想定読者:銀行・証券会社・IFAで投資信託を提案する担当者とその管理職、ウェルスマネジメント部門、資産運用会社の商品企画・販売企画・コンプライアンス担当、資産運用業界を志望する方
前提知識:投資信託の手数料(販売手数料と信託報酬)の仕組みと、指数に連動する運用の意味(用語は本文で説明します)

金融庁によると、新しいNISAが始まった2024年1月以降、NISAの口座数は大幅に増え、2025年12月末には2,800万口座と、18歳以上の4人に1人が持つまでになった1。その面談で担当者が「指数に連動する低コストの投信を長く持つのが基本です」と話すか、「この運用チームは実績のある分野に絞って市場を上回ってきました」と話すかで、顧客の考えと選ぶ商品はどれほど変わるのか。顧客がもともと持っていた考えと反対の説明は、聞き流されるのか、それとも受け入れられるのか。

この問いを、説明の中身を無作為に入れ替える実験で調べた研究がある。論文の公表は2024年だが、実験そのものは2012年に米国ボストン圏で行われた2。本稿は、どちらの運用が優れているかではなく、説明が顧客の信念と選択をどう動かすかに絞って結果と限界を整理し、日本の販売・助言の現場で確かめる点を考える。

この記事が主に参照する研究

Antoinette Schoar, Yang Sun(2024)「金融アドバイスと投資家の信念:アクティブ戦略とパッシブ戦略の実験による証拠(Financial Advice and Investor Beliefs: Experimental Evidence on Active vs. Passive Strategies)」NBER Working Paper No. 33001(2026年3月の改訂稿)

  • 公表:2024年6月に前身の題名(Financial Narratives and Investor Beliefs)で紹介、NBER WPは2024年9月。参照した版:2026年3月1日付の改訂稿(大学のセミナー資料。表紙に著者名なし)。査読:確認した著者の経歴書(2025年10月)では Review of Financial Studies で改訂・再提出(R&R)。その後の掲載状況は未確認
  • データ:米国ボストン・ケンブリッジ地域で募集した521人(分析の中心は501人)。MITとハーバード大学の実験室で、2012年6〜11月に実施
  • 方法:説明動画の内容(アクティブ推奨かパッシブ推奨か)とアドバイザーの報酬の説明を無作為に割り当てたランダム化比較試験。事前の考えや金融知識による違いは、層別の比較
  • 位置づけ:助言の「受け手」側を実験で検証した研究。助言する側の利益相反や信念を調べた先行研究を補う

押さえて​おく​基礎:説明は​「事実の選び方」で​できている

アクティブ​運用と​パッシブ運用のどちらを勧める説明も、多くは本当の数字でできている。違うのは、どの期間・どの母集団・どの費用の扱いの数字を選び、どんな筋書きでつなぐかである。研究はこの「筋書き+裏付けのデータ」を助言と定義し、現役のアドバイザーの意見を聞いて台本を書いた。俳優4人が演じる4〜6分の動画で、パッシブ推奨は分散と低コストを、アクティブ推奨は有望な業種・銘柄の選別と市場のタイミング、実績のある運用者を選ぶことを根拠に挙げる。台本では、指数ファンドの平均手数料を年約0.2%、アクティブ型を年約1.6%と紹介したうえで、パッシブ側は長期の平均リターンがほぼ同じなら費用の差が効くと述べ、アクティブ側は直近3年に大型バリュー型の8割超が指数を上回ったといった数字を示した。著者らは、どちらもうそではなく、それぞれに有利なデータを選んだ、業界で一般的な見せ方だと説明している。実験の最後には、全員に中立的な解説動画を見せている3。

参加者の考えは、動画の前に「分散」「手数料を抑える」「良い銘柄を選ぶ」「市場のタイミングを計る」など7項目を重要な順に並べてもらい、−4(強くアクティブ寄り)から+4(強くパッシブ寄り)の信念スコアにした。正ならパッシブ型、0以下ならアクティブ型と分類する。金融知識は複利、金利と債券価格の関係、投資信託の運用管理費用の意味など8問で測り、6問以上の正解を高リテラシーとした(平均は4.91問)。どちらの動画を見るかは、この信念や知識と無関係に無作為に決めている4。

