この記事で分かること
- 米国のBDC(上場・非上場の私募クレジット・ファンド)111本に銀行の自己資本の物差しを当てた研究で、リスクアセットに対する資本の比率が中央値36%と、米大手行の13.0%を大きく上回ったこと
- 「銀行は資本規制が重いので貸せず、資本の薄いノンバンクに融資が流れた」という通説ではなく、銀行がファンドに貸すほうが採算がよい仕組みと、監督の負担が拡大を後押ししたという著者らの読み方と、その限界
- 日本の銀行・ノンバンク・PEスポンサーが、ファンド向け与信や貸し手の選定で確かめる点(リスクウェイトでROEが逆転する学習用の設例つき)
想定読者:銀行のストラクチャードファイナンス・ファンドファイナンス・LBOファイナンスの担当、ノンバンクの財務・調達担当、私募クレジットから資金を調達するPEファンドの担当
前提知識:自己資本比率(CET1)とリスクアセットの考え方、LBOローンの基本、ROE
海外の私募クレジット・ファンドから、ファンドの借入枠の打診が来たとする。ファンドが中堅企業向けに組成したローンを束ねてSPVに入れ、銀行はその束を担保に、ローン総額の6割強までを貸す。上乗せ金利(スプレッド)は、中堅企業に直接貸すときの半分以下である。一方、同じ銀行の別の部署は、国内の買収案件でLBOローンを出すかどうかを審査している。どちらの与信に資本を割くべきか。
この問いには、よく引かれる説明がある。金融危機の後に銀行の資本規制が強まり、中堅企業への貸出に多くの資本が必要になった。そこで、資本規制を受けず借入を多く使えるノンバンクに融資が流れた、というものだ。当サイトのプライベートクレジット入門でも、拡大の背景として銀行規制の強化を挙げている。日本銀行の2026年9月のレビューも、拡大の背景の一つとして銀行に対する規制の強化に触れている1。ところが米国の研究者らがファンドの資本を銀行と同じ方法で測り直すと、「ノンバンクは資本が薄い」という前提が成り立たなかった。
この記事が主に参照する研究
Sergey Chernenko, Robert Ialenti, David Scharfstein(2024)「銀行の資本とプライベートクレジットの成長(Bank Capital and the Growth of Private Credit)」ワーキングペーパー
- 公表:確認できた最初の発表記録は2024年7月(ESSFM、前身とみられる旧題 “The Evolution of Private Credit”)。参照した版:2026年2月21日版(SSRNの2026年3月の改訂は未確認)。査読:未査読(学術誌掲載は未確認)
- データ:米国のBDC(Business Development Company)の母集団と、SECへの四半期開示・保有明細の商用データ。分析の中心は2024年第4四半期の111本
- 方法:BDCの保有資産に銀行の標準的なリスクウェイトとFRBのストレステストの方式を当てはめた再計算と、銀行の採算(ROE)の例示計算・簡単な理論モデル。因果の識別ではない
- 位置づけ:新しいデータで既存の通説(規制資本の裁定)を検証し、別の説明を提案
押さえておく基礎:資本比率、リスクウェイト、ファンドへの与信枠
銀行の自己資本比率は、資本を「リスクアセット」で割って求める。リスクアセットは、資産ごとに決められたリスクウェイトを掛けて合計したもので、事業会社向けの貸付なら原則100%、株式ならより高い掛け目になる。計算の流れはバーゼル規制入門で扱っている。中核となる普通株式等Tier1(CET1)の比率は、銀行の自己資本比率の中心的な指標である。米国の大手行では、さらにストレステストの結果が必要な資本の水準に反映される。
研究の対象であるBDCは、米国の1940年投資会社法に基づく投資ビークルで、多くは中堅企業向けのローンを持つ私募クレジットの器である。2024年第4四半期に稼働していたのは164本、総資産は4,410億ドルで、著者らは米国の私募クレジットの約5分の1にあたるとみている。保有明細を四半期ごとに開示するため、ファンドの中身と借入を細かく追える2。借入には上限がある。BDCは資産カバレッジ比率が200%(2018年以降は条件を満たせば150%)を下回ると新たな借入や配当ができない。BDC以外のファンドでは、銀行の与信枠の掛目と財務制限条項が同じ役割を果たし、第1順位の正常なローンの掛目は通常65%程度だという3。
