この記事で分かること

  • 財務指標を「収益性・効率性(回転)・安全性(レバレッジ)・成長性・バリュエーション・キャッシュフロー」の6グループで整理した早見辞典です。
  • 各指標は「日本語名/英語・略称/定義・計算式」を1行で確認できます。まず分類マップで当たりを付け、該当グループの表で式を確認する使い方を想定しています。
  • 近い指標・重複する指標は代表的なものに統合し、実務でよく使う約75指標に厳選しています。
  • 個別指標の深掘りは、本文中の関連記事リンク(EBITDAROIC・安全性分析・マルチプルの選び方・有報の読み方)へ進んでください。

結論:財務指標は「6つの切り口」で覚えると迷わない

財務指標は数百あるように見えますが、目的で分けると6つに収まります。すなわち「①どれだけ稼いだか(収益性)」「②資産や資本をどれだけ効率よく回したか(効率性・回転)」「③借入に耐えられるか・倒れないか(安全性・レバレッジ)」「④どれだけ伸びているか(成長性)」「⑤株価・企業価値が割高か割安か(バリュエーション)」「⑥現金をどれだけ生んだか(キャッシュフロー)」です。個々の名前を暗記するより、この指標はどの問いに答えるものかを押さえるのが実務でも面接でも効きます。以下は目的別の早見辞典として、日本語名・英語略称・定義(式)を一覧化したものです。

財務指標の分類マップ

財務指標の6分類マップ ① 収益性 利益率(粗利・営業・純) ROA / ROE / ROIC EBITDA / EPS / EVA 問い:どれだけ稼いだか ② 効率性(回転) 総資産・棚卸・売掛回転 DSO / DPO / DIO CCC(現金循環化日数) 問い:どれだけ効率よく回したか ③ 安全性・レバレッジ 流動比率 / 当座 / 現金比率 D/E / 自己資本比率 インタレスト・カバレッジ 問い:倒れずに借入に耐えるか ④ 成長性 CAGR / AAGR YoY / QoQ / MoM 持続可能成長率 / 内部成長率 問い:どれだけ伸びているか ⑤ バリュエーション PER / PBR / PSR EV/EBITDA / EV/売上 PEG / 時価総額 / MOM 問い:割高か割安か ⑥ キャッシュフロー 営業CF / FCF FCFマージン / CF/株 CFカバレッジ / 現金転換 問い:現金をどれだけ生んだか
図:財務指標を目的別に6グループへ分類。まずここで当たりを付け、下の各表で定義・式を確認する。

① 収益性の指標

「売上や資産・資本から、どれだけ利益を生んだか」を測るグループです。分子の利益をどの段階(粗利・営業・税引後)で取るか、分母を売上/資産/資本のどれにするかで名前が変わります。EBITDAROICは別記事で詳しく解説しています。

指標名(日本語)英語・略称定義・計算式
売上総利益率(粗利率)Gross Margin売上総利益 ÷ 売上高。原価を除いた儲けの厚み。
営業利益率Operating Margin営業利益 ÷ 売上高。本業の収益力。
当期純利益率Net Profit Margin当期純利益 ÷ 売上高。最終利益の対売上比率。
税引前利益率Pre-tax Margin税引前利益 ÷ 売上高。
EBITDAマージンEBITDA MarginEBITDA ÷ 売上高。減価償却の影響を除いた収益性。
利払税引前利益EBIT利息・税金控除前の利益(≒営業利益+α)。
税引後営業利益NOPATEBIT ×(1 − 実効税率)。資本構成の影響を除いた利益。
総資産利益率ROA当期純利益 ÷ 総資産。資産全体の稼ぐ力。
自己資本利益率ROE当期純利益 ÷ 自己資本。株主資本の収益性。
投下資本利益率ROICNOPAT ÷ 投下資本(有利子負債+自己資本)。
投資利益率ROI利益 ÷ 投資額。汎用的な投資効率の指標。
純資産利益率RONA純利益 ÷(固定資産+正味運転資本)。事業資産の効率。
有形自己資本利益率ROTE純利益 ÷ 有形自己資本(のれん等を除く)。
売上高利益率Return on Sales営業利益 ÷ 売上高。営業利益率とほぼ同義。
基礎収益力比率Basic Earning PowerEBIT ÷ 総資産。税・資本構成前の資産収益力。
限界利益(率)Contribution Margin売上高 − 変動費(÷ 売上高で率)。固定費回収余力。
販管費率SG&A Margin販管費 ÷ 売上高。コスト構造の重さ。
1株当たり利益EPS当期純利益 ÷ 発行済株式数。
経済的付加価値EVA / Economic ProfitNOPAT − 投下資本 × 資本コスト。資本コスト超過利益。
実効税率Effective Tax Rate法人税等 ÷ 税引前利益。実際に負担した税率。