研究が​示した​結果:好む​説明と、​動かされる​説明は​一致しない

動画を見た後、「アドバイザーの勧めに同意するか」を1〜9で答えてもらうと、平均は6.44、標準偏差は1.71だった。パッシブ推奨はアクティブ推奨より0.64ポイント高く、自分の事前の考えに反する説明は合う説明より0.64ポイント低く評価された。いずれも1%水準で有意で、大きさは標準偏差の約0.37倍(著者らの表現では約3分の1)にあたる5。高リテラシー層では、事前パッシブ型がアクティブ推奨を見ると、同層の事前アクティブ型×アクティブ推奨群より同意が1.08ポイント低かったのに対し、低リテラシー層では群の間に有意な差がなかった。著者らは、知識の少ない層はどの助言にもおおむね同意する傾向があると解釈している6。

ところが信念の動きは、評価とは逆の形になった。事前にアクティブ型だった人がパッシブ推奨を見ると、信念スコアは基準の群(アクティブ型がアクティブ推奨を見た群)より3.1ポイントパッシブ寄りになり、事前にパッシブ型だった人がアクティブ推奨を見ると基準の群より1.6ポイントアクティブ寄りになった。考えに合う説明を見た群の動きは小さく、パッシブ型がパッシブ推奨を見た群の変化は、基準の群より0.6ポイントパッシブ寄りにとどまった。それでもゼロとは有意に異なり、著者らは考えに合う説明で両者の考えがさらに分かれたとみている7。低く評価した説明ほど、考えを動かしていたことになる。

図1は、反対の説明を見た群の平均の変化を金融知識で分けたものである。パッシブ推奨はどちらの層も大きく動かしたが、アクティブ推奨への反応は層で異なった。高リテラシー層の動きは小さく(回帰では0.57ポイントで有意でない)、この群の30%はまったく変化しなかった。低リテラシー層はアクティブ推奨でも2.57ポイント動き、パッシブ推奨への反応(3.03ポイント)と統計的に区別できなかった8。低リテラシー層では、事前にパッシブ型だった人もアクティブ推奨の後は「市場に常に勝つことはできる」という考えへの同意が、事前アクティブ型と統計的に有意な差がない水準になった9。

反対の助言を見た後の信念の平均変化図1 反対の助言を見た後の信念の動き信念スコア(−4〜+4)の平均の変化。単位:ポイント事前はアクティブ型 → パッシブ推奨を視聴高リテラシー+2.8低リテラシー+3.3事前はパッシブ型 → アクティブ推奨を視聴高リテラシー−0.85低リテラシー−2.3← アクティブ寄りパッシブ寄り →高リテラシー=金融知識8問のうち6問以上正解。高リテラシー層のアクティブ推奨の効果は回帰では有意でなかった(本文参照)。
出所:R1(2026年3月1日付の改訂稿)​PDF p.25〜26(図4の説明)の​群ごとの​平均値を​基に​大手町​プレップ​作成。​信念​スコアは、​分散・​手数料の​最小化・​銘柄選択・​市場​タイミングの​4項目の​重要度の​順位から​作る​指標で、​+4が​最も​パッシブ​寄り、​−4が​最も​アクティブ​寄り。​動画の​前後の​差。​米国​ボストン​圏の​参加者、​2012年の​実験室での​実験。​回帰に​よる​推定値​(表9)は​本文に​記載。

考えの変化は、商品の選択にも表れた。最後に参加者は、手数料控除後のリターンとリスクをほぼそろえたアクティブ型と指数型の3組・6本から1本を選んだ。参加者の中から抽選で3,000ドルが当たり、その商品で受け取る仕組みである。図2のとおり、指数ファンドを選んだ割合は、事前アクティブ型ではアクティブ推奨の後が25%、パッシブ推奨の後が81%、事前パッシブ型では49%と94%だった。事前の考えより、直前に見た説明の差の方が大きい10。金融知識で分けると、低リテラシー層では、アクティブ推奨を見た後は事前の考えによる選択の差は統計的に有意でなくなった(事前パッシブ型の指数選択は基準の群より9.3%ポイント高いが、有意でない)。高リテラシー層では同じ比較で33.5%ポイントの差が残った11。

