場で、複数の原資産PEファンドに分散して出資します。FoFを運営する主体は、独立系の運用会社であることもあれば、信託銀行や証券会社の運用部門であることもあります。

日本の実務では、FoFは大きく二つの形態で使われています。第一に、複数の投資家の資金を一つの組合(ファンド)にプールし、その組合が複数のPEファンドへ分散投資する「コミングルド型」です。中小規模の投資家が、単独では出せない出資規模で分散投資効果を得るために使う、伝統的なFoFの形といえます。第二に、単独の大口投資家が専用の勘定(セパレートアカウント)を設け、運用受託機関に個別の運用を委任する形態です。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、プライベート・エクイティを含むオルタナティブ資産について、運用機関が専用のセパレート・アカウントから複数のファンドへ投資する方式を「ファンド・オブ・ファンズ型運用」と呼んでいます。

図1:FoFの資金フロー(コミングルド型とセパレート型) コミングルド型FoF 地銀A(LP) 企業年金B(LP) 事業法人C(LP) FoF PEファンドα PEファンドβ PEファンドγ 複数のLPの資金をプールし FoFが分散投資する設例 セパレートアカウント型(GPIFの例) GPIF(単独LP) ゲートキーパー 三菱UFJ信託銀行 + FoFマネージャー Hamilton Lane PEファンドδ PEファンドε 単独の大口投資家専用の勘定を ゲートキーパー等が運用(設例)
図:左は一般的な仕組みを示す設例、右はGPIFが公表している運用受託機関の選定結果を基に作成(出所:GPIF公表資料を基に大手町プレップ作成)。

なぜLPはFoFを使うのか|アクセス制約・分散・人材不足という3つの壁

LPがFoFを選ぶ理由は、主に三つに整理できます。

第一に、最低出資額(チケットサイズ)の壁です。実績のあるバイアウトファンドは、1件あたり数億円から数十億円規模のコミットメントを求めることが珍しくありません。単独ではこの水準に届かない投資家でも、FoFに出資すれば、より小さい単位で複数ファンドへの分散エクスポージャーを得られます。コミットメント・ペーシングキャピタルコールへの資金繰り対応も、FoF側である程度平準化される点が実務上のメリットです。

第二に、審査・モニタリング体制の壁です。PEファンドをLPとして評価するには、GPの投資実績(トラックレコード)の検証、投資戦略の妥当性判断、投資後のモニタリングなど、専門的な知見が必要になります。中小企業庁が2022年に地域金融機関159機関(地方銀行23行・第二地方銀行23行・信用金庫111庫・不明2機関)を対象に実施した調査では、エクイティ・ファイナンスに関する人材について「不足している」と回答した機関が72.0%にのぼりました。自前でこの体制を一から構築するコストを考えると、審査・モニタリングの一部をゲートキーパーに委ねるFoFは、現実的な選択肢の一つになります。

第三に、分散投資効果です。単一のPEファンドだけに出資すると、そのファンドの投資判断組成年ヴィンテージ)・戦略に運用成果が強く依存します。FoFは複数のファンドを束ねることで、個別ファンドの不振が全体の運用成果に与える影響を抑える設計になっています。

なお、中小企業庁の同調査では、地域金融機関がGP(運営会社)として組成したベンチャー・キャピタルファンドのLP出資者の属性として、「ファンドオブファンズ」が4.3%(回答23件中)挙げられており、FoFが実際に日本の地域金融機関系ファンドの出資者として存在することが確認できます。ただしこの数値は限られたサンプルに基づくものであり、地域金融機関全体がFoFを通じてPEに投資している比率を示すものではない点には注意が必要です。

PEファンドの経済構造を体系的に押さえる

FoFという「入口」の仕組みを理解したら、次はPEファンド本体の管理報酬・キャリー・分配の仕組みを押さえておくと、LP側の視点と運用者側の視点の両方が見えてきます。

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ゲートキーパーの役割|GPIFの体制に見る実例

FoFにおいて、実際にどの原資産ファンドへ出資するかを判断し、デューデリジェンスとモニタリングを担う専門家・機関は「ゲートキーパー」と呼ばれます。LPからみると、ゲートキーパーはPE市場への「門番」であり、個々のPEファンドとLPの間に立って、選定基準に満たないファンドを弾き、有望なファンドへのアクセスを確保する役割を担います。

GPIFは2017年4月から、プライベート・エクイティを含むオルタナティブ資産についてFoF形式で投資する運用受託機関の公募を継続的に実施しています。公募の枠組みでは、ゲートキーパーとシングル・ファンドマネジャー(原資産ファンドの選定・運用を担うマネジャー)が組んで応募する体制が想定されており、GPIFはこの体制に投資を一任したうえで、マネジャーが運用するファンドを通じて個別案件への投資が実行される、という役割分担になっています。

