この​記事で​分かる​こと

  • 景気循環(拡張・後退)の意味と、内閣府の景気基準日付による山・谷の決まり方
  • 第12〜16循環の拡張・後退の期間(月数)と、循環の種類(在庫・設備・建設)
  • 売上高の変動が営業利益にどう増幅されるかを、整数設例で確認
  • 事業計画・評価に景気局面を織り込むときの注意点

30秒で​分かる​定義

景気循環(ビジネスサイクル、Business Cycle、読み方:けいきじゅんかん)とは、経済活動が拡張と後退を周期的に繰り返す現象です。景気が谷から山へ向かう局面を拡張期、山から谷へ向かう局面を後退期と呼び、1回の谷から次の谷までを1循環とします。日本では、内閣府経済社会総合研究所が景気動向指数(CI)に基づいて「景気基準日付」(山と谷の月)を設定しています。[1]「景気後退」や「リセッション」は報道で使われますが、公式な山・谷の判定は景気基準日付によります。

なぜ実務で​重要なのか

景気局面は売上・利益・金利・資産価格の前提を同時に動かします。経営企画・FP&Aは事業計画の売上と投資額の前提に、融資担当は景気後退期の返済能力の点検に使います。M&A・PE・VCは取得タイミングと出口時期の見通し、市場部門・運用は金利と株価の見通しに使います。景気の観測指標は景気動向指数で、本ページは循環の考え方と局面の判定、事業計画への反映を扱います。

計算式​(または仕組み)

景気基準日付の山・谷は、CI一致指数の採用系列ごとに設定した山・谷から「ヒストリカルDI」を作り、これが50%を上回る直前の月を谷、50%を下回る直前の月を山とする方法で決められます。個々の系列の転換点はBry-Boschan法で定め、景気動向指数研究会の議論を踏まえて経済社会総合研究所長が設定します。[1]

拡張期間 = 谷から山までの月数 / 後退期間 = 山から谷までの月数
全循環 = 拡張期間 + 後退期間(谷から次の谷)
循環谷山谷拡張後退全循環
第12循環1993年10月1997年5月1999年1月43か月20か月63か月
第13循環1999年1月2000年11月2002年1月22か月14か月36か月
第14循環2002年1月2008年2月2009年3月73か月13か月86か月
第15循環2009年3月2012年3月2012年11月36か月8か月44か月
第16循環2012年11月2018年10月2020年5月71か月19か月90か月

出所は内閣府の景気基準日付です。[1]なお、循環には複数の周期があるとされ、在庫投資を中心とする短い循環(キチン循環、約40か月)、設備投資を中心とする循環(ジュグラー循環、約10年)、建設を中心とする循環(クズネッツ循環、約20年)などが、一般に学説として挙げられます。

整数設例で​確認する

設例(架空数値)。単位は百万円。固定費30,000、変動費率60%の企業の5年間(拡張→後退→回復)を見ます。営業利益 = 売上高 × (1 − 60%) − 30,000で計算します。

年度売上高貢献利益(40%)固定費営業利益
1年目100,00040,00030,00010,000
2年目(拡張)110,00044,00030,00014,000
3年目(後退)95,00038,00030,0008,000
4年目(谷)90,00036,00030,0006,000
5年目(回復)105,00042,00030,00012,000
合計500,000200,000150,00050,000

①増幅:1年目から4年目で売上高は90,000 ÷ 100,000 − 1 = −10%ですが、営業利益は6,000 ÷ 10,000 − 1 = −40%です。固定費があるため、営業レバレッジ(貢献利益 ÷ 営業利益 = 40,000 ÷ 10,000)は4.0倍になるからです。

②5年平均の水準:設例の5年間の営業利益の平均は50,000 ÷ 5 = 10,000で、売上高の平均100,000に対する営業利益率は10%です。これを循環平均として使えるのは、この5年間が1循環(谷から次の谷)を代表すると仮定できる場合です。2年目の14,000(売上高110,000に対し約12.7%)をそのまま将来に延ばすと過大になります。

