この記事で分かること
- PLの法人税等とCFの「法人税等の支払額」が一致しない理由を、未払法人税等の増減と中間納付で説明する方法
- 期首残高+当期税額-中間納付-確定納付=期末残高のロールフォワード表と、PLとCFの差を埋める調整表の作り方
- 学習用の架空事例(増益・減益・赤字転落の3期)で、支払額が900・1,350・525百万円になる計算と、現金税率が実効税率から離れる仕組み
想定読者:経理・FP&A(予算と計画の管理)の担当者、三表モデル(PL・BS・CFが連動する予測モデル)を組む学習者
前提知識:PL・BS・CFの基本と、間接法のCF計算書の見方(本文で短く補います)
結論:支払額は「当 期の税額」ではなく、残高の動きで決まる
三表の予測モデルで、PLの法人税等をそのままCFに流し、BSの未払法人税等と合わなくなったことはないでしょうか。結論から言うと、CFの法人税等の支払額は、PLの法人税等から未払法人税等の増加額を引いた金額になります。この関係は、期首の未払法人税等(前期の確定税額のうち未納の分)と、期中の中間納付が決める残高の動きを追って初めて予測できます。
以下は学習用の架空事例です。部品メーカーX社(3月決算、日本基準・単体の簡易モデル、単位は百万円)の法人税等は、増益のFY1で1,200、減益のFY2で750、赤字転落のFY3で0です。ところが現金の支払額は、順に900、1,350、525になります(図表3)。減益の年に支払いが増え、赤字の年にも支払いが出るのは、中間納付が前年度の税額で決まり、前期末の未払が翌期の確定納付になるためです。税率30%は計算を追いやすくする学習用の仮定で、実際の税率ではありません。
対象時点は2026年10月です。法人税等を1つの税率にまとめた単体の簡易モデルで、連結やグループ通算制度、繰越欠損金、地方税ごとの中間納付の取扱いは扱いません。
法人税等の4つの顔:PL・BS・CFでの現れ方
同じ「法人税等」でも、表によって別の数字です。PLでは、法人税・住民税・事業税(所得割)などの当期の負担額を、税引前当期純利益の次に表示します1。PLの法人税等の合計は、この当期税額に、税効果会計の法人税等調整額(繰延税金資産・負債の増減による調整で、現金を伴わない。別の行に表示)を加えたものです。調整額の詳細は繰延税金の記事に委ね、設例では0と置きます。
BSでは、納付されていない税額を流動負債の区分に未払法人税等などの科目で表示し、中間納付が確定税額を上回って還付される場合の未受領分は、流動資産の区分に未収還付法人税等などの科目で表示します2。中間納付を一時的に置く勘定(仮払法人税等など)の名前は企業ごとに違うため、本稿は期末に当期税額と相殺して1本にまとめて扱います。
CFでは、法人税等に係るキャッシュ・フローを営業活動の区分に記載します。間接法(税引前の利益から非資金項目と資産・負債の増減を加減して営業CFを求める方式)の標準様式は、税金等調整前当期純利益から始め、「小計」の下に「法人税等の支払額」を独立の行として置きます3。個別のCF計算書も連結に準じて作成します。日本の開示様式では、PLの法人税等はCFの調整項目に現れず、支払額だけが出ます。
一般論としても、損益計算書の税費用と貸借対照表の未払税額は別の概念で、未払分は流動負債です4。これは発生主義と現金主義の差そのものです。
図表1のとおり、PLの当期税額1,200は未払法人税等に加わり、期中の2回の納付が出ていきます。CFに現れるのは、その合計900だけです。期末の750は翌期の確定納付になります。
年次の日本実務:確定納付と中間納付のタイミング
確定申告書は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内に提出し、納付すべき税額は提出期限までに納付します。3月決算なら期限は5月31日です5。期末の時点で、当期税額から中間納付額を引いた残りは、まだ払っていない税額です。これが期末の未払法人税等で、翌期の確定納付になります。
事業年度が6か月を超える普通法人は、原則として事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内に中間申告書を提出します。中間申告には、「前年度実績を基準とする中間申告(予定申告)」と「仮決算に基づく中間申告」の2種類があり、いずれかを選べます。前者の中間分の税額は、前事業年度の法人税額を前事業年度の月数で割り、中間期間の月数を掛けた金額です。3月決算で前期と同じ12か月なら、前期の確定税額×6/12になります。算式の金額が10万円以下、または金額がない場合は、中間申告書の提出は必要ありません6。4月開始の事業年度では、期限は11月末になります(編集部の計算)。
前年度実績基準を選ぶと、中間納付は当期の利益ではなく前期の確定税額で決まり、確定納付は前期末の未払法人税等そのものになります。当期の利益の増減は期末の未払法人税等だけを動かし、その差が次の期の確定納付に回ります。
