想定読者:プロジェクトファイナンス(PF)・インフラ・開発金融に関わる銀行、商社、ファンドの担当者
前提知識:借入の元利均等返済と、DSCR(返済に対する余裕の倍率)の考え方。計算は電卓で追えます。

結論:公的資金は​「リスクが減る」ではなく、​3つの​数字の​動きで​説明する

公的資金を入れた案件の説明は、「リスクが下がる」で終わらせず、民間シニア(返済順位が最上位の通常の借入)の額、損失が出始める下振れ幅、調達コストの3つの数字にできます。

以下は学習用の架空事例です。新興国の太陽光案件(総事業費10,000百万円、CFADS(借入の元利返済に充てられる事業のキャッシュフロー)は年1,000百万円で一定)を、民間のみのA案、公的劣後融資400を入れるB案、シニアの40%を公的保証でカバーするC案で比べました。

A案はシニア6,900、必要なエクイティ(出資金)は3,100で、スポンサーの出資上限2,500を600超えます。B案は公的劣後400を入れるとシニア7,100で資金が閉じ、加重平均調達コストは6.84%です。C案は保証割合40%でシニア7,500となり、7.24%です。一方、シニアのDSCRが1.0倍を割る下振れ幅は、Aが29.0%、Bが26.9%、Cが22.8%と狭まります。

つまりこの設例で公的資金が買っているのは借入額の拡大で、シニアのキャッシュフロー上の耐性ではありません(仮定に依存する学習用の結果です)。

ブレンデッド・​ファイナンスの​定義と、​譲許性・​追加性

OECDの開発援助委員会(DAC)の定義では、ブレンデッド・ファイナンスは「開発途上国における持続可能な開発に向けて、追加的な資金を動員するための開発資金の戦略的な使用」です(訳は編集部)。ここでの「追加的な資金」は主に民間の商業資金を指します1。開発資金は譲許的(市場より有利な条件)でも非譲許的でもよい一方、譲許的な資金は希少なので特に注意して使うべきだとされています。

原則は5つで、2017年10月31日のDACハイレベル会合で承認されました(文書は2018年1月付)。開発上の根拠に結びつける、商業資金の動員が増える設計にする、現地の文脈に合わせる、効果的に連携する、透明性と成果をモニタリングする、の5つです2(訳は編集部)。本記事が使うのは原則2の「追加性」と「譲許性の最小化」です。

手法としては、技術支援、リスク引受(保険・保証)、市場インセンティブという分類も使われます3。

劣後(返済順位がシニアの後ろ)という位置はLBOなどのメザニンファイナンスと同じですが、本記事の公的劣後融資は高い利回りではなく、低い金利という譲許的な条件で民間シニアの前提を変える資金です。インパクト投資の要件や測定は別の​記事に任せます。

設例の​前提と、​民間のみ​(A案)の​シニア額

前提は次のとおりです。数値はすべて仮定で、金額の単位は百万円です。

  • 総事業費10,000、運営期間25年。CFADSは年1,000で一定とし、税・運転資本・インフレは省きます。
  • 借入はすべて返済期間15年の元利均等。シニア金利6.0%、公的劣後融資2.0%、保証料率0.8%(保証対象のシニア元本に対する年率で、残高の逓減は無視)。
  • スポンサーが出せるエクイティは最大2,500。加重平均調達コストに使うエクイティの要求リターンは10%。
  • 貸し手が求めるシニアの目標DSCRは、公的資金がなければ1.40倍。公的劣後が100増えるごとに0.01、保証割合が10ポイント増えるごとに0.03下がるものとします(編集部の換算の仮定)。
  • 支払の順位はシニア、公的劣後、保証料、エクイティの順です(キャッシュウォーターフォール)。

借入額の求め方は、DSCRから逆算する通常の手順です(詳しくはDebt Sizingの​記事)。途中計算は丸めず、表示は四捨五入(DSCRは小数第2位、係数は第4位、他は第1位)のため、表示値どうしの計算は0.1ずれることがあります。

シニア借入可能額
借入可能額 = CFADS ÷ 目標DSCR × 年金現価係数
年金現価係数 = (1 - (1+r)の-n乗)÷ r (r=6.0%、n=15年で 9.7122)

A案は1,000 ÷ 1.40 × 9.7122 = 6,937.3となり、100未満を切り捨てた6,900を採用します。年間の返済額は6,900 ÷ 9.7122 = 710.4、DSCRは1,000 ÷ 710.4 = 1.41倍です。必要なエクイティは10,000 - 6,900 = 3,100で、上限2,500を600超えるため、このままでは資金が閉じません。ノンリコース(返済原資を事業のキャッシュフローに限る)の融資では、不足分をスポンサーの他の資産で埋める前提も置けません。