助言と事前の信念別の指数ファンド選択率図2 最後に指数ファンドを選んだ割合3,000ドルの抽選賞品を受け取る商品として6本から選択事前はアクティブ型アクティブ推奨を視聴25%パッシブ推奨を視聴81%事前はパッシブ型アクティブ推奨を視聴49%パッシブ推奨を視聴94%6本はアクティブ型と指数型の3組。組ごとに手数料控除後のリターンとリスクをほぼそろえ、名前は伏せた。残りはアクティブ型を選んだ人と回答しなかった人。
出所:R1(2026年3月1日付の改訂稿)​PDF p.29(図5の説明)の​割合を​基に​大手町​プレップ​作成。​事前の​信念は​動画の​前に​測り、​どちらの​動画を​見るかは​無作為に​決めた。​「回答しない」を​選んだ​人を​含む割合。

もう一つの無作為化は、アドバイザーの報酬の説明である。動画の冒頭で、報酬は定額で販売額に左右されないと説明する版、販売額と顧客の払う手数料に応じて手数料を受け取ると説明する版、何も説明しない版を割り当てた。表1のとおり、定額と説明した場合は、同じ内容の助言でも同意が0.54ポイント高く、勧めの方向への信念の更新も0.71ポイント大きかった。差は低リテラシー層で大きく、同意・信念の更新とも統計的に有意だったのは低リテラシー層だけだった(同じ版の本文にある0.55・0.77は表の推定値と一致しないため、表の値を示す)12。

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表1 アドバイザーが報酬の受け取り方を説明したとき(定額−手数料の差)
全体高リテラシー低リテラシー
助言への同意(1〜9)+0.54(1%水準)+0.41(有意でない)+0.57(5%水準)
推奨の方向への信念の更新(信念スコアの変化、ポイント)+0.71(5%水準)+0.46(有意でない)+0.94(5%水準)
出所:R1(2026年3月1日付の改訂稿)​PDF p.56 表13 の​推定値を​基に​大手町​プレップ​作成。​動画の​冒頭で​アドバイザーが​「報酬は定額で、販売額に左右されない」​(128人)、​「販売額と​顧客の​手数料に​応じた​手数料を​受け取る」​(123人)と​説明するか、​説明しない​(250人)かを​無作為に​変えた。​表の​値は​「定額」と​「手数料」の差​(単位はそれぞれの尺度のポイント)で、​同意は​推奨の​内容と​事前の​信念の​組み​合わせを、​信念の​更新は​推奨の​方向と​報酬説明の​交互作用を​用い、​アドバイザーの​固定効果を​含めて​推定している。​全標本の​推定では、​報酬の​説明が​ない​群の​推奨の​方向への​更新​(方向の係数)は​1.39ポイントで、​定額の​群は​約1.65、​手数料の​群は​約0.94(表13 列4 から計算)。​同じ版の​本文​(PDF p.7・p.31〜32)は​同意の​差を​0.55、​更新の​差を​0.77(1%水準)、​更新を​1.37・1.7・0.94と​記しており、​表の​値と​一致しない​(2024年9月の NBER 版 表13 の​値と​同じ)。​ここでは​表の​値を​示した。

アドバイザーの好感度の評価は、どの群でもほとんど変わらなかった。参加者は人物の印象と助言の中身を分けて評価していたと著者らは解釈している。一方、「自分のお金を持ってこのアドバイザーのもとに戻るか」では、高リテラシー層がアクティブ推奨のアドバイザーを避けた反面、事前パッシブ型がパッシブ推奨を高く評価しても、そのアドバイザーに戻る意向は高まらなかった。著者らは、この結果が一般化できるなら、パッシブ推奨はアドバイザーの収益につながりにくいと述べている13。

