この記事で分かること
- 株式会社・合同会社・LLP(有限責任事業組合)がどこで分かれるかを、条文に沿った1枚の表で確認できます
- 学習用の架空JVで、利益200百万円の各社の手取りと、損失800百万円の取り込み(LLPの出資額上限)を電卓で追えます
- 共同開発・合弁事業・買収SPCの目的別に、3つの問いで器を絞る手順が分かります
想定読者:事業会社のコーポレートディベロップメント・経営企画、M&A・FA・PEの担当者で、JV・新会社・買収SPCの法形態を自分でも比較したい方
前提知識:法人税が法人の所得に課されること、配当の基本的な意味。条文の知識は不要です。
結論:3形態は「誰 に課税されるか」で分かれ、損益配分は手段が違う
JVや新会社、買収SPC(買収のために設ける受け皿会社)の器選びの結論は3点です。第一に、最も大きく分かれるのは課税の主体で、株式会社と合同会社は新会社が法人税を負担し、LLPは組合に課税されず出資する会社(組合員)に損益が帰属します。第二に、損益を出資比率と変えること自体は3形態とも可能ですが、株式会社は種類株式など、合同会社は定款、LLPは総組合員の同意と、手段が異なります。第三に、後述の学習用の設例では、利益の年の税額は両案で同じで、差は損失の年と受取配当の区分に現れます。
「合同会社が最も有利」といった一般論は成り立たず、目的と条件で選び方が変わります(編集部の見解)。条文は2026年10月22日に e-Gov 法令検索で取得した現行版に基づきます1。税率などの数値は学習用の仮定で、個別案件の判断は専門家に確認してください。
株式会社・合同会社・LLPの違いを1枚で比べる
会社法は株式会社と、合名会社・合資会社・合同会社をまとめた「持分会社」(定款に別段の定めがなければ社員自らが業務を執行する会社)を区別します。合同会社は社員の全員が有限責任の持分会社で、会社はいずれも法人です2。一方、LLPは有限責任事業組合契約に関する法律(以下LLP法)に基づく組合で、組合員は出資の価額を限度に責任を負います3。海外の「LLP」は国・地域で要件が異なる別の制度です4。本記事のLLPは日本の有限責任事業組合だけを指します。図表1は各形態の既定の取扱いです。
| 観点 | 株式会社 | 合同会社 | LLP |
|---|---|---|---|
| 法的性格 | 法人 | 法人(持分会社) | 組合 |
| 責任 | 引受価額まで | 出資の価額まで | 出資の価額まで |
| 課税 | 新会社に法人税 | 新会社に法人税 | 組合員に課税 |
| 損益配分 | 種類株式で変更可 | 定款で変更可 | 全員の同意で変更可 |
| 意思決定 | 総会は過半数が原則 | 社員の過半数が原則 | 総組合員の同意が原則 |
| 撤退 | 株式は譲渡が原則自由 | 譲渡は全社員の承諾 | 任意脱退は原則不可 |
| 組織変更 | 合同会社へ可 | 株式会社へ可 | 規定なし |
図表1の要点は、法人か組合かが課税の違いに直結することと、組織変更です。会社法の組織変更は株式会社と持分会社の間の手続です5。合同会社は株式会社へ変われますが、組合であるLLPは対象外で、LLP法にも規定はありません。将来の増資や上場を見込むなら、この差は初期の器選びに響きます。
損益を出資比率と変えられるか
JVでは、資金を出す側と技術を出す側で取り分を分けたい場面があります。株式会社は株主を株式の内容と数に応じて平等に扱うのが原則で、配当の取り分を変えるには内容の異なる種類株式を発行します。公開会社でない株式会社は、定款で株主ごとに異なる取扱いを定めることもできます。合同会社は、損益分配の割合を定款に定めなければ出資の価額に応じて決まり、定款で定めれば出資比率と異なる割合にできます。利益と損失の一方だけを定めたときは、両方に共通と推定されます6。
LLPも出資の価額に応じるのが既定で、総組合員の同意により別段の定めができます7。ただし税務の通達は、分配割合が出資の価額を基礎とした割合と異なる場合、出資の状況や組合事業への寄与の状況などからみて経済的合理性を有するものでなければならない、と注意を促しています8。技術を出す側に厚く配分するなら、その寄与を説明できる資料を残します。合同会社側の配分の税務上の評価は本記事では確認していないため、個別に確認してください。
課税の違い:法人課税と構成員課税