公的劣後​(B案)と​公的保証​(C案)で​資金を​閉じる

B案:公的劣後融資 公的劣後の額を100刻みで増やし、そのたびに目標DSCRを下げてシニア上限を計算します。300のとき目標は1.37倍、シニア上限は7,000で、必要額7,200に200足りません。400のとき目標は1.36倍で、1,000 ÷ 1.36 × 9.7122 = 7,141.4から7,100となり、必要額(10,000 - 2,500 - 400 = 7,100)とちょうど一致します。公的劣後の年間返済額は400 ÷ 12.8493(2.0%・15年の係数)= 31.1、シニアと合わせて762.2です。

C案:公的保証 必要なシニアは10,000 - 2,500 = 7,500です。保証割合を5ポイント刻みで増やすと、35%の目標は1.295倍で理論額は7,499.8、切り捨てで7,400となり届きません。40%では目標1.28倍、理論額7,587.7から7,500となり閉じます。保証対象は7,500 × 40% = 3,000、保証料は3,000 × 0.8% = 24.0です。

図表1のとおり、3案を同じ総事業費10,000で並べます。

図表1:3案の資金構成・DSCR・調達コスト(単位:百万円)
項目A 民間のみB 公的劣後C 公的保証
公的資金の内容なし劣後融資 400保証 40%
シニア目標DSCR(仮定)1.40倍1.36倍1.28倍
シニア借入額6,9007,1007,500
公的劣後融資04000
必要エクイティ3,1002,5002,500
上限2,500に対する不足▲60000
年間シニア返済額710.4731.0772.2
シニアDSCR(CFADS 1,000)1.41倍1.37倍1.29倍
年間エクイティ配当(1〜15年目)289.6237.8203.8
加重平均調達コスト7.24%6.84%7.24%
対象期間:返済期間15年​(年間値)。​A案の​調達コストは​必要​エクイティ3,100が​前提。​配当は​CFADSから​各返済額と​保証料を​引いた額。​出所:学習用の​仮定に​基づき大手町​プレップ​作成。​(スマートフォンでは​表を​横に​スクロールできます)

加重平均調達コストは(シニア×6.0% + 公的劣後×2.0% + 保証料 + エクイティ×10%)÷ 10,000で求めます。Aは(414.0 + 310.0)、Bは(426.0 + 8.0 + 250.0)、Cは(450.0 + 24.0 + 250.0)を10,000で割った値です。B案が0.40ポイント低いのは、要求リターン10%のエクイティ600が、金利6.0%のシニア200と金利2.0%の公的劣後400に置き換わったためです(60.0 - 12.0 - 8.0 = 40.0)。C案はエクイティ600を6.0%のシニアに置き換えた節約24.0(60.0 - 36.0)を保証料24.0がちょうど打ち消し、A案と同じ7.24%です。要求リターンの仮定を変えれば、この順位は変わり得ます。

図表2:3案の資金構成(総事業費 10,000) シニア 公的劣後 エクイティ 保証対象 上限超過 エクイティ上限 2,500 A 民間のみ シニア 6,900 エクイティ 3,100 上限超過 600 B 公的劣後 シニア 7,100 エクイティ 2,500 公的劣後 400 C 公的保証 シニア 7,500 保証対象 3,000 エクイティ 2,500 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 横軸:調達額(百万円)。全案で合計10,000
単位:百万円。​対象:総事業費10,000の​調達構成。​出所:学習用の​仮定に​基づき大手町​プレップ​作成。​(スマートフォンでは​図を​横に​スクロールできます)

図表2のとおり、A案だけがエクイティ上限の破線をはみ出します。B案とC案は、公的資金が上限超過分を埋めて収まります。

CFADSが​下振れた​とき、​どの​層から​損失が​出るか

資金が閉じても、下振れ時の損失の出方は案ごとに違います。15年間毎年CFADSが同率で減ると仮定し、支払の順位に沿って弁済不足の出る層を追います。保証はシニアの弁済不足の40%を保証人が補うものとします。

図表3:CFADS下振れ時の損失配分(単位:百万円/年)
案CFADS減少シニアDSCR(倍)エクイティ配当弁済不足の出る層
A▲10%1.27189.6なし
A▲20%1.1389.6なし
A▲30%0.990.0シニア 10.4
B▲10%1.23137.8なし
B▲20%1.0937.8なし
B▲30%0.960.0公的劣後 31.1(全額)、シニア 31.0
C▲10%1.17103.8なし
C▲20%1.043.8なし
C▲30%0.910.0保証料 24.0(全額)、シニア 72.2(うち保証 28.9、貸し手の純損失 43.3)
対象期間:返済期間15年の​各年​(毎年同率で減少)。​出所:学習用の​仮定に​基づき大手町​プレップ​作成。​(スマートフォンでは​表を​横に​スクロールできます)