標本のBDCの負債/総資産は中央値48%で、負債の平均67%が銀行の与信枠、25%が無担保社債だった。与信枠のスプレッドは中央値225bp、保有ローンのスプレッドは中央値582bpである4。
BDCは銀行の物差しで測っても資本が厚かった
BDCは負債と資本がおおむね1対1だが、保有資産には投資先の株式やCLOのエクイティ部分も含まれる。そこで著者らは、貸付100%、株式400%、CLOのエクイティ1,250%といった銀行のリスクウェイトを当て、時価評価と取得原価の差を差し引き、貸付の2%を貸倒引当金として控除したうえで、BDCを銀行とみなした資本比率を計算した5。
結果は中央値36%(四分位30〜42%)だった。種類別には、期限付きの非上場BDCが47.6%、永続型の非上場BDCが42.9%、上場BDCが29.6%である。比較の対象として著者らが挙げる、FRBのストレステスト対象行の2024年第4四半期のCET1比率の中央値は13.0%だった(図1のA)6。
ただしBDCのローンは銀行の平均的な事業向け貸付より危ない。そこで著者らはFRBの2023年の厳しいシナリオ(短期金利0.25%、株価45%下落、2年間)を模したストレステストも行った。第1順位のローンの損失率は、銀行の担保付き事業向け貸付の損失率の上位25%の水準(15.3%)を出発点に、業種の景気感応度で調整している。2年間の損失率の中央値は16.0%、損失前の純収益は8.1%で、差し引きの純損失の中央値は7.2%だった7。銀行と同じ方式で求めた必要なCET1比率は中央値10%(四分位7.3〜12.4%)で、これを下回ったのは1本だけ、超過幅の中央値は25.7%ポイントだった(図1のB)8。
図1が示すのは、私募クレジットが銀行より薄い資本で貸しているわけではないことだ。資本規制が重すぎて融資が外へ出たという説明では、なぜ銀行の数倍の資本を積む器に融資が移ったのかを説明できない。
銀行は「貸 す」より「フ ァンドに貸す」ほうが儲かる
では銀行は私募クレジットから退いたのか。著者らの見立ては逆で、銀行は形を変えて関わっている。一つはファンドへの与信で、中央値のBDCでは負債の約3分の2が銀行の与信枠だった。もう一つは、大手行が自らの運用部門で私募クレジット・ファンドを組成・運営する形である9。
前者の採算を比べたのが表1である。著者らは、中堅企業への第1順位のローンを銀行が自ら持つ場合と、ファンドへの与信枠の場合について、2024年末の金利水準と代表的な前提を置いてROEを計算した10。直接の貸付はスプレッドが厚い(実効650bp)が、期待損失と経費が大きく、リスクウェイト100%で資本も多く要る。ファンド向けはスプレッドが薄い(同265bp)が、過剰担保のため期待損失はほぼゼロで、1件が大きいので経費も小さい。
表は横にスクロールできます →
| 直接貸付 (資本20%) | ファンド向け (資本20%) | ファンド向け (資本12%) | ファンド向け (レバ比率5%) | |
|---|---|---|---|---|
| 貸出金利(SOFR+実効スプレッド) | 4.53%+6.50% | 4.53%+2.65% | 同左 | 同左 |
| 期待損失(デフォルト率×(1−回収率)) | 1.60% | 0.0125% | 同左 | 同左 |
| 経費 | 1.38% | 0.20% | 同左 | 同左 |
| リスクウェイト | 100% | 20% | 20% | 20% |
| 資本/資産 | 20.0% | 4.0% | 2.4% | 5.0% |
| ROE(税引後) | 13.30% | 29.30% | 46.02% | 24.29% |
