この記事で分かること

  • CAPE(シラーPER)の定義と、通常のPERとの違い
  • 過去10年平均のインフレ調整後利益で株価を割る理由
  • 整数設例で確認する、CAPEと通常PERの乖離の読み方
  • 市場サイクルを跨いだ割高感の議論での使い方と限界

30秒で分かる定義

CAPE(シラーPER、Cyclically Adjusted PE Ratio、読み方:けーぷしらーぴーいーあーる)とは、直近1年の利益ではなく、インフレ調整後の過去10年平均利益で株価を割った株価収益率です。米国の経済学者ロバート・シラーが提唱したことから「シラーPER」とも呼ばれ、景気循環による利益の一時的な変動をならすことで、市場全体の長期的な割高・割安感をより安定的に測ろうとする指標です。通常のPERが直近利益を分母にするのに対し、CAPEは10年という長い期間で平均化する点が最大の違いです。

なぜ実務で重要なのか

株式運用・アセットアロケーションでは、景気循環の山(ピーク利益)で通常のPERだけを見ると「一時的に割安」に見えてしまうことがあるため、CAPEを補助指標として使い、市場全体のポジション調整の参考にします。マクロストラテジストにとっては、市場全体の長期リターン期待を議論する際の出発点としてCAPE水準の推移がよく引用されます。個別銘柄の短期売買判断よりも、市場全体・長期の資産配分方針を検討する場面での使用が中心です。

計算式(または仕組み)

CAPE = 現在の株価(または指数) ÷ 過去10年平均の実質(インフレ調整後)1株当たり利益

分母は単純な過去10年の利益平均ではなく、各年の利益を現在の物価水準に換算した「実質利益」の平均です。景気拡大局面の終盤で利益が一時的にピークを迎えている年は通常のPERの分母を過大にし、逆に景気後退局面では分母を過小にします。10年間という長い期間で平均化することで、こうした景気循環の影響を緩和するのがCAPEの狙いです。

整数設例で確認する

設例(架空数値)。単位は円です。

  • 現在の株価(指数):3,000
  • 直近1年のEPS(景気拡大局面でピークに近い利益):200
  • 過去10年平均の実質EPS:150

通常のPER = 3,000 ÷ 200 = 15.0倍である一方、CAPE = 3,000 ÷ 150 = 20.0倍となります。通常のPERだけを見ると「15倍で歴史的に見て割安な水準」と映るかもしれませんが、直近利益が10年平均を上回っている(200 > 150)ため、CAPEはより高い倍率を示し、「現在の利益水準は循環的にピークに近く、平均に回帰すれば実質的な倍率はより高い」という警告を発しています。

投資判断への影響

CAPEが歴史的な平均を大きく上回っている局面は、市場全体が長期的な平均に対して割高な水準にあることを示唆し、将来の期待リターンが低下する可能性を示す経験的な関係が知られています。ただし、この関係は数年単位のタイミング予測には向いておらず、CAPEが高い状態が何年も続くこともあります。市場全体の短期売買シグナルとしてではなく、長期の資産配分(株式の組み入れ比率をどの水準にするか)を検討する際の参考情報として使うのが実務的な位置付けです。

財務モデル・Excelでの使い方

市場指数レベルの分析シートでは、過去10年分のEPSデータと消費者物価指数(CPI)を並べ、各年のEPSを現在の物価水準に換算してから平均を取ります。

  • 実質EPS換算:=名目EPS × (現在のCPI ÷ 当時のCPI)で各年のEPSをインフレ調整する
  • 10年平均:AVERAGE関数で実質EPSの10年平均を算定する
  • 比較行:同じシートに通常のPER(直近EPSベース)を並べ、両者の乖離幅を時系列で追跡する

この用語をExcelで「組める」状態にする

過去10年分のEPSをインフレ調整してCAPEを算定し、通常のPERとの乖離を時系列で可視化できるようになる。

バリュエーション教材で実装手順を見る →

実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「CAPEが高いとすぐに株価が下落する」→ 正しくは、CAPEは長期的な期待リターンとの緩やかな関係を示す指標であり、短期のタイミング予測には向きません。CAPEが高い水準のまま数年間市場が上昇を続けることも珍しくありません。

誤解2:「新興国市場や小型株にもそのまま適用できる」→ 正しくは、10年分の安定した利益データが必要なため、データの蓄積が浅い市場・銘柄では信頼性が低下します。会計基準の変更や企業構成の入れ替わりが激しい市場でも解釈には注意が必要です。

実務家はさらに、インフレ調整に使う物価指数の選定と、10年という平均化期間が対象市場の景気循環の長さと整合しているかを確認します。

日本実務での扱い

(2026年7月時点)日本市場では、日本銀行が公表する消費者物価指数などのデータを使ってCAPEを算定する分析が一部の運用機関・研究機関で行われていますが、通常のPERやEV/EBITDA倍率と比べると、日本の実務レポートや有価証券報告書で標準的に開示される指標ではありません。主に海外(特に米国)のマクロ運用の文脈で発展してきた指標であるため、日本株の分析では海外投資家向けのレポートで参照されることが多い点に留意が必要です。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:CAPEと通常のPERの違いを説明してください。
「通常のPERは直近1年の利益を分母に使うため、景気循環のどの局面にあるかによって値が大きく変動します。CAPEはインフレ調整後の過去10年平均利益を分母に使うことで、一時的な利益の山谷をならし、市場全体の長期的な割高・割安感をより安定的に捉えようとする指標です。ただし過去のデータに依存するため、構造的な変化(成長率の転換など)を反映しにくいという限界もあります。」

深掘りでは「なぜ10年という期間を使うのか」「CAPEが高い局面での投資判断への活かし方」が定番です。

よくある質問(FAQ)

Q. CAPEは個別銘柄にも使えますか?
A. 理論上は使えますが、個別企業では事業構造の変化(M&A・事業ポートフォリオの入れ替え)が10年間で起きやすく、過去の利益が現在の事業実態を反映しなくなることがあります。そのため主に市場全体・指数レベルでの利用が中心です。

Q. なぜインフレ調整が必要なのですか?
A. 名目の利益をそのまま平均すると、物価上昇が続く局面では過去の利益が過小評価され、平均値が実態より低く出てしまいます。各年の利益を現在の物価水準に揃えることで、実質的な利益成長・循環の影響だけを比較できるようにしています。

出典・参考(2026-07-21確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。