研究の​範囲と​限界:2012年の​ボストン、​実験室、​録画の​助言

まず条件の狭さを確かめたい。実験は2012年に行われ、参加者は自分から応募した人たちで、助言に関心のある層に偏りうる。年齢の中央値は34歳、大卒は82%(全米は29%)と著者ら自身が比較している。事前の考えはパッシブ投資が既に広く知られた米国で形成されたものだ。助言は録画動画で、継続的な関係のある担当者との面談ではなく、著者らも結果が最も当てはまるのは標準化された動画による助言だとしている。実際の保有や長期の運用成果は観察しておらず、商品選択は抽選賞品の受け取り方で測っている14。論文は、確認した著者の経歴書(2025年10月)では改訂・再提出(R&R)の段階で、その後の掲載状況は未確認である。本稿は2026年3月付の改訂稿に依拠しており、2024年9月のNBER版とは信念の変化や報酬の説明の効果の推定値が一部異なる15。

無作為化されたのは動画の内容と報酬の説明であり、そこから生じた差は動画の効果と読める。他方、事前の考えや金融知識による違いは参加者の属性による層別の比較で、知識そのものが反応を変えた原因とまでは言えない。

助言する側については、別の研究がある。同じ著者を含む監査研究(2012年公表)では、訓練した調査員が2008年にボストン圏のアドバイザーを284回訪ね、約半数の面談でアクティブ型を勧められた一方、指数ファンドを勧められたのは21回(論文の記載では面談の7.5%)だった。低コストの指数型の資産を持参した調査員にも、アクティブ型への切り替えが勧められている16。カナダの金融機関のデータを使った研究は、多くのアドバイザーが自分の資産でも顧客と同じように高コストのアクティブ型を選んでいたことから、利益相反だけでなくアドバイザー自身の信念が助言を左右している可能性を指摘した17。本研究はその反対側、つまり助言を受けた側がどう反応するかを示したものになる。

大手町​プレップの​考察:​「満足度」と​「理解」は​別に​測る

以下は研究結果を基にした編集部の見方で、論文が検証したものではない。

第一に、顧客の満足や同意は、説明の質の物差しになりにくい。実験では、顧客は自分の考えに合う説明を高く評価したが、考えを大きく動かしたのは反対の説明だった。面談後のアンケートで「分かりやすかった」「納得した」が多くても、顧客の考えが説明に合わせて動いただけかもしれず、商品の性質を理解したかどうかは分からない。

第二に、金融知識の少ない層は、どちらの説明にも大きく反応した。研究では、低リテラシー層はどちらの推奨にも同程度に大きく反応した。著者らは、こうした層はどんな助言にも動かされやすく、質の低い助言にも弱くなりうると解釈している18。販売の現場に引き直すと、知識の少ない顧客への説明ほど、期間や比較対象の選び方を担当者任せにしない仕組みが要ると考えられる(仮説)。

第三に、報酬の受け取り方の説明は、知識の少ない顧客にとって数少ない判断材料になっている可能性がある。表1の差は低リテラシー層で大きかった。手数料の開示を書面の後ろに回すのではなく、勧める理由と同じ場面で示すことには、規制対応を超えた意味があるかもしれない。

日本の​実務への​応用:顧客本位の​原則と​照らす

日本では、フィデューシャリー・​デューティーの考え方を基にした金融庁の「顧客本位の業務運営に関する原則」(2017年策定、2024年9月改訂)が、この研究の論点と重なる項目を挙げている。原則3は、販売・推奨に伴って商品の提供会社から手数料を受け取る場合を利益相反の考慮事情として例示し、原則4は手数料がどのサービスの対価かを含めた説明を求める。原則5の注は、重要な情報に商品の選定理由と利益相反の具体的内容を含め、顧客の取引経験や金融知識を考慮して、誤解を招くことのない誠実な内容で提供するよう求めている。原則6の注は、類似商品や代替商品と手数料を含めて比べながら提案すること、原則7は顧客の最善の利益を促す報酬・業績評価体系を挙げる19。2024年11月には最善利益勘案義務を定めた改正金融サービス提供法が施行された20。

金融庁の2026年7月のモニタリング結果は、販売会社の預り資産残高上位10銘柄に占める「サテライト資産」(テーマ型、新興国、REIT、ハイ・イールド債など)の割合が、中堅証券で6割弱、大手証券で4割弱、地域銀行で3割弱だったとし、この割合が高い販売会社ほど合成シャープレシオが低い傾向があったと報告している。金融庁は、この分類は分析上の便宜で商品の優劣を示すものではなく、この数字だけで評価はできないとも明記している21。法令上の適合性原則が「誰に何を勧めてよいか」を問うのに対し、この研究が扱うのは「どう説明すると顧客の考えがどう動くか」である。説明の筋書きが顧客の考えと商品選択を動かしうるという研究の示唆は、どの説明が販売の構成につながっているかを点検する理由になる。