株式会社と合同会社は、国内に本店を持つ法人(内国法人)として各事業年度の所得に法人税が課されます9。課税後の利益を出資者である法人が配当で受け取ると、受取配当等の益金不算入制度(法人間の配当に課税が重ならないようにする制度)が働きます。発行済株式または出資の総額の3分の1を超える関連法人株式等は配当から利子相当額を引いた額、5%以下の非支配目的株式等は20%、その他は50%を益金(課税対象の収益)に算入しません10。二重課税の緩和の程度が保有割合で変わるわけです。
名称の似た米国のLLCには注意が要ります。米国のLLCには連邦税を直接納めず、損益を所有者の申告書に記録する選択肢があります11。日本の合同会社は会社であり、法人課税です。
LLPは逆です。法人税基本通達は、有限責任事業組合を含む組合の事業から生ずる損益は各組合員に直接帰属し、現実に分配を受けていなくても、組合員の事業年度に対応する損益を益金・損金に算入するとしています12。利益を組合に留保しても組合員は課税されます。LPSのパススルー課税と同じ考え方です。
損失には上限があります。租税特別措置法は、LLPの組合員である法人の組合事業による損失が、出資の価額を基礎に政令で計算した金額を超えるとき、その超過分を損金に算入せず、将来の組合事業の利益の額に達するまで損金算入を認めます13。出資比率と損失の配分がずれると、この上限に届きやすくなります。
設例①:利益200百万円の各社の取り分
以下は学習用の架空事例です。製造業のA社とソフトウェア企業のB社が新会社を設立します。単位は百万円です。
- 出資(払込):A社600、B社400、合計1,000(出資比率60%:40%)
- 損益配分:A社45%、B社55%(技術を出すB社に厚く配分)
- 初年度の事業利益(税引前):200
- 税率:新会社、A社、B社とも30%(単純化した仮定。地方税などは考慮しない)
- 合同会社の配当:両社とも関連法人株式等に当たり要件を満たし、負債利子の控除はないと仮定して、100%を益金不算入とする
各社の税引後取り分
合同会社:(利益200-法人税200×30%)× 配分割合 / LLP:利益200 × 配分割合 ×(1-30%)
合同会社は法人税200×30%=60を払い、税引後140をA社63(45%)、B社77(55%)と配当します。益金不算入100%なら追加課税はありません。LLPはA社に200×45%=90、B社に110が帰属し、税はA社27、B社33、税引後はA社63、B社77です。図表2のとおり、両案の取り分と税額合計60は一致します。
| 項目 | 合同会社 | LLP |
|---|---|---|
| 事業利益(税引前) | 200 | 200 |
| 新会社の法人税 | 60 | 0 |
| A社への配当・帰属 | 63 | 90 |
| B社への配当・帰属 | 77 | 110 |
| A社の税 | 0 | 27 |
| B社の税 | 0 | 33 |
| A社の税引後 | 63 | 63 |
| B社の税引後 | 77 | 77 |
| 税額合計(200-140) | 60 | 60 |
差が出る点は2つです。1つは受取配当の区分で、仮に益金不算入が50%にとどまるなら、A社の追加課税は63×50%×30%=9.45、B社は77×50%×30%=11.55で、手取りはA社53.55、B社65.45、合計119です。税額合計は81で、LLPより21(140×50%×30%)多くなります。もう1つは時期で、LLPが利益を全額留保しても、A社27、B社33の税は同じ年に生じ、納税資金は組合員が用意します。
設例②:損失800百万円は、LLPでは出資額が上限になる
2年目に事業損失800(税引前)が出たとします。初年度の利益は同年中に全額分配済みで、A社・B社とも他事業で十分な課税所得があると仮定します。合同会社では損失は新会社に残り、A社・B社の税額は変わりません。新会社の欠損金は翌期以降に繰り越して損金に算入できますが、10年以内の期限、確定申告書の連続提出などの要件、所得の50%相当額という原則の限度があります14。
LLPでは損失が組合員に帰属し、A社は800×45%=360、B社は800×55%=440です。上限の「調整出資金額」は、出資の額に過年度に取り込んだ利益を加え、受けた分配を差し引いたものと要約できます(細則は施行令で確認してください)15。A社は600+90-90=600、B社は400+110-110=400で、図表3のとおりB社だけが上限に届きます。
| 項目 | A社 | B社 |
|---|---|---|
| 損失の帰属(800×配分) | 360 | 440 |
| 調整出資金額 | 600 | 400 |
| 当期の損金算入額 | 360 | 400 |
| 損金不算入(繰越) | 0 | 40 |
| 税の軽減額(30%) | 108 | 120 |
