この記事で分かること
- 試算表の定義と、合計試算表・残高試算表・合計残高試算表の違い
- 貸借一致の検算と、貸借が一致しても検出できない誤りの例
- 残高試算表から利益300と資産3,300を導く整数設例
- 会社法・会社計算規則での位置づけと、月次試算表の確認点(2026年11月時点)
30秒で分かる定義
試算表(しさんひょう、Trial Balance、TB)とは、総勘定元帳の各勘定の合計や残高を一覧にした表で、借方の合計と貸方の合計が一致するかを確認し、記帳の正しさを検証するために作成する表です。月次決算では、試算表をもとに損益計算書と貸借対照表を作ります。財務DDや財務モデルの作成でも、会社から受け取る数値の出発点になります。本ページは試算表の種類と読み方を扱い、試算表を財務モデルのHistoricalsに加工する手順は試算表からのモデル化で解説しています。
なぜ実務で重要なのか
決算書が確定する前の、最新の財務数値を把握できるためです。経営企画・経理は月次試算表で月次決算を締め、予算と実績の差を確認します。融資担当は、決算から時間が経った時点の業績を、直近の試算表で確認します。FAS・PEは、VDRに置かれた試算表から、決算書にない期間の数字を読みます(VDR
計算式(ま たは仕組み)
試算表は、複式簿記の原則(すべての取引は借方と貸方に同額が記録される)を使った検証表です。次の3種類があります。
| 種類 | 載せる金額 | 特徴 |
|---|---|---|
| 合計試算表 | 各勘定の借方合計と貸方合計 | 期中の取引の動きが分かる |
| 残高試算表 | 各勘定の残高(借方残高または貸方残高) | 財務諸表を作る基礎になる |
| 合計残高試算表 | 合計と残高の両方 | 動きと残高を1枚で確認できる |
借方残高の合計 = 貸方残高の合計(残高試算表)
仕訳から勘定、試算表、財務諸表までを通して作る手順は仕訳からT勘定・試算表・三表まで通すで扱っています。複式簿記の考え方は複式簿記も参照してください。
整数設例で確認する
設例(架空数値・単位は百万円)。ある会社の決算整理前の残高試算表です。
| 勘定科目 | 借方残高 | 貸方残高 |
|---|---|---|
| 現金及び預金 | 800 | |
| 売掛金 | 600 | |
| 棚卸資産 | 400 | |
| 建物・設備 | 1,500 | |
| 買掛金 | 500 | |
| 借入金 | 1,200 | |
| 資本金 | 1,000 | |
| 利益剰余金(期首) | 300 | |
| 売上高 | 3,000 | |
| 売上原価 | 1,800 | |
| 販売費及び一般管理費 | 700 | |
| 支払利息 | 200 | |
| 合計 | 6,000 | 6,000 |
借方の合計は 800 + 600 + 400 + 1,500 + 1,800 + 700 + 200 = 6,000、貸方の合計は 500 + 1,200 + 1,000 + 300 + 3,000 = 6,000で一致します。
- 損益科目から、税引前の利益 = 3,000 − 1,800 − 700 − 200 = 300
- 貸借対照表の確認:資産 = 800 + 600 + 400 + 1,500 = 3,300、負債・純資産 = 500 + 1,200 + 1,000 + 300 + 300(当期の利益)= 3,300で一致
- 合計試算表では、売掛金の借方合計が5,000、貸方合計が4,400なら、残高は 5,000 − 4,400 = 600(残高試算表の借方残高)
貸借が一致しても、記帳が正しいとは限りません。借方に100の記入漏れがあれば合計に100の差が出て検出できますが、販売費及び一般管理費100を売上原価に誤って分類した場合は、借方と貸方の合計が一致したままで、試算表では検出できません。
開示・規制上の位置付け
試算表は、会社法などが作成を求める計算書類ではありません。会社計算規則が定める計算書類は、貸借対照表、損益計算書のほか、株主資本等変動計算書及び個別注記表です[2]。本ページで確認した会社法・会社計算規則の条文には、「試算表」という語は出てきません。一方、会社法は、株式会社に、法務省令で定めるところにより適時に正確な会計帳簿を作成することを求め、会計帳簿の閉鎖の時から10年間の保存を義務付けています[1]。会計帳簿は書面または電磁的記録で作成しなければなりません[2]。試算表は、この会計帳簿をもとに作る内部資料です。