投資判断への​影響

景気循環が事業計画に与える影響は、売上の変動だけでなく、固定費の比率(営業レバレッジ)や在庫・運転資本の増減を通じて利益とキャッシュフローに現れます。ピーク期の利益で評価すると過大に、谷の利益で評価すると過小になります。循環をならした利益の考え方は正常収益力の​算定で扱います。

局面ごとの業績ドライバーの読み方は景気局面ごとに​業績​ドライバーの​動きを​読むに、金利と景気の関係はイールドカーブ​入門にまとめています。受注の落ち込みを四半期で試算する方法は景気敏感業種の​受注​ショックを​8四半期で​試算するが参考になります。

財務​モデル・​Excelでの​使い方

  • 景気局面の入力:景気基準日付の山・谷を年表にし、自社の過去の売上・営業利益を重ねて、局面ごとの変動率を計算します。
  • シナリオ:売上成長率を「拡張・後退・谷・回復」のシナリオ別に置き、=CHOOSE(シナリオ番号,拡張,後退,谷,回復) で切り替えます。
  • 感応度:営業レバレッジは =貢献利益/営業利益。売上変動率に掛けて営業利益の変動率を推定します。
  • 平均の取り方:循環を均す利益は、谷から谷までの期間の平均(=AVERAGE(範囲))をとり、期間の途中で終わらないようにします。

この​用語を​Excelで​「組める」​状態に​する

売上の​景気​変動を​固定費構造を​通じて​営業利益に​反映し、​局面別​シナリオで​事業計画を​作れるようになる。

事業計画教材で​景気​シナリオの​置き方を​見る →

実務家が​確認する​ポイントと​よく​ある​誤解

誤解1:「GDPが2四半期連続でマイナスなら景気後退と決まる」→ 正しくは、日本の公式な山・谷は景気基準日付で、GDPの動きだけでは決まりません。2四半期連続のマイナス成長は便宜的な目安として使われることがあります。

誤解2:「景気の山と谷は、その時点でリアルタイムに分かる」→ 正しくは、事後に判定されます。第16循環の景気基準日付は、2022年7月19日の公表で確定しました。[2]リアルタイムでは、先行指数や短観、イールドカーブなどで局面を推定します。

確認ポイント:自社の業績が景気に敏感か(営業レバレッジ、受注の遅れ)、循環の長さがどれほど変動するか(第10循環以降でも拡張は22〜73か月と幅があります)を過去データで確かめます。

日本実務での​扱い

(2026年11月時点)景気基準日付は内閣府経済社会総合研究所が公表し、直近は第16循環(谷2012年11月→山2018年10月→谷2020年5月)が確定しています。[1][2]景気の現状判断には景気動向指数のCI一致指数の基調判断、日銀短観の業況判断DI(日銀短観)、法人企業統計などが使われます。借入計画や事業計画の前提では、短観の業況判断を前提の更新に使う手順が日銀短観で​事業計画の​前提を​更新するにあります。

面接・​モデルテストで​問われる​ポイント

Q:景気後退で売上が10%減ると、営業利益はどうなりますか。
「固定費があるので利益の減少率は売上より大きくなります。例えば貢献利益率40%、固定費30,000、売上100,000の企業では営業利益が10,000から6,000へ40%減ります。営業レバレッジが4倍だからです。」

深掘りの観点:循環をならした利益の取り方、景気局面別シナリオの作り方、運転資本の増減が与えるキャッシュフローへの影響。

よく​ある​質問​(FAQ)

Q. 景気基準日付は誰が決めますか?
A. 内閣府経済社会総合研究所長が、景気動向指数研究会の議論を踏まえて設定します。

Q. 景気循環の周期は一定ですか?
A. 一定ではありません。第10循環以降の全循環でも36か月から90か月まで幅があります(景気基準日付)。

出典・参考​(2026-11確認)

  1. 内閣府経済社会総合研究所「景気基準日付」(第10循環以降の山・谷、設定方法). https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/hiduke.html(2026年11月参照)
  2. 内閣府経済社会総合研究所「第16循環の景気基準日付の確定について」(令和4年7月19日). https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/220719shiryou1.pdf(2026年11月参照)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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