設例:未払法人税等のロールフォワード表
X社の入力は次のとおりです(すべて学習用の仮定)。税引前利益はFY0が3,000、FY1が4,000、FY2が2,500、FY3が△1,000です。税率は30%で、法人税等調整額は0とします。損失の年は簡便に当期税額を0と置きます。FY0の当期税額は3,000×30%=900で、FY0に払った中間納付は450(前々期の税額900の半分)と仮定します。したがってFY1の期首の未払法人税等は、FY0の確定税額900から中間納付450を引いた450です。
ロールフォワードの式
期末の未払法人税等=期首残高+当期税額-中間納付(前期の確定税額×6/12)-確定納付(期首の未払法人税等)
残高の動きを期首から期末へ順に並べる表を、ロールフォワード表(期首残高に増加を足し減少を引いて期末残高を求め、翌期の期首に渡す表)といいます。FY1で計算すると、中間納付は900×6/12=450、確定納付は期首の450、期末は450+1,200-450-450=750です。FY2の中間納付はFY1の確定税額1,200の半分で600、確定納付は750、期末は750+750-600-750=150になります。
| 項目 | FY1(増益) | FY2(減益) | FY3(赤字転落) |
|---|---|---|---|
| 税引前利益 | 4,000 | 2,500 | △1,000 |
| 期首残高(前期末の未払) | 450 | 750 | 150 |
| +当期税額(税引前利益×30%、損失は0) | +1,200 | +750 | +0 |
| -中間納付(前期の確定税額×6/12) | -450 | -600 | -375 |
| -確定納付(期首残高の納付) | -450 | -750 | -150 |
| 期末残高(BSの未払法人税等) | 750 | 150 | △375(未収還付) |
図表2の読み方です。FY1の期末750は、FY2の期首残高と確定納付に現れます。FY2は減益で当期税額が750に下がりましたが、期首の750がそのまま確定納付に出るため、期末残高は150まで減ります。FY3は赤字で当期税額が0ですが、中間納付375はFY2の確定税額750の半分として出ていきます。期末は150+0-375-150=△375となり、負の残高になります。
負の残高は未収還付法人税等(流動資産)に当たります。基準は、還付されるとき受領されていない分を資産に表示するとしています7。法人税法は、確定申告書に中間納付額の控除不足額を記載した場合に、その中間納付額を還付すると定めています8。ただし地方税を含む実際の還付額と入金の時期は個別の事情によるため、設例では全額が還付されるという学習用の仮定で資産に残し、入金の時期は置きません。
PLとCFのズレを調整表で説明する
次に、PLの法人税等とCFの支払額を並べます。式は単純で、支払額=PLの法人税等-未払法人税等の増加額です。
| 項目 | FY1(増益) | FY2(減益) | FY3(赤字転落) |
|---|---|---|---|
| (a)PLの法人税等 | 1,200 | 750 | 0 |
| (b)未払法人税等の増減(期末-期首) | +300 | △600 | △525 |
| (c)CFの法人税等の支払額(a-b) | 900 | 1,350 | 525 |
| 検算:中間納付+確定納付 | 450+450 | 600+750 | 375+150 |
| 税引前利益 | 4,000 | 2,500 | △1,000 |
| 実効税率(a÷税引前利益) | 30.0% | 30.0% | 算出しない |
| 現金税率(c÷税引前利益) | 22.5% | 54.0% | 算出しない |
FY1は、1,200-300=900です。FY2は750-(△600)=1,350、FY3は0-(△525)=525で、いずれも図表2の中間納付と確定納付の合計と一致します。3期合計では、PLの法人税等1,950に対し支払額は2,775で、差の825は期首の未払450とFY3期末の△375の差に等しくなります。
三表への接続は2通りあります。税引前利益から始めて支払額を引く日本の開示様式では、FY1の税金に関わる部分は4,000-900=3,100です。純利益から始める形では、当期純利益2,800に未払法人税等の増加額300を足して3,100になり、一致します。FY2は2,500-1,350=1,150と1,750+(△600)=1,150、FY3は△1,525で一致します(税金以外の調整項目は置いていません)。この一致を確かめる行は、キャッシュフロー調整表(営業CFが現金の増減と合うかを突き合わせる表)の考え方と同じで、三表整合性チェックの1項目にもなります。
