この記事で分かること
- 電子帳簿保存法の3つの制度区分と、義務化された範囲
- 真実性の確保・可視性の確保という保存要件の考え方
- 整数設例で、検索要件が緩和される売上高基準を確認
- 2024年1月の完全義務化と、違反時のリスク
30秒で分かる定義
電子帳簿保存法(読み方:でんしちょうぼほぞんほう)とは、国税関係帳簿書類の電子データによる保存要件を定めた法律です。電帳法、電子取引データ保存と呼ばれることもあります。制度は3つに区分され、会計ソフトで作成した帳簿を電子データのまま保存する電子帳簿等保存と、紙で受領した書類をスキャンして保存するスキャナ保存は任意ですが、メールやEDIなど電子的に授受した取引データを電子データのまま保存することは義務化されています。
なぜ実務で重要なのか
経理DX・バックオフィスにとって、電子取引データ保存の義務化は請求書・領収書の授受フローそのものの見直しを迫るテーマです。財務DDでは、対象会社の証憑保存体制が要件を満たしているかを確認し、不備があれば税務リスクとして評価します。内部統制(J-SOX)の観点でも、証憑の真正性・検索性の確保は財務報告に係る内部統制の一部として位置づけられます。
計算式(ま たは仕組み)
電子取引データ保存の要件は大きく真実性の確保(タイムスタンプの付与や訂正削除履歴の残るシステムの利用等)と可視性の確保(取引年月日・取引金額・取引先で検索できる機能の確保等)の2つです。
| 制度区分 | 対象 | 義務/任意 |
|---|---|---|
| 電子帳簿等保存 | 自社が電子的に作成した帳簿・書類 | 任意 |
| スキャナ保存 | 紙で受領・作成した書類 | 任意 |
| 電子取引データ保存 | メール・EDI等で電子的に授受した取引情報 | 義務 |
整数設例で確認する
設例(架空数値)。検索要件には、基準期間(原則2期前)の売上高が一定額以下の事業者向けの緩和措置があります。A社の基準期間売上高が4,800万円(基準額5,000万円以下)の場合、検索要件(取引年月日・取引金額・取引先による検索機能の確保)が緩和され、税務調査等の際にダウンロードの求めに応じられれば足ります。一方、B社の基準期間売上高が5,200万円(基準額5,000万円超)の場合、原則どおり取引年月日・取引金額・取引先で検索できる機能を確保する必要があります。売上高の水準がわずか400万円違うだけで、求められる保存体制の負担が変わる点が実務上の注意点です。
リスク配分への影響
電子取引データ保存の要件を満たさない場合、直ちに取引そのものが無効になるわけではありませんが、青色申告の承認取消しの検討対象になり得るほか、税務調査で不備が発見された場合は追徴課税や重加算税の加重措置の対象になるリスクがあります。財務DDでは、この保存体制の不備を将来の税務リスクとして評価し、価格交渉や表明保証の対象事項に含めることがあります。
財務モデル・Excelでの使い方
- 財務DDのチェックリストに、電子取引データ保存の要件充足状況(システム対応、検索機能の有無、基準期間売上高の該当区分)を項目化する
- 証憑保存体制の不備が見つかった場合、是正コスト(システム導入費用等)を買収後の統合コスト(PMIコスト)として見積る
この用語をExcelで
電子取引データ保存の要件充足状況をチェックリスト化し、財務DDのリスク評価に組み込めるようになる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「紙に印刷して保存すれば電子取引の要件を満たす」→ 正しくは、2024年1月1日以降、電子的に授受した取引データは紙に出力しての保存が原則認められず、電子データのままの保存が義務です。2023年12月末までは宥恕措置がありましたが、現在は完全義務化されています。
誤解2:「スキャナ保存も義務化された」→ 正しくは、スキャナ保存(紙で受領した書類を電子化する制度)は任意の選択制度であり、義務化されたのは電子取引データ保存のみです。紙で受領した書類はそのまま紙で保存し続けることも認められています。
日本実務での扱い(2 026年7月時点)
電子帳簿保存法(1998年制定)は、令和3年度・令和5年度税制改正を経て要件が段階的に緩和・明確化されてきました。電子取引データ保存については2024年1月1日から完全義務化されており、国税庁の一問一答(Q&A)で詳細な実務上の取扱いが示されています。基準期間の売上高5,000万円以下の事業者や、電子データの出力書面の提示・提出に応じられる事業者には、検索要件の緩和措置が設けられています。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:電子帳簿保存法の3つの制度区分の違いと、どれが義務でどれが任意か説明してください。
「電子帳簿等保存は、自社が会計ソフト等で電子的に作成した帳簿・書類をそのまま電子データで保存する制度で、任意選択です。スキャナ保存は、紙で受領・作成した書類をスキャンして電子化し保存する制度で、これも任意です。電子取引データ保存は、メールやEDI、クラウドサービス等で電子的に授受した請求書・領収書等のデータを、紙に出力せず電子データのまま保存する制度で、2024年1月から義務化されています。3区分のうち義務化されているのはこの電子取引データ保存のみです。」
深掘りでは「検索要件の緩和措置の適用条件」「要件不備が発覚した場合の実務対応」が問われます。
よくある質問(F AQ)
Q. 義務化されたのはどの区分ですか?
A. 電子取引データ保存のみが義務化されています。電子帳簿等保存とスキャナ保存は引き続き任意選択の制度です。
Q. 要件を満たさないとどうなりますか?
A. 直ちに経費が否認されるわけではありませんが、青色申告の承認取消しの検討対象になり得るほか、税務調査で不備が指摘された場合は重加算税の加重措置の対象になるリスクがあります。実務上は早期にシステム対応を進めることが推奨されています。
出典・参考(2 026-07-21確認)
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)」 https://www.nta.go.jp/
- 財務省「令和5年度税制改正の解説(電子帳簿等保存制度関係)」 https://www.mof.go.jp/
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。