この記事で分かること
- 米国の担保登録データで、ダイレクトレンダー(直接貸し手)・銀行・ファイナンス会社の借り手と担保を比べた研究が、何を示したか
- 直接貸し手の拡大は「銀行が退いた穴埋め」だけでは説明しきれず、PEスポンサー付きで無形資産の多い企業に、事業の継続価値を担保に貸す分野で伸びたという結果と、その限界
- 日本でLBOローンやプライベートクレジットを検討するPE・銀行・財務担当が、貸し手と案件について確かめるべき点(清算価値と継続価値の差の計算を含む)
想定読者:LBOファイナンスを組成・審査するPEファンド・銀行の担当者、買収後の資金調達を担う財務担当、プライベートクレジットに関心のある方
前提知識:EBITDAとレバレッジ倍率、シニアローンと担保の基本(用語は本文で説明します)
買収案件のファイナンスで、銀行団の提示とファンドの貸し手の提示を比べる場面を考えてみる。ファンドの側は貸せる金額が大きく、財務制限条項(コベナンツ)の設計も柔軟に見えることがある。そこで「ファンドは銀行が引き受けないリスクを、高い金利で引き受けているだけだ」と片づけるか、「貸し方そのものが違う」と考えるかで、交渉の仕方も審査の仕方も変わってくる。
米国では、この問いに担保登録の大量データで答えようとした研究が2025年11月に公表され、2026年5月に改訂された。借り手の顔ぶれ、担保の取り方、PEスポンサーとの関係の三つで、直接貸し手は銀行とはっきり違う姿をしているという。本稿はその結果を、日本の制度と市場の違いを確かめつつ実務の点検項目に落とし込む。
この記事が主に参照する研究
Young Soo Jang, Dasol Kim, Amir Sufi, Xiangyu Chen(2025)「プライベートクレジットにおける直接貸し手の融資技術(The Lending Technology of Direct Lenders in Private Credit)」NBER Working Paper No. 34500
- 公表:初版 2025年11月(NBER WP)。参照した版:2026年5月の改訂版。査読:未査読(ワーキングペーパー)
- データ:米国のほぼ全事業所のデータベースに、担保登録(UCC filing、2006〜2022年)、PE投資・プライベートクレジットの商用データを結合。分析の中心は従業員21〜1,000人の非上場企業(2022年に約45万社)
- 方法:貸し手の種類別の比較(記述統計・回帰)と、業種×都市圏の市場単位で、2007年のPE保有の多さと金融危機後の銀行規制の影響が、その後の直接貸付の拡大をどれだけ予測するかの比較。無作為な実験ではなく、事前の違いを使った分析
- 位置づけ:新しいデータによる既存の仮説(銀行撤退説と継続価値説)の比較検証
押さえておく基礎:清算価値に貸すか、継続価値に貸すか
担保付き融資には大きく二つの考え方がある。一つは、借り手が破綻したときに売掛金・在庫・機械などを個別に処分して回収できる額、つまり清算価値を見て貸す方法で、在庫や売掛金の掛目で融資枠を決めるABLが典型である。もう一つは、破綻しても事業を止めずに一体のまま引き継いだり売却したりしたときの価値(企業価値に近い考え方)、つまり継続価値(going-concern value)を見て貸す方法で、実務では「キャッシュフローに貸す」と表現されることが多い。研究はこの区別を先行研究から引き継ぎ、継続価値に貸す融資の要点は、デフォルト時に事業全体の支配権が貸し手に移ることであり、継続価値と清算価値の差が大きい企業ほど意味を持つ、という議論を土台にしている。差が大きくなりやすいのは、価値が人材・顧客基盤・ソフトウェアのような切り離せない資産にある業種だ1。
もう一つの鍵は全資産担保(blanket lien)である。特定の機械や在庫ではなく、借り手の資産すべてに及ぶ担保権で、先行研究はこれを個別資産の処分価値ではなく、資産を組み合わせて生まれる事業価値への請求権と位置づけている2。米国では担保権者が州に担保権を登録するUCC filingが、銀行・ノンバンク・ファンドに共通して残る。研究はこの登録を使い、見えにくかった直接貸し手の借り手を銀行の借り手と同じ物差しで並べた。
研究が示した結果:借り手・担保・拡大の理由