差を生んでいるのはリスクウェイトである。ファンドへの与信は、ファンドが作るSPVに対する過剰担保の貸付として組まれるため、米国の規則では証券化の優先部分(シニア)と同じ扱いになり、SSFAと呼ばれる計算方式で下限の20%が適用されることが多い。延滞のないローンの束なら、過剰担保が12.19%以上あれば20%になるという11。直接貸付の経費をゼロと置いてもROEは18.47%で、ファンド向けに届かない。論文はファンド向けの経費の損益分岐を約1.25%と記す。表1の直接貸付のROE13.30%との分岐を大手町プレップが再計算すると、目標CET1比率20%で約1.05%、12%で約1.25%だ。SSFAの扱いがなくリスクウェイトが100%なら、表1の前提でファンド向けのROEは9.24%と直接貸付を下回る(大手町プレップの計算)。著者らは、SSFAの扱いを受ける貸付の組成には費用がかかり、利用は大手行に偏ると指摘する12。
ただしROEの差は、高いレバレッジで持つファンド向け与信の要求収益率の違いを調整しておらず、付随業務の収益も考えていない。著者らは、この収益が続く理由として、ファンド向け与信の供給が少数の大手行に偏る寡占と、市場が荒れたときに与信枠を引き出される負担の対価の可能性を挙げる13。
自ら貸すより、ファンドの運用者になる理由
大手行がローンを自らのバランスシートで持たず、運用会社としてファンドを運営するのはなぜか。著者らの簡単なモデルでは、銀行の利点は調達の安さ(市場の金利より低く借りられる分 Δ)だけで、不利な点は二つある。ファンドは法人税を課されない器なので税の面で有利になる(論文の前提では貸付額の5%)。そして銀行が規制・監督のもとでリスクの高いローンを持つと、経費がかさむ14。図2は、Δごとに、ファンド経由のほうが有利になるのに必要な経費の差を示す。
Δが50bpなら、ファンドの経費が銀行より3bp低いだけでファンド経由が有利になる。Δが155bpと大きくても、必要な差は87bpで、私募クレジットの経費の推計値138bpに対して、銀行の経費が63%高ければ足りる。著者らは、2024年6月に米国の大手行26行に347件の監督上の指摘が残っていたことや、レバレッジド・レンディングの監督指針を挙げ、規制と監督に対応する費用がこの差を生むのに十分大きい可能性があるとみる。BDCの投資先には、負債がEBITDAの6倍を超える企業や、EBITDAではなく継続課金の収入を基準に貸すローンも多く、銀行の監督の目にとまりやすい15。そのうえで、私募クレジットの拡大を説明するのは “not traditional regulatory capital arbitrage, but rather ‘supervisory arbitrage.’”(伝統的な規制資本の裁定ではなく「監督の裁定」だ。拙訳)かもしれないと書く16。
どこまで言えるか:BDCという窓、版の変化、対照的な研究
この研究は、米国のBDCという開示の多い器を窓にしている。著者らは他の私募クレジット・ファンドも保有が似ていると補足するが、日本や欧州のファンドを調べたものではない。資本比率の計算には、時価と簿価の調整や引当率の置き方など著者の判断が入る。ROEの比較とモデルは代表的な数値を置いた例示で、銀行が自らローンを持った場合の経費は観察できない。運用者が想定より高い報酬を取っている可能性も否定できないと著者ら自身が書いている17。未査読でもある。
版による変化もある。2024年9月版と10月版は、市場が荒れたときにBDCが規制上の借入制限と銀行の財務制限条項を守るため資産を減らす動き(デレバレッジ)を推計し、中央値のBDCで8四半期に資産を8%(下位25%点で20%)、10月版では貸付残高を9.5%減らすとしていた。2026年版ではこの分析を別の論文に分け、結論で、資本が厚くても借入制限がストレス時の貸出の縮小につながり得ると触れるにとどめている18。資本が厚いことと、ストレス時に貸し続けられることは別の問題である。