② 効率性(回転)の指標

「資産・資本をどれだけ効率よく売上や現金に回したか」を測ります。回転率(回)は「1年に何回転したか」、回転日数(日)は「1回転に何日かかるか」で、逆数の関係です。運転資本の管理では有価証券報告書の注記も参照します。

指標名(日本語)英語・略称定義・計算式
総資産回転率Asset Turnover売上高 ÷ 総資産。資産1円で何円売ったか。
固定資産回転率Fixed Asset Turnover売上高 ÷ 固定資産。設備の稼働効率。
自己資本回転率Equity Turnover売上高 ÷ 自己資本。
棚卸資産回転率Inventory Turnover売上原価 ÷ 平均棚卸資産。在庫の回転速度。
売上債権回転率Receivables Turnover売上高 ÷ 平均売上債権。
棚卸資産回転日数DIO棚卸資産 ÷ 売上原価 × 365。在庫滞留日数。
売上債権回転日数DSO / 平均回収期間売上債権 ÷ 売上高 × 365。回収までの日数。
仕入債務回転日数DPO仕入債務 ÷ 売上原価 × 365。支払までの日数。
現金循環化日数CCCDIO + DSO − DPO。運転資本の拘束日数。
営業サイクルOperating CycleDIO + DSO。仕入から回収までの期間。
手元流動性日数Days Cash on Hand現金 ÷ 1日当たり営業支出。何日活動できるか。
資本回転率Capital Turnover売上高 ÷ 投下資本。
資本集約度Capital Intensity Ratio総資産 ÷ 売上高。総資産回転率の逆数。
従業員1人当たり売上Revenue per Employee売上高 ÷ 従業員数。人的効率。
ベリー比率Berry Ratio売上総利益 ÷ 営業費用。移転価格分析で使う。

③ 安全性・レバレッジの指標

「短期の支払いに困らないか(流動性)」「借入への依存度と返済余力はどうか(レバレッジ・カバレッジ)」を測ります。詳しくは安全性分析の記事も参照してください。

指標名(日本語)英語・略称定義・計算式
流動比率Current Ratio流動資産 ÷ 流動負債。短期支払能力。
当座比率Quick Ratio当座資産 ÷ 流動負債。在庫を除いた支払能力。
現金比率Cash Ratio(現金+現金同等物)÷ 流動負債。
防御的間隔比率DIR当座資産 ÷ 1日当たり営業支出。無収入耐久日数。
自己資本比率Equity Ratio自己資本 ÷ 総資産。資本の厚み。
負債比率(D/E)Debt to Equity / Gearing有利子負債 ÷ 自己資本。レバレッジの度合い。
負債資本倍率Debt to Capital有利子負債 ÷(有利子負債+自己資本)。
負債比率(対総資産)Debt Ratio総負債 ÷ 総資産。
財務レバレッジEquity Multiplier総資産 ÷ 自己資本。自己資本比率の逆数。
固定比率Capitalization Ratio長期負債 ÷(長期負債+自己資本)。
インタレスト・カバレッジInterest Coverage / TIEEBIT ÷ 支払利息。利払い余力。
固定費カバレッジFCCR(EBIT+固定費)÷(利息+固定費)。固定支払余力。
債務返済カバレッジDSCR営業CF ÷ 元利返済額。借入返済の余力。
現金カバレッジ比率Cash Coverage Ratio(EBIT+減価償却)÷ 支払利息。
資産カバレッジ比率Asset Coverage Ratio(有形資産 − 流動負債)÷ 総負債。
財務レバレッジ度DFLEBITの変化率に対する当期純利益の変化率の倍率。

④ 成長性の指標

「どれだけ伸びているか」を測ります。単年の伸び(YoY)と、複数年をならした年平均成長率(CAGR)を区別することが重要です。再投資と成長率の関係を示す指標(持続可能成長率など)も含みます。

指標名(日本語)英語・略称定義・計算式
年平均成長率CAGR(期末 ÷ 期初)^(1/年数) − 1。複利ベースの平均成長率。
単純平均成長率AAGR各年成長率の単純平均。複利を考慮しない。
前年同期比YoY(当期 − 前年同期)÷ 前年同期。
前月比MoM(当月 − 前月)÷ 前月。
EPS成長率EPS Growth1株当たり利益の伸び率。
オーガニック成長Organic GrowthM&Aによらない自律的な売上成長。
インオーガニック成長Inorganic Growth買収・合併による外部成長。
持続可能成長率SGRROE × 内部留保率。増資なしで持続できる成長率。
内部成長率Internal Growth RateROA × 内部留保率 ÷(1 − ROA × 内部留保率)。
内部留保率Retention / Plowback1 − 配当性向。利益の再投資割合。
再投資率Reinvestment Rate純投資額 ÷ NOPAT。成長のための再投資割合。
ターミナル成長率Terminal Growth RateDCFで永続的に仮定する長期成長率(g)。
増分利益率Incremental Margin利益の増加 ÷ 売上の増加。追加売上の収益性。