| 参考:上限なしの軽減額 | 108 | 132 |
B社の軽減額は120で、上限がなければ132ですから、12(超過40×30%)少なくなります。出資40%のB社に損失の55%を配分したためです。翌年に事業利益100が出れば、B社への帰属は55で、繰越の40はその範囲で損金に算入できます。検算として、新会社の純資産は両案とも1,000+200-200(LLPは分配、合同会社は税60と配当140)-800=200です。
意思決定と撤退:デッドロックの出方が違う
株式会社は取締役を置き、株主総会は定款に別段の定めがなければ、議決権の過半数を持つ株主が出席し、その過半数で決議します。持分会社では、社員が2人以上のときの業務は定款に別段の定めがなければ社員の過半数で決まり、法人が業務執行社員になるときは職務を行う者を選任します16。出資比率の異なる2社では、定款で議決権や拒否権を明確にしておくのが要点です(編集部の見解)。拒否権やExitの設計はJV設立契約に委ねます。
LLPは、業務執行の決定に総組合員の同意が要ります。重要な財産の処分・譲受けと多額の借財以外は、組合契約書で同意を要しない旨を定められます。各組合員は業務を執行する権利を持ち義務を負い、法人の組合員は職務を行うべき者を選任します17。1社の反対で決まらない場面が生じやすい形です。
撤退も違います。株式は原則として譲渡でき、合同会社の持分の譲渡は他の社員全員の承諾が原則、LLPの任意脱退はやむを得ない場合を除き認められません(いずれも定款・組合契約書で別段の定めが可能)18。売却による撤退を想定するなら、譲渡条件を設立時に定めておきます。
目的別の選び方:3つの問いで絞る
目的別には次のように整理できます(編集部の見解)。共同開発で成果を各社が持ち帰り、損失も各社で取り込みたいなら、LLPが候補です(損失の取り込みは出資額が上限)。将来の増資・上場・参加者の追加を見込む合弁事業なら、株式会社か、組織変更を前提にした合同会社です。買収SPCは、借入と株式保有の主体となる会社形態から検討します。買収ビークルの用語ページも、日本のLBOでは株式会社か合同会社が一般的としています。図表4が判断手順です。
デューデリジェンス(買収前の調査)では器ごとに確認資料が変わります。会社なら定款、登記事項、計算書類、LLPなら組合契約書、登記事項、財務諸表が中心です19。譲渡に承諾が要る器では、承諾の取得が取引の前提条件に入ります。持分法や連結の判定は出資比率だけで決まらないため、連結と持分法の記事を参照してください。
よくある間違いと設例の限界
よくある間違いは「LLPは構成員課税だから税が軽い」という理解と、LLPの損失を全額取り込める前提でモデルを組むことです。設例の税率30%は単純化で、実際は地方税や各社の状況で変わり、負債利子控除や保有期間の要件、組合員の属性でも結論が変わり得ます。スキーム全体の選択は
実務チェックリスト
- 目的と、将来の増資・上場・参加者追加の見込みを、器を決める前に書き出す
- 損益配分を出資比率と変えるなら、根拠となる寄与の内容を資料で説明できるか確認する(通達14-1-2の注1)
- 合同会社で利益と損失の配分を別々にしたいなら、一方だけの定めは両方に共通と推定される点(会社法622条2項)を定款に反映する
- 受取配当の保有区分(3分の1超か、5%以下か)を判定し、益金不算入額を試算する
- LLPなら、各組合員の調整出資金額と損失の帰属額を並べ、上限に届かないか確認する
- デッドロックの出方(社員の過半数、総組合員の同意、株主総会)と、拒否権・Exit条項の置き場所を決める
- 持分の譲渡・脱退の条件と組織変更の可否(合同会社→株式会社は可、LLPは対象外)を設立時に確認し、最終判断の前に税理士・弁護士へ照会する
よくある質問(F AQ)
LLPの組合員は法人でもよいですか。
なれます。職務を行うべき者を選任し、氏名と住所を他の組合員に通知します
合同会社から株式会社への組織変更は、自由にできますか。
組織変更計画を作り、定款に別段の定めがなければ総社員の同意を得ます
まとめ
株式会社・合同会社・LLPは、課税の主体、損益配分の手段、意思決定、撤退、組織変更で分かれます。学習用の設例では利益の年の税額は同じで、差は損失の年にLLPの出資額上限として現れました。選ぶ順序は、将来の資本政策、損失の取り込みの要否、LLPの要件の確認で、最後は条文と専門家への照会で確かめます。
脚注
- 2026年10月22日取得の現行版(施行日:会社法2026年8月12日、LLP法6月24日、法人税法10月1日、租税特別措置法・同施行令10月16日)。(R3〜R7)↩