規制が無関係だというわけでもない。BISの研究者らは、米国で流動性カバレッジ比率(LCR)が導入された後、規制対象行の預金シェアが10%ポイント高い郡ほど、私募クレジットの残高が20%多く増えたと報告した。2012年のストレステストによる資本面の負担とも同程度の効果だという19。こちらは地域ごとの差を使った分析で、規制が融資の担い手を変えたことを示唆する。両者は矛盾するというより、問いが違う。BISの論文は規制が「どれだけ」融資を動かしたかを、本論文は動いた先が資本の薄い器ではなかったこと、銀行がどの形で関わり続けているかを扱っている。カンザスシティ連銀のエコノミストは、本論文と同様のROEを銀行の監督データで計算し、平均で事業向け貸付7.9%に対してファンド向け29.2%と、同じ方向の結果を示した20。
借り手と担保の取り方から見た研究はダイレクトレンダーは銀行と何が違う貸し方をしているのか、投資家のリターンの測り方はプライベートデットのリターンは何と比べて測るべきかで扱った。本稿は資金の上流にいる銀行の側から見ている。
大手町プレップの考察:リスクは銀行から消えず、持ち方が変わった
以下は編集部の見方である。銀行は中堅企業の信用リスクを手放したというより、その「優先部分」だけを持つ形に変えたと考えられる。ファンドの出資者が下の部分を引き受け、銀行は過剰担保の上に乗る。平時の損失はほぼ出ないが、リスクは銀行から消えていない。
注意したいのは、このリスクウェイトの低さが過剰担保に支えられている点だ。論文の脚注の計算では、過剰担保が30%あれば、担保ローンの約17%が延滞・デフォルトするまでは20%のままだが、それを超えると急に上がる21。景気の悪化局面では、リスクウェイトの上昇と、掛目の引下げによるファンドの資産売却が同時に起こり得る(仮説)。
「監督の裁定」が主因なら、拡大を左右するのは資本比率の数字より監督の運用である。米国では2025年12月にOCCとFDICがレバレッジド・レンディングの共同指針から離脱し、FRBは維持したと著者らは記す22。線引きが変われば、銀行が自ら持つ動機も変わり得る。
日本の実務への応用:自行の扱いを確かめ、貸し手の資金の出どころを見る
日本でも、日本銀行のレビューは、本邦の金融機関が大手銀行を中心にファンド向けファイナンスを通じて私募クレジット市場とのつながりを強めていると書いている23。ただし論文の計算は米国の規則に依っている。SSFAは米国の計算方式で、日本の自己資本比率規制の告示でファンドのSPV向け与信がどの区分になり、どのリスクウェイトになるかは、取引の構造と各行の算出手法による。本稿ではそこまで確認していない。
銀行の側では、ファンド向け与信と国内のLBOローンを、スプレッドではなく期待損失・経費・必要資本まで落としたROE(RAROCに近い考え方)で比べ、結果がリスクウェイトの前提にどれだけ依存するかを示すことが出発点になる。
PEスポンサーや借り手の側では、貸し手の資金の出どころを見る意味がある。ファンドの貸し手自身も銀行の与信枠で借りていることが多く、担保ローンの評価が下がれば掛目と財務制限条項に縛られる。リファイナンスや追加融資の局面で貸し続けられるかを確かめておきたい。ファンドの借入の仕組みはプライベートクレジットファンドの組成実務、ファンド全体の借入はNAVファシリティの論点も参考になる。
学習用の設例:リスクウェイトでROEが逆転する
学習用の設例(架空)
- ある銀行が、国内の中堅企業向けLBOシニアローンと、海外の私募クレジット・ファンドのSPV向け与信枠のどちらに資本を割くかを比べる。いずれも与信額100億円
- 共通:基準金利1.00%、銀行の調達は基準金利+0.30%、実効税率30%、目標とする資本比率はリスクアセットの12%
- LBOローン:スプレッド3.00%、デフォルト率2.00%・回収率60%(期待損失0.80%)、経費0.60%、リスクウェイト100%
- ファンド向け与信枠:スプレッド1.50%、デフォルト率0.25%・回収率95%(期待損失0.0125%)、経費0.15%。リスクウェイトは20%〜100%で変える
- 為替ヘッジのコスト、与信枠の未使用部分の手数料、付随取引の収益は含めない。式は論文の式(1)