2021年1月には、「プライベート・エクイティ(グローバル・戦略分散型)」の運用受託機関として、ゲートキーパーに三菱UFJ信託銀行、FoFマネージャーにHamilton Lane Advisors, L.L.C.を選定したことが公表されています。ゲートキーパーとFoFマネージャーという二つの専門機能が分業する体制は、GPIFのような大規模投資家が、自前で世界中のPEファンドを直接審査する体制を持たなくても、オルタナティブ資産への配分を実行できる仕組みになっている点が特徴です。

なお、GPIFはオルタナティブ資産(インフラストラクチャー・プライベート・エクイティ・不動産の合計)について、年金積立金全体の5%を上限とする方針を定めています。2026年3月末時点のオルタナティブ資産の時価総額は5兆2,067億円で、年金積立金全体に占める割合は1.74%にとどまっており、上限までにはなお余地がある水準です。

二重フィー構造とは|設例で見るFoFのコスト

FoFに出資するLPは、原資産PEファンドが徴収する管理報酬・キャリーに加えて、FoF自体の管理報酬・キャリーも負担します。これが「二重フィー構造」と呼ばれる仕組みです。原資産ファンド段階の分配ウォーターフォール(優先収益・キャッチアップ・キャリー配分の詳細な計算ロジック)はPEファンドの分配ウォーターフォールで解説しているため、ここではFoF段階で追加されるフィーの影響に絞って、以下の仮設例で計算します。

前提(以下は説明用の仮設例です)
LPはFoFに10.0億円をコミットする。FoFはこれをそのまま複数の原資産PEファンドへ分散出資し、原資産ファンド段階の管理報酬・キャリー控除後のネットMOIC(FoF着金ベース)を1.80倍と仮定する。FoF自体の条件は、管理報酬0.75%/年(コミットメント額に対して、FoFの存続期間10年間定額と仮定)、キャリー5%(本設例ではハードルレートを考慮せず、FoF段階の利益に対して単純に乗じる簡易計算とする)とする。

まず、FoFが原資産ファンド群から受け取る金額を計算します。


原資産ファンドからの受取額=コミットメント額×原資産ファンドのネットMOIC
10.0億円×1.80=18.0億円

この18.0億円が、FoFの取り分を差し引く前の水準です。ここからFoF段階のコストを差し引きます。


FoF管理報酬=コミットメント額×料率×存続年数=10.0億円×0.75%×10年=0.75億円
FoF段階の利益=受取額-コミットメント額=18.0億円-10.0億円=8.0億円
FoFキャリー=FoF段階の利益×キャリー率=8.0億円×5%=0.40億円

以上を一覧にすると次のとおりです。

項目金額
LPのFoFへのコミットメント10.00億円
原資産ファンド群からの受取額(仮定ネットMOIC1.80倍)18.00億円
FoF管理報酬(コミットメント×0.75%×10年)▲0.75億円
FoFキャリー(FoF段階の利益8.0億円×5%)▲0.40億円
LPの最終手取り額16.85億円
LPのネットMOIC(手取り額÷コミットメント額)1.69倍

検算すると、FoF管理報酬0.75億円とFoFキャリー0.40億円の合計は1.15億円で、これは原資産ファンド段階の受取額18.0億円と最終手取り額16.85億円の差(18.0-16.85=1.15億円)と一致します。ネットMOICでみると、原資産ファンド段階の1.80倍が、FoFの二重フィー分だけ1.69倍まで低下する計算です。仮に同じ条件で直接原資産ファンドに投資できていれば1.80倍のままだったはずの部分が、FoFという器を経由することで約0.11倍分目減りする、という設例になります。なお本設例はMOIC(倍率)ベースの単純化であり、フィーの支払いタイミング次第では、IRR(内部収益率)への影響がMOIC以上に大きくなる場合もある点には注意が必要です。

図2:二重フィー構造の設例(単位:億円) 0 5 10 15 20 10.00 ①コミット 18.00 ②受取(仮定) 17.25 ③管理報酬控除後 16.85 ④キャリー控除後 (最終手取り) =原資産ファンド段階の受取水準(18.0億円、FoF控除前)
図:LPコミットメント10.0億円に対し、原資産ファンド段階でネットMOIC1.80倍(仮定)の受取が生じた後、FoFの管理報酬0.75億円・キャリー0.40億円を控除すると、最終手取りは16.85億円(ネットMOIC1.69倍)となる設例。数値はすべて説明用の仮設例です。

もっとも、この設例はFoFが一方的に不利であることだけを示すものではありません。単独では原資産ファンドへの出資枠を確保できない投資家にとっては、「FoF経由の1.69倍」と「直接投資というルート自体を持たない場合」を比較する必要がある、という点も踏まえて評価すべきです。

