この記事で分かること
- 返済予定表から「決算日の翌日から1年以内に返す元本」だけを拾い、長期借入金を「1年内返済予定」と「長期(1年内を除く)」に分ける手順(元金均等・元利均等・期限一括の3方式)
- 学習用の架空事例のX社で、組替えにより流動比率と正味運転資本は下がる一方、有利子負債の合計は変わらないことを検算する方法
- 翌期末にC銀行の期限一括返済500百万円が流動側へ入る様子と、返済表とBSの突合せ、利息を含めてしまうなどのよくある誤り
想定読者:決算書や予算BSを作る経理・財務の担当者、取引先の財務数値を見る金融機関・コンサルティングの若手
前提知識:貸借対照表の流動・固定の区分と、流動比率(流動資産÷流動負債)の計算式。
結論:決算日から1年以内に返す「元 本」だけを、固定負債から流動負債へ移す
長期借入金の返済予定表はあるのに、BSでは長期借入金の残高を全額そのまま固定負債に置いている、という作りになっていないでしょうか。借入金のうち、決算日の翌日から1年以内に返済期限が来る元本は、固定負債の長期借入金から流動負債の「1年内返済予定の長期借入金」へ移して表示します。移すのは元本だけで、利息は含めません。
本記事は、学習用の架空事例の部品メーカーX社(実在の企業ではありません。単位は百万円、決算日は20X1年3月31日、日本基準の個別BS)でこの組替えを追います。結論は次の3点です。
- 3本の長期借入金(総残高2,030百万円)のうち、1年内に返す元本は300百万円で、流動負債が同額増え、固定負債が同額減ります。
- 流動比率(流動資産を流動負債で割った、短期の支払能力の指標)は153.8%から125.0%へ下がります。
- 現金も有利子負債の合計も、返す総額も変わりません。変わるのはBS上の見え方です。
1年基準と、借入金の3つの区分
貸借対照表の流動・固定の区分の考え方はBSの読み方で扱っています。借入金については、企業会計原則注解の注16は、借入金などの債務のうち「貸借対照表日の翌日から起算して1年以内に」支払の期限が到来するものを流動負債とし、1年を超えて到来するものを固定負債とすると定めています1。
財務諸表等規則(以下「規則」)は、短期借入金を流動負債の区分表示の項目に、長期借入金を固定負債の区分表示の項目に挙げています2。借入金は、実務上は次の3つに分かれます。
- 短期借入金:返済期限が1年以内の借入金(流動負債)。
- 1年内返済予定の長期借入金:長期の借入金のうち、1年以内に返済期限が来る元本(流動負債)。
- 長期借入金(1年内を除く):返済期限が1年を超えて来る部分(固定負債)。
有価証券報告書に付く借入金等明細表の様式も、この3区分を別々の行にしています。短期借入金、「1年以内に返済予定の長期借入金」、「長期借入金(1年以内に返済予定のものを除く。)」の順です。同じ様式の記載上の注意には、長期借入金には「貸借対照表において流動負債として掲げられているもの」を含めて記載するとあります3。以下、1年内を含む長期借入金の合計を「長期借入金の総残高」と呼びます。
なお、制度の記述は2026年10月時点で確認した版に基づき、日本基準の個別財務諸表を想定しています。IFRSや中小企業向けの指針・要領は確認していません。
返済予定表から1年内の元本を拾う手順
X社の長期借入金は3本です。A銀行は元金均等、B銀行は元利均等で月次返済、C銀行は期限一括です。決算日(20X1年3月31日)の翌日から起算して1年以内、つまり決算日の1年後の応当日である20X2年3月31日までに返済期日が来る元本を、借入先ごとに拾います。
- 元金均等(毎回返す元本が一定。分割返済の代表的な形):1回の元本×12か月内の回数です。A銀行は決算日残高900百万円で、四半期ごとに元本45百万円を返します。45×4回=180百万円です。
- 元利均等(毎回の元本と利息の合計額が一定):12か月内の返済額のうち、元本部分の合計です。B銀行は決算日残高630百万円、年利2.4%(月利0.2%)、残り60か月です。月額の返済額は630×0.002÷(1−1.002の−60乗)≒11.153百万円で、12回の合計は約133.8百万円です。この中には利息が約13.8百万円含まれています。元本部分は、12回返済した後の残高を使って630−509.968≒120.0百万円と求めます。
- 期限一括(途中の元本返済がなく、満期に全額を返す):満期が12か月以内なら全額、そうでなければゼロです。C銀行は残高500百万円、満期は20X3年3月31日で、決算日の24か月後なので、今回の切出し額はゼロです。
月額に12を掛けると利息まで混ざるため、返済表(作り方はデットスケジュールの組立て)の元本列を決算日後12回分足します。発生済みの利息は元本とは別で、決算日までの未払分は未払費用として流動負債に入ります4。