まず規模感である。従業員21〜1,000人の非上場企業のうち、直接貸し手から担保付きで借りている企業は雇用加重で2.6%にとどまり、銀行の40.8%、ファイナンス会社の18.6%を大きく下回る3。ただしこの数字は借入関係の有無だけを数えたもので、金額は分からない。著者らは総額の推計から、直接貸し手は1件あたりの貸付がかなり大きいとみている4。
借り手の顔ぶれは明確に違う(表1)。直接貸し手の借り手は中央値で従業員67人と銀行の借り手(41人)より大きく、社齢は24年と銀行(32年)より若い。属する業種の無形資本比率は0.662で、銀行の0.570、ファイナンス会社の0.466より高い5。業種別には、専門・科学・技術サービス(法律・会計・設計・コンサルティング・研究開発など)が直接貸し手の借り手の19.7%を占め、銀行・ファイナンス会社の12.1%を上回る一方、飲食は2.8%対6.0%と逆になる6。五つの特徴をまとめた距離の指標で比べると、直接貸し手と銀行の借り手の距離は0.823、銀行とファイナンス会社の距離は0.158で、約5.2倍離れている7。両者の借り手の層は大きく違う。
表は横にスクロールできます →
| 直接貸し手 | 銀行 | ファイナンス会社 | |
|---|---|---|---|
| 従業員数(人) | 67 | 41 | 45 |
| 社齢(年) | 24 | 32 | 33 |
| 業種の無形資本比率 | 0.662 | 0.570 | 0.466 |
| 信用スコア(PAYDEX) | 72 | 74 | 73 |
| 本社所在都市圏の人口(万人) | 369.7 | 220.9 | 207.8 |
違いが最も大きいのはPEスポンサーとの関係と担保の取り方である(図1)。過去10年以内にPE投資を受けた企業は、直接貸し手の借り手の69%(雇用加重)を占めるが、銀行では12%、ファイナンス会社では14%にすぎない。PE保有の借り手が4割を超える直接貸し手は全体の約85%に及ぶ8。担保では、直接貸し手の貸付の79%が全資産担保なのに対し、銀行は15%で、固定資産(57%)と売掛金・在庫などの流動資産(25%)への担保が中心だった9。
では、なぜ直接貸付は伸びたのか。研究は業種(2桁)×都市圏の約1万4,600の市場を単位に、二つの説明を同時に検証した。一つは、金融危機後に米国の大手行がストレステスト(CCAR)の対象となって中堅企業向け融資を絞り、その穴を直接貸し手が埋めたという説明で、実際にCCAR対象行への依存が高かった市場ほど銀行からの借入は減り、直接貸し手の比率は上がった。固定効果なしの係数の比は約0.22で、著者らはこれを一定の解釈のもとで、銀行ローン1件の減少に対し約4分の1が直接貸し手に代わったことに相当するとしている10。もう一つは、直接貸付がまだ小さかった2007年時点でPE保有企業の多かった市場ほど、その後に直接貸付が伸びたという関係である。両者を標準化して並べると、2010〜2022年の直接貸し手比率の上昇に対する係数はPEが0.179、銀行規制が0.095で、PEの側が約1.9倍大きく、両者の交差項はほぼゼロだった。著者らはPEの経路が2〜3倍大きいと要約している11。
この関係は業種の性格で大きく変わる。2010〜2022年の直接貸し手比率の上昇を、業種・都市圏の固定効果を入れて推定すると、2007年のPE比率の単独項は-0.050(5%水準で有意)とむしろ負で、正の効果は無形資本比率との交差項(0.185)に現れた。有形資本中心でPEの存在感が大きい業種(石油・ガス探鉱など)では、直接貸付はほとんど伸びていない12。担保でも、市場内で直接貸し手から全資産担保付きで借りる企業の割合は、PEの多さと無形資本の多さが重なる市場で特に高い。銀行から全資産担保付きで借りる企業の割合もPEの多い市場で高いが、無形資本との交差項は有意でなかった13。さらに直接貸し手は銀行より業種の偏りが7.5%ポイント大きく、過剰特化度が最大の業種の無形資本比率は銀行より約20%ポイント高い14。
著者らはこれらを合わせ、直接貸し手の相対的な強みは、デフォルト時の継続価値と清算価値の差が大きい高リスクの借り手に貸すことにあると解釈している15。理由は制度の差だ。ファンドの投資方針はワラントの取得や、デフォルト後に株式を保有することを通常妨げない。これに対し米国の銀行は法律で非金融会社の株式保有を原則禁じられ、債務整理で受け取った株式も原則2年、最長5年で処分しなければならない16。事業を引き取ってでも価値を回収できる貸し手ほど、継続価値に貸しやすいという理屈である。
どこまで言えるか:データ・方法・版の違い
