この早見辞典の使い方
- 用語を「売上・継続」「獲得・効率」「マーケットプレイス・収益モデル」の3グループに整理。調べたい語からたどれます。
- 各表は「用語(日本語)/英語・略称/1行定義・式」の順。式は分子÷分母を明示しています。
- ARR/MRRからLTV/CAC、バーンマルチプル、Rule of 40の考え方まで、面接・実務で頻出する語を網羅。
- 数値の目安は理解のための概算です。定義や算式は企業・投資家により細部が異なります。
結論:SaaS・VC指標は「稼ぐ・獲る・収益化する」の3視点で整理する
SaaS・スタートアップの指標は数が多く見えますが、役割で分けると迷いません。第一にいくら・どれだけ継続的に稼ぐか(売上・継続:ARR/MRR、ACV/TCV、リテンション)。第二にどれだけ効率よく顧客を獲るか(獲得・効率:LTV/CAC、CAC回収月数、バーンマルチプル)。第三にどのモデルで収益化するか(マーケットプレイス・収益モデル:GMV、テイクレート、フリーミアム)。土台となるのは経常収益(Recurring Revenue)で、その年額がARR(Annual Recurring Revenue)、月額がMRR(Monthly Recurring Revenue)です(ARR=MRR×12)。成長性と収益性を1つで見る有名な合成指標がRule of 40で、ARR成長率(%)+営業利益率(%)≧40%を健全性の目安とします。以下の早見表で、英語名・略称・式まで一気に確認できます。
指標の全体像(分類マップ)
グループ1:売上・継続(Revenue & Retention)
収益の規模と継続性に関する指標です。経常収益(ARR/MRR)を起点に、契約額(ACV/TCV)、顧客単価(ARPU/ARPA/ASP)、そして収益がどれだけ残るか(リテンション・チャーン)を押さえます。
| 用語(日本語) | 英語・略称 | 1行定義・式 |
|---|---|---|
| 継続収益 | Recurring Revenue | サブスク等、反復的に発生する収益。単発売上と対比される土台概念。 |
| 年間/月間経常収益 | ARR / MRR | 契約ベースの年間(ARR)・月間(MRR)経常収益。ARR=MRR×12。 |
| ARR倍率 | ARR Multiple | 企業価値評価の倍率。EV÷ARR。高成長・高粗利ほど高くなる傾向。 |
| ランレート売上 | Run Rate Revenue | 直近実績を年換算した想定売上。例:直近月MRR×12。 |
| 受注 | Bookings | 契約総額。会計上の売上認識前の「約束された金額」。 |
| 年間契約額 | Annual Contract Value(ACV) | 1契約の年間平均額。おおむねTCV÷契約年数。 |
| 契約総額 | Total Contract Value(TCV) | 契約全期間の総額。ACV×契約年数+一時費用(初期導入費等)。 |
| ユーザー当たり平均収益 | ARPU(Average Revenue Per User) | 収益÷ユーザー数。課金単位が「利用者」の場合に用いる。 |
| アカウント当たり平均収益 | ARPA(Average Revenue Per Account) | 収益÷アカウント(企業)数。B2B SaaSで多用。 |
| 平均販売単価 | Average Selling Price(ASP) | 1件当たりの平均契約単価。総額÷件数。 |
| 拡張収益 | Expansion Revenue(MRR) | 既存顧客のアップセル・増席で増えたMRR。ネガティブチャーンの源泉。 |
| 収益チャーン | Revenue Churn(MRR) | 解約・ダウングレードで失った収益。件数でなく金額ベースの離脱。 |
| 総収益維持率 | Gross Revenue Retention(GRR) | 拡張を除く既存収益の維持率。上限100%。(期首MRR−解約−減額)÷期首MRR。 |
| ネットネガティブチャーン | Net Negative Churn | 拡張収益が解約収益を上回り純増となる状態(NRRが100%超)。 |
| 月次複利成長率 | Compound Monthly Growth Rate(CMGR) | 月次の複利成長率。(期末値÷期初値)^(1÷月数)−1。 |
グループ2:獲得・効率(Acquisition & Efficiency)
顧客獲得の費用対効果と、資金の使い方の効率を測る指標です。VCが投資判断で重視する領域で、LTV/CACやバーンマルチプルが代表格です。
| 用語(日本語) | 英語・略称 | 1行定義・式 |
|---|---|---|
| 顧客生涯価値 | Lifetime Value(LTV) | 1顧客が生涯にもたらす粗利。概算=ARPA×粗利率÷チャーン率。※融資のLoan to Value(LTV)は同綴の別語。 |
| LTV対CAC比率 | LTV/CAC Ratio | 生涯価値÷顧客獲得費用(CAC)。一般に3倍以上が健全の目安とされる。 |
| CAC回収月数 | Months to Recover CAC(CAC Payback) | 獲得費用の回収に要する月数。CAC÷(1顧客あたり月次粗利)。 |
| バーンマルチプル | Burn Multiple | 資金効率。純資金燃焼額÷純増ARR。小さいほど効率的(1倍未満が優秀の目安)。 |
| ベッセマー効率スコア | Bessemer Efficiency Score | 純増ARR÷純燃焼額。バーンマルチプルの逆数的な資金効率指標。 |
| 営業キャパシティ計画 | Sales Capacity Planning | 目標達成に必要な営業人員数・生産性を逆算する計画づくり。 |
| VCデューデリジェンス | Venture Capital Diligence | 出資前に事業・財務・法務・チーム等を精査すること。 |
| 参入障壁 | Barriers to Entry | 新規参入を阻む要因。規模の経済・ネットワーク効果・規制・切替コスト等。 |
| ユニコーン | Unicorn Startup | 評価額10億ドル以上の未上場スタートアップの通称。 |
グループ3:マーケットプレイス・収益モデル(Marketplace & Monetization)
プラットフォーム型・課金モデルに固有の指標です。とくにGMVは「取引の規模」であって自社の売上そのものではない点に注意します。自社売上はGMV×テイクレートで近似されます。
| 用語(日本語) | 英語・略称 | 1行定義・式 |
|---|---|---|
| 流通取引総額 | Gross Merchandise Value(GMV) | マーケットプレイス上の総取引額。自社売上ではない点に注意。 |
| テイクレート | Take Rate | GMVに対する手数料率。自社売上÷GMV。 |
| フリーミアム | Freemium | 基本無料+上位機能有料の課金モデル。無料層からの有料転換を狙う。 |
まとめ
SaaS・VC指標は数が多くても、売上・継続/獲得・効率/マーケットプレイス・収益モデルの3グループで捉えれば体系的に整理できます。土台はARR/MRR、健全性の合成指標はRule of 40(ARR成長率+営業利益率≧40%)、効率の代表はLTV/CACとバーンマルチプルです。用語は英語名・略称・式をセットで覚えると、面接でも実務でも即座に引き出せます。数値の目安(LTV/CAC≧3、CAC回収≦12か月等)はあくまで一般的な水準で、事業ステージや業種により最適値は変わる点に留意してください。
出典・参考(2026-07-16確認)
- 一般的なSaaS/VC実務で用いられる指標の定義・算式(ARR/MRR、LTV/CAC、CAC Payback、Burn Multiple、GMV/Take Rate、Rule of 40 等)に基づく。
- 数値の目安(LTV/CAC≧3倍、CAC回収≦12か月、Burn Multiple<1倍 等)は業界で広く参照される水準であり、確定的な基準ではない。
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例・目安は理解のための仮の水準です。