資産運用会社にとっては、販売会社に渡す販売用資料が「台本」に当たる。過去何年の成績を示すか、どの指数と比べるか、費用控除の前か後かは、資料を作る段階で決まる。サバイバーシップバイアスのように、母集団の選び方で見え方が変わる数字もある。資料の作成ルールとして期間や比較対象の選び方を定め、販売会社の研修で反対側の見方も示しておくことは、顧客本位の原則に沿った対応の一つと考えられる(編集部の見方)。

学習用の​設例:コストの​差を​埋めるのに​必要な​超過リターン

説明の数字の選び方に左右されにくい比べ方の一つは、条件をそろえて「何%上回れば並ぶか」を計算することである。

学習用の設例(架空)

  • 1,000万円を20年間、一括で運用する。費用控除前の市場リターンは年5.0%
  • 年間コストは指数型0.2%、アクティブ型1.6%(研究の台本が述べた平均手数料と同じ水準を仮定。実在の商品の値ではない)
  • アクティブ型の費用控除前の超過リターンを0〜2.0%の範囲で動かす。税・分配・売買の時期は考えない

表2のとおり、指数型は20年後に2,554万円になる。アクティブ型が費用控除前で市場と同じ成績なら1,952万円で、差は602万円に開く。両者が並ぶには、費用控除前で年1.4%ポイントの超過リターンを20年続ける必要がある。この数字を先に示しておけば、「直近3年に8割が指数を上回った」という説明を聞いた顧客も、それが長期にわたって続くかという問いに置き換えて考えられる。逆に、指数型を勧める側も、超過リターンが年2.0%続けばアクティブ型が上回る(差+309万円)ことを同じ表から説明できる。アルファの見込みを顧客と共有する出発点として使える。

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表2 設例:コストの差を埋めるのに必要な超過リターン
費用控除前の超過リターン20年後の金額指数型との差
指数型(コスト年0.2%)—2,554基準
アクティブ型(超過リターン年0.0%)0.0%1,952−602
アクティブ型(超過リターン年0.5%)0.5%2,149−405
アクティブ型(超過リターン年1.0%)1.0%2,366−188
アクティブ型(超過リターン年1.4%)1.4%2,554±0
アクティブ型(超過リターン年2.0%)2.0%2,863+309
出所:学習用の​仮定に​基づき大手町​プレップ作成​(架空の数値。単位は万円)。​1,000万円を​20年間、​一括で​運用し、​費用控除前の​市場​リターンを​年5.0%、​年間コストを​指数型0.2%・アクティブ​型1.6%とした​(コストの​水準は​研究の​動画の​台本が​述べた​平均手数料に​合わせた​仮定で、​実在の​商品の​値ではない)。​超過​リターンは​アクティブ​型の​費用控除前の​もの。​税・売買の​時期・分配は​考慮しない。​各年の​運用成果=1+市場​リターン+超​過リターン−コスト。

明日から​使える​確認項目

  1. 説明資料の数字ごとに、期間(何年の、いつまでの成績か)・母集団(どの分類の何本か、償還済みを含むか)・費用(控除前か後か)を書き出す。どれか一つでも空欄なら、その数字を勧める理由に使わない。
  2. 同じ資料のデータから、反対の結論(アクティブ推奨ならパッシブ推奨、その逆)を支える数字を一つ探す。簡単に見つかるなら、その数字の選び方は筋書きに合わせたものである可能性が高い。
  3. 面談の最後に、満足度とは別に理解を確かめる質問を一つ入れる。例:「この商品が指数連動型より手数料控除後で上回るには、年に何%上回る必要がありますか」。表2のような計算を顧客と一緒にしておく。
  4. 担当者・会社の報酬の受け取り方(販売手数料か、残高に応じた手数料か、定額か)を、勧める理由と同じ場面で口頭でも説明しているかを、面談記録で確認する。
  5. 顧客の金融知識の目安(質問への回答や取引経験)を記録し、知識が少ない顧客への提案ほど、比較対象と期間の選び方を所定のルールに従わせる。上席や他部署の確認の対象にする。
  6. 資産運用会社は、販売用資料で示す成績の期間・比較指数・費用の扱いの基準を文書にし、短い期間の上位の成績だけを示す資料を作らない。
  7. 米国の実験の数値(同意の差0.54ポイント、信念の変化3.1ポイントなど)を、日本の顧客への効果の推計や目標値に流用しない。