結果を読むうえで、いくつかの留保が要る。第一に、対象は米国の非上場の中堅企業で、測定は担保登録に依存している。登録は借入関係の有無を捉えるが金額は捉えず、5年ごとの更新で残るため、借入の時期も粗くしか分からない。著者らは、直接貸付のデータベースから無作為に選んだ100件で借り手の98%が登録データに現れ、その87%に当該貸し手の5年以内の登録があったことを確認しているが、シンジケートローンの参加行はほとんど登録しない17。第二に、拡大要因の分析は2007年時点の違いを使った予測関係であり、PEの多い市場に直接貸付が伸びた理由のすべてを因果として特定したものではない。固定効果を入れると係数は小さくなり、銀行規制の経路は一部の推定で有意でなくなる18。
第三に、論文は未査読で、すでに版によって数字が変わっている。2025年11月の初版はPE保有の判定にAIを使ったウェブ検索の指標を用い、直接貸し手の借り手の75%がPE保有と報告していた。改訂版は商用データベースの照合に判定を改め、69%とし、銀行規制の経路を新たに比較の対象に加えた19。個々の数値は今後も動きうる。
関連研究として、共著者の一人を含むBlock, Jang, Kaplan, Schulzeは2021年に米国38社・欧州119社のプライベートデット運用者に聞き取り調査を行った。米国のファンドは資本の78%をPEスポンサー付き案件に投じ(欧州は42%)、銀行が貸さない理由として「シンジケーションには規模が小さい」「良い担保となる有形資産が少ない」「財務が整っておらずデューデリジェンスが煩雑」をそれぞれ4割以上の回答者が選んだ20。運用者自身の見方ではあるが、担保登録から得た今回の結果と方向は一致する。
大手町プレップの考察:差は「担 保の形」より「事 業を引き取れるか」
ここからは編集部の見方である。この研究からは、直接貸し手を「金利の高い銀行」とだけみなすと判断を誤りやすい、という見方もできる(仮説)。全資産担保は、事業をまるごと引き継げる貸し手にとっては継続価値への請求権だが、引き継ぐ手段や人材を持たない貸し手にとっては、結局は個別資産を処分する権利に近い。同じ担保の文言でも、誰が持つかで経済的な意味が変わりうる(仮説)。
日本に当てはめるとき、担保の形だけでは差が出にくいことにも注意したい。金融庁は企業価値担保権の説明のなかで、M&Aやプロジェクトファイナンスでは現在も全財産の担保設定が一般的だと書いている21。これを踏まえると、日本のLBOの担保パッケージについては、米国の「銀行は特定資産、ファンドは全資産」という対比がそのままは移らない可能性がある。その場合に貸し手を分けるのは、業績が崩れたときに経営の主導権を取り、事業を引き継ぐか売るかまで実行できるか、そして無形資産の多い業種を見極める審査の専門性だ、という見方もできる(仮説)。日本の個別案件の担保の実態は、本稿では統計で確かめていない。
日本の実務への応用:銀行中心の市場で何が違うか
日本のLBOローンは銀行が中心の市場である。金融庁が2024年に公表したアンケートでは、PEファンドがスポンサーの国内案件について、大手9行のLBOローン残高は2019年3月末の約2.6兆円から2023年9月末の約6.6兆円に増え、3メガバンクで約80%を占めた。メザニン残高は約3,800億円で全体の約6%にとどまり、地域銀行のLBOローン残高も約1.4兆円に増えている22。日本銀行は、国内のLBOファイナンスはセカンダリー市場が整っておらず、与信の集中度が高い傾向にあると指摘している23。同じアンケートでは、大手行の審査部門から、高いレバレッジや緩いコベナンツを求められて融資規律が働きにくいこと、契約前に経営者に直接話を聞く機会がないことが課題として挙がった24。
制度の側にも動きがある。事業性融資推進法による企業価値担保権が2026年5月25日に施行され、会社の総財産を担保の目的とし、商業登記簿に登記できるようになった25。米国の全資産担保と同じではないが、事業の継続価値を担保として扱う仕組みである。貸し手の側では、2026年9月30日に地域銀行・信託銀行を含む6行が、国内LBOローンを提供する総額約500億円のプライベート・デット・ファンドを組成する合弁契約を結んだと公表した26。日本のプライベートクレジットの市場規模を一次資料で示す統計は、本稿の調査では確認できなかった。米国の研究が示した棲み分けが日本でも生じるかは、まだ観察できる段階にない。