図表1は拾い方の一覧です。B銀行の元本部分120.032百万円は百万円未満を四捨五入して120百万円とし、図表1〜4と翌期末の計算はこの整数でつなぎます。そのため1年超の残高510百万円は、正確な値509.968百万円より0.032百万円大きくなります。
| 借入先 | 返済方式 | 決算日残高 | 12か月内の元本 | 1年超の残高 |
|---|---|---|---|---|
| A銀行 | 元金均等(四半期45×4) | 900 | 180 | 720 |
| B銀行 | 元利均等(月次・元本部分のみ) | 630 | 120 | 510 |
| C銀行 | 期限一括(満期20X3年3月31日) | 500 | 0 | 500 |
| 合計 | 2,030 | 300 | 1,730 |
図表1のとおり、1年内返済予定は300百万円(A銀行180+B銀行120+C銀行0)、1年超の残高は1,730百万円(720+510+500)で、両者を足すと総残高の2,030百万円に戻ります。
BS組替表:流動負債が増え、固定負債が同額減る
組替前は全額が固定負債にある長期借入金2,030百万円から、300百万円を「1年内返済予定の長期借入金」として流動負債へ移したのが図表2です。短期借入金300百万円は動かしません。
| 科目 | 組替前 | 組替後 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 700 | 700 | 0 |
| 未払金・未払費用 | 200 | 200 | 0 |
| 未払法人税等 | 100 | 100 | 0 |
| 短期借入金 | 300 | 300 | 0 |
| 1年内返済予定の長期借入金 | 0 | 300 | +300 |
| 流動負債合計 | 1,300 | 1,600 | +300 |
| 長期借入金(組替後は1年内を除く) | 2,030 | 1,730 | ▲300 |
| 退職給付引当金 | 150 | 150 | 0 |
| 固定負債合計 | 2,180 | 1,880 | ▲300 |
| 負債合計 | 3,480 | 3,480 | 0 |
| 純資産合計 | 2,520 | 2,520 | 0 |
| 有利子負債合計(短期+1年内+長期) | 2,330 | 2,330 | 0 |
図表2の検算は2つです。負債合計3,480と純資産合計2,520の和は、資産合計6,000に一致します。短期借入金300+1年内返済予定300+長期借入金1,730で、有利子負債は組替前も組替後も2,330です。
流動比率と正味運転資本の検算
X社の流動資産は、現金預金500、売掛金750、棚卸資産650、その他流動資産100の合計2,000百万円で、組替えでは動きません。
流動比率と正味運転資本
流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100 / 正味運転資本=流動資産−流動負債
| 項目 | 組替前 | 組替後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 流動資産 | 2,000 | 2,000 | 0 |
| うち現金預金 | 500 | 500 | 0 |
| 流動負債 | 1,300 | 1,600 | +300 |
| 流動比率(2,000÷流動負債) | 153.8% | 125.0% | ▲28.8ポイント |
| 正味運転資本(2,000−流動負債) | 700 | 400 | ▲300 |
| 有利子負債合計 | 2,330 | 2,330 | 0 |
図表3のとおり、流動比率は2,000÷1,300=153.8%から、2,000÷1,600=125.0%へ、28.8ポイント下がりました。正味運転資本(本記事では流動資産−流動負債)は700から400へ300百万円減り、組替額300と一致します。流動資産が動かないためです。
この「正味運転資本」は、売掛金+棚卸資産−買掛金で求める事業性運転資本(営業活動に関わる運転資本。運転資本の記事)とは別の概念です。X社の事業性運転資本は750+650−700=700で、組替えの前後で変わりません。
読み方は2つあります。まず、これは返済期日が近づいた分を流動側へ移した結果で、新しい借入や返済ではありません。キャッシュフローの面では、流動・固定のどちらに分類しても現金の動きは変わらないという一般的な考え方が、海外の入門解説にも書かれています5。次に、流動比率が下がったことから財務の実態が悪化したとは言えません。返済期日が来る元本を、その期の営業キャッシュフローなどでどれだけ賄えるかは別の物差しで、DSCR(元利金返済カバー率。一定期間のキャッシュフローが元利金の返済額の何倍か)で見ます。