よく​ある​質問

この​研究は、​パッシブ​運用の​方が​優れていると​示した​ものですか。

いいえ。​研究が​調べたのは、​どちらを​勧める​説明が​顧客の​考えと​選択を​どう​動かすかです。​運用成績の​優劣は​検証していません。​実験の​選択肢も​手数料控除後の​リターンと​リスクを​そろえています。​成績の​実証に​ついては​アクティブ​運用と​パッシブ​運用の​超過​リターンと​コストを​整理した​記事を​参照してください。

日本の​顧客でも​同じ​結果に​なりますか。

分かりません。​研究は​2012年の​米国​ボストン​圏で、​大卒者の​割合が​高い​参加者を​対象に​した​実験室の​実験です。​日本の​顧客を​対象に​した​同種の​実験は、​本稿では​確認できていません。​日本の​顧客の​知識の​分布や、​対面で​継続する​面談の​性質を​踏まえて、​自社の​記録で​確かめる​必要が​あります。

まとめ

アクティブ推奨とパッシブ推奨の説明動画を無作為に見せた米国の実験では、参加者は自分の考えに合う説明を高く評価したが、考えを大きく動かしたのは反対の説明だった。金融知識の少ない層はどちらの説明にも大きく動き(反応の大きさに統計的な差はなかった)、報酬を定額と説明したアドバイザーの助言はより受け入れられた。結果は2012年のボストン圏・実験室・録画の助言という条件の下でのもので、論文は確認した範囲で改訂・再提出の段階にある。日本の販売・助言の現場では、顧客の満足と理解を分けて確かめ、説明に使う数字の期間・母集団・費用の扱いと報酬の説明を点検することが、顧客本位の原則に沿った出発点になる。