LBOローンのROEは8.5%になる。与信額100億円あたりの税引後利益は1.02億円、必要な資本は12.0億円である。ファンド向け与信枠は、リスクウェイトが20%なら税引後利益0.75億円を資本2.4億円で稼ぎ、ROEは31.2%に達する。利益の額はLBOローンより小さいのに、資本が5分の1で済むためだ。
しかし図3のとおり、リスクウェイトが50%なら13.0%、100%なら7.0%に下がり、約80%を境にLBOローンが有利になる。ファンド向けが有利という結論は、スプレッドの差よりも規制上の扱いの前提に依存している。
明日から使える確認項目
- 銀行の与信担当は、ファンド向け与信の稟議に「適用するリスクウェイトと、その根拠となる告示上の区分」を書き、自己資本比率の算定担当の確認を得る。リスクウェイトを100%とした場合のROEも並べて示す。
- 過剰担保の水準ごとに、担保ローンの延滞・デフォルトが何%に達するとリスクウェイトが上がり始めるかを計算し、モニタリングの発動点(掛目の見直し、追加担保の要求)に組み込む。
- ファンド向け与信とLBOローンを税引後ROEで比べ、経費は1件の大きさを踏まえた単価で見積もる。
- PEスポンサー・借り手は、レンダーのファンドに「借入の掛目、財務制限条項、資産カバレッジの余裕はどれだけあるか。担保ローンの評価が10%下がったら、新規の貸出余力はどう変わるか」と質問する。
- リース・信販などノンバンクの財務担当は、銀行からの調達について「このファシリティはどの資本区分で扱われているか」を銀行に尋ね、担保の構造を変えることで条件が改善する余地を探る。
よくある質問
この研究は、銀行の資本規制が私募クレジットの拡大と無関係だと言っているのですか。
いいえ。資本の薄いノンバンクに融資が流れたという説明が当てはまらないことを示したうえで、銀行がファンドへの与信で関わる形になった理由として、低いリスクウェイトと監督の負担を挙げています。規制が融資の担い手を変えたこと自体は、BISの研究なども示しています。
日本の銀行のファンド向け与信にも20%のリスクウェイトが使えますか。
論文の20%は米国の計算方式によるもので、日本での扱いは取引の構造と各行の算出手法によります。本稿では確認していません。
まとめ
米国のBDCに銀行の物差しを当てると、私募クレジットは銀行よりはるかに厚い資本で貸していた。銀行は退いたのではなく、ファンド向け与信や運用会社としての関与に形を変え、その背景に低いリスクウェイトと監督の負担がある、というのが著者らの読み方である。ただしファンド向け与信の採算は規制上の扱いと過剰担保の水準に強く依存し、ストレス時の振る舞いは別の問題である。日本で同じ判断をするなら、自行・自社の前提を数字で置き直すことから始めたい。
脚注
- R4(日銀レビュー 2026-J-12、2026年9月)PDF p.1「はじめに」。世界金融危機後の低金利環境下での運用ニーズの高まりと、銀行に対する金融規制の強化を背景に、PC ファンドが運用資産残高を拡大してきたと記述。執筆者の見解で、日本銀行の公式見解ではない旨の注記あり(同 p.7)。↩
- R1(2026年2月21日版)PDF p.8(第2.3節。2024年第4四半期に稼働中の BDC は164、総資産4,410億ドル、私募クレジット産業の約5分の1)、p.2(第1節。SEC への四半期開示を使う理由と、結論が他の私募クレジット・ファンドにも当てはまる可能性が高いという著者の見方。保有の類似性は付録で補足)。↩
- R1 PDF p.7(第2.2節。資産カバレッジ比率200%、2018年以降は条件付きで150%。非 BDC ファンドは銀行の与信契約の掛目と財務制限条項が借入を制約。第1順位の正常な中堅企業ローンの掛目は通常65%、脚注4)。↩
- R1 PDF p.10〜11(第3節・表1。2024年第4四半期の111本。負債/総資産の中央値48%・四分位41〜52%、負債に占める銀行の与信枠(引出済み)の平均67%・無担保社債25%、与信枠のスプレッドの中央値225bp、保有ローンのスプレッドの中央値582bp)。↩
