想定読者:銀行の与信企画・リスク管理、銀行株やクレジットのアナリスト、事業会社の財務担当
前提知識:銀行の貸出と自己資本の基本、相関係数の意味

関税の報道が続く朝、与信企画や銀行株の担当者が受ける問いは似ている。「うちの貸出先のうち、関税に弱いのはどこか」。輸出企業の名前を挙げ、製造業の比率を示せば、一応の答えにはなる。だが、輸入に頼る部品の調達や、取引先の資金繰り、景気の悪化を通じた影響は、輸出額の表からは見えない。銀行の開示資料にある業種別の残高も、借り手がどの国のどの工程に依存しているかまでは語らない。

FRB の研究者らは、この問いに別の入口から答えようとした。取引先のデータを積み上げる代わりに、関税のニュースに株価がどう反応したかを業種の弱さの物差しとし、それを銀行の貸出明細に当てたのである。本稿はその結果を読み、指標がどこまで使えるかを行数と定義の面から確かめたうえで、日本の開示資料で試す手順を示す。

この記事が主に参照する研究

Modugno, M., D. Palazzo, C. A. Ramírez and T. R. T. Ferreira(2026)「Disruptions to Foreign Trade and U.S. Banks’ Returns」Finance and Economics Discussion Series 2026-013

  • 公表:初版 2026年2月(FEDS)。のちに Economics Letters 269(2026年10月)に掲載。参照した版:2026年2月27日の改訂版(WP)で、掲載誌版の本文は未読。査読:参照したWPは未査読。FRB の公式見解ではない1
  • データ:米国の上場企業の株価と財務(表の推定は2,281〜2,532社)、大手米銀の貸出明細(FR Y-14Q、2025年第1四半期時点)。銀行数は本文に記載なし2
  • 方法:2018年と2025年の貿易政策ニュースの局面で株価の差を比べ、業種を分類。銀行の段階は指標と株価の相関の分析で、因果を識別したものではない3
  • 位置づけ:株価の反応で露出を測る既存の発想を、銀行の貸出へ広げた測定法の提案

銀行は​関税を​払わない。​想定される​影響の​経路は​貸出先である

銀行が直接に関税を負担するわけではない。影響があるとすれば間接のものになる。貿易に頼る企業の業績が傷む経路に加え、景気の悪化は海外と取引のない借り手にも及び得る。主論文もこの点を問題の出発点に置き、影響が海外に頼る企業だけでなく財務の弱い企業にも広がり得ると指摘する4。

主論文の説明では、大手米銀が最も弱い企業へ直接に貸している額は限られる。しかし貿易に敏感な業種への貸出の比率は、銀行ごとの差が大きい5。名指しできる数社を見るだけでは足りず、業種全体への偏り、つまり集中リスクを測る必要があるというのが、この研究の組み立てである。

読み進めるうえで、用語を三つ確認しておく。

  • 約定額:銀行が貸すと約束した額で、未使用の枠も含む。残高より広く、コミットメントフィーの対象となる未使用枠まで数える考え方である。
  • 平均との差:主論文は、各局面の業種平均からの差で業種を比べる。市場全体の値動きをベータで取り除く異常収益率とは計算が異なる。
  • 相関と決定係数:相関は−1から1の間の値で、切片を含み説明変数が1つの回帰分析ではその2乗が決定係数になる。相関−0.42の2乗は約0.18になり、銀行間の株価の差の約18%が一つの指標で説明されたことを意味する。

研究が​示した​こと:企業、​業種、​銀行の​三段階

企業:海外売上が​多く、​財務が​弱いほど​下げた

2025年4月2日、米国はほとんどの国からの輸入に、基準10%から最大50%の関税を課すと発表した。主論文によれば、4月8日までに S&P500 は約12%下げ、この4日間のリターンは過去の分布の下位1%に入る水準だった6。

標本の米国上場企業を比べると、業種の違いだけで下落の差の一定部分が説明できた。業種の固定効果のみの推定で、自由度調整済み決定係数は0.191である(2,532社)7。ここに企業の特性を加えると0.319まで上がる(2,281社)。海外売上比率の係数は−1.206、負債比率は−1.027、市場ベータは−1.710で、いずれも1%水準で有意だった。ICR(インタレスト・​カバレッジ・​レシオ)の高い企業を示すダミーは+0.794で、5%水準で有意である8。同じ業種の中でも、負債が重く利払い余力が小さく海外売上が多い企業ほど、下落は大きかった9。

