想定読者:リース・信販・消費者金融の会社への融資や社債投資を検討する銀行・投資家、投資銀行の金融機関担当
前提知識:損益計算書と貸借対照表の基本

結論:預金の​ない​金融会社は、​調達の​「構成」と​「期限」を​決算書から​分解して​読む

リース・信販・消費者金融の会社を、銀行と同じく「利ざやが取れているか」だけで読むと見落としが出ます。預金を受け入れられない会社は資金の出し手に頼み直す形で調達するため、調達コストの上昇と、借換え(満期の資金を新たな調達で返すこと)の難しさの両方が、収益と資金繰りに直接響くからです。

本記事では、学習用の架空事例の3社(リース会社A社、信販会社B社、消費者金融会社C社)で、利ざやの厚さと借換えの余裕を同じ表で比べます。設例では、調達コスト1.0ポイントの上昇で利ざやが薄いA社の貸倒後金融収支は70.9%減り、C社は13.0%減にとどまりました。一方、借換えの全面停止による資金不足額は調達残高に対しA社12.5%、C社23.3%と逆の順でした。仮定から出た数字で、業態の一般的な水準ではありません。

預金を​持たないとは​何か:銀行との​資金の​流れの​違い

本記事では、預金を受け入れずに貸付・リース・割賦(代金の分割払い)の債権を持つリース・信販・消費者金融の3業態を、便宜的に「ノンバンク」と呼びます(法令上の定義語ではありません)。規制は、調達に関わる点だけを2026年10月時点の法令で確認します。

出資法は、「業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定のある者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない」と定めています1。銀行法は、「預金又は定期積金の受入れ」と資金の貸付け(条文は手形による与信も並記)とを併せ行う営業などを銀行業としています2。リース・信販・消費者金融の会社は銀行ではないため、運用する債権の原資を預金で賄うことはできず、借入・社債・CP・債権流動化で集めることになります(編集部の整理)。

海外の解説も、預金を持たない金融仲介業者は短期の資金で長期の貸出を賄うため、短期資金が途絶えると流動性の問題に直面すると説明しています3(一般概念の参考で、海外の制度を日本に当てはめるものではありません)。

図表1のとおり、銀行は預金で貸し出し、ノンバンクは4つの調達手段で集めた資金で、調達の満期(CPは1年未満)と運用の期間(リースや割賦は数年)のずれを借換えで埋め続けます。

図表1:銀行とノンバンクの資金の流れ 【銀行】預金で集める 預金者 銀行 借り手 預金 貸出 【ノンバンク】4つの調達手段で集める(預金は受け入れない) 銀行借入 社債(投資家) CP(短期・投資家) 債権流動化(SPC経由) ノンバンク 借換えで回す 顧客 リース債権 割賦債権 無担保貸付 調達の満期(CPは1年未満)と運用の期間(数年)のずれを、借換えで埋め続ける
単位:なし​(概念図)。​出所:出資法・​銀行法の​規定​(参考文献 R1・R2)と​一般的な​仕組みを​基に​大手町​プレップ​作成。​(スマートフォンでは​図を​横に​スクロールできます)

貸金業法には調達に関わる条件もあります。貸金業の登録の拒否事由として、純資産額が政令で定める金額に満たない者が挙げられており、その金額は5,000万円とされています4。これは登録の入口の要件で、調達額の上限や手段の制限ではありません。

調達手段​4つの​性格と、​実在企業の​開示に​見る​組み合わせ

銀行借入は貸し手との相対の契約で条件が個別に決まり、社債は投資家から中長期の資金を直接得る手段です。CP​(コマーシャル・​ペーパー。​満期が​1年未満の​無担保の​短期証券)は満期のたびに投資家へ借換えを頼むことになります。債権流動化は、リース料債権や割賦債権などの回収金を返済原資として、SPC​(元の​会社の​倒産から​切り離された​特別目的会社)を通じて調達する手段で、会社全体の信用力とは別に裏付債権の質が条件に効きます。詳細は証券化・​ABS​入門に委ねます。

実在企業の開示で組み合わせを確認します。三菱HCキャピタルの2026年3月期(第55期)の連結注記表は、銀行借入等の間接金融のほか、社債やCPの発行、債権流動化による直接金融で資金を調達していると記しています5。主たる営業資産のリース料債権・割賦債権等は長期固定金利である一方、調達には変動金利のものがあること(同社はデリバティブで包括的にヘッジ)、借入金・社債・CP等は市場から調達できなくなると支払期日に支払えなくなる流動性リスクを内包することも述べています6。管理策は、長短の調達バランスの調整、複数の金融機関からのコミットメントライン(あらかじめ決めた期間と上限額の範囲で、銀行が貸出を約束する枠)の取得、調達手段の多様化です7。

