この記事で分かること
- 日本基準(J-GAAP)を誰が設定し、どの会社の決算に使われているか
- IFRS・米国基準を使える会社の範囲(連結財務諸表規則の定め)
- のれん・リース・損益の段階区分など、比較で問題になる主な差異
- 日本基準の会社とIFRSの会社を並べるときの調整手順
30秒で分かる定義
日本基準(にほんきじゅん、Japanese GAAP、略称J-GAAP)とは、企業会計基準委員会(ASBJ)が開発・公表する企業会計基準などを中心とした、日本の会計基準の体系です。ASBJは企業会計基準・適用指針・実務対応報告を公表しており、リース・金融商品・連結など個別の論点ごとに基準が置かれています[1]。上場会社の有価証券報告書では日本基準が原則で、一定の要件を満たす会社はIFRS(指定国際会計基準)や修正国際基準で連結財務諸表を作ることができます[2]。IFRSそのものの解説は国際財務報告基準
なぜ実務で重要なのか
同じ業種でも、日本基準の会社とIFRSの会社では利益やEBITDAの数字の意味が少しずつ違います。IB・エクイティリサーチは類似会社比較(Comps)で基準の混在を調整し、PE・FASはのれんの償却費が買収後の利益をどれだけ押し下げるかを試算します。経営企画は、IFRSへ移行するかどうかを、のれん償却の有無や海外子会社との基準統一の観点から検討します。比較対象の選び方はAIで類似会社を選ぶで扱っています。
計算式(ま たは仕組み)
日本で上場会社が連結財務諸表に使える会計基準は、連結財務諸表規則で次のように整理されています[2]。
| 会計基準 | 使える会社 | 根拠 |
|---|---|---|
| 日本基準 | 原則(下記以外の会社) | 連結財務諸表規則・ASBJの基準 |
| 指定国際会計基準(IFRS) | 指定国際会計基準特定会社(適正性確保の取組の記載、十分な知識を持つ役員・使用人と作成体制) | 第1条の2・第312条 |
| 修正国際基準(JMIS) | 修正国際基準特定会社 | 第1条の3・第314条 |
| 米国基準 | 米国式連結財務諸表を米国証券取引委員会に登録しており、金融庁長官が認めた会社 | 第316条 |
基準をまたいで比べるときに論点になりやすい差異は次のとおりです。
| 論点 | 日本基準 | IFRS |
|---|---|---|
| のれん | 20年以内の効果の及ぶ期間で規則的に償却[3](減損処理もある) | 償却しない(非償却)[3] |
| 借手のリース | 新基準(企業会計基準第34号)で原則オンバランス。2027年4月1日以後開始年度から適用[4] | IFRS第16号で原則オンバランス |
| 損益の段階区分 | 営業利益・経常利益・特別損益を区分して表示[5] | IAS第1号を適用する現行では営業利益の範囲は会社ごとに確認が必要。IFRS第18号(2027年1月1日以後開始する年度から適用、早期適用可)は営業利益を定義された小計として表示させる[6] |
整数設例で確認する
設例(架空数値)。単位は百万円。日本基準の会社が買収でのれん6,000を計上し、20年で定額償却するとします。
- 年間償却額 = 6,000 ÷ 20 = 300
- 5年後ののれん残高 = 6,000 − 300 × 5 = 4,500
- のれん償却後の営業利益が5,000なら、償却を足し戻した営業利益は 5,000 + 300 = 5,300
IFRSの会社と営業利益で比べるときは、この300を足し戻した数字を並べます。ただし、のれん以外の差異(リース、引当金、収益認識の細部)や、IFRS側の減損損失がないことを前提にした単純化です。EBITDAはもともと償却費を足し戻すため、のれん償却の差は生じません。PPAでのれんがどう決まるかはPurchase Accounting(PPA)をM&Aモデル・財務三表へ反映する方法を参照してください。
開示・規制上の位置付け
有価証券報告書の連結財務諸表は、どの基準で作ったかを注記で示します。指定国際会計基準で作成した場合は、国際会計基準に準拠している旨(指定国際会計基準と国際会計基準が異なる場合はその旨)と、特定会社に該当する旨・理由を注記します[2]。一方、指定国際会計基準特定会社でも、有報の個別財務諸表は財務諸表等規則の様式に従って作成し、IFRSによる個別財務諸表は追加で作成できるという位置付けです[5]。連結をIFRSに移しても、個別決算と、それを基礎にする配当可能な額の計算は日本の基準のままと考えておく必要があります。
財務モデル・Excelでの使い方
- 基準列を持つ:Compsの母集団に「会計基準(J-GAAP/IFRS/US GAAP)」の列を置き、調整の要否をフィルタで確認できるようにします。
- 調整行を独立させる:営業利益の行の下に「のれん償却の足し戻し」「リース費用の組替え」などの調整行を作り、開示値と調整後の値を両方残します。