脚注

  1. R6(金融庁「リスク性金融商品の販売・組成会社による顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果」2026年7月29日)PDF p.3「1.はじめに」。2024年1月の新NISA開始後、2025年12月末の口座数は2,800万口座で、18歳以上の国民の4人に1人がNISA口座を保有。↩
  2. R1(2026年3月1日付の改訂稿)PDF p.1(要旨)・p.4・p.9(実施期間 2012年6月4日〜11月21日、MITとハーバード大学の実験室、ボストン圏で募集)。公表の経緯:前身の題名 Financial Narratives and Investor Beliefs を挙げて紹介した R9(MIT Sloan の記事、2024年6月24日)が、本稿で日付を確認できた最も早い公開の痕跡。2024年7月9日には別の題名(How does the Demand Side Process Financial Advice?)で中国の学会 CICF 2024 のプログラムに載っている(論文ファイルは非公開で未確認)。R2(NBER WP 33001)の発行は2024年9月(NBER の論文ページの Issue Date、R2 PDF p.1)。2024年3月の学会用草稿があるとの情報もあるが、本稿では確認できていない。前身の題名は R1 PDF p.57 の付録の表題にも残る。↩
  3. R1 PDF p.3〜4・p.10〜11(台本の作成と動画の構成。俳優4人、動画は約4〜6分、p.10)、p.4 注5(うその情報ではなく、それぞれに有利なデータを選んだ業界で一般的な見せ方だとする著者の説明)、p.13(実験後の解説動画)。台本の数値は R1 付録A(PDF p.58〜60):指数ファンドの平均手数料は年約0.2%、アクティブ型は年約1.6%(p.58)。パッシブ側は2009年までの20年間で平均リターンがほぼ同じだったとし(p.59)、アクティブ側は直近3年に大型バリュー型の8割超が指数を上回った、2007年までの20年間の上位20本はすべてアクティブ型だったと述べる(p.60)。これらは台本の主張で、研究が検証した結果ではない。↩
  4. R1 PDF p.12(7項目の順位と8問の知識問題)、p.14〜15(信念スコアの作り方。分散・手数料の最小化を上位3位に入れると+1、下位3位なら−1、銘柄選択・市場タイミングはその逆。正をパッシブ型、0以下をアクティブ型、p.15)、p.16・p.47 表4(金融知識の8問)、p.20 本文と注29(6問以上を高リテラシー。ほぼ半数ずつ)、p.45 表2(平均4.91問)、p.4・p.9(割り当ては信念・知識と無関係)。↩
  5. R1 PDF p.19・p.45 表2(平均6.44・標準偏差1.71)、p.5・p.20・p.49 表6 列1・列2(反対の説明 −0.641、パッシブ推奨 0.639、いずれも1%水準。アドバイザー固定効果つき、頑健標準誤差。分析対象は500人)。↩
  6. R1 PDF p.21・p.49 表6 列5・列6(高リテラシー層:事前パッシブ型×アクティブ推奨 −1.075、1%水準。低リテラシー層:同 −0.231、有意でない)。比較の基準は、各層で事前アクティブ型がアクティブ推奨を見た群。↩
  7. R1 PDF p.26〜27・p.52 表9 列3(事前アクティブ型×パッシブ推奨 3.122・1%水準、事前パッシブ型×アクティブ推奨 −1.587・1%水準、事前パッシブ型×パッシブ推奨 0.553・5%水準)。3つの係数はいずれも基準の群(事前アクティブ型×アクティブ推奨)との差で、各群自身の平均変化ではない。同じ版の序論(PDF p.5)は最初の値を3.4と書いており、表9 列3 と第4節の本文(p.26の3.1)とは一致しない。R2(NBER 2024年9月版)PDF p.50 表9 列1 では 3.425・−1.644・0.940(いずれも1%水準)だった。↩
  8. 図1の平均値は R1 PDF p.25(図4の説明。高リテラシー層 +2.8・0.85、変化ゼロ30%)・p.26(低リテラシー層 +3.3・−2.3)。回帰の推定値は PDF p.52 表9 列5(高リテラシー層:事前アクティブ型×パッシブ推奨 3.178、事前パッシブ型×アクティブ推奨 −0.574で有意でない)・列7(低リテラシー層:3.030と −2.570、いずれも1%水準)。列番号は表の表記による(本文 p.27 は列3・列5と書いている)。低リテラシー層の二つの大きさが統計的に異ならないことは PDF p.27。↩
  9. R1 PDF p.28〜29・p.54 表11 列5(「常に市場に勝つことはできる」への同意、1〜7。低リテラシー層の事前パッシブ型×アクティブ推奨は −0.253で、基準の事前アクティブ型×アクティブ推奨と有意に異ならない)。↩
  10. R1 PDF p.6 注9・p.12〜13・p.29(選択肢の作り方と抽選賞品)、p.29 図5の説明(指数ファンドを選んだ割合:25%・81%・49%・94%)。同じ段落にアクティブ型の選択率を「70% vs. 49%」とする一文があるが、他の数値と整合しないため本稿では使っていない。↩
  11. R1 PDF p.29・p.55 表12 列3・列5(線形確率モデル。指数ファンドを選ぶ確率、基準は各層の事前アクティブ型×アクティブ推奨。事前パッシブ型×アクティブ推奨は高リテラシー層 0.335(1%水準)、低リテラシー層 0.093(有意でない))。↩
  12. R1 PDF p.6・p.10〜11(報酬の説明の無作為化)、p.44 表1パネルB(人数)、p.56 表13(定額−手数料の差:同意 0.535(1%水準)・高リテラシー 0.413(有意でない)・低リテラシー 0.574(5%水準)、信念の更新 0.712(5%水準)・0.456(有意でない)・0.941(5%水準))。説明しない群が基準。表13 列4 の方向の係数1.388は報酬の説明がない群のもので、定額では1.388+0.261=1.649、手数料では1.388−0.451=0.937。同じ版の本文は同意の差を約0.55(PDF p.7・p.31)、更新の差を0.77(1%水準)、更新の大きさを1.37・1.7・0.94(PDF p.7・p.32)と書いており、表13の値と一致しない。本文の値は R2(NBER 2024年9月版)PDF p.54 表13 の値(0.551・0.766・1.370 など。高リテラシー層の更新の差は0.649で10%水準)と同じ。不一致の理由は確認できない。↩
  13. R1 PDF p.24・p.51 表8(好感度は群・層で有意差なし。戻る意向は列4の高リテラシー×アクティブ推奨 −0.719(5%水準)、事前パッシブ型×パッシブ推奨 0.070(有意でない))。パッシブ推奨が収益につながりにくいとの記述は p.24 の著者の解釈(一般化できるならという留保つき)。↩
  14. R1 PDF p.9 と注13(自己選択の可能性)、p.10 注15(標準化された動画で届く助言に最も当てはまり、関係に基づく助言には当てはまりにくいとする著者の説明)、p.14(実験室と実際の助言の場の違い、実際の保有や長期の結果を観察していない)、p.16(知識問題の正答率は一部の問題で大卒者の調査に近い)、p.65(年齢中央値34歳、大卒82%。比較は米国の2011年の地域調査)、p.33 注37(事前の考えはパッシブ投資が既に広く知られた米国で形成された)。↩
  15. 掲載状況は、確認した R8(Schoar の経歴書、2025年10月15日作成)PDF p.5 の記載(“Review and Resubmit, Review of Financial Studies, October 2024”)による。その後の掲載状況は確認できていない。R2(NBER WP、2024年9月)PDF p.1 には未査読と明記。版の違い:R2 と R1 を比べると、表9(全標本)と表13の推定値が異なる(脚注7・12)。R7(2025年12月17日付の改訂版、2026年の米国経済学会の年次大会で公開)の表6・8・9・11・12・13 の値は R1 と同じ。R1 は大学のセミナー資料として公開されたファイル(表紙に著者名なし)で、本稿が確認できた範囲で日付が最も新しい全文である(SSRN 等の版は確認していない)。↩
  16. R3(Mullainathan, Noeth and Schoar, NBER WP 17929, 2012年3月)PDF p.2(要旨)・p.5(約半数の訪問でアクティブ型を推奨、指数ファンドの推奨は7.5%・21回、指数型の資産を持参した場合も切り替えを推奨)・p.11(2008年4〜8月、284回)。7.5%は論文の記載(p.5・p.11)どおり。全284回に対する21回の単純計算は約7.4%で、率と件数の差の理由は論文からは確認できない。↩
  17. R4(Linnainmaa, Melzer and Previtero, NBER 会議用草稿 2016年4月)PDF p.1(要旨)・p.2(カナダの金融機関3社、1999〜2013年、アドバイザー5,000人超・顧客50万人超)。掲載誌版は Journal of Finance 76(2)(2021年)で、本稿は掲載誌版の本文を確認していない。↩
  18. R1 PDF p.5(知識の少ない参加者はどの助言にも同程度に反応し、質の低い助言に弱くなりうる)・p.32〜33(第7節の結論)。R2(NBER 2024年9月版)PDF p.32 は、知識の少ない投資家が利用できる助言の質を高める必要を政策的含意として明記していたが、R1 の結論にこの一文はない。↩
  19. R5(金融庁「顧客本位の業務運営に関する原則」2024年9月26日改訂)PDF p.1(策定・改訂の経緯)、p.5(原則3の注)、p.6(原則4、原則5の注1・注3)、p.7(原則6の注1)、p.8(原則7)。↩
  20. R6 PDF p.3(「最善利益勘案義務」を規定した改正金融サービス提供法の施行は2024年11月。同義務は、顧客等の最善の利益を勘案しつつ、誠実かつ公正に業務を遂行する義務と注記されている)。↩
  21. R6 PDF p.50(預り資産残高上位10銘柄のサテライト資産割合。主要行等9行・地域銀行98行・証券会社12社へのアンケート。分類は分析目的の便宜で商品の優劣や投資適否を示すものではないとの注記)、PDF p.51(サテライト資産割合が高い販売会社ほど合成シャープレシオが低い傾向。それだけで評価はできないとの留保)。↩

参考文献​(2026年10月確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。本記事はAIを用いて調査・執筆し、編集部が確認しました。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。