図表3のとおり、シニアのDSCRが1.0倍を割るのは、どの案も▲30%の列です。損益分岐の下振れ幅は、1 -(年間シニア返済額 ÷ CFADS)で求めます。Aは1 - 710.4 ÷ 1,000 = 29.0%、Bは1 - 731.0 ÷ 1,000 = 26.9%、Cは1 - 772.2 ÷ 1,000 = 22.8%です。シニアの下に厚みがある層(エクイティと公的劣後、または保証料)は、Aの289.6からBの269.0(237.8 + 31.1)、Cの227.8(203.8 + 24.0)へ薄くなっています。Bでは公的劣後も払えなくなる下振れ幅が23.8%、Cでは保証料も払えなくなる幅が20.4%です。

Cの▲30%では、シニアの弁済不足72.2の40%(28.9)を保証人が補い、貸し手の純損失は43.3です。保証は損失を保証人に移しますが、借入額が増えた分だけ弁済不足は早く出ます。A案の10.4より大きいのはこのためです。

貸し手が目標を1.36倍や1.28倍に下げる理由は、キャッシュフローの算術では説明できません。JBICは、自らのリスク負担で外貨交換・送金規制などのポリティカル・リスクを軽減できるとしています4。こうしたリスク低下が交渉で目標DSCRに反映される、というのが本記事の仮定です。DSRA(元利金返済準備勘定)の積立、税、借換えは省いています(積立の設計はDSRAと​ウォーターフォールの​記事)。

必要最小限の​譲許性を​探す手順

DACの原則2は、追加性を確保して商業資金を呼び込むこと、市場の失敗に対処しつつ譲許性の使用を最小化すること、商業的な持続可能性を目指して譲許的資金の期間と出口の明確な戦略を持つことを求めています5。設例に落とすと次の手順になります。

  1. 民間のみ案で、資金不足額を出す(A案は600)。
  2. 公的資金の量(劣後の額、保証割合)を小刻みに動かし、目標DSCRを置き直してシニア上限を再計算する。
  3. 資金が閉じる最小の量を採る(Bは400、Cは40%)。
  4. 譲許性を数値にする。B案の劣後返済31.1×15年を同種資金の参照金利8.0%(仮定)で割り引くと266.5で、額面400との差133.5(33.4%)が低金利による補助相当額の目安です。
  5. 追加性の根拠(他の民間金融機関への打診結果、エクイティ上限2,500の根拠)は表の外で集める。

限界もあります。35%と40%の差のように100未満の切り捨てで結果が飛び、換算の仮定(0.01、0.03)が違えば最小量も変わります。400や40%は価格の提案ではなく、どの仮定に結果が敏感かを示す探索の記録として使います。

日本の​公的機関の​手段を​3案に​重ねる

3案は実在の機関の条件ではありません。日本の機関は手段の違いの整理のためにだけ並べます。2026年10月22日に、JICA・JBICは公式ページ、貿易保険は法令の条文(e-Gov法令検索)を確認しました(NEXIの商品ページは確認時にメンテナンス中で開けず)。対応は図表4のとおりです。

図表4:日本の公的機関の手段と3案の関係(2026年10月22日確認)
機関公式資料で確認した手段3案との関係(編集部の読み)
JICA 海外投融資融資・信用保証・債券取得・出資(通常の条件では事業が成立しないことが要件の1つ)B案の公的資金に近い。劣後条件の有無は概要ページに記載なし
JBIC協調融資(原則、所要資金の一定割合が上限)、カントリーリスク等の保証協調融資はシニアの一部、保証はC案に近い。ただし対象はカントリーリスク等で、CFADS不足そのものとは限らない
NEXI海外投資保険・海外事業資金貸付保険(てん補事由は法定)公的なリスク引受としてC案と同類。ただし列挙事由に限られ、下振れ一般を補う設計とは別物
単位:なし​(定性比較)。​出所:JICA、​JBIC、​e-Gov​法令検索​(貿易保険法)を​基に​大手町​プレップ​作成。​加工内容:​手段の​要約と、​3案との​関係の​編集部に​よる​整理。​(スマートフォンでは​表を​横に​スクロールできます)

JICAの海外投融資は、開発途上国で民間企業等が行う開発効果の高い事業を、一般の金融機関だけでは対応が困難な場合に、融資・信用保証・債券取得・出資で支えるとされています6。