消費者金融のアコムは、2026年3月期(第49期)の有価証券報告書で、資金を金融機関等からの借入金と社債・CPの発行で賄うとし、主要借入先の貸出政策の変更や資本市場が使えなくなる可能性をリスクに挙げ、対応として調達手段の多様化、コミットメントラインなどの流動性補完枠、調達金利の固定化を一定割合維持することを記載しています8。

2社とも複数の調達手段を併用し、借換えの停止と金利の変動を管理対象にしていますが、業態ごとの典型的な構成比までは2社の開示から言えません。次の設例の構成比は練習用の仮定です。銀行借入の比率が高いほど調達が不安定かどうかも構成比だけでは断定できず、返済期限と未使用枠で確かめる仮説にとどめます。

設例:3社の​調達構成と​利ざやを​1枚の​表に​まとめる

以下は学習用の架空事例です(単位は億円・%)。簡略化のため、営業資産(リース債権・割賦債権・貸付金)と調達残高(有利子負債)は等しく、期中一定(期末残高=平均残高)とします。実際は自己資本がある分だけ調達残高が小さいので、両者を分けて計算します。分母は営業資産または調達の平均残高で、利ざやは%どうしの差なのでポイントで表します。

利ざやと金融収支の式
平均調達コスト(%)=Σ(手段別の残高×手段別の調達コスト)÷調達残高
利ざや(ポイント)=運用利回り(%)-平均調達コスト(%)
貸倒費用控除後の利ざや(ポイント)=利ざや-貸倒費用率(%)
金融収支(億円)=営業資産×運用利回り-調達費用 / 貸倒後金融収支=金融収支-貸倒費用

A社の途中計算は次のとおりです。調達費用は銀行借入2,200×1.0%=22.0、社債1,000×0.8%=8.0、CP400×0.5%=2.0、流動化400×0.9%=3.6で合計35.6億円、平均調達コストは35.6÷4,000=0.89%です。運用収益は4,000×2.4%=96.0億円なので、金融収支は96.0-35.6=60.4億円、利ざやは2.40-0.89=1.51ポイントです。貸倒費用は4,000×0.1%=4.0億円で、貸倒後金融収支は56.4億円(1.41ポイント)になります。B社・C社も同じ手順で、図表2の結果になります。

図表2:3社の調達構成と利ざや(億円・%)
項目A社(リース)B社(信販)C社(消費者金融)
営業資産=調達残高4,0003,0001,500
銀行借入(構成比)2,200(55.0%)1,050(35.0%)1,050(70.0%)
社債(構成比)1,000(25.0%)450(15.0%)225(15.0%)
CP(構成比)400(10.0%)300(10.0%)225(15.0%)
債権流動化(構成比)400(10.0%)1,200(40.0%)0(0.0%)
手段別コスト(銀行/社債/CP/流動化、%)1.0/0.8/0.5/0.91.1/0.9/0.5/1.01.4/1.2/0.8/-
平均調達コスト(%)0.890.971.28
運用利回り(%)2.404.5012.00
利ざや(ポイント)1.513.5310.72
貸倒費用率(%)0.101.003.00
貸倒控除後の利ざや(ポイント)1.412.537.72
調達費用35.629.119.2
金融収支(運用収益-調達費用)60.4105.9160.8
貸倒後金融収支56.475.9115.8
単位:億円​(項目名に%・ポイントとあるものを除く)。​対象期間:学習用の​1年間。​営業費用・​税・​自己資本は​考慮しない。​出所:学習用の​仮定に​基づき大手町​プレップ​作成。​(スマートフォンでは​表を​横に​スクロールできます)

図表2では、B社は債権流動化が40.0%、C社は銀行借入が70.0%に偏っています。平均調達コストの差(0.89〜1.28%)より運用利回りの差(2.40〜12.00%)がはるかに大きく、利ざやの幅は主に利回りで決まります。貸倒費用を引くと、A社1.41ポイントに対しC社は7.72ポイントで、金額ではA社56.4億円、C社115.8億円(営業資産はA社の37.5%)です。手段別コストは、手数料込みの実質調達金利であるオールインコストと仮定しています。

ストレス​計算:調達​コスト​上昇と​借換え停止の​2通り

ストレスは2通りです。1つ目は調達コストが全体で1.0ポイント上がる場合で、運用利回りは変わらず、すべての調達の金利が1年以内に見直されると仮定して圧縮額の上限を見ます。圧縮額(億円)は調達残高×1.0%で、A社40.0、B社30.0、C社15.0億円です。固定金利の調達があれば、その分だけ小さくなります。