この前提で、立場ごとに論点を整理しておく。PEファンドにとっては、ファンドの貸し手を比較対象に入れるかどうかは金利と金額だけで決まらない。業績が計画を大きく下回ったとき、その貸し手が株式を取得して経営に入る可能性があるかどうかは、スポンサー自身の支配権に直結する。銀行にとっては、無形資産の多い対象会社で清算価値がほとんど残らないことを前提に、継続価値を回収する手段(株式質の実行、事業の一体売却、DES)を、自行の制約のもとで本当に使えるのかを詰める必要がある。LBOファイナンスの銀行審査で通常見るキャッシュフローとレバレッジに加え、回収の道筋そのものが審査の対象になる。財務担当にとっては、自社が継続価値と清算価値の差の大きい企業かどうかを数字で示せれば、どの貸し手と話すべきかの判断材料になる。
学習用の設例:清算価値と継続価値の差を計算する
学習用の設例(架空)
- A社(業務ソフトウェアと保守サービス)とB社(金属加工)は、どちらも正常時のEBITDAが10億円、シニアローンが45億円(4.5倍)
- ストレス時はEBITDAが30%減の7億円になると仮定
- 清算価値:資産ごとの帳簿価額×回収率(売掛金70%、棚卸資産40%、機械・工場などの有形固定資産50%)。A社のソフトウェアや顧客基盤は切り離して売れないものとして0
- 継続価値:ストレス時EBITDA×事業一体で売却する場合のEV/EBITDA倍率(A社7.0倍、B社5.0倍)
- 単純化のため、ほかの債権者、手続費用、時間価値は考えない
A社の清算価値は6.6億円しかないが、継続価値は49.0億円で、差は42.4億円に達する。B社は清算価値24.9億円、継続価値35.0億円で、差は10.1億円にとどまる(図2)。シニアローンの回収率は、事業を一体で売れればA社100%、B社77.8%だが、資産の切り売りしかできなければA社は14.7%、B社は55.3%になる。A社に貸す場合、回収の大半は「事業を止めずに引き継ぐ、または売る」ことができるかどうかにかかっている。研究がいう継続価値と清算価値の差の大きい借り手とは、このA社のような企業である。
A社の継続価値は前提に敏感である(表2)。基本ケースでは全額を回収できるが、全額回収に必要な倍率は約6.43倍で、余裕は大きくない。EBITDAが40%減って倍率が5倍に下がれば回収率は66.7%、50%減なら55.6%まで落ちる。継続価値に貸すことは、ストレス時の事業の値段に賭けることでもある。
表は横にスクロールできます →
| EBITDAの減少 \ EV/EBITDA倍率 | 5.0倍 | 6.0倍 | 7.0倍 | 8.0倍 |
|---|---|---|---|---|
| EBITDA 20%減 | 88.9% | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
| EBITDA 30%減 | 77.8% | 93.3% | 100.0% | 100.0% |
| EBITDA 40%減 | 66.7% | 80.0% | 93.3% | 100.0% |
| EBITDA 50%減 | 55.6% | 66.7% | 77.8% | 88.9% |
明日から使える確認項目
- 清算価値と継続価値を並べて計算する。資産ごとに帳簿価額×回収率を積み上げた清算価値と、ストレス時EBITDA×倍率の継続価値を出し、ローン額に対する両方の回収率を示す。差が大きい案件ほど、継続価値を回収する手段の確認に時間を割く。
- 貸し手に「デフォルト後に株式を取得し、一定期間保有して事業を立て直した例はあるか。その判断をするのは誰か」と聞く。継続価値に貸すと言う貸し手でも、実行の経験と体制がなければ担保の意味は清算価値に近づく。
- 担保の文言ではなく回収の道筋を書き出す。株式質の実行、事業の一体売却、企業価値担保権の実行のどれを想定し、自社(自行)の規制や方針のもとでどこまで実行できるかを確認する。日本の銀行が債務整理で株式を持つ場合の制約は、案件ごとに法務部門と確かめる。
- 貸し手の業種の集中度を確認する。貸し手の既存ポートフォリオに同じ業種の案件がどれだけあり、ストレス時の倍率や業界の売却先についてどんな知見を持っているかを聞く。
- スポンサーへの依存を点検する。スポンサーが追加出資しない、あるいは途中で手を引いた場合に、貸し手は何をするのか。日本銀行が挙げるスポンサーリスクの検証項目(実績、追加支援能力、投資回収方針)とあわせて確認する27。