法人税等調整額は別に扱います。たとえばFY2に調整額40(費用)があると、PLの法人税等は790、当期純利益は1,710ですが、未払法人税等は150、支払額は1,350のままです。純利益から始める形では非資金の調整額40を足し戻し、1,710+40+(△600)=1,150となって一致します。調整額は未払の増減とは別の行に置きます。
現金税率と実効税率の差を読む
実効税率は、PLの法人税等(調整額を含む)を税引前当期純利益で割った会計上の負担率です。実効税率の法定税率との差の分解は実効税率分析の記事に委ね、本稿は支払額を税引前利益で割った現金税率を並べて比べます。現金税率は本稿で便宜的に使う編集部の用語で、公式な指標ではありません。分母は税引前利益(法人税等を引く前の利益)です。
図表4のとおり、実効税率はFY1・FY2とも30.0%で変わりません。現金税率は、増益のFY1で22.5%(実効税率より7.5ポイント低い)、減益のFY2で54.0%(24.0ポイント高い)に動きます。FY3は税引前損失△1,000に対して525を払うため、率は意味を持たず、金額で見ます。
この差の原因は、少なくともこの設例では、支払いの時間差だけです。税率は一定で、永久差異(損金に入らない費用など)も繰延税金もないからです。実際の開示資料では、これに税率差異や繰延税金が重なります。現金税率が低い年を「節税に成功した」と読むのは誤りで、増益の年に低く出るのは、前期の低い税額を基準に支払う構造の結果です。
仮決算を選ぶと支払額が変わります。FY2の上期の税引前利益が1,300(仮定)なら、税額は1,300×30%=390で、算式の金額600を超えないため提出できます9。中間納付が390になると、FY2の期末の未払法人税等は750+750-390-750=360、支払額は390+750=1,140、現金税率は45.6%です。
予測モデルへの実装手順と、よくある間違い
税金行は、次の順に並べると、BSとCFが自然に一致します。
- 税引前利益を出す。
- 当期税額を求める(税引前利益×税率。損失年度の扱いを前提として明記する)。
- 中間納付を求める(前期の確定税額×6/12。前期の当期税額の列を参照する)。
- 確定納付を求める(前期末の未払法人税等を参照する)。
- 期末の未払法人税等を求める(期首+当期税額-中間納付-確定納付)。これをBSに送る。
- CFの法人税等の支払額を求める(中間納付+確定納付)。
- 検算行を置く。「PLの法人税等-未払の増加額-CFの支払額=0」が全期で0になること。
よくある間違いは3つあります。PLの法人税等をそのままCFに流してBSと現金がずれること、現金が合わないとき差額で埋める調整行(プラグ)を置くこと、前年度実績基準なのに中間納付へ当期の利益を使うことです。ずれは検算行に出し、原因を残高の動きから探します。
月次の資金繰りへの置き方は月次資金繰り表の記事に、繰越欠損金の扱いはタックスモデリングの記事に委ねます。
実務チェックリスト
- PLの法人税等、BSの未払法人税等、CFの支払額が別の数字であることを、調整表(a-b=c)で説明できる。
- 中間納付の前提(前年度実績基準か仮決算か)を入力欄に書き、前年度実績基準なら前期の確定税額と事業年度の月数を基準にしている。
- 確定納付が前期末の未払法人税等と一致している。
- 損失年度や、中間納付が確定税額を上回る年度の扱い(未収還付法人税等にするか、ゼロにするか)を明記している。
- 法人税等調整額が非資金項目として別の行にあり、未払法人税等の増減に混ざっていない。
- 差額で埋める行(プラグ)がなく、検算行が全期で0になっている。
よくある質問(F AQ)
前期が赤字だった会社の、当期の中間納付はどうなりますか。
前年度実績基準の算式は前事業年度の法人税額を基準にするため、前期の確定税額が0なら算式の金額がなく、国税庁の手引では中間申告書の提出は必要ないとされています。この場合は中間納付が0になり、当期の支払いは期首の未払分だけで、当期税額の全額が期末に残るため、現金税率は実効税率を大きく下回ります。
連結や、グループ通算制度を適用する会社でも同じ表を使えますか。
本稿は単体の簡易モデルです。連結や同制度では対象となる税額の範囲や処理が単体と異なり得るため、そのまま当てはめられません。
設例の30%は、実際に使える税率ですか。
使えません。計算を追いやすくする学習用の仮定です。防衛特別法人税や地方税の中間納付など、個別の税目の論点は本稿で確認していません。
まとめ
CFの法人税等の支払額は、PLの法人税等から未払法人税等の増加額を引いた金額です。未払法人税等は、期首残高+当期税額-中間納付-確定納付というロールフォワード表で追えます。設例では、増益の年の現金税率は実効税率より低く、減益の年は高くなり、赤字の年にも前期の税額に基づく支払いが出ました。予測モデルでは、税金行を当期税額、中間納付、確定納付、期末未払、CFの支払額の順に組み、検算行で全期のズレが0になることを確認します。