翌期末に、期限一括の借入が流動側へ入る
組替表は期末ごとに作り直します。「期首+増加−減少=期末」のロールフォワード表で期末の総残高を求め、あらためて1年内を切り出します。
次に20X2年3月31日時点です。A銀行の残高は900−180=720百万円で、翌12か月の返済も同じ180百万円なので、長期側は720−180=540百万円です。B銀行の残高は630−120=510百万円です(図表1と同じく整数でつなぎます)。翌12か月の元本部分は122.944で、四捨五入して123百万円、長期側は510−123=387百万円です。C銀行の500百万円は、満期の20X3年3月31日が20X2年3月31日の翌日から起算して12か月目の最終日に当たり、「1年以内」に入るため、全額が1年内返済予定になります。
この結果、1年内返済予定は180+123+500=803百万円、長期(1年内を除く)は540+387=927百万円で、和の1,730百万円は、前期末の総残高2,030から当期の返済300を引いた額に一致します。図表4は、この2時点の総残高が、1年内と長期にどう分かれるかを描いたものです。
図表4のとおり、総残高は減る一方、1年内返済予定は300から803へ増えます。増加額503のうち500はC銀行の期限一括返済で、満期が1年以内に入った時点で一気に流動側へ移ります。満期の壁(償還の集中)がBSの流動負債に表れる場面です。借換えはリファイナンス分析で扱っています。
返済表とBSの突合せ、よくある誤り、金融機関の見方
組替えが正しいかは、返済表とBSの間で次の2点が合うかで確かめます。
- 翌期の約定返済額(元本)が、当期末の1年内返済予定に一致する(X社は20X2年3月期の返済A180+B120=300で、20X1年3月31日の1年内返済予定300に一致)。
- 1年内返済予定と長期(1年内を除く)の和が、返済表の借入先合計に一致する(300+1,730=2,030)。
規則は、金利の負担を伴う長期借入金などについて、返済予定額を一定の期間に区分して注記するよう定め、借入金等明細表に記載されている場合はその旨の注記で代えられるとしています。様式の注意書きでは、1年以内に返済予定のものを除く長期借入金などについて、貸借対照表日後5年内の1年ごとの返済予定額を注記します6。
よくある誤りは次のとおりです。
- 利息を含める:B銀行の12回分の返済額133.8百万円を使うと、元本部分120.0百万円より約13.8百万円多くなります。切り出すのは元本です。
- 短期借入金と混同する:最初から返済期限が1年以内の借入金は、切り出しの対象ではなく、そのまま短期借入金です。
借換えの見込みがある場合、注16が区分の基準として書いているのは支払の期限で、借換えの見込みは条件に書かれていません7。借換えの合意が済んでいる場合や、財務制限条項に抵触して期限の利益を失った場合(財務制限条項の記事で入口を扱っています)の区分の取扱いは、会計基準や監査上の取扱いで個別に確認する必要があり、本記事では確認していません。
金融機関の側から見ると、組替後の流動比率125.0%は返済期日が近づいた分が流動側に入った数字で、先に見るのは1年内の300百万円の返済原資と、翌期以降に集中する満期の有無です。
実務チェックリスト
- 返済予定表の日付が、決算日の翌日から12か月以内(決算日の応当日まで)に収まるものだけを集計したか。
- 元利均等の借入は、返済額ではなく元本部分だけを使ったか(利息が混ざっていないか)。
- 組替後の流動比率と正味運転資本を、組替前と並べて変化額を確かめたか(変化額が組替額と一致するか)。
- 翌期の約定返済額が、当期末の1年内返済予定と一致するか。
よくある質問(F AQ)
決算日が月末でなく、返済日が月の途中の場合、12か月はどう数えますか。
決算日の翌日から、決算日の1年後の応当日までに到来する返済日を数えます。たとえば決算日が20X1年3月20日、返済日が毎月25日なら、20X1年3月25日から20X2年2月25日までの12回です。20X2年3月25日は含めません。
据置期間がある借入は、どう切り出しますか。
据置期間中は元本の返済がないので、据置明けの最初の返済日が12か月以内に入るかで決めます。入るならその日以降の元本を数え、入らなければゼロです。
まとめ
1年内返済予定の長期借入金は、返済予定表から決算日の翌日以降12か月の元本だけを拾い、固定負債から流動負債へ移して作ります。X社では300百万円を移すと流動比率は下がりましたが、現金も有利子負債の合計も変わりません。翌期末にはC銀行の500百万円が流動側へ入るので、組替表は期末ごとに更新し、返済表の翌期返済額と突き合わせます。
脚注