- 米国の数値(69%、79%など)を日本の市場構成やシェアの推計に流用しない。
よくある質問
研究は、直接貸し手が銀行の代わりになっていないと言っているのですか。
一部は代わりになっていると読めます。著者らは、規制による銀行融資の減少の約4分の1が直接貸し手に代わったと条件付きで解釈しています。ただし拡大をより強く説明するのは、PEスポンサー付きで無形資産の多い企業への融資という分野だ、というのが研究の結論です。
日本でも企業価値担保権ができたので、銀行も米国の直接貸し手と同じ貸し方ができるのでしょうか。
担保の仕組みは近づきましたが、それだけで同じになるとは限りません。研究が強みの理由に挙げたのは、デフォルト後に事業を引き取って保有できるかという点で、担保実行後に誰が事業を運営するのかを個別に確かめる必要があります。
まとめ
米国の担保登録データを使った研究によると、直接貸し手の拡大は、銀行規制による撤退の穴埋めという面もあるが、PEスポンサー付きで無形資産の多い企業に全資産担保で継続価値に貸す分野への特化のほうが、より強く説明する。結果は未査読論文の米国データに基づき、数値は版によって変わっている。日本では全財産の担保設定も一般的とされるため、差は担保の形より事業を引き取って価値を回収できるかに現れる、という見方もできる(仮説)。案件ごとに清算価値と継続価値の差を計算し、その差を誰がどう回収するのかを確かめることが出発点になる。
脚注
- R1(NBER WP 34500, 2026年5月改訂版)PDF p.26〜27(第5.1節)。継続価値に基づく融資と清算価値に基づく融資の区別、支配権の移転、両者の差が無形資本の業種で大きいという議論は、Kermani and Ma(2020)、Lian and Ma(2021)などの先行研究を著者らが紹介したもの。↩
- R1 PDF p.29(第5.3節)。全資産担保を事業の継続価値への請求権とみる見方は、Lian and Ma(2021)、Caglio, Darst and Kalemli-Özcan(2021)の議論として紹介されている。UCC filingの説明とデータの範囲(2006〜2022年、全50州とワシントンDC)はPDF p.13。↩
- R1 PDF p.42 表1(非上場ミドルマーケット、雇用加重、2022年時点で2018〜2022年に担保登録がある企業の割合)。BDCやPitchBookの記録を加えた広義のプライベートクレジットでは3.6%。↩
- R1 PDF p.18〜19。登録は借入関係の有無(extensive margin)しか捉えないこと、2022年の直接貸付の推計5,000億ドルと比較可能な銀行の商工業向け貸出1.4兆ドルの比(約0.36)が件数ベースの比(約0.18)を上回ることから、1件あたりの貸付が大きいと推測している。推計は著者らによるもの。↩
- R1 PDF p.43 表2の中央値。無形資本比率は業種(NAICS 3桁)ごとの、無形資本÷(無形資本+有形資本)の中央値(He, Mostrom and Sufi(2024)の指標、PDF p.16)。貸し手単位の回帰では、直接貸し手の借り手は平均で約1標準偏差大きく、約2標準偏差無形資本寄りで、約1標準偏差若く、差は統計的に有意(PDF p.20、図1)。↩
- R1 PDF p.44 表3パネルA(NAICS 541と722の構成比)。本文(PDF p.20)は541の差を8%ポイントと書くが、本稿は表の値を使った。↩
- R1 PDF p.45 表4(全規模)、p.21。比較した特徴は従業員数・社齢・信用スコア・業種の無形資本比率・都市圏人口の五つ。規模別でも4〜7倍の差が残る。↩
- R1 PDF p.21、p.55 図2。PE保有は過去10年以内にPitchBookまたはCapital IQでPE投資が記録された企業。等加重では直接貸し手58%、銀行6%、ファイナンス会社7%。銀行の96%、ファイナンス会社の92%は、PE保有の借り手の割合が2割未満。↩
- R1 PDF p.30、p.60 図7パネルA。各貸し手の貸付に占める担保の種類の割合を、貸付件数で加重して平均したもの。ファイナンス会社の全資産担保は3%で、固定資産が84%。↩