業種:2局面で​分けると、​自動車は​「脆弱」に​入らない

2025年の4日だけでは、関税以外の材料が混ざるおそれがある。そこで著者らは、米中の貿易摩擦で株価が動いた2018年の4日を加えた10。2局面とも業種平均を下回った業種を脆弱、とも上回った業種を耐性とし、片方だけで下回った業種は別の象限に置く11。

図1図1 2局面の株価で分ける業種の4象限2018年の4日:平均より下 / 上強くなった2018年 下・2025年 上9業種小売、建設航空機ソフトウェア耐性2018年 上・2025年 上17業種公益、保険貴金属、防衛医薬品脆弱(指標に使う)2018年 下・2025年 下19業種電子機器、機械鉄鋼、石油ガス運輸、銀行、不動産弱くなった2018年 上・2025年 下4業種自動車・トラック繊維ゴム・プラスチック
「上・下」は​各局面の​業種平均との​比較。​業種は Fama-French の​分類を​編集部が​和訳した​例示で、​全業種の​一覧ではない。​論文の​数値​データではなく​分類の​整理。
​出所:R1(p.7 図2の一覧、p.8)を​基に​大手町​プレップ作成​(一覧の業種数は編集部が目視で数えた)。

図1で目を引くのは自動車・トラックの位置である。2025年には平均を下回ったが、2018年には上回ったため、脆弱ではなく「弱くなった」に分類される。逆に、銀行、不動産は脆弱の側に入る12。関税と聞いて最初に名前が挙がる業種が指標の外にあり、金融や不動産が内にある。この点は日本に持ち込むときに効いてくる。

銀行:指標が​高いほど​株式​リターンが​低い​関係

次に著者らは、脆弱業種向けの商工業貸出(C&I)の約定額を総資産で割り、銀行ごとの指標とした13。非公開企業への貸出も数えるため、同じ業種なら上場・非上場で感応度は近いと仮定している14。

この指標と2025年4月の銀行株のリターンの相関は−0.42(t値−2.17)で、指標は銀行間の差の18%を説明した。両者は標準化されているので、指標が標準偏差1つ分高い銀行は、リターンが標準偏差0.42個分低い傾向があったことになる15。リターンの標準偏差が公表されていないため、これを%ポイントに直すことはできない。著者らは、借り手の露出が銀行の成績の経済的に意味のある要因だという見方と整合すると解釈し、間接的な露出の監視が重要だと述べている。序論では、貿易の混乱が貸出を通じて銀行に波及する経路を指し示す証拠と位置づける16。ただし、それは著者らの解釈である。図の段階で確認できるのは、指標とリターンの相関までである。

研究の​範囲と​限界:18%を​そのまま​受け​取らないために

結果の読み方を左右する条件が四つある。

第一に、銀行の数が少ない。論文に行数の記載はない。原図の点は目視で6つ、1点は4行の束なので、すべての行が同じ大きさの束に入っていると仮定して、編集部は24行前後と推定した17。この行数なら、相関−0.42の95%信頼区間はおおよそ−0.70から−0.02まで広がる18。統計的には有意でも、強さの見積もりには大きな幅が残る。

図2図2 相関−0.42の幅は行数で変わる−1−0.50相関係数(右端の0は関係なし)24行(編集部の推定)−0.70−0.0250行(仮定)−0.63−0.16100行(仮定)−0.57−0.24
点は​主論文の​相関係数、​線は Fisher の z 変換で​近似した​95%信頼区間。​24行は​原図​(R1 の図3)の​点が​目視で​6つ、​1点4行である​ことから​編集部が​推定した​値、​50行・100行は​幅の​比較の​ための​仮定で、​論文の​標本ではない。​頑健標準誤差などの​論文の​推定とは​一致しない​場合が​ある。
​出所:R1(p.9 図3)の​相関係数を​基に​大手町​プレップ​計算。

第二に、82%は説明されていない。仮に、関係が線形で、残りの要因が銀行間で独立に同じ分散の正規分布に従うとするモデルを置く。指標が標準偏差2つ分離れた2行を比べると、指標の高い銀行のほうがリターンが低い確率は約74%、順序が逆になる確率は約26%と計算できる19。実際の銀行の組で測った頻度ではないが、指標は傾向を示すが、個々の銀行の順位を決める道具としては粗い。