- R1 PDF p.13(第4節。BDC の負債と資本はおおむね1対1)、p.13〜15(第4.1節。貸付100%、JV を含む株式400%、CLO エクイティ1,250%、コミットメント50%の掛目を取得原価に適用。純資産から時価と取得原価の差を差し引き、貸付の2%を貸倒引当金として控除)。↩
- R1 PDF p.15(第4.1節。中央値36%・四分位30〜42%。資本比率10%前後の3本は CLO の保有が多い。比較対象の FRB ストレステスト対象行の2024年第4四半期の CET1 比率中央値13.0%は FRB の2025年の結果資料からの引用)、p.16(図2。種類別の中央値)。↩
- R1 PDF p.16〜17(第4.2節・第4.2.1節。2023年の厳しいシナリオのパラメータ、2年間の損失のみを見る簡略化、第1順位ローンの基準損失率15.3%と業種の景気感応度(default beta)による調整)、p.19(第4.2.3節・図3。損失率の中央値16.0%、PPNR 8.1%、純損失7.2%)。↩
- R1 PDF p.19・p.21(第4.2.3節。必要な CET1 比率=最低4.5%+ストレス資本バッファー。配当と G-SIB サーチャージは除く。中央値10%・四分位7.3〜12.4%、下回るのは1本、超過幅の中央値25.7%ポイント)。↩
- R1 PDF p.21(第5節。銀行は中堅企業の買収ローンを自ら組成・保有することは少なく、ファンドへの与信と運用部門のファンドを通じて関わる。中央値の BDC の負債の約3分の2が銀行の与信枠。未使用枠は含まない、脚注21)。↩
- R1 PDF p.22〜24(第5.1節・式(1)・表3)、p.27(ROE 13.30%・29.30%・46.02%・24.29%)。前提は SOFR 4.53%(2024年末)、実効スプレッドは直接貸付6.50%・ファンド向け2.65%、デフォルト率4%・0.25%、回収率60%・95%、調達スプレッド1.10%、税率25%、経費1.38%・0.20%。表1は大手町プレップが式(1)で再計算し、論文の値と一致することを確認した。↩
- R1 PDF p.26(第5.1節。SPV 向けの過剰担保の貸付は証券化エクスポージャーとして SSFA で計算され、業界関係者への聞き取りでは多くが下限の20%。FDIC の SSFA 計算表による著者の計算で、延滞のないローンの束なら過剰担保12.19%以上で20%)。↩
- R1 PDF p.27〜28(第5.1節。直接貸付の経費をゼロとしても ROE 18.47%。ファンド向けの経費の損益分岐は約1.25%と記載。大手町プレップが直接貸付の ROE 13.30%(経費込み)との分岐を式(1)で再計算すると、ファンド向けの目標 CET1 比率20%で約1.05%、12%で約1.25%。論文の1.25%は12%の値に近い。SSFA の扱いがなければファンド向け ROE は直接貸付を下回る)、p.28 本文(SSFA の扱いを受けられる貸付を組成する能力の整備には費用がかかり、小さな銀行には見合わない可能性)と脚注37(コールレポートでノンバンク向け与信と SSFA 対象資産の相関が強いのは総資産1,000億ドル超の大手行だけで、小さな銀行は一般に SSFA の扱いを採っていないように見える。利用資格の規模制限を述べたものではない)。リスクウェイト100%の場合の9.24%は大手町プレップの計算。↩
- R1 PDF p.27(第5.1節。要求収益率の差を調整していないこと、付随業務の売り込みは考慮外、直接貸付が常に劣るという意味ではないこと)、p.28〜29(超過収益が続く理由として、ファンド向け与信の供給の不完全競争と、ストレス時の流動性提供の対価の可能性。著者の解釈)。↩
- R1 PDF p.29〜31(第5.2節・式(2)〜(8)。運用会社は報酬で超過収益を取り切るという前提(Berk and Green 2004)、ファンドの出資者は非課税と仮定。税の差 τEb は税率25%×資本20%で貸付額の5%)。↩