- R1 PDF p.24〜25(第4.3節)、p.48 表7、p.49 表8列1・3(固定効果なし)。CCAR(包括的資本分析・レビュー)は2009年以降の米国大手行のストレステスト。2011年に初めて対象となった18行への依存度(2006〜2010年の登録シェア)で市場の影響度を測った(PDF p.25 注23)。依存度1単位の上昇で銀行比率が0.110低下し、直接貸し手比率の上昇が0.024大きく、比は約0.22。著者らは列1を第1段階とみなした場合の解釈として、約4分の1の代替率を示している。固定効果付き(列4・6)では−0.270と0.005。↩
- R1 PDF p.26、p.50 表9列1〜6、p.6。値は標準化係数。2022年時点の直接貸し手比率ではPEが0.279、銀行規制が0.138。交差項は−0.000と−0.002。↩
- R1 PDF p.28〜29、p.51 表10列6(2010〜2022年の直接貸し手比率の変化、業種・都市圏の固定効果付き。PE単独項−0.050は5%水準で有意、交差項0.185は1%水準で有意)と列3(2022年時点の比率。単独項−0.028は有意でなく、交差項0.200)、図6。著者らは、PEが少ない無形資本の業種でも直接貸し手が伸びた可能性を指摘し、今後の課題としている(PDF p.29)。↩
- R1 PDF p.30〜31、p.52 表11(業種・都市圏の固定効果付き。被説明変数は、市場内の企業のうち各種類の貸し手から全資産担保付き融資を受けている企業の割合で、図7の「各貸し手の貸付に占める全資産担保の割合」とは分母が異なる)。直接貸し手の場合、PE比率×無形資本比率の係数は0.040(1%水準で有意、列2)。銀行の場合、PE比率は正(列3で0.065、1%水準で有意)だが、交差項は−0.004で有意でない(列4)。著者らは、銀行はレバレッジとリスクの高さから全資産担保を使うが、無形資本ゆえではないと解釈している。↩
- R1 PDF p.31〜32(式3)、p.53 表12。業種の偏りはBlickle, Parlatore and Saunders(2023)の過剰特化度で測る。業種(NAICS 3桁)ごとに「その貸し手の貸付件数に占める構成比−全貸し手の構成比」を求め、その最大値をとる(超過幅が最大の業種で測るため、貸し手内で構成比が最大の業種とは限らない)。貸し手の規模区分を調整している。ファイナンス会社の偏りはさらに大きいが、設備メーカー系の金融会社などが含まれるためと説明されている。↩
- R1 PDF p.2(要旨)、p.32(第6節)。↩
- R1 PDF p.27〜28。米国の銀行の株式保有制限(1956年銀行持株会社法、債務整理で得た株式の処分期限)と、2001年の米監督当局の共同文書が企業価値への依存に慎重な姿勢を示したことを、著者らが説明している。日本の銀行に関する制度は本稿では確認していない。↩
- R1 PDF p.62〜63(付録A.1)。KBRAの直接貸付データベースから2021年の100件を抽出した検証。別の標本(Jang(2025)の100件)でも借り手の100%が現れ、87%に当該貸し手の登録があった。シンジケートローンでは主幹事の62%に登録があったが、参加行は8.2%だった。売上データは補完値が多いため使っていない(PDF p.13)。↩
- R1 PDF p.22〜24、p.46 表5、p.50 表9列5。業種・都市圏の固定効果を入れると、2007年と2022年のPE比率の関係は0.954から0.367に下がり、直接貸し手比率の変化に対する標準化係数はPEが0.064、銀行規制が0.024(有意でない)となる。↩
- R1の初版(NBER WP 34500, 2025年11月)PDF p.3〜5と、改訂版(2026年5月)PDF p.13・p.21・p.26の比較。初版は銀行17%・ファイナンス会社16%としていた。↩
- R2(NBER WP 30868, 2023年1月版)p.8(調査期間2021年8〜9月、回答した米国38社・欧州119社)、p.11(PEスポンサー付き案件への投資割合)、p.18(銀行が貸さない理由、複数回答)。本稿は掲載誌版(2024年)の本文を確認しておらず、数値はワーキングペーパー版による。↩
- R5 金融庁「制度の概要」p.2(M&A/プロジェクト・ファイナンスの注記)。↩
- R3 金融庁「大手銀行・地域銀行 国内LBOローンに関するアンケート調査結果」(2024年7月25日)p.3(定義)、p.5(大手銀行9行)、p.12(地域銀行100行)。銀行からの報告ベースの集計。日本銀行(R4)は2022年度の国内LBOファイナンスの与信残高を5兆円程度と推計しており、時点と集計範囲が異なるため本稿では金融庁の値を使った。↩