第三に、銀行の属性を統制した結果が本文にない。規模、資本比率、市場ベータなどを同時に入れた推定は示されておらず、本文が触れる付録も入手できなかった20。規模などの別の要因を除いていない以上、貸出を通じて影響が届く経路そのものを実証した結果とは読めない。第四に、業種の分類に2025年4月の下落を使い、同じ4月の銀行株で検証している。事前に作った指標で先の下落を当てたという検証ではない。主論文自身も、分類が時間とともに変わり得る点を認めている21。

同じ事象を別の方法で調べた研究は、方向としては近い。Kwan(2025)は上場265行のイベントスタディで大手行ほど異常収益率が低い傾向を示し、米国の G-SIB 6行の CDS スプレッドが16〜21bp上がったと報告した22。ここから、規模が指標と別の説明要因になり得ることも分かる。欧州22行を調べた Lynch et al.(2025)では、製造業や卸売・小売向けの比率が高い銀行ほど超過リターンが低く、CET1 比率が高い銀行は下げが小さかった23。

株価の先にある貸出行動については、別の研究がある。Correa et al.(2023)は2018〜2019年の米国で、貿易の不確実性にさらされた銀行が、不確実性の低い企業を含めて貸出を絞ったと報告した24。Morgan et al.(2026)は、2025年第2四半期にサプライチェーン・リスクへの露出が高い銀行で枠の利用率と貸出スプレッドが上がり、借り手の需要が主因と見られるとする25。編集部の見方では、貸出が増えて見えても、銀行の余力が増えたとは限らない。

大手町​プレップの​考察:指標は​順位表ではなく、​問いを​立てる​道具

以下は編集部の見方であり、論文が検証したものではない。

まず、株価の下落と貸倒れは別物である。この研究が測ったのは数日間の株価の反応で、その後の延滞や貸倒引当金の実績ではない。投資家が景気全体への不安を銀行株に織り込んだ分も含まれるはずで、指標の数値を損失の見積もりに読み替えることはできない。

次に、分類の規則が結果を作る面がある。図1の自動車のように、2局面のどちらを使うかで業種の扱いが変わる。局面の選び方が違えば、別の業種が脆弱に入るだろう。実務で使うなら、分類そのものを結論とせず、どの業種が境界にあるかを併せて示すほうが誤解が少ない。

そのうえで、この研究の価値は、貸出の偏りを測る問いの立て方にあると考える。監督データがなくても、市場の反応で業種に当たりを付け、与信の構成と突き合わせるという順序は再現できる。出てくる数字は順位表ではなく、「なぜこの業種に寄っているのか」を担当者に尋ねるための材料と見るのがよい。

日本の​実務への​応用:​不動産の​扱いで​数字が​大きく​変わる

日本については、日本銀行の金融システムレポートが同じ局面を点検している。2025年10月号によれば、日本の大企業の予想デフォルト確率は4月の相互関税公表後に自動車や電気機械を中心に一時高まり、その後の関税率の合意などを経て、概ね2024年平均並みに戻った26。減益見通しの業種への貸出シェアも、大手行・地域銀行ともに大きくないと整理している27。

ただし同じ報告は、ストレス時に輸送用機械や鉄鋼・非鉄金属の下位企業の ICR がゼロ近傍まで下がり、この2業種は大口貸出の比率が高いため、個社のランクダウンの影響が小さくない点に留意を促す28。中間財・部品の製造業でも ICR 1倍割れの企業の割合が相対的に上がるが、貸出全体に占める比率は小さく、デフォルト確率の上昇も中央値では小幅と試算された29。業種の平均より業種内の弱い先と大口先を見るという点で、主論文の企業段階の結果と方向が重なると編集部はみる。なお、2026年10月号のストレステストは、過去の号で織り込んだ世界貿易量の減少ショックを追加では想定していない30。シナリオの重点が変わっても、測り方は別の貿易ショックに使えると考えられる(編集部の見方)。

主論文の発想を日本に移すとき、定義の影響は大きい。日銀の業種別シェアを使って、編集部が定義を三つ置いて足し合わせたのが表1である。

表1 「関税に弱い業種」の定義で貸出シェアはどれだけ動くか(法人向け貸出に占める割合、2025年6月末)