- R1 PDF p.32(第5.2節。Δ を50〜155bp、割引率5.57%(10年国債4.57%+100bp)とした計算。閾値3bp・43bp・87bp、経費138bp に対して銀行の経費が2〜63%高ければ足りる。図2は大手町プレップが式(8)で再計算し一致を確認)、p.33(2024年6月時点で資産1,000億ドル超の米銀26行に監督上の指摘347件。2001年に出され2013年に改訂されたレバレッジド・レンディングの共同指針)、p.33〜34(BDC が開示する投資先の負債/EBITDA の平均は6倍を超えることが多いこと、継続課金収入を基準とする ARR ローン)。↩
- R1 PDF p.34(第5.2節)。原文の一文を引用。結論(p.35、第6節)では、高い資本規制と重い監督の組み合わせが銀行の ROE 目標の達成を難しくし、銀行の貸出を抑えているという推測を述べる(著者の解釈)。↩
- R1 PDF p.2(BDC 以外への一般化)、p.15(資本比率の調整)、p.27(ROE は例示)、p.33(銀行が自らローンを持つ場合の経費は観察できない)、p.34 脚注43(投資家が超過収益を過大に見込み報酬が高い可能性は否定できない。既存研究と著者の未公表の推定ではアルファは小さく不正確)。↩
- R1 の2024年9月30日版 PDF p.1(要旨。中央値の BDC は8四半期で資産を8%、下位25%点で20%減らす)、2024年10月28日版 PDF p.1(要旨。貸付残高を9.5%減らし、約半分は返済に回すことで、約半分は資産売却で)、2026年2月版 PDF p.35(第6節。ストレス時の貸出縮小の可能性は Chernenko and Scharfstein(2025)が扱うと記載)。↩
- R2 PDF p.3(要旨)、p.6(第1節。2012年の CCAR による資本面のショックと LCR の効果は経済的な大きさが同程度。二値の指標では LCR の効果が大きく、連続の指標では Tier1 の不足額の係数がやや大きい)、p.16(第4節。LCR 対象行の預金シェアが10%ポイント高いと私募クレジットの残高が20%増える)。郡単位の差の差に近い分析。↩
- R3(Web 版本文第2・3段落、Chart 1 の注、Chart 2、注3・4)。ローン単位の銀行監督データ(R1 PDF p.27 脚注35 によれば Y-14)で、変動金利のリボルビング与信枠を対象に R1 と同様のリスク調整後 ROE を計算。リスクウェイトは事業向け100%・ファンド向け20%、目標資本比率12%、税率25%、基準金利5.3%、経費0.4%(両者共通)。平均で事業向け7.9%、ファンド向け29.2%(Chart 1)。差の主因はリスクウェイトによる資本負担(Chart 2 の要因分解)。銀行とファンドは別の借り手に貸しており、当面は競争相手というより協力関係にあるとの見方。↩
- R1 PDF p.26 脚注33(過剰担保が30%なら、担保のローンの約17%が延滞・デフォルトするまで SSFA のリスクウェイトは20%にとどまり、その後急に上がる。過剰担保が12.19%ちょうどなら、デフォルトが出始めるとすぐに上がる)。↩
- R1 PDF p.33 脚注41(レバレッジド・レンディングの共同指針について、2025年12月に OCC と FDIC が離脱し、FRB は離脱していないとの記載。FDIC の発表へのリンクあり)。↩
- R4 PDF p.6(「おわりに」に相当する部分。本邦機関投資家(銀行・生命保険・年金基金等)が PC へのエクスポージャーを拡大し、本邦金融機関は大手銀行を中心にファンド向けファイナンスを通じて PC 市場との連関性を高めている)。具体的な残高は同レビューの脚注13が金融システムレポート2025年4月号 BOX 3 等を参照先として挙げるが、本稿では確認していない。↩
参考文献(2 026年10月確認)