- 企業会計審議会「企業会計原則注解」〔注16〕「流動資産又は流動負債と固定資産又は固定負債とを区別する基準について」。第2段落に、貸付金、借入金などの債権及び債務で「貸借対照表日の翌日から起算して1年以内に入金又は支払の期限が到来するものは、流動資産又は流動負債に属するものとし、入金又は支払の期限が1年をこえて到来するものは、投資その他の資産又は固定負債に属するものとする」とある(参考文献 R1)。↩
- 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 第49条第1項第3号(流動負債の区分表示に「短期借入金」)、第51条(固定負債の範囲に「長期借入金」)、第52条第1項第2号(固定負債の区分表示に「長期借入金」)。第49条第2項は、各号の項目に属する負債で別に表示することが適当なものを、別の科目で掲記することを妨げないと定める。2026年10月13日に確認した施行版(2026年8月7日施行の改正を反映)による(参考文献 R2)。↩
- 同規則 様式第十三号「借入金等明細表」。区分は短期借入金、1年以内に返済予定の長期借入金、1年以内に返済予定のリース負債、長期借入金(1年以内に返済予定のものを除く。)などの順で、記載上の注意1に「長期借入金(貸借対照表において流動負債として掲げられているものを含む。以下同じ。)」とある。同規則第121条第4項により、連結財務諸表を作成している財務諸表提出会社は、この明細表の作成を要しない(参考文献 R2・R3)。↩
- 同規則 第48条「未払費用及び前受収益は、流動負債に属するものとする。」決算日までに発生した借入金の利息の未払分を未払費用に含めることは、この条文を前提にした編集部の整理であり、条文が「利息」を名指ししているわけではない(参考文献 R2)。↩
- Corporate Finance Institute「Current Portion of Long-Term Debt」。長期債務のうち1年以内に期限が来る部分を分けて示すこと、デットスケジュールから算出すること、キャッシュフローの面では流動・非流動の分類による影響はないことが書かれている。一般的な概念の参考であり、日本の制度や比率の見え方の根拠にはしていない(参考文献 R4)。↩
- 同規則 第8条の6の2第9項(社債、長期借入金などで金利の負担を伴うものについて、返済予定額の合計額を一定の期間に区分した金額の注記。社債明細表・借入金等明細表に記載がある場合はその旨の注記で代えられる)と、様式第十三号の記載上の注意5(長期借入金など(1年以内に返済予定のものを除く。)について、貸借対照表日後5年内における1年ごとの返済予定額の総額を注記)。同条第10項により、連結財務諸表を作成している場合は記載を要しない(参考文献 R2・R3)。↩
- 企業会計原則注解 〔注16〕第2段落。区分の基準として挙げられているのは入金又は支払の「期限」であり、借換えの見込みについての記述はない(参考文献 R1)。借換え合意済みの場合や期限の利益を失った場合の取扱いは、本記事では一次資料を確認していない。↩
参考文献(2 026年10月確認)
- R1 企業会計審議会「企業会計原則・同注解」(企業会計原則は昭和24年7月9日、注解は昭和29年7月14日に制定、いずれも昭和57年4月20日最終改正。掲載ページ最終更新 2026年7月17日) asb-j.jp (参照箇所:企業会計原則注解 〔注16〕。脚注1・7 の根拠。閲覧日:2026年10月13日)
- R2 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和38年大蔵省令第59号。e-Gov法令検索掲載の2026年8月7日施行版) laws.e-gov.go.jp (参照箇所:第8条の6の2、第48条、第49条、第51条、第52条、第121条。脚注2〜4・6 の根拠。閲覧日:2026年10月13日)
- R3 同規則 様式第十三号
「借 入金等明細表」(e -Gov法令検索の添付PDF) laws.e-gov.go.jp (参照箇所:様式と記載上の注意1・5。脚注3・6 の根拠。閲覧日:2026年10月13日) - R4 Corporate Finance Institute「Current Portion of Long-Term Debt」 corporatefinanceinstitute.com (一般的な概念の参考。「Calculating the Current Portion」「Applications in Financial Modeling」の節。脚注5 の根拠。閲覧日:2026年10月13日)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための学習用の架空事例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。