脚注
- 企業会計基準第27号の項9。法人税、地方法人税、住民税、事業税(所得割)及び特別法人事業税(基準法人所得割)は、損益計算書の税引前当期純利益(又は損失)の次に「法人税、住民税及び事業税」等の適切な科目をもって表示するとある(参考文献 R1。2025年3月改正版)。↩
- 同基準の項11・項12。納付されていない税額は貸借対照表の流動負債の区分に未払法人税等などの科目で表示し、中間申告で納付した税額を下回る場合等により還付されるとき、受領されていない税額は流動資産の区分に未収還付法人税等などの科目で表示するとある(参考文献 R1)。同基準を「法人税等に関する会計基準」へ改称する改正が2026年7月7日に公表されたが、本稿は2025年3月改正版の文言による(参考文献 R2)。↩
- 企業会計審議会「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」第二の二の2(営業活動の区分に記載)、第三の一(間接法の定義)、様式2(「小計」の下に「法人税等の支払額」)、キャッシュ・フロー計算書作成基準(個別は連結に準じる)(参考文献 R3)。↩
- Corporate Finance Institute「Income Tax Payable」。未払の税額は流動負債であること、income tax expense と income tax payable は別の概念であることのみを一般的な概念の参考とした。米国の税目を合算する手順や、税費用を実際の支払額とみなす趣旨の記述は採用していない(参考文献 R4)。↩
- 国税庁「法人税のあらましと申告の手引」(令和7年10月)13ページ「⑴ 確定申告」。原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内に提出し、期限までに納付する旨と、3月決算の例(X.5.31)がある(参考文献 R5)。↩
- 同手引16ページ「⑵ 中間申告」。提出期限、2種類の選択、前年度実績基準の算式、10万円以下等は提出不要であること、提出期限までの納付が記載されている。11月末は編集部が数えたもの(参考文献 R5)。↩
- 同基準の項12。表示の定めであり、還付の時期は定めていない(参考文献 R1)。↩
- 法人税法第79条第1項(中間納付額の還付)。中間申告書を提出した普通法人の確定申告書に中間納付額の控除不足額の記載があるとき、その中間納付額を還付するとある。地方税は確認していない(参考文献 R6)。↩
- 国税庁「法人税のあらましと申告の手引」16ページ。仮決算に基づく中間申告は、仮決算をした場合の法人税の額が前年度実績基準の算式で計算した金額を超えるときは提出できない(参考文献 R5)。↩
参考文献(2 026年10月確認)
- R1 企業会計基準委員会「企業会計基準第27号 法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(2017年3月16日公表、2025年3月改正) asb-j.jp (参照箇所:項9・項11・項12。脚注1・2・7の根拠。閲覧日:2026年10月13日)
- R2 企業会計基準委員会「改正企業会計基準第27号『法人税等に関する会計基準』等の公表」(2026年7月7日) asb-j.jp (参照箇所:公表の趣旨と名称変更の記述。脚注2の根拠。閲覧日:2026年10月13日)
- R3 企業会計審議会
「連 結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」(金 融庁掲載) fsa.go.jp (参照箇所:第二の二の2、第三の一、標準的な様式、キャッシュ・フロー計算書作成基準。脚注3の根拠。閲覧日:2026年10月13日) - R4 Corporate Finance Institute「Income Tax Payable」 corporatefinanceinstitute.com (未払税額と税費用が別の概念であることなど、一般的な概念の参考。脚注4の根拠。閲覧日:2026年10月13日)
- R5 国税庁
「法 人税のあらましと申告の手引」(令 和7年10月) nta.go.jp (参照箇所:13ページ「⑴ 確定申告」、16ページ「⑵ 中間申告」。脚注5・6・9の根拠。閲覧日:2026年10月13日) - R6 e-Gov法令検索
「法 人税法(昭 和四十年法律第三十四号)」 laws.e-gov.go.jp (参照箇所:第79条第1項(中間納付額の還付)。脚注8の根拠。閲覧日:2026年10月13日)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための学習用の架空事例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。