- 会社法3条(会社は法人)、575条1項(持分会社の総称)、576条4項(合同会社は全社員が有限責任)、590条1項(社員が業務を執行)。(R3)↩
- LLP法3条1項(出資の価額を責任の限度とする組合契約)、15条(組合員の責任)。(R4)↩
- Wall Street Oasis「Limited Liability Partnerships (LLPs)」の「What Is A Limited Liability Partnership?」の節。規制と要件が管轄により異なると書かれている(一般的な概念の参考)。(R2)↩
- 会社法2条26号(組織変更の定義)、743条。LLP法の条文に「組織変更」の語はない(編集部が全文を検索)。(R3・R4)↩
- 会社法108条1項(種類株式)、109条1項・2項(株主平等と非公開会社の特例)、622条(持分会社の損益分配の割合)。(R3)↩
- LLP法33条(総組合員の同意による別段の定めがなければ、履行した出資の価額に応じる)。(R4)↩
- 法人税基本通達14-1-2の(注)1(分配割合が出資の価額を基礎とした割合と異なる場合の経済的合理性)。(R8)↩
- 法人税法2条3号(内国法人)、5条(各事業年度の所得に法人税を課す)。(R5)↩
- 法人税法23条1項(利益の配当を含む配当等の益金不算入と区分ごとの割合)、4項(関連法人株式等)、6項(非支配目的株式等)。完全子法人株式等の区分(5項)もある。(R5)↩
- Wall Street Oasis「Limited Liability Company (LLC)」の「Understanding Limited Liability Company (LLC)」の節(米国の一般的な概念の参考)。(R1)↩
- 法人税基本通達14-1-1とその(注)(有限責任事業組合を含む)、14-1-1の2。(R8)↩
- 租税特別措置法67条の13第1項(組合損失超過額の損金不算入)・第2項(組合事業の利益の額までの損金算入)。(R6)↩
- 法人税法57条1項(本文と、所得の50%相当額を限度とするただし書)、10項(確定申告書の連続提出等の要件)、11項(中小法人等の特例)。(R5)↩
- 租税特別措置法施行令39条の32第2項(調整出資金額)、第5項(組合利益額)。本文の要約は編集部による。(R7)↩
- 会社法309条1項、326条1項、590条2項、598条1項。(R3)↩
- LLP法12条1項、13条1項、19条1項。(R4)↩
- 会社法127条、585条1項・4項。LLP法25条。(R3・R4)↩
- 会社法617条(持分会社の計算書類)、LLP法31条(財務諸表の作成・備置き・閲覧)、57条(登記)。(R3・R4)↩
参考文献(2 026年10月確認)
- R1 Wall Street Oasis「Limited Liability Company (LLC)」(2025年7月30日更新と表示) wallstreetoasis.com (一般的な概念の参考。脚注11。閲覧日:2026年10月22日)
- R2 Wall Street Oasis「Limited Liability Partnerships (LLPs)」(2024年12月21日更新と表示) wallstreetoasis.com (一般的な概念の参考。脚注4。閲覧日:2026年10月22日)
- R3 会社法 laws.e-gov.go.jp (脚注1・2・5・6・16・18・19、FAQ。閲覧日:2026年10月22日)
- R4 有限責任事業組合契約に関する法律 laws.e-gov.go.jp (脚注1・3・5・7・17・18・19、FAQ。閲覧日:2026年10月22日)
- R5 法人税法 laws.e-gov.go.jp (脚注1・9・10・14。閲覧日:2026年10月22日)
- R6 租税特別措置法 laws.e-gov.go.jp (脚注1・13。閲覧日:2026年10月22日)
- R7 租税特別措置法施行令 laws.e-gov.go.jp (脚注1・15。閲覧日:2026年10月22日)
- R8 国税庁
「法 人税基本通達 第14章第1節第1款 組合事業による損益」 nta.go.jp (14-1-1〜14-1-2。脚注8・12。閲覧日:2026年10月22日)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための学習用の架空事例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。