2つ目は、新規の資金調達が止まり、1年以内に返済期限が来る資金を借り換えられない場合です。資金不足額は、1年内返済額(1年以内に返済・償還する借入金、社債、CP、流動化に伴う債務の合計)から、現預金と未使用のコミットメントラインを引いて求めます。債権の回収入金は含めない最大値です(新規貸出を止めれば入金を返済に回せますが、事業の縮小になります)。手元の合計は、ファンディングリスク​(借換えができず支払えなくなるリスク)への備えです。

図表3:金利上昇と借換え停止の試算(億円)
項目A社(リース)B社(信販)C社(消費者金融)
① 調達コスト+1.0ポイント(上限)
貸倒後金融収支(前)56.475.9115.8
利ざや圧縮額(調達残高×1.0%)▲40.0▲30.0▲15.0
貸倒後金融収支(後)16.445.9100.8
減少率(前に対する%)▲70.9▲39.5▲13.0
② 借換え停止(回収入金を除く)
1年内返済額(合計)1,1001,100600
うちCP(残高の全額)400300225
現預金150200100
未使用のコミットメントライン450300150
手元流動性(現預金+未使用枠)600500250
CPだけ借換え不能:手元-CP+200(余裕)+200(余裕)+25(余裕)
全面停止の資金不足額(返済額-手元)▲500▲600▲350
資金不足額÷調達残高(%)12.520.023.3
単位:億円​(%と書いた行を除く)。​対象期間:学習用の​1年間。​減少率は​小数第2位を​四捨五入。​▲は​減少・​不足。​出所:学習用の​仮定に​基づき大手町​プレップ​作成。​(スマートフォンでは​表を​横に​スクロールできます)

図表3の①では、A社の貸倒後金融収支が56.4億円から16.4億円へ70.9%減ります。利ざやが薄いほど同じ1.0ポイントの影響が大きく、吸収できる上昇幅は貸倒後利ざや(A社1.41、B社2.53、C社7.72ポイント。営業費用・税の前)に等しくなります。全調達に同じ上昇幅を当てたので、この試算では構成比の違いは効いていません。実際に効くのは、金利が1年以内に見直される割合と利ざやの厚みです。

②では、CPだけが借り換えられない場合は3社とも手元流動性で賄えますが、C社の余裕は25億円です。全面停止では資金不足額が調達残高のA社12.5%、B社20.0%、C社23.3%、1年内返済額に対する手元の比率はA社54.5%、B社45.5%、C社41.7%です。設例では金利に弱いのはA社、借換えに弱いのはC社で、どちらも仮定上の結果です。

有価証券報告書での​拾い​方:5つの​場所を​順に​見る

連結財務諸表規則は、連結附属明細表の種類として社債明細表と借入金等明細表(ほかに資産除去債務明細表)を定めています9。社債・長期借入金・リース負債などで金利の負担を伴うものは、返済予定額を一定の期間に区分して注記します(明細表に記載済みなら、その旨の注記で代えられます)10。例として、クレディセゾンの2022年3月期(第72期)の有価証券報告書には、短期借入金・長期借入金・債権流動化借入金の区分ごとに残高・平均利率・返済期限が示されています11。明細表から償還スケジュールを作る手順はリファイナンス​分析と​Maturity Wallにあります。

図表4は、見る場所と、図表2・3のどの項目に入るかを対応させたものです。

図表4:有価証券報告書で調達情報を拾う順序 ① 見る場所 ② 拾うもの ③ 入る項目 1 事業等のリスク 資金調達環境の悪化 主要借入先への依存 未使用枠・固定化の方針 構成比の読み方 未使用枠の裏付け 2 貸借対照表 負債と現預金の科目 短期借入金・CP・社債 1年内返済予定・現預金 調達残高・CP・現預金 1年内返済額(一部) 3 附属明細表 社債・借入金等明細表 区分別の残高 平均利率・返済期限 手段別の構成比 手段別コスト・返済額 4 注記 金融商品・担保など 返済予定額の期間区分 流動化に伴う債務 1年内返済額 債権流動化の残高 5 損益計算書 収益と費用の科目 支払利息(資金原価) 営業収益・貸倒関連費用 平均調達コスト 運用利回り・貸倒費用率
単位:なし​(対応図)。​出所:連結財​務諸表規則の​規定​(参考文献 R9)を​基に​大手町​プレップ​作成。​会社に​より​科目名と​記載場所は​異なります。​(スマートフォンでは​図を​横に​スクロールできます)

よく​ある​間違いと、​この​設例の​限界

1つ目は、ポイントと%の混同です。利ざやは「%と%の差」なので1.51ポイントと書き、1.51%とは書きません。2つ目は分母の不一致で、営業資産と調達残高が違う会社では「利ざや×残高」で金融収支は求まりません(本設例は残高を揃えた簡略版)。3つ目は、未使用枠の記載がないのに枠があると見込むことで、記載がなければゼロで計算します。