日本におけるFoF活用の実態|地銀・企業年金・GPIF

日本でFoFがどのように使われているかを、確認できる範囲の一次情報から整理します。

企業年金連合会は、用語集の中でファンド・オブ・ファンズを「運用手法の異なる複数の投資信託を組み合わせて、一つの投資信託としたもの」で、実質的に複数の運用会社の商品を購入することになりリスク分散のメリットがある、と説明しています(投資信託を例にした一般的な定義ですが、複数のファンドを束ねて分散を得るという考え方はPEファンドを対象とするFoFにも共通します)。個々の企業年金基金が具体的にどの程度の資産をFoF経由でPEに配分しているかは、多くの場合詳細には開示されていないため、ここでは制度としての位置づけの説明にとどめます。

地方銀行については、中小企業庁の2022年調査で、直近10年間にGP出資・LP出資の両方を実施している地方銀行が58.7%、LP出資のみが32.6%、ファンドへの出資を一切行っていない地方銀行が8.7%という結果が示されています。同調査では、令和3年の銀行法改正等によって地域金融機関による直接出資が行いやすい環境が整いつつあることも指摘されており、直接出資とFoF経由の間接投資の両方が選択肢として並存している状況がうかがえます。

GPIFについては、前述のとおりセパレートアカウント型のFoFを通じてプライベート・エクイティへの配分を実行しています。日本銀行が2025年に公表したレビューでも、邦銀や国内機関投資家がプライベートエクイティ・プライベートデットファンドとの連関性を強めている傾向が指摘されています。

なお、LPがPEファンドとどう向き合うか(デューデリジェンスの視点、ポートフォリオ全体でのPE配分の考え方、意思決定プロセスなど)の全体像はLPの投資実務で解説しています。ここではその入口となる「FoFという器」の仕組みと、二重フィー構造という固有のコストに絞って扱いました。PEファンドの投資実績・資金調達動向を横断的に見たい場合は、日本PE市場データもあわせて確認してください。原資産ファンド側のLP向け条件(LPACサイドレターなど)はPEファンドのLPA重要条項ガイド、ファンド成績の外部比較にはPMEが関連します。

よくある質問(FAQ)

Q. FoFに投資すると、直接PEファンドに投資するよりリターンは必ず下がりますか?
A. 二重フィー構造がある分、単純計算では手取りリターンは下がりやすい構造です(前述の設例を参照してください)。ただし、直接投資に必要なデューデリジェンス体制やアクセス自体を持たない投資家にとっては、FoFを使わなければそもそもPEに配分できない、という比較になる点に注意が必要です。実際にどちらが有利かは、投資家自身の体制構築コストや機会費用も含めて評価する必要があります。

Q. コミングルド型とセパレートアカウント型はどちらが主流ですか?
A. 中小規模の投資家は、複数の投資家の資金をプールするコミングルド型FoFを使うのが一般的です。GPIFのように出資規模が大きい投資家は、専用のセパレートアカウントを組成し、ゲートキーパーに運用を委任する形式を採用することがあります。

Q. FoFやゲートキーパー業務は、PEキャリアの選択肢になりますか?
A. ゲートキーパー業務は、原資産ファンドの選定・デューデリジェンス・モニタリングを行う専門職であり、PE業界の中の一つの職種です。ただし採用枠は原資産ファンドのGPに比べて限られます。PEキャリア全体の選択肢はPEファンド転職完全ガイドで整理しています。

Q. 日本の企業年金や地方銀行は、どの程度FoFを使っていますか?
A. 公表資料からは、個々の投資家がどの程度FoF経由でPEに配分しているかを網羅的に確認することはできません。GPIFのように運用体制を公表している例がある一方、企業年金や地方銀行の多くは個別の配分方針を詳細には開示していません。ここでは、確認できる範囲の一次情報に基づいて構造を説明しています。

まとめ

FoF(ファンド・オブ・ファンズ)は、投資家(LP)が単独では届かない出資規模やデューデリジェンス体制の壁を越えて、複数のPEファンドへ分散投資するための「器」です。GPIFのように大規模な投資家は、ゲートキーパーとFoFマネージャーが分業するセパレートアカウント型の体制を構築しており、地方銀行や企業年金はコミングルド型FoFや直接出資を組み合わせながらPE市場に関わっています。一方で、原資産ファンドの管理報酬・キャリーに加えてFoF自体の管理報酬・キャリーを負担する二重フィー構造は、設例で見たとおり最終的な手取りリターンを確実に押し下げます。FoFを評価する際は、フィー負担の大きさと、それによって得られるアクセス・分散・審査体制のどちらが投資家自身にとって重要かを、個別に比較検討する必要があります。

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出典・参考(2026年8月確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための仮設例です。