⑤ バリュエーションの指標

株価・企業価値が「割高か割安か」を測る倍率(マルチプル)です。株式価値ベース(PERPBR等)と事業価値ベース(EV倍率)を区別します。どの倍率をいつ使うかはマルチプルの選び方で解説しています。

指標名(日本語)英語・略称定義・計算式
時価総額Market Capitalization株価 × 発行済株式数。株式価値の市場評価。
株価収益率PER (P/E)株価 ÷ EPS。利益の何年分で買われているか。
PEGレシオPEG RatioPER ÷ EPS成長率。成長を勘案した割高感。
株価純資産倍率PBR (P/B)株価 ÷ 1株純資産。純資産に対する評価。
株価売上高倍率PSR (P/S)時価総額 ÷ 売上高。赤字企業でも計算可能。
株価キャッシュフロー倍率P/CF株価 ÷ 1株営業CF。
株価FCF倍率P/FCF時価総額 ÷ FCF。
株価有形純資産倍率PTBV株価 ÷ 1株有形純資産(のれん除く)。
EV/EBITDA倍率EV/EBITDA企業価値 ÷ EBITDA。資本構成に中立な代表的倍率。
EV/EBIT倍率EV/EBIT企業価値 ÷ EBIT。減価償却負担を反映。
EV/売上高倍率EV/Revenue企業価値 ÷ 売上高。赤字・高成長企業向け。
EV/FCF倍率EV/FCF企業価値 ÷ フリーCF。
EV/投下資本倍率EV/Invested Capital企業価値 ÷ 投下資本。
実績/予想倍率LTM / NTM Multiple直近12カ月実績(LTM)か今後12カ月予想(NTM)で倍率を取る。
投資倍率MOM / MOIC回収額 ÷ 投資額。PEの投資成果(何倍か)。
出資倍率(PEファンド)TVPI / DPI総価値(分配+残存)÷ 払込。DPIは分配のみ ÷ 払込。

⑥ キャッシュフローの指標

「会計上の利益ではなく、現金をどれだけ生んだか」を測ります。利益が黒字でも現金が回らなければ倒れるため、営業CFやフリーCFは投資家が特に重視します。

指標名(日本語)英語・略称定義・計算式
営業キャッシュフローOCF本業から生じた現金の増減。CF計算書の第1区分。
フリーキャッシュフローFCF営業CF − 設備投資(Capex)。自由に使える現金。
FCFマージンFCF MarginFCF ÷ 売上高。現金創出の効率。
営業CFマージンOCF Margin営業CF ÷ 売上高。
営業CF対流動負債比率Operating CF Ratio営業CF ÷ 流動負債。短期債務の返済力。
CFカバレッジ比率Cash Flow Coverage営業CF ÷ 総負債。負債全体の返済力。
CF適合率Cash Flow Adequacy営業CF ÷(設備投資+負債返済+配当)。
現金転換率Cash Conversion Ratio営業CF ÷ 当期純利益(またはEBITDA)。利益の現金化度。
1株当たりCFCash Flow per Share営業CF ÷ 発行済株式数。
キャッシュEPSCash EPS(純利益+非現金費用)÷ 発行済株式数。
純設備投資Net Capital Spending期末固定資産 − 期首固定資産 + 減価償却費。
運用可能CF(負債返済)CADS元利返済に充当可能な現金。DSCRの分子。
運用資金(REIT)FFO / AFFO純利益+減価償却 −不動産売却損益(AFFOは資本的支出も控除)。

まとめ

財務指標は「収益性・効率性・安全性・成長性・バリュエーション・キャッシュフロー」の6つの問いに整理すれば、初見の指標でも「これはどの箱の話か」で見当がつきます。実務では、同じ利益でも分子を粗利/営業/税引後のどこで取るか、分母を売上/資産/資本のどれにするかで意味が変わる点、回転率と回転日数が逆数の関係にある点、株式価値ベース(PER・PBR)と事業価値ベース(EV倍率)を混同しない点が要注意です。本辞典で全体像をつかんだうえで、頻出指標は個別記事で計算式と設例まで押さえておくと、面接でもスムーズに答えられます。

出典・参考(2026-07-16確認)

  • 一般的な財務分析・経営分析の指標体系(収益性・効率性・安全性・成長性・バリュエーション・キャッシュフロー分析の標準的枠組み)。
  • 企業会計原則および財務諸表の一般的な表示区分(損益計算書貸借対照表キャッシュフロー計算書)。

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための仮設例です。指標の定義・計算式は代表的な一例であり、業界慣行や算定目的により異なる場合があります。