財務モデル・Excelでの使い方
- 貸借一致のチェック:
=SUM(借方残高)-SUM(貸方残高)がゼロになることを、取り込み直後に確認します。 - 勘定科目のマッピング:試算表の科目に、財務諸表の科目(売上高、売上原価、販管費など)の対応列を付け、
=SUMIFS(残高, マッピング列, "販売費及び一般管理費")で集計します(月次試算表から財務モデルのHistoricalsを作る方法を参照)。 - 月次の比較:月ごとの試算表を同じ科目で並べ、前月差と前年同月差を計算して、異常値のある科目を抽出します。
- 借方・貸方の符号:損益科目は貸方残高をプラス、借方残高をマイナスに統一するなど、符号のルールを1か所で定義します。
この用語をExcelで
試算表を取り込んで貸借一致を検算し、勘定科目を財務諸表の科目に組み替えて月次の損益計算書を作れるようになる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「試算表の貸借が一致すれば、記帳は正しい」→ 借方・貸方に同額で誤った場合は検出できません。設例のように、科目の分類誤りは貸借が一致したまま残ります。
誤解2:「試算表は決算書と同じもの」→ 試算表は決算整理前の残高のことがあり、減価償却費や引当金の計上前の数字です。決算書とは差が出ます。
誤解3:「試算表の利益は確定した利益」→ 月次試算表の利益は、未払費用や在庫評価などの月次の整理前の暫定値であることがあります。
確認ポイント:試算表が決算整理前か後か、どの時点の残高か、期首残高が前期の決算書と一致しているかを確認します。
日本実務での扱い
(2026年11月時点)日本の会社法は、株式会社に適時に正確な会計帳簿の作成を求め、会計帳簿と計算書類の保存期間を10年と定めています[1]。試算表の様式に法令上の定めはなく、会社ごとの会計システムの様式で作られます。税務や電子取引に関する帳簿の保存の要件は電子帳簿保存法で扱っています。金融機関への融資の相談や、経営者保証の解除に向けた財務基盤の点検では、月次試算表などの直近の資料の提出を求められることがあります。月次の締めの流れは月次決算も参照してください。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:試算表の貸借が一致しているのに、決算書が誤っていることはありますか。
「あります。試算表は借方と貸方の合計の一致しか確認できないため、同じ金額を誤った科目に記録した場合や、取引の記録そのものが漏れていて両側が同額に欠けている場合は、一致したままです。勘定科目の分類や取引の網羅性は、別の手続で確認します。」
深掘りの観点:決算整理前試算表と決算整理後試算表の違い、期中取引の網羅性の確認方法。
よくある質問(F AQ)
Q. 試算表は誰が作成しますか。
A. 通常は、会計システムが総勘定元帳から自動で作成し、経理担当者が内容を確認します。月次決算では、経理部門が月ごとに作成して経営者に報告します。
Q. 試算表と貸借対照表・損益計算書の関係は何ですか。
A. 残高試算表の資産・負債・純資産の科目から貸借対照表を、収益・費用の科目から損益計算書を作ります。設例では、損益科目の差額300が貸借対照表の純資産に加わり、資産と負債・純資産の合計がともに3,300で一致します。
出典・参考(2 026-11確認)
- e-Gov法令検索「会社法」第432条、第435条. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086(2026年11月参照)
- e-Gov法令検索「会社計算規則」第4条、第59条. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418M60000010013(2026年11月参照)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。