- EBITDA中心で比べる:償却方針の差を避けたい場合は、EV/EBITDAなど償却前の指標を主に使います。ただしリースの扱いが揃っているかは別に確認します。
この用語をExcelで
日本基準の財務諸表を読み、IFRS会社と比べるための調整行をExcelで組めるようになる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「日本の上場会社はすべて日本基準」→ 正しくは、要件を満たす会社はIFRSなどを選べます。同じ業界でも基準が混在するため、比較の前に各社の有報で採用基準を確認します。
誤解2:「のれんの扱いが違うだけ」→ 正しくは、差異は複数の論点にまたがります。リースや損益の区分、金融商品の評価なども影響します。比較では金額の大きい論点から調整します。
確認ポイント:IFRSへの移行年度は、前年との比較数値が組み替えられているかを確認します。
日本実務での扱い
(2026年11月時点)ASBJは基準を継続的に改正しており、近年もリース基準(企業会計基準第34号)の公表や金融商品会計基準の改正が行われています[1]。のれんについて、ASBJは国際的な会計基準と同様に非償却とするかを審議したものの、市場関係者の合意形成が十分でないとして償却処理を継続した経緯を基準の結論の背景に記しています[3]。のれん償却が利益に与える影響の考え方はのれん償却
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:日本基準の会社とIFRSの会社をP/Eで比べるとき、何に注意しますか。
「まず、日本基準の会社はのれんを償却しているので、純利益が償却分だけ小さく出ます。買収の多い会社ほど差が大きくなるため、のれん償却費を足し戻した利益で比べるか、償却前のEV/EBITDAを併用します。あわせてリース会計の適用状況や特別損益の扱いも確認します。」
深掘りでは「IFRSの会社にのれんの減損があった年はどう扱うか」「EBITDAでも基準差が残るのはどの項目か」が問われます。
よくある質問(F AQ)
Q. 日本基準とJ-GAAPは同じ意味ですか?
A. 同じ意味で使われます。英語の資料では「Japanese GAAP」「J-GAAP」と表記されるのが一般的です。
Q. 修正国際基準(JMIS)とIFRSは何が違いますか?
A. 修正国際基準は、IFRSを日本の団体が一部修正して作った基準で、連結財務諸表規則では指定国際会計基準とは別の枠として定められています[2]。
出典・参考(2 026-11確認)
- 企業会計基準委員会(ASBJ)「企業会計基準」(公表基準の一覧). https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards.html(2026年11月参照)
- e-Gov法令検索「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第1条の2・第1条の3・第312条〜第316条. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=351M50000040028(2026年11月参照)
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(最終改正2019年1月16日)第32項・第64-3項. https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/kouhatsujisyou20260109_12.pdf(2026年11月参照)
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(2024年9月13日公表)第58項. https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/ecl20261016_15.pdf(2026年11月参照)
- e-Gov法令検索「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」第70条・第89条・第95条・第95条の4・第326条. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338M50000040059(2026年11月参照)
- IFRS Foundation「IFRS 18 Presentation and Disclosure in Financial Statements」. https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ifrs-18-presentation-and-disclosure-in-financial-statements/(2026年11月参照)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。