この記事で分かること

  • 受取配当等の益金不算入制度の目的(法人間の配当二重課税の緩和)
  • 株式等の区分(完全子法人株式等・関連法人株式等・その他株式等・非支配目的株式等)ごとの不算入割合
  • 関連法人株式等の負債利子控除(4%みなし控除)の整数設例と検算
  • 持株会社・グループ経営における実務上のインパクト

30秒で分かる定義

受取配当等の益金不算入制度とは、法人が他の内国法人から受け取る配当について、株式の保有割合に応じた一定割合を法人税の課税所得(益金)に算入しないことで、法人段階での配当への二重課税を緩和する制度です。配当の原資となる利益にはすでに配当を支払う法人の段階で法人税が課されているため、受け取った法人でも全額課税すると同じ利益に二重に課税してしまう、という考え方に基づきます。

なぜ実務で重要なのか

持株会社・グループ経営企画では、子会社から親会社への配当がどこまで非課税になるかが、グループ内の資金還流設計(配当政策)に直結します。PEでは、買収後のSPCが対象会社から受け取る配当の実効税率への影響を、キャッシュフロー予測やLBOモデルの税金計算で織り込みます。税務・経理では、株式等の保有区分の判定(完全子法人株式等か関連法人株式等か)を誤ると、益金不算入額の計算が大きくずれます。

計算式(仕組み)

保有区分ごとに不算入割合と負債利子控除の有無が異なります。

区分保有割合・期間の目安不算入割合負債利子控除
完全子法人株式等100%保有・配当計算期間を通じて継続100%なし
関連法人株式等1/3超保有・6か月以上継続100%あり(配当の4%をみなし控除)
その他株式等5%超1/3以下50%なし
非支配目的株式等5%以下20%なし
関連法人株式等の益金不算入額 = 受取配当金額 -(受取配当金額 × 4%、ただし当期の関連法人株式等に係る配当総額の10%を上限)

整数設例で確認する

設例(架空数値・単位:万円)。持株会社Pが子会社Sの発行済株式の40%を6か月超保有しており(関連法人株式等に該当)、Sから配当1,000を受け取ったとします。

負債利子のみなし控除額=1,000×4%=40。上限(当期の関連法人株式等に係る配当総額の10%=1,000×10%=100)を下回るため、40がそのまま控除額です。

益金不算入額=1,000-40=960。課税所得に算入される金額(益金算入額)は40のみです。仮に非支配目的株式等(保有5%以下)からの同額の配当であれば、不算入額は1,000×20%=200、益金算入額は1,000-200=800となり、保有区分によって課税所得への影響が大きく異なることが分かります。

PL・BS・CFへの影響

会計上は受取配当金の全額をPLの営業外収益(または関係会社受取配当金)に計上し、益金不算入はあくまで税務申告上の申告調整(別表四での減算)です。したがって実効税率を計算する際、会計上の税引前利益に対して法人税等の負担割合が法定実効税率より低くなる要因(永久差異)として現れます。CFへの直接影響はなく、あくまで法人税の納付額を減らす効果として現れます。

実務での調べ方・確認手順

  • 株式等の区分判定:保有割合(100%/1/3超/5%超1/3以下/5%以下)と、配当計算期間を通じた継続保有の有無を確認する
  • 関連法人株式等に該当する場合は、負債利子のみなし控除(4%、配当総額の10%上限)を適用し、法人税申告書別表八(一)等で計算過程を明示する
  • 実効税率分析では、受取配当等の益金不算入額を永久差異として法定実効税率との差異調整表に反映する

この用語を実務で「使える」状態にする

保有区分ごとの益金不算入割合を実効税率のブリッジ分析に組み込めるようになる。

会計実務教材で実装手順を見る →

実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「グループ会社からの配当は常に全額非課税」→ 正しくは、完全子法人株式等・関連法人株式等(負債利子控除後)は実質ほぼ全額非課税ですが、保有割合が低い区分では課税部分が大きくなります。

誤解2:「保有割合さえ満たせば区分は自動的に決まる」→ 正しくは、関連法人株式等の判定には保有割合に加えて配当計算期間を通じた継続保有(6か月以上)という期間要件もあります。期中の株式取得・売却があると区分が変わる点に注意が必要です。

日本実務での扱い(2026年8月時点)

この制度は法人税法に定められ、平成27年度(2015年度)税制改正で株式等の区分が現行の4区分に再編されて関連法人株式等の保有割合要件が3分の1超とされ、その後の令和2年度(2020年度)税制改正で負債利子控除が実際の支払利子を配賦する方式から配当の4%相当額(上限あり)とするみなし控除方式に簡素化されました。持株会社形態を採るグループでは、子会社からの配当がグループの資金還流・還元原資の中核となるため、この制度の理解はグループ税務・資本政策の基礎知識として位置づけられます。法人税と配当の二重課税の緩和策の中でも、法人間配当に特化した仕組みです。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:持株会社が子会社から受け取る配当について、税務上どのような取扱いになりますか。
「保有割合と保有期間に応じて益金不算入割合が変わります。完全子会社であれば全額不算入、1/3超保有かつ6か月以上継続保有の関連法人株式等であれば、配当の4%相当(上限あり)を除いた金額が不算入となり、実質的にほぼ非課税になります。これは配当を支払う子会社側ですでに法人税が課税されていることによる二重課税の緩和措置です。」

深掘りでは「なぜ完全子法人株式等には負債利子控除がないのか」「保有割合が期中に変動した場合の区分判定」が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. 外国子会社からの配当も対象ですか?
A. 本制度は内国法人からの配当が対象です。外国子会社からの配当については別途、外国子会社配当益金不算入制度という異なる枠組みがあります。

Q. 益金不算入は会計上の仕訳に影響しますか?
A. 影響しません。受取配当金は会計上そのまま収益計上し、益金不算入は法人税申告書上の申告調整(別表四での減算)としてのみ処理されます。

出典・参考(2026-08確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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