表は横にスクロールできます →

編集部が置いた定義大手行地域銀行
定義A:減益見通しの3業種(輸送用機械、鉄鋼・非鉄金属、運輸)12.4%11.2%
定義B:製造業全体+運輸31.5%26.0%
定義C:定義B+不動産(主論文の脆弱業種に不動産が入る点に倣う)58.6%49.1%
定義C ÷ 定義A4.7倍4.4倍
各行の​値は​日銀の​業種別​シェアを​編集部が​足し​合わせた。​定義の​組合せは​編集部の​仮定で、​主論文の​19業種の​再現ではない。​分母は​法人​向け貸出で、​主論文の​総資産とは​異なる。​残高​ベースで、​未使用の​約定額は​含まない。
​出所:R7(図表IV-1-6)の​数値を​基に​大手町​プレップ​計算。

減益見通しの3業種に絞れば、大手行で12.4%、地域銀行で11.2%にとどまる。製造業全体と運輸に広げて不動産も足すと、それぞれ58.6%、49.1%となり、最初の定義の4.7倍、4.4倍に膨らむ。主論文の米国の分類で不動産が脆弱に入ったことが、日本の不動産の関税感応度を示すわけではない。一方、日本の分類を自分で作れば、不動産の扱いが指標の水準を大きく左右する。

データの面でも違いがある。主論文の Y-14Q は非公開の貸出明細だが、日本の外部の分析者が使えるのは開示資料である。信用リスクのエクスポージャーの業種別の期末残高は、自己資本の充実の状況の開示項目に挙げられている31。エクスポージャーは貸出金と同じとは限らないため、貸出の範囲、連結の範囲、業種の区分がそろうかを確かめてから銀行間で比べる。業種の区分は米国の Fama-French 分類とも一致しない。業種別の未使用枠まで把握できるのは、原則として行内の担当者に限られると考えられる(編集部の見方)。

設例:定義と​分母を​変えて​順位の​安定性を​見る

学習用の設例(架空)

  • 総資産がいずれも5兆円の3行を比べる。A銀行は製造業に、B銀行は不動産に寄り、C銀行はその中間である
  • 狭い定義は輸送用機械・鉄鋼と運輸、広い定義はそれに電気機械と不動産を加える
  • 主論文の総資産比に加え、編集部の提案として自己資本比も置く(研究では検証されていない)

表2 学習用の設例(架空):定義と分母で変わる3行の並び(金額は億円)

表は横にスクロールできます →

銀行狭い定義の約定額対総資産対自己資本広い定義の約定額対総資産対自己資本
A銀行3,3006.6%110%6,00012.0%200%
B銀行1,6003.2%36%9,90019.8%220%
C銀行2,8005.6%80%7,30014.6%209%
狭い​定義=輸送用機械・​鉄鋼+運輸。​広い​定義=狭い​定義+電気機械+​不動産。​3行とも​総資産は​5兆円、​自己資本は​A銀行3,000億円、​B銀行4,500億円、​C銀行3,500億円。
​出所:学習用の​仮定に​基づき大手町​プレップ​作成。

狭い定義の総資産比では、A銀行6.6%、C銀行5.6%、B銀行3.2%の順である。広い定義ではB銀行19.8%、C銀行14.6%、A銀行12.0%と順序が逆になる。自己資本で割ると、広い定義の差はA銀行200%、C銀行209%、B銀行220%まで縮まる。資本の厚いB銀行は、偏りが大きくても受け止める余地が相対的に大きい。

この設例の読み方は、「どの銀行が最も弱いか」ではない。順位が定義で入れ替わるなら、指標はまだ結論を出せる状態にない。報告では、定義ごとの数字を並べ、どの業種の扱いで順位が動くのかを書くことになる。

明日から​使える​確認項目

以下は編集部の提案で、研究が検証した手順ではない。順序は、主論文の組み立てを開示資料で試せる形に置き直したものである。

  1. 局面を先に固定する。関税や貿易摩擦のニュースが主因と説明できる日を2局面以上選び、選んだ理由を残す。結果を見てから日を差し替えない。32
  2. 業種別指数の平均との差を計算する。東証の業種別株価指数など、与信の業種区分に対応を付けられる指数を使い、2局面の上下で4つに分ける。
  3. 片方の局面だけで下げた業種を別欄に残す。図1の自動車のように、捨てると実感と合わない結果になる。
  4. 与信の偏りを二つの分母で測る。行内なら約定額、外部なら開示の業種別エクスポージャー残高を使い、総資産比と自己資本比を並べる。定義を2通り以上置き、順位が変わる銀行を印す。
  5. 業種の中を絞る。海外売上比率、負債比率、ICR の3点で借り手を並べ、大口先を重ねる。調達先の偏りはサプライチェーン​DDの項目で補う。ICR 1倍は日銀の分析で要注意先以下の割合が増え始める目安として参照できるが、編集部の仮の目安であり、主論文で検証された閾値ではない。
  6. 別の局面で検証する。作った分類を、使っていない局面の株価や、その後の債務者区分の変化と照らし、当たらなかった業種を記録する。