設例の限界として、営業費用・税・自己資本を考慮せず、貸倒費用率は固定で、景気悪化との同時発生は扱いません。リース会社の​理論PBRや​ROE、消費者金融の​過払金引当金は別ページで扱います。銀行のNIMや流動性規制は銀行分析の​主要​KPI​体系が扱う範囲で、預金のある銀行とは前提が違います。

実務​チェックリスト

  • 手段別(銀行借入・社債・CP・流動化)の残高から構成比を出し、前期と比べて変化した手段を特定する。
  • 平均調達コストと運用利回りの分母を、期中平均残高に揃える。
  • 利ざやをポイントで示し、貸倒費用控除後の利ざやを別に出して並べる。
  • 調達コスト+1.0ポイントの圧縮額を計算し、貸倒後の金融収支に対する割合で判断する。
  • 1年内返済額を足し上げ、現預金と未使用枠の合計との差を資金不足額として出す。
  • 主要借入先への依存と、コミットメントラインの有無を事業等のリスクで確認する。
  • 流動化は、裏付債権の質と担保提供資産の増加を注記で確認する。

よく​ある​質問​(FAQ)

債権流動化の​比率が​高い​会社は、​調達が​安定していると​言えますか。

一概には​言えません。​流動化は​裏付債権の​質と​回収の​見通しで​条件が​決まり、​会社全体の​信用力とは​別に​動きますが、​流動化に​回せる​債権の​量には​限りが​あり、​増やすには​裏付けと​なる​債権が​必要です。​担保提供資産と​対応する​債務の​注記を​併せて​確認してください。

利ざやが​厚い​C社のような​会社は、​借換え​リスクを​気にしなくて​よいですか。

設例の​C社は、​金利には​強くても​借換え​停止時の​不足額の​比率は​3社で​最も​高い​結果でした。​利ざやの​厚みは​金利上昇の​吸収力で、​借換えの​余裕とは​別の​指標です。

まとめ

預金のないノンバンクは、借入・社債・CP・債権流動化を組み合わせて調達し、満期のたびに借換えが要ります。決算書から手段別の残高、調達コスト、運用利回り、貸倒費用率、1年内返済額、現預金と未使用枠を拾えば、利ざやと借換えの余裕を1枚の表にできます。設例では、利ざやが薄いA社は金利上昇に弱く、利ざやが厚いC社は借換え停止に弱い結果でした。構成比だけで調達の安定性を決めず、返済期限と未使用枠で確かめます。

脚注

  1. 出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律)第2条第1項。同条第2項は「預り金」を不特定かつ多数の者からの金銭の受入れで一定のものと定義(R1)。↩
  2. 銀行法第2条第2項第1号。同項第2号の為替取引を行う営業も銀行業に含まれる(R2)。↩
  3. Wall Street Oasis「Shadow Banking System」の Understanding・Potential Liquidity Problems の節。同「Non-Banking Financial Company (NBFC)」も預金を受け入れない金融会社として説明。要約は編集部。海外の文脈の一般的な説明で、日本の制度の根拠ではない(R3・R4)。↩
  4. 貸金業法第6条第1項第14号(内閣府令で定める事由がある者を除く)・同条第3項(5,000万円を下回ってはならない)、同法施行令第3条の2(5,000万円)(R5・R6)。↩
  5. 連結注記表<金融商品に関する注記>1.(1)金融商品に対する取組方針(資料内p.37)(R7)。↩
  6. 連結注記表の「ヘッジ方針およびヘッジ有効性評価の方法」(資料内p.28)と、<金融商品に関する注記>1.(2)金融商品の内容およびそのリスク(同p.37)(R7)。↩
  7. 同注記1.(3)⑤ 資金調達に係る流動性リスクの管理(資料内p.38)(R7)。↩
  8. アコム 有価証券報告書 第49期(2026年6月16日提出)「事業等のリスク」(9)資金調達環境の悪化について(p.27)。格付は2026年3月末日現在の記載(R8)。↩
  9. 連結財務諸表規則第92条第1項。資産除去債務明細表は第92条の2の条件を満たせば省略できる(R9)。↩
  10. 同規則第15条の5の2第9項(R9)。↩
  11. クレディセゾン 有価証券報告書 第72期(2021年4月1日〜2022年3月31日。IFRS適用)の借入金の明細(PDF 93ページ目)。平均利率は期末借入金残高に対する表面利率の加重平均と注記(R10)。↩

参考文献​(2026年10月確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための学習用の架空事例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。