- R4 日本銀行「LBOファイナンスの動向とリスク管理」日銀レビュー2024-J-8(2024年5月)p.2。↩
- R3 p.10(大手銀行の審査業務における課題・問題意識、自由記述の回答)。↩
- R5 金融庁「制度の概要」p.2(担保目的財産は会社の総財産〈7条〉、商業登記簿に登記〈15条〉、令和8年5月25日施行)。金融庁「事業性融資の推進(企業価値担保権等)」のページも参照。↩
- R6 株式会社あおぞら銀行・株式会社りそな銀行・株式会社埼玉りそな銀行・三井住友信託銀行株式会社・株式会社福岡銀行・株式会社常陽銀行「国内LBOローンの提供を目的としたプライベート・デット・ファンド設立に関する合弁契約の締結について」(2026年9月30日)p.1。↩
- R4 p.4〜5 図表6(スポンサーリスクの検証:投資年数・実績、過去案件のパフォーマンス、追加支援能力、当該案件の売却方針)。↩
参考文献(2 026年10月確認)
- R1 Jang, Y. S., D. Kim, A. Sufi and X. Chen (2025), “The Lending Technology of Direct Lenders in Private Credit,” NBER Working Paper No. 34500. DOI: 10.3386/w34500. 参照した版:NBER WP 改訂版(2026年5月)。初版(2025年11月)は版の違いの確認に使用。査読:未査読(WP)。 nber.org (参照箇所:改訂版 PDF p.2〜33(本文)、p.42〜53(表1〜12)、p.55・p.60(図2・図7)、p.62〜63(付録A)。初版 PDF p.3〜5。脚注1〜19の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R2 Block, J., Y. S. Jang, S. N. Kaplan and A. Schulze (2024), “A Survey of Private Debt Funds,” Review of Corporate Finance Studies 13(2), 335–383. DOI: 10.1093/rcfs/cfae001. 参照した版:NBER Working Paper No. 30868(2023年1月, DOI: 10.3386/w30868)。査読:掲載誌版は査読済み(本稿は WP 版の本文を参照)。 nber.org (参照箇所:WP 版 p.8・p.11・p.18。脚注20の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R3 金融庁「大手銀行・地域銀行 国内LBOローンに関するアンケート調査結果」(2024年7月25日) fsa.go.jp (参照箇所:p.3・p.5・p.10・p.12。脚注22・24の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R4 日本銀行 金融機構局(金口剛久・稲次春彦・三浦翔)「LBOファイナンスの動向とリスク管理」日銀レビュー 2024-J-8(2024年5月) boj.or.jp (参照箇所:p.2〜5(図表3・図表6)。脚注22・23・27の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R5 金融庁「事業性融資の推進(企業価値担保権等)」および「制度の概要」(事業性融資の推進等に関する法律〈令和6年法律第52号〉) fsa.go.jp (参照箇所:制度の概要 p.2。脚注21・25の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R6 株式会社あおぞら銀行ほか5行「国内LBOローンの提供を目的としたプライベート・デット・ファンド設立に関する合弁契約の締結について」(2026年9月30日、三井住友信託銀行の掲載版) smtb.jp (参照箇所:p.1。脚注26の根拠。閲覧日:2026年10月)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。本記事はAIを用いて調査・執筆し、編集部が確認しました。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。