銀行の担当者や IR に尋ねるなら、次の質問が使える。「貸出残高ではなく約定額で見ると、業種の偏りはどう変わるか」「貿易に敏感な業種の上位10社は、海外売上比率と ICR でどう分布するか」。事業会社の財務担当は、主力行の業種の偏りを開示資料で確かめ、枠の更新時期を前倒しで確認する材料にできる。

よく​ある​質問

脆弱な​業種への​貸出が​多い​銀行は、​その後の​信用コストも​高くなったのですか。

主論文が​調べたのは​2025年4月の​株価の​反応で、​その後の​貸倒れや​信用コストの​実績は​分析していません。​株価の​下落が​損失の​発生を​示すとは​言えません。

この​指標を​日本の​銀行株の​投資判断に​使えますか。

そのまま​使う​ことは​おすすめできません。​研究の​対象は​米国の​大手行で、​銀行の​属性を​統制した​結果も​示されていません。​比較の​出発点と​して​使い、​定義を​変えても​順位が​保たれるかを​確かめる​必要が​あります。

まとめ

2025年4月の米国の大手行では、貿易に敏感な業種への貸出の指標が高い銀行ほど、関税発表後の株式リターンが低い関係が観察された。指標は銀行間の差の18%を説明したが、行数は編集部の推定で24行前後と少なく、銀行の属性を統制した結果も示されていない。貸出を通じた波及は著者らの解釈であり、経路が実証されたわけではない。日本で試すなら、定義と分母を変えて順位の安定性を確かめ、不動産の扱いを明示することが出発点になる。数字は順位表としてではなく、与信の偏りについて問いを立てる材料として使いたい。