- R1 Chernenko, S., R. Ialenti and D. Scharfstein (2024), “Bank Capital and the Growth of Private Credit,” Working Paper(初稿 2024年6月19日。SSRN 5097437、DOI 10.2139/ssrn.5097437). 確認できた発表履歴:2024年7月23日の CEPR・ESSFM 2024 に旧題の発表記録があり、本研究の前身とみられる(旧題 “The Evolution of Private Credit”、Chernenko・Scharfstein。CEPR の会議プログラム)、現題での発表は2024年8月20日の Conference on Regulating Financial Markets(Deutsche Bundesbank 掲載のプログラム)から。参照した版:2026年2月21日版(University of Mannheim の Finance Area Seminar 掲載 PDF)。SSRN 版は2026年3月に改訂された可能性があるが(Crossref の登録更新日 2026年3月24日)、その本文は未確認。2024年9月30日版(Federal Reserve Bank of Boston の 2024 Stress Testing Research Conference 掲載)と2024年10月28日版(NBER 会議論文)は版の違いの確認に使用。査読:未査読(WP)。 bwl.uni-mannheim.de (参照箇所:2026年2月版 PDF p.1〜35(本文)。2024年9月版 PDF p.1(https://www.bostonfed.org/-/media/Documents/events/2024/stress-testing-research-conference/Scharfstein_Bank_Capital_and_Private_Credit_09-3-2024.pdf)、2024年10月版 PDF p.1(https://conference.nber.org/conf_papers/f210160/f210160.pdf)。脚注2〜18・21・22の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R2 Doerr, S., G. Gelos and V. Pursiainen (2026), “Bank liquidity regulation and the growth of private credit,” BIS Working Papers No 1388. 参照した版:BIS 公表版(2026年10月)。査読:未査読(WP)。 bis.org (参照箇所:PDF p.3・p.6・p.16。脚注19の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R3 Pandolfo, J. (2025), “Banks and Private Credit: Competitors or Partners?” Economic Bulletin, Federal Reserve Bank of Kansas City, August 6, 2025. 参照した版:同行サイトの Web 版。査読:連銀のエコノミストによる解説(学術誌の査読なし)。 kansascityfed.org (参照箇所:本文第2・3段落・Chart 1注・Chart 2・注3・4。脚注20の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R4 岩村由子・古賀聖奈・神保真宏・樋口智紀(2026)「プライベートクレジットファンドの拡大と多様化について」日銀レビュー 2026-J-12、日本銀行。参照した版:日本銀行サイトの PDF(2026年9月)。 boj.or.jp (参照箇所:PDF p.1・p.6・p.7。脚注1・23の根拠。閲覧日:2026年10月)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。