JBICは、協調融資保証などで外貨送金・交換リスクやカントリーリスク等を保証し、日本の民間金融機関の中長期融資を可能にするとしています7。融資は、民間金融機関の補完として原則、所要資金の一定割合を上限に協調して行います8。

貿易保険法(2026年10月時点の条文)は、通常の保険では救済できない危険を保険する制度の確立を目的とし(第1条)、11種類の貿易保険の中に海外投資保険と海外事業資金貸付保険を定めています(第39条)。前者は外国政府等による権利の剥奪、戦争等による投資先の事業継続不能、為替制限等による送金不能などの事由による損失を(第69条第2項)、後者は為替取引の制限、戦争・革命・内乱、相手方の破産手続開始、保険契約で定める期間以上の履行遅滞などで貸付金等を回収できない損失をてん補します(第71条第2項。いずれも要約)9。履行遅滞も列挙されているため、売上不足による返済不能が一概に対象外とは言えませんが、条件は個別の契約で確認してください。カントリーリスク管理での役割はPFの​リスク分析の​記事に譲ります。

実務​チェックリスト

  • 公的資金の説明を、シニア額の変化、損失が出始める下振れ幅、調達コストの3つの数字で書いているか。
  • 貸し手の目標DSCRの引き下げを、計算式ではなく交渉結果の仮定として明記しているか。
  • 公的劣後がシニアのCFADS配分を変えないことを確認し、シニアDSCRが上がるとは書いていないか。
  • 資金が閉じる最小の公的資金量と、結果が敏感な仮定(換算幅・要求リターン)を記録しているか。
  • JICA・JBIC・NEXIの条件を時点と資料の箇所つきで確認し、仮定の料率・金利と混ぜていないか。

よく​ある​質問​(FAQ)

保証と​保険は​同じ​扱いで​よいですか。

本記事の​C案は、​シニアの​弁済不足の​一定割合を​補う​設計の​仮定です。​NEXIの​保険は​法令が​列挙する​事由に​よる​損失を​てん補する​仕組みで、​対象が​異なります。

設例の​400や​40%は、​実際の​案件の​目安に​なりますか。

なりません。​エクイティ​上限、​金利、​換算の​仮定を​置いた​学習用の​探索結果で、​実際は​貸し手の​与信判断、​国の​状況、​公的機関の​方針で​決まります。

まとめ

ブレンデッド・ファイナンスの資金構成は、シニア額、損失が出始める下振れ幅、調達コストの3つで説明できます。設例では、公的資金でシニアが増えて資金が閉じる一方、シニアの下振れ耐性は狭まりました。公的資金の量は資金が閉じる最小のところから探し、目標DSCRの引き下げ幅と追加性の根拠は表の外で確かめます。

脚注

  1. OECD「OECD DAC Blended Finance Principles」p.4 の定義(本文の訳は編集部)。additional finance が主に商業資金を指すこと、譲許的資金は希少なため特に注意して使うべきことも同ページにあります(参考文献 R1)。↩
  2. 同文書 p.3(2017年10月31日のDACハイレベル会合での承認)と p.5(原則一覧)。原則名の訳は編集部(参考文献 R1)。↩
  3. Wall Street Oasis「Blended Finance」の手法の例(技術支援、リスク引受、市場インセンティブ)。一般的な概念の参考で、統計は使っていません(参考文献 R2)。↩
  4. JBIC「投資金融」。「JBICのリスク負担により、海外における事業に特有の外貨交換・送金規制などのポリティカル・リスクを軽減することが可能です」と記載されています(参考文献 R3)。↩
  5. 同文書 p.7、原則2の2a(商業資金が現時点で利用できない用途にだけ使う)、2c(市場形成の障壁の克服に使い、譲許的資金の使用は最小化する)、2d(譲許的資金の期間と出口の明確な戦略を持つ)。要約は編集部(参考文献 R1)。↩
  6. JICA「海外投融資の概要」の冒頭の説明と「2.海外投融資案件として満たされるべき事由」(一般の金融機関の通常の条件では事業が成立しないことなど)。更新日の表示はありません(参考文献 R4)。↩
  7. JBIC「保証」の「協調融資保証/海外シンジケートローン保証/公債保証」の説明(参考文献 R5)。↩
  8. JBIC「投資金融」の「融資金額・通貨・金利」。上限の具体的な割合は同ページに記載がありません(参考文献 R3)。↩
  9. 貿易保険法(昭和25年法律第67号)第1条、第39条、第69条第2項、第71条第2項。e-Gov法令検索の現行条文(2026年7月31日施行の改正を反映)で確認しました。条・項の番号は改正前の版と異なる場合があります(参考文献 R6)。↩

参考文献​(2026年10月確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための学習用の架空事例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。