この​記事で​分かる​こと

  • IFRS第3号と日本の企業結合会計基準(企業会計基準第21号)の主要な相違点
  • のれん償却の有無が営業利益・EPSに与える影響の整数設例
  • 非支配株主持分の測定方法(全部のれん方式・部分のれん方式)の違い
  • 日本のIFRS任意適用実務での比較のしかた(2026年8月時点)

30秒で​分かる​定義

企業結合会計におけるIFRS第3号(IFRS 3 Business Combinations)と日本の企業結合に関する会計基準(企業会計基準第21号)は、いずれも取得法を採用する点は共通ですが、のれんの償却の有無、負ののれんの処理、非支配株主持分の測定方法などで重要な相違があります。実務では「IFRS3号」と略して呼ばれることが多く、日本国内でIFRSを任意適用する企業が増えるにつれて、両基準の差を理解する重要性が高まっています。

なぜ実務で​重要なのか

FAS(財務DD・PPA担当)は買収後の連結決算方針を検討する際、どちらの基準を採るかによってのれん償却負担の試算が大きく変わります。IBはM&AモデルでのEPSへの影響(Accretion/Dilution​分析)を基準ごとに調整する必要があります。PEは買収後の連結先の会計方針(IFRS任意適用)の変更が、バリュエーション上のEBITDA・純利益の比較にどう影響するかを注視します。株式アナリストは日本基準採用企業とIFRS適用企業ののれん償却有無の違いを補正して業績を比較します。

仕組み:主要な​相違点の​比較

項目IFRS第3号日本基準(企業会計基準第21号)
のれんの償却非償却・年次減損テストのみ20年以内で規則的に償却
負ののれん発生時に一括で利益計上発生時に一括で利益計上
非支配株主持分の測定全部のれん方式と部分のれん方式を選択可部分のれん方式のみ
無形資産の識別顧客関係・受注残等を幅広く識別する傾向個別に識別するが一体のれんに包含されやすい

整数設例で​確認する

設例(架空数値・単位:百万円)。買収対価10,000で被取得企業を100%取得し、識別可能純資産の公正価値が7,000だったとします。のれん=10,000-7,000=3,000。

日本基準でのれんを20年で均等償却する場合、年間償却費=3,000÷20=150。5年間の累計償却額=150×5=750で、5年目末の残存のれん帳簿価額=3,000-750=2,250となり、この間毎期150ずつ営業利益が押し下げられます。IFRSでは償却を行わないためのれんは3,000のまま計上され続けますが、5年目に減損の兆候があり回収可能価額が8,500(のれん込み)にとどまると仮定すると、帳簿価額10,000との差額のうち1,500を一時の減損損失として一括計上します。日本基準は毎期150ずつ緩やかにPLへ影響するのに対し、IFRSは減損発生時に一時に大きな損失を計上する、という性質の違いが確認できます。

PL・​BS・​CFへの​影響

日本基準は毎期均等に営業利益を押し下げますが、将来の減損リスクは償却により部分的に抑制されます。IFRSはのれん償却がないため、営業利益・EPSが日本基準採用企業より高く見えやすく、これが「IFRS適用企業はM&Aが巧いように見える」との指摘につながることがあります。CFへの影響はどちらも非資金項目のため営業キャッシュフローには直接影響しませんが、税務上ののれん(資産調整勘定)の償却可否は会計上の取扱いとは別の論点です。

財務​モデル・​Excelでの​使い方

PPA(取得原価配分)シートでのれん・識別可能無形資産・繰延税金を分解して計上し、会計方針セルで「日本基準」「IFRS」を切り替えられるようIF関数でのれん償却行を制御する設計が実務的です。減損テストの前提(WACC、将来キャッシュフロー)は別シートで管理し、CGU(資金生成単位)ごとの帳簿価額と回収可能価額を比較する行を設けます。

この​用語を​Excelで​「組める」​状態に​する

PPA​シートを​日本基準・​IFRS​両対応で​組み、​のれん償却・​減損の​影響を​モデル上で​切り​替えられるように​する。

M&A​モデル​教材で​実装手順を​見る →

実務家が​確認する​ポイントと​よく​ある​誤解

  • 誤解1「IFRSはのれんの会計処理が甘い」→ 正しくは、償却負担がない代わりに年次の減損テストが義務付けられており、減損が発生すれば一時に大きな損失を認識するため、一概に有利とは言えません。
  • 誤解2「日本基準からIFRSに移行すればのれんが消える」→ 正しくは、移行時点の未償却のれん残高はそのまま引き継がれ、以降の償却を停止するだけです。
  • 確認ポイント:比較対象企業がどちらの基準を採用しているか、のれん償却前のEBITDA・営業利益で補正して比較しているか。

日本実務での​扱い

(2026年8月時点)日本ではIFRSの任意適用が認められており、東証上場会社の一定数が任意適用済み・適用予定として東証や各社の開示資料で公表されています。日本基準を採用する企業は企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」に基づき、のれんを20年以内の効果の及ぶ期間で規則的に償却します。同業の日本企業でもIFRS任意適用企業はのれんを償却しないため、比較の際はのれん償却前の営業利益・EBITDAで補正するのが実務です。

面接・​モデルテストで​問われる​ポイント

Q:同業のA社とB社でのれん償却の有無が異なるのはなぜですか。
「会計基準の違いによるものです。日本基準を採用する会社はのれんを規則的に償却しますが、IFRSを任意適用する会社は償却せず年次の減損テストのみを行います。比較する際はのれん償却前の営業利益やEBITDAで補正するのが実務的です。」

深掘りでは「減損テストの単位(CGU)をどう決めるか」「非支配株主持分の測定方法の違いがのれん総額に与える影響」が問われます。

よく​ある​質問​(FAQ)

Q. のれんの償却年数はどう決まりますか?
A. 日本基準では投資効果の及ぶ期間を見積り、20年以内の年数で規則的に償却します。実務では5〜20年の範囲で個別に判断されることが多いです。

Q. 負ののれんが発生した場合の処理は?
A. 日本基準・IFRSともに、発生した事業年度に一括して利益(負ののれん発生益)として認識する点は共通です。

出典・参考​(2026-08確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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