脚注

  1. R1 p.1(表紙の注記)、p.2 脚注1。FEDS は職員の予備的な資料で、分析と結論は著者のものであり、FRB 理事会や Vanguard の見解ではないと明記。公表時期は R2 の表示(2026年2月)。同ページによれば2026年2月27日に脚注番号の訂正、要旨の1文の削除、引用の追加、結論の修正が行われた。当初の版は確認していない。Crossref で Economics Letters 269, 113259(2026年10月)への掲載を確認した。掲載誌版の本文は未読で、本稿の数値との異同は確認していない。↩
  2. R1 p.6(表1の注)、p.8〜9。銀行数は本文に記載がない。↩
  3. R1 p.5 は “quasi-natural experiment” と表現する。銀行の段階の図3(p.9)は、銀行の指標と株価の1対1の関係を示したもので、銀行の属性を統制した推定は本文に示されていない。↩
  4. R1 p.2(序論)。↩
  5. R1 p.3。「限定的」の具体的な数値は本文にない。↩
  6. R1 p.5。関税率の幅も同じ。論文は4月8日を一時停止の日と書くが、R4 は90日間の停止の発表を4月9日としている。本稿では分析の窓の終わりとして4月8日を扱う。4月2〜8日(図1・図2)と4月3〜8日(表1)の表記が混在するが、いずれも発表後の4営業日を指すと編集部は読んだ。↩
  7. R1 p.6 表1列1。本文 p.5 は約20%と書く。本稿は表の値を使う。↩
  8. R1 p.6 表1列2(PDF では表が画像のため目視で読み取り、R2 のアクセシブル版の表と照合した)。***は1%水準、**は5%水準。説明変数の単位(標準化の有無)は表に書かれていないため、係数の大きさの換算はしていない。高ICRは ICR が上位20%の企業を1とするダミー。↩
  9. R1 p.6。同じ列で、規模(時価総額)の差は “marginally significant” にとどまる。↩
  10. R1 p.8 脚注8。10月10日、11月12日、11月20日、12月4日で、S&P500 の日次変化は−3.3%、−2%、−1.8%、−3.2%。図2の注は参照先を footnote 7 と書くが、該当するのは脚注8である。↩
  11. R1 p.8。業種は Fama-French の分類。本文 p.5 脚注6 は49業種、図2の注は48業種と書く。図2の一覧は計49業種で、各象限の数は編集部が目視で数えた。アクセシブル版(R2)の図3の説明は脆弱業種を「[20]」とするが、PDF 版の図3の注と一覧は19である。↩
  12. R1 p.7 図2の一覧(目視の読み取り)。同図の散布図では、自動車・トラックは2018年が平均より約1%上、2025年が約8%下の位置にある(目視の読み取り)。本文 p.8 は脆弱の例として電子機器・コンピュータ、石油・ガス採掘、航空輸送を挙げる。↩
  13. R1 p.9。2025年第1四半期のデータ。本文は対象を図2の “top-right quadrant” と書くが、p.8 の定義と図3の注(19の脆弱業種)に照らし、編集部は左下の象限の誤記と読んだ。図3の注は比率を「総資産と C&I 貸出の比」と書くが、本文に従い C&I 約定額÷総資産とした。↩
  14. R1 p.8。↩
  15. R1 p.9 図3。係数 −0.42、t = −2.17、決定係数 0.18(図中の表示を目視で読み取り)。指標の標準化は同頁の本文、リターンの標準化は図の題と軸の表示による。図の各点は銀行の情報を守るため4行を束ねたもので、回帰線は個別行のデータで推定された(同頁)。↩
  16. R1 p.9 “consistent with the view”、p.10(結論)、p.3(序論)“points to an important transmission channel”。↩
  17. 編集部の推定で、論文に行数の記載はない。R1 p.9 図3の点は目視で6つ、本文によれば1点は4行なので24行となる。すべての点が4行で、図から除かれた行が無いという仮定を置く。相関−0.42と24行から t 値を計算すると−2.17で、図の t = −2.17 と一致する。逆に t と決定係数0.18から行数を逆算すると約23.5行である。↩
  18. Fisher の z 変換による近似(finance/calc.py)。24行は編集部の推定値。論文の標準誤差の計算方法は本文に書かれていないため、論文の t 値と完全には対応しない。↩
  19. 編集部の計算による仮想のモデル。指標とリターンの関係が線形で、残差が銀行間で独立かつ同じ分散の正規分布に従うと仮定し、相関−0.42のもとで指標の差が標準偏差2つ分の2行を比べた。実際の銀行の組で観測した頻度ではなく、研究でも検証されていない。↩
  20. R1 p.5 脚注5、p.8 脚注8 が付録に触れるが、R2 の掲載ページと配布 ZIP(アクセシブル版)には見当たらず、未入手。↩
  21. R1 p.7。著者は、個別企業の分類は時間とともに変わり得るが、業種の水準なら問題は大幅に緩和されると述べる。↩
  22. R3。S&P500 構成銘柄の11セクターと上場265行のイベントスタディ(4月2日前後)。CDS は4月2日から4日の変化で、事前の米G-SIBの平均は約50bp。↩
  23. R4 表1。欧州22行の4月3〜4日の市場対比の超過リターン。銀行特性は1列に1つずつ入れた推定で、差は75パーセンタイルと25パーセンタイルの比較。製造業向け比率は−0.63%ポイント、卸売・小売向け比率は−0.97%ポイント、CET1 比率は+1.35%ポイント。↩
  24. R5 p.2(要旨)、p.4。本稿は要旨と序論を確認した。データは2018〜2019年の米国の Y-14Q で、因果の解釈は同論文の識別の仮定に依存する。↩
  25. R6。露出はサプライチェーン・リスクの測度で、主論文の指標とは異なる。対象は23行。著者らは需要主導の可能性を “likely” と留保している。↩
  26. R7 図表IV-1-3(印刷 p.26)。EDF は株価などの市場変数から作る予想デフォルト確率。↩
  27. R7 図表IV-1-6(印刷 p.28)。2025年6月末の対法人向け貸出割合。↩
  28. R7 図表IV-1-7〜10(印刷 p.29〜31)。ストレスケースは過去の収益修正幅の2標準偏差分を下振れさせた試算。↩
  29. R7 脚注12・本文(印刷 p.32)。中間財・部品製造業の中小企業向けの割合は大手行・地域銀行とも3〜4%程度。ストレスケースのデフォルト確率の上昇は中央値で0.1%ポイント程度。↩
  30. R8 脚注60(印刷 p.79)。↩
  31. R9(金融庁掲載の条文。掲載 PDF は2019年作成)。信用リスクのエクスポージャーの期末残高の内訳として業種別などを開示項目に挙げる。現行の様式・業種区分、貸出金との範囲の差は各行の開示資料で確かめる必要がある。↩
  32. 編集部の注意点。米国の発表時刻と東京の取引時間の関係は事象ごとに確かめる。↩

